ドMだからついでに仲間庇ってたら全員病んでた   作:恒例行事

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75 昼下がりの密室、男女二人、何も起きない筈がなく

 やあマリアンヌ。

 朝日が眩しいね。

 青空の美しさ、風が頬を撫でる心地よさ、日差しが恵む暖かさ……世界ってのは、こんなにも素晴らしいものだったんだな。

 これまでの俺はどうかしていた。

 マゾだの、まともだの……そんなのはどうだっていいじゃないか。

 

 だって────童貞卒業したんだから……。

 

『やかましいですね、童貞捨てただけのマゾが』

 

 オヒイィィッ!!

 い、いかんっ! 

 想定していなかった罵倒に心が悦んでいる!? そんなバカな! 濃密な交わりを経て新たな自分を見つけた俺が、マゾに引き戻されるだと!?

 

『ふっ……相手が雑魚かったから勝っただけの愚かなマゾ男さんの思い上がりには呆れてしまいます』

 

 ぐええええぇぇっ!!

 ま、ままマリアンヌがそんなこと言うわけないっ!

 正体表したな! 貴様はマリアンヌではない! 闇のマリアンヌはマリアンヌではなかったのだ!

 

 返せっ!

 ……いや、返さなくてもいいかな。本物のマリアンヌは俺にドマゾきもなんて言わないし、マリアンヌの声と姿をした闇人格が俺を罵るからこそ得られる栄養というのもある。関係というのは二元論で語れない、深く、そして複雑なものなのだ……

 

 いや〜やっぱり“愛”を知ったからな〜。

 女性の暖かさを知ったからな〜。

 これまでの俺とは違う、カナ!?

 

『うざ、くたばってください。浮気男』

 

 うざ!? くたばれ!? 浮気?

 

「はああぁ……やっちゃった……やっちゃったよ、もう……どうすんの……はああぁぁあぁ〜〜……」

 

 額に手を当てて、俯きながらため息を吐いているのはアリシアさん。

 

 これまではあまりに意識してこなかったが、一度全てを見た後だと実に素晴らしい身体をしている。アリシアさんに関してはそう、なんというか性欲より感情が伝わっているということの方が大事だったから……

 ドマゾがバレたらどうしようとドキドキリスクを背負いながらエッチな妄想に浸るのは、それはそれは楽しい日々だった。

 

 しかし、それも今この瞬間をもっておしまいだ。

 

 いや、終わったのだ。

 俺の童貞を捨て去るのと同時に。

 

「まあ、やっちまったもんは仕方ない。結婚するか?」

「し・な・い! するわけないでしょ! したら言い逃れできなくなるのに……!」

「しかしなぁ……エッチした事実は取り消せんぞ? 俺の初めてを捧げたのはアリシアさんなんだからな」

「ウッ……そ、それは……いや私だって初めてだったんだけど!?」

 

 顔を真っ赤にして叫ぶアリシアさん。

 

 かわい〜。

 なんていうかめっちゃ愛おしいな。

 初めてを捧げた相手だからだろうか。それとも行為の最中に好き好き言われまくったから?

 

 まあどっちでもいいか。

 アリシアさん好き〜ちゅっちゅ!

 

「〜〜〜〜っ、ああもう……! はいはい、私も好きよ好き。これでいい?」

「ああ、それはそれでいいな」

「あっそうだった……! マゾだった……!」

 

 初めはね、全部最後までやるつもりは互いになかったんだよ。

 

 アリシアさんが俺を罵り、悦ぶ俺。

 彼女も興が乗ってきたのか、自分の知らない一面を知ってしまったのか、口角が上がって満面の笑みを浮かべながら股間をグリグリ踏み躙ってきた時はもうヤバかった。

 二回くらい達した。

 あれだけで一ヶ月は生きていける。

 アリーシャの将来にも大いに期待が出来る一面だった。

 

 だったんだが……なんか、こう、勢いで脱がされた俺を改めて見たアリシアさんがそこで正気に戻ったのか『や、やややっぱり全部忘れましょ』とか日和るから……。

 そんな可愛いところを見せられてはマゾの俺もサドに裏返るというもの。

 マゾヒストだった俺は大変身!

 急にしおらしくなった美人お姉さんエルフを壁際に追い詰めフィンフィンを押し付けてからはもう一方的だった。

 

 エロ本読みまくっててよかった。

 元々妄想のバリエーションを増やすために楽しんでいたのだが、責められから逆転系というジャンルを知った時は衝撃を受けたね。まさか、あのシチュエーションを自分で楽しめる日が来るとは……

 

 生きてきて、本当に良かった……!

 

「痛たた……あ〜、腰が痛いって本当なのね……」

「どれ、揉んでやろうか?」

「いりません。あっ、ちょっと……!」

「ほれほれ、ここがいいのか?」

「……エロ親父みたいでそれは嫌ね……」

 

 うん、そんな気はしてた。

 俺の本性って結局はそこらへんの村人で凡人だから、素を出すとそうなっちまうんだろうな。今は若くて自制出来ている(?)が、年取った俺とか考えたくもない。

 どんな醜態晒して生きてるんだろうか。

 そしてどんな状況に追い込まれているのだろうか。

 歳をとってできることが減って見た目も醜くなった俺、か……。

 

 ハッ……!?

 あ、アリシアさんにも捨てられて、新しい男に寝取られて見せつけられたりして……!?

 

「……ね、ねぇ、ダメだからね? もうしないからね? これは、そう……事故よ。一夜の過ちみたいなものだから、ね?」

「ん? ああ、寝取られる妄想で興奮してただけだから大丈夫だぞ」

「……………………はぁ〜〜〜……」

 

 さっきまでとは違う完全に呆れたため息。

 

 おほほっ、これこれこれ♡

 エッチもいいけどマゾ快楽はたまらんな!

 実際にやられてしまった女性には申し訳ないが、嫌いで不愉快でしょうがない相手に尊厳を奪われるような陵辱をされる気持ちはこれにも勝るのだろうか? 

 

 そう、たとえばゴブリンとかに苗床にされる気持ちとか。

 やられてみたい、ゴブリン孕ませえっち。

 

 俺が女の子になれた暁には一度くらいはヤラれてみよう。

 

「絶対ロクでもないこと考えてるわね……」

「流石アリシアさん、その通りだ」

「……えっちした相手には、そういう態度なんだ? ふ〜ん」

「どうだろうな。俺は所詮ただの村人だ。どう頑張っても高潔にはなれん。普段は取り繕ってるが、アリシアさん相手だと隠し事をしても無駄だと思ってるからこういう態度になるんだろ」

 

 尻を撫でながら言う。

 

 ああ、なんとなく自分でも腑に落ちるな。

 仮に周りの女性とそういう関係になったとして、マゾバレしてなかったらこういう態度を取ることはないだろう。なんつーか、自分の全てを曝け出すのは怖いし。必要ならやる。でも、多分それを必要だと解釈する日は来ない。

 

 結局のところ、俺は特別でもなんでもないただの男だ。

 

 その中身までつまらない一般人だとバレるのが怖い。

 マゾバレしたらもうヤケクソになれるから別なんだなぁ。

 やっぱマゾバレしたらやばいわ。

 なんとしてでもこれだけは隠し通さねえと……。

 

「そういう意味ではアリシアさんは本当に特別だな。隠したところでどうしようもないし、それならいっそ、全部見せたっていい……そんな気持ちになった」

「……へ、へえ〜。そうなの?」

「そうなの。いい尻だ」

「んっ! ……もうっ! いい? 絶対外でやったらダメだからね!?」

「流石にやらん」

 

 撫でてた手でペちっと叩く。

 憤るアリシアさんに苦笑しながら言った。

 

「俺とアリシアさんの関係はこれまで通り────ただし、ここまで踏み込んだんだ。今更逃げるなんて言わないでくれよ?」

「言わないわよ……逃げれる気もしないし、それに……」

「それに?」

「……そんなに、嫌じゃないもの」

 

 …………うお。

 

 やべ、キュンときた。

 

 これが、恋……。

 

 闇のマリアンヌ、流石にこれは恋ですよね?

 

『まあ、それでいいんじゃないですか?』

 

 興味なさすぎだろ……。

 そんなに俺が童貞卒業したのが気に食わない?

 ふっ、まあ安心しろ闇のマリアンヌ。

 魂は君のもの、これは変わってない。

 どうせ死ぬまで闇のマリアンヌとは一緒だろうしな。

 身体で繋がってるわけじゃないから離れようもないし、闇のマリアンヌが現実にいたらそっちの方が距離は遠くなりそう。頭の中で俺の全てを知ってる女性は君だけだよ。

 

『……童貞捨てたばかりのマゾがそう言うのは腹立たしいですが、まあ、素直に受け取っておきましょう』

 

 オフっ♡

 

「それで、どう誤魔化す? 流石にアリーシャに呼ばれたってのを言い訳にするのは難しいぞ」

「そうねぇ……ヴァシリなら誤魔化すのに協力してくれるんじゃないかしら」

「師匠に下半身事情知られるのは普通に辛いんだが……」

「……あっ、それは悦ばないのね」

「現実の話だからな」

 

 妄想の中なら師匠が寝取られるのも吝かではないが、現実世界でそんなことされた暁には男側を殴り殺す自信がある。ありとあらゆる手段を使って復讐する。復讐もできず、惨めに敗北した時になってようやく悦ぶのだ。

 マゾを得るのにも手順というものがある。

 なんならアリシアさんが一発で全てを終わらせただけだ。悪いのはアリシアさんの方。

 

「じゃあそれは最悪の手段ね。アリアと【払暁】にさえバレなければなんとかなる気がしてきたわ」

「……そうか?」

「ええ。エルフはなんとでも出来るわ、多分」

 

 どうなってんだよエルフ。

 アストレアがダメなのはわかるが、グリセルダとかはいいのかよ。

 

「私達はフィンくんのハーレム容認派ですもの。英雄っていうのは多くを抱いてこそでしょ?」

「えぇ……? そういうもんなのか……?」

「そういうものなの。フィンくんが吹っ切れてるように、私だって吹っ切れてるわよ。こうなったら一連托生……! 地獄まで付き合ってあげるわ」

 

 頼もしい……

 素敵だ、アリシアさん……

 

「……よし。風で廊下を探知するけど、ドアを開けたことに気が付かれたらもう隠せないわ。アリアや【払暁】のみんながいないことを祈ってちょうだい」

「ああ。まあ居ても最悪マゾバレするだけだし」

「それがよくねえって言ってんのよ!」

「ははは、じゃあなんとかしないとな」

「はああぁぁっ! わかってるわっ!」

 

 やっぱアリシアさん面白い人だな。

 こんな人がエッチの時はしおらしくなる、うお、やべ興奮してきた……。

 

 アリシアさんがドアをほんの少しだけ開ける。

 

 瞬きの刹那に風を掌握、探り終えた彼女は一言告げた。

 

「なんも居ないわね」

「なんも居ないのか」

「ええ」

 

 言われて廊下に出るが、確かに誰もいない。

 

 探られてる気配もなさそうだ。

 

「……これ、普通にみんな仕事しに行ったのでは?」

「……多分、そうね……」

 

 ほほ〜。

 みんなが仕事してる間に、隠れてこっそりえっちなことをしていた、と……。

 

 ぐふふ……。

 

「あー……これ本当に誰もいないわね。私達のことバレてたわけではないでしょうけど」

「まあ好都合だ。今日はこのまま帰らせてもらうぞ」

「そう? わかった、気をつけてね」

「気をつけても何も、すぐそこだ」

「それでもよ。くれぐれも! 気をつけてちょうだい」

「わかったわかった。それじゃ、アリシアさん」

 

 ぐいっと引き寄せて額にキス。

 

 おっ、なんて変な声を出した彼女に背を向けて、歩き出した。

 

 さて、切り替えていくか。

 アリシアさんとまた一つ進んだ関係になったのは確かだが、それを表で堂々とひけらかす意味は全くない。

 

 俺の中で色々と隠し通す生活なのは変わらん。

 

 ここでバレてれば違ったが、バレなかった。

 

 それが全てだ。

 

 隠すものが増えただけで何の負担でもない。

 

 ただ、今後の生活に一つ楽しみが増えた。

 それでいい。

 

 そうだろ? マリアンヌ。

 

『ええ、そうです。フィンくんは隠し通さなくてはいけないんですよ。そうでないと、死んでしまいますから』

 

 確かにね。

 殺されても文句は言えない自覚はある。

 彼女らは優しいからそんなことしないだろうけど、最終的に死にそうだし出来るだけバレたくない。

 

『ちっ……森人如きが私のフィンに……排除せねば……邪神の手先が……』

 

 ん?

 ごめん聞き取りづらかったんだけど、どした?

 

『なんでもありませんよ、フフ』

 

 そっか。

 ならいいけど。

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