ドMだからついでに仲間庇ってたら全員病んでた   作:恒例行事

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73 【不憫?】アリシア・ラ・アエラス

「──あのねフィンくん。我慢しろとは言わないけど、目の前に私がいる時くらい抑えてくれてもいいんじゃないかしら。君が心の中でえっちなことを考えたり、私に対して、その……す、すき、みたいな感情を寄せてくるのは丸わかりなの。普通に気まずいからやめて?」

「はいすみません。でもそれを抑えるとその内表に出てくると思うが……」

「ンンンンっ! なんとかして?」

 

 なんとかできるものならなんとかしているんですよねぇ。

 

「困った顔されても、困ってるのはこっちなんだけど……」

「……アリシアさんが俺の感情を読んでるのがいけないんじゃないか?」

「読みたくて読んでないわよ!」

 

 フシャーと怒るアリシアさん。

 

 むほほ。

 美人エルフに怒られてる……!

 これが業務上発生した怒られだったら反省せざるを得ないが、これは私的なものなので問題なし!

 

 寧ろもっと怒られたい!

 アリシアさんだいすきちゅっちゅ! 

 俺を怒って軽蔑してくれぇっ! そのまま暴露でも構わない! なんでも受け入れてこそのドマゾよ! 寝取られ俺が先に好きだったのに浮気不倫乱交なんでもござれだ。総受けとは俺を体現する言葉よ。

 

 俺のことを唯一理解してるアリシアさんが知らねえ男とくっついてさぁ、俺のことをマゾでキモいってバカにしながら知らねえ男と目の前で交わるんだ……!! あああっ! 脳が壊れるっ! うひょおおおっ!

 

「んもぉぉおぉっ! それやめて!」

「しかしなぁ……俺の秘密を暴いたからには地獄までついてきてもらわないと困るという話で」

「毎日が地獄だとは聞いてないわよ!」

 

 そんな……

 こんなもの序の口なのに……!?

 それじゃあこれに毎日付き合ってる闇のマリアンヌはなんなんだ。地獄の支配者とか邪神の手先とか?

 

『ひょ!!!?!?!?!?!??!』

 

 エッなに!?

 闇のマリアンヌなんだって!?

 急に大きな声出すから(※出ていない)びっくりした。なんかあった?

 

『なんでもありませんよ、フィンさん』

 

 そっか。

 どう考えてもなにかあった声だったけど君が何もないというなら信じよう。闇のマリアンヌは俺の魂の妻だからな。

 信じるさ。

 

「ほ、本当に遠慮ないわね、フィンくん……」

「……逆に聞きたいんだが、アリシアさんは本気で嫌がってるのか?」

 

 もしそうなら、俺は絶対にこれ以上妄想を酷くしないと誓おう。

 

 アリシアさんの前でマゾを発揮することは一生ないと誓ってもいい。

 彼女が心配などしないように誰も見てないところでこっそりと闇のマリアンヌになじられる、そんな生活を送る。

 

「エッ……そ、そりゃあ、…………いやよ……?」

「そうか。なら決まりだ。貴女が嫌だと言うのなら、俺は二度とそんな思いをさせない」

「あ……」

 

 正直いい反応してくれるからめちゃくちゃ楽しんでたのは認める。

 

 気持ちの悪い俺を受け入れてくれたって喜びが強くて抑えきれてなかったのも事実だ。俺自身、これまで自制してきたが、タガが外れたような感じがしてた。

 このままだといずれバレるんだなってさ。

 それでもいいって思ってしまう自分がいる。

 だって、アリシアさんが受け入れてくれたんだ。

 勘違いしちまったんだ。

 こんな俺でも、みんな、見捨てたりしないんじゃないかって。

 

「すまなかった。不快だっただろう。嫌なのに、俺が暴発しないようにと付き合ってくれたこと、心から感謝する。アリシアさんは本当に素敵な人だ。行き遅れなんかじゃない。貴女が素敵だと言うことに気がついてない男共に見る目がないんだ」

「え、う、ぁぅ……」

「俺のことは忘れてくれ。そうすれば元通り、もう、アリシアさんに余計な心労をかけることもない。これまでずっと一人でやってきたんだ。大丈夫だ」

 

 まだ一回もえっちなことしてもらえてないのもそういうことなんだ。

 

 最初からする気なんてなかった。

 俺を気持ち悪いと思いつつ、そんなこと正面から言ったら傷つくだろうから遠回しに俺が傷つかないで自棄にならないように調整してたんだろう。

 自分のパーティーメンバーの幼馴染であり弟子に当たる男がドマゾで気持ち悪い趣味を持ってる男だとわかっても気まずいだけだ。

 

 その上で、なんとかなるように手を回してくれていた。

 

 だがそれ以上に俺が気持ち悪かったんだ。

 

 だからこの話はここで終わりだ。

 アリシアさんにこれ以上迷惑はかけられない。

 だってアリシアさんは、こんな気持ち悪い俺を否定せずいてくれた優しい人だから。

 

「〜〜〜……ああもうっ! そんな真面目に受け取らなくていいわよ!」

「しかし……不快だろう?」

「う……い、いやだけど……いやじゃないっていうか……複雑なのよこっちは……」

 

 えぇ?

 

 うーん、よくわからん。

 

 常識的に考えて好きでもない男の妄想ネタにされてるって不愉快なだけじゃないか?

 

 俺もそこら辺の女性に妄想のネタにされてたらあんまり嬉しく……

 嬉しくは……

 …………嬉しいな……。

 

 でもそれは俺がマゾだからだろ。

 

 普通はそう考えないってことは、つまりアリシアさんも変態だってこと?

 

「あのねぇ。自覚ないでしょうけど、フィンくんって結構かっこいいのよ?」

「そうか? 女性に頼ってばかりの情けない人生を送ってきているが……」

「男らしい顔付きにゴリゴリの身体、これがストライクゾーンじゃない女性はいるかもしれないけど好みって女性も絶対にいるわ」

「アリシアさんは?」

「…………まあ…………好みだけど……」

 

 やっぱりアリシアさんって俺のこと好きなんじゃねーの?

 

 そうじゃなきゃ性処理してあげるなんて言わないしここまで世話焼いてくれねーだろ。

 

 つまりここに至るまでの発言は全て照れ隠し……!

 本当は俺との関係が深まったことを喜んでるんだ! 

 そうなんだな、闇のマリアンヌ!

 

『いえ、違いますね』

 

 宣誓、女神エスペランサ様

 俺は二度と女性関係で思い上がったりしないと誓います。

 世界中の女性が俺を嫌いで憎んでいていじめ抜いてから殺したいと思っていると自覚します。やはり俺の救いは闇のマリアンヌだけなのか……。

 

「あ、えっと、勘違いしないでね? フィンくんと特別な関係になりたいからこんなこと言い出したわけじゃないから。そうなってもいいなとは思うけど、今はほら、そういう時期じゃないでしょ? そりゃもちろんフィンくんは人だから私達エルフのペースで考えたらあっという間におじいちゃんになっちゃうけど、政治的にも環境的にも特定の誰かと愛を育むのは時期尚早だと思うの。〈不浄領域〉そのものへの検証とか、ほら、大変じゃない? そんな状況下で修羅場……ハーレム崩壊させなくていいでしょ?」

「ハーレム……? そんなものはないが……」

「えっと……男女比で考えたら、フィンくんの周りはハーレムと呼んでもいいと思うわ……」

 

 女性──師匠、アリア、マリアンヌ、カルラ、アストレア、アリーシャ、アリシアさん、グリセルダ。知り合いで言えばセラさんや受付嬢のセリナも含まれる。【リリーガーデン】の四人とはあまり日常的に関わることはないが、知り合いではあるな。

 

 それに対して男は俺一人だ。

 

 確かに……ハーレムだ……

 だが待ってほしい。

 これはハーレムであってハーレムではない。

 冒険者ギルドで陰口を叩かれているように実態は『めっちゃ強い女性陣に寄生している盾役』なのだ。

 

 みんなが俺の知らないところで男を作ってないとどうして言える?

 

 そもそも彼女らは全員魅力的な女性なのだ。

 アリシアさんも自分を行き遅れだのおばさんだの卑下するが、俺から見ればめちゃくちゃ素敵で魅力的なお姉さんエルフである。是非ともお付き合いさせてほしい、お突き合い前提で。

 

「あー、うん。あのねフィンくん。何を考えているかまではわからないけど、落ち込んでから興奮して私に性欲をぶつけてきてる辺り私にも知らない間に男が出来てるとでも思った?」

「エッ!? な、なぜわかった……」

「ああうん……分かりたくはなかったわね……」

「そこまで理解されてると本気で結婚したいと思えてくるんだが」

「けっ……あ、あんまり揶揄わな──本気だ……」

 

 逆になぜそう思われないと考えたのか。

 

 俺の思考すらも理解できる女性なんて貴重すぎる。

 もうこの人を逃したら後がないと即座に理解した。

 何がなんでも、どんな手段を使ってでも──あくまで常識的な範疇──近くにいてもらわねばならない。俺のセカンドライフのためにも、アリシアさんを手放す気にはなれん。

 

「う……ぅお……」

「うお?」

 

 たじろいだアリシアさんが後ずさる。

 

 それと同時に一歩接近して、腕を掴み背中に手を回す。

 

「ひゃっ……」

「アリシアさん。俺は本気だ。本気で一緒になって欲しいと思っている」

「だ、だめよフィンくん……こんなの……いけないわ」

 

 そう言いながらアリシアさんは俺の胸にそっと顔を寄せてくる。

 いや全然拒否しねえじゃねえか。

 おい闇のマリアンヌ! 

 やっぱりこれはゴーサインだったんだよ!

 これこれこれこの現実!

 これが全てでしょう!

 エッチなことは、出来ます!

 今ここで脱出できる!

 いける!

 童貞を卒業、できる!!

 

「アリシアさん……いや、アリシア……」

「あ…………」

 

 アリシアさんが顔を上に向ける。

 

 潤んだ瞳。

 上目遣い。

 真っ赤に染まった肌。

 かっ……

 かわいい……。

 

『風邪ですね。離れた方がいいですよ』

 

 んなわけねーだろ!

 どう見ても風邪ではねーよ!

 どういうタイミングで発熱してんだよ! 俺がキモすぎて発熱したとしか思えないだろそれじゃあ!

 

 さあ言え。

 言うんだ俺!

 あとは言うだけだ!

 後のことは考えるんじゃねえ。

 今の俺は真っ直ぐに見据えてるんだ、童貞卒業を! 夢にまでみたあの日々を! 鞭で叩かれ蝋燭を垂らされ、両手足を縛られた状態で水車に括り付けられて水責めをされるあの夜を!!

 

「アリシア……」

「は、はい…………」

「お、お、俺────俺に、SMプレイをしてくれ……!」

「……………………はい?」

 

 言った……!

 ついに言ったぞ!

 待ちに待ったSMプレイを、あの日色街に行けなかった純粋少年だった俺が抱いた夢を!

 

「俺は、美人エルフにSMプレイをしてもらうのが夢だったんだ……!」

 

 主に師匠とか師匠とか師匠とか。

 ある人物の影響でこれは間違いなく性癖に刻まれている。

 年上の巨乳美人お姉さんが俺を蔑みながらSMプレイで可愛がってくれる……! ああ、そんなのっ、幸せすぎるだろっ!

 

「アリシアさん……。あなたは最高の女性だ。どうか、俺を鞭で叩いてくれないか……?」

「…………スゥーッ……フゥ〜〜ッ……」

 

 アリシアさんは無言で深呼吸を繰り返して、ゆっくり俺の胸元から体を引き剥がした。

 

「フィンくん。貴方、女心がわからないのね」

「うっ……」

「それでいて奥手。自分に自信がないから、そういう発言しちゃうのよね。関係が崩れるのが怖いから」

「がああっ!!」

「ぬぁんで結婚がSMプレイに繋がるのよこのおバカ!! 朴念仁! アホっ!」

「ぐっ、ふっ、ぬううぅ……♡」

「悦ぶな変態!」

「おほっ♡」

「あああああああ!!! んもおおおおおおっ!! 私が何したって言うのよぉ!」

 

 ハァッハァッハァッハァッ、絶頂する!!

 

 なんて心地よいのだ……

 アリシアさんからの罵倒──これは、これに勝る快楽はあるのか……?

 脳に幸せと快楽が広がっている……

 ああ、幸せだ……

 この世の楽園は、ここにあった……。

 

「フーッ、フーッ……! い、いいわ……そこまで言うならやってあげようじゃない……!!」

 

 え、えぇっ!?

 おかわりまでいいのか!?

 やばい、もう目が♡になってる自信がある。

 愛してるぜアリシアさん!

 ラブフォーエバー!

 

「ここが防音でよかったわねぇ……!! こうなったら自棄よ! 徹底的にやってあげる!」

 

 う、うおおおおおおっ!

 

 やったああああああ!

 

 闇のマリアンヌ、俺、夢が叶うんだよ!

 

 祝って祝って!

 そして頭の中で俺を罵ってくれ!

 

『い、イカれてます……これが、人間の業……』

 

 ドン引きしてる闇のマリアンヌかわい〜♡

 ドン引きが軽蔑になるまで無様晒してやるからな、覚悟しておけよ。

 マゾ極まりし俺が人類史上最も情けないんだ。

 刮目しろ、闇人格。

 

 俺が本当の闇ってもんを見せてやるよ……。

 

 いざ行かん!

 我が楽園へ────!

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