オッホッオホッオッホッオホッオホッオホホォッマゾッドマゾッエクスタシ〜。
『なんですか今の呪詛は……』
呪詛とは失礼だな。
俺とて金等級冒険者、文化や学問には疎いが喜びを歌にすることくらいはできる。センスがないから口にするのは憚られるが、心の中で奏でるくらいは自由だろう。
頭の中に棲みついている闇人格にはいつも一方的に構ってもらってばかりだからな。
たまには歌を唄ってやろうという気遣いだ。
『本当に申し訳ないのですが、二度とやらないでください。やったら神罰を下します』
神罰!!!!?!?!?
俺が気遣いをしただけで神罰が下るの!?
『はい。神とて人の子の全てを肯定するわけではないのです』
そ、そんな……
じゃあ俺はどうやって脳内闇人格に報いてやればいいんだ……。
『えー……変なことしなければそれでいいです』
ただ住んでるだけじゃんそれじゃあ。
せっかく仲良くしてくれてるんだし、俺だって脳内闇人格のことは楽しませてやりたいんだ。俺の頭の中に閉じこもってちゃ退屈だろ?
『確かに窮屈ではありますが退屈はしませんね。宿主がおかしい人なので』
そうか? ならいいんだが……
ん?
今俺のことおかしい人って言った?
『いいえ? 面白い方だと申し上げました』
「あれ? フィン、また来たの?」
「ああ、少し用があってな」
ソファに座っていると、アリアが首の後ろから両手を回して抱きついてくる。
むほほっ、いい匂いする……♡
これこれこれ、こういうのだよこういうの!
俺はドマゾだけどそれはあくまで趣味であって、こうやって巨乳幼馴染が抱きついてきていい匂いがフワッと香ったら鼻をピクピク動かして興奮するのだ。
最近はそういうの全部吹っ飛ばして裸の付き合いに至ってばかりだから余計ネジが外れていたんだろう。
俺はね、こうやって付き合ってもいない、好意がなんとなく互いにあることを察している女の子とふわふわした関係を楽しみたいのだ。出会ってすぐに合体するのではなく、日常を過ごして緩やかに変化する関係性というものも楽しみたいんだ。
『童貞みたいなこと言ってますね』
エッ……ど、どど童貞みたいなことですか?
……言われてみれば、そうなのかもしれない。
アリシアさんとのエッチにて大人の階段を登り名実共に一人前の男になったわけだが、そこに至るまでの経緯は混沌としている。ドマゾなことをひた隠して盾役として気持ち良くなっていた俺の前に現れた、感情を感じ取れる女性。
問い詰められて逃げることを諦めた俺が認めたことで、アリシアさんは俺に協力を申し出た。
つまり、俺は彼女に取引上の相手をしてもらっているのだ。
彼女は俺の秘密をバラさないこと。
俺は彼女に趣味を満たす手伝いをしてもらうこと。
これが俺とアリシアさんの関係性だ。
結婚しよと言ってもダメと言われるしハーレムもいけませんと言われる。冒険者家業を続けていく上で下手を打つとまずいから協力しているだけで、互いに愛し合っているとは言えない……
ムゥ、確かに女性相手の恋愛という意味では童貞も良いところ。
肉体的な童貞は捨てたが精神的な童貞は捨てられていない、そういうことだろうか?
『理屈こねるところも童貞さんです』
ウッ、それは効く……!
だってさァ仕方ないじゃん!
自分を納得させるために理屈こねないとやってらんないんだから!
俺だって『うひょーアリア久しぶり〜ヤろうぜー^^』とか言えるなら言いてーよ!
でもそんなこと言ったらドン引きされるだろ……!
そういうこと言えるようなフィンフィン騎士にはなれないのだ。俺は、師匠に育てられたのだから。師匠の顔に泥を塗るわけにはいかない。
『泥以外は塗りたいと思ってるのに?』
うっひょ〜〜〜褐色肌の師匠の顔が俺の白濁したナニカで染まっちまってるぜ!
ウッッッッッでるっっっっっ!!
──死ねよ、俺。
クックック……死んじまえよ……
師匠でそんなこと考えるなんて、最低だ……。死にたい……。師匠をそんな目で見るなんて、己の醜さが憎い。師匠の身体……修行の日々で何度も共に風呂に入って頭に刻まれた裸体……師匠、俺死にたいんすよ。
『おっぱい舐めようとしてたくせに何を……』
そりゃまああんな抱きしめられて直接触れてたら舐めるだろ。
なぜ舐めないんだ?
たとえ舐めていたとしてもそれは事故だよ。息が苦しいから口で呼吸しようとしたら涎がこぼれてしまったと言えば誤魔化せるかもしれないからね。
『そういうことばかり考えるのは早いんですね。きも』
おっほ♡
「へぇ〜、用事ねぇ……わ、私に会いにきてくれたの?」
アリシアさんに会いにきました。
理由は、カルラが俺とエッチする気はないと謝罪したいからだそうです。
「そうだなぁ。かわいい幼馴染に会いにきたのも確かだが……」
「え、えぇ〜? も〜〜、ご、誤魔化されないからね?」
なんだこのかわいい生き物……。
男慣れしていたアリアはどこへ?
あれは幻想だったのか?
そうだよな、アリアが男慣れするわけないもんな。
俺のかわいい幼馴染が長旅で男遊びしまくって次代の勇者を作ろうとしたりなんて、してるわけがないもんな。
『──果たして、それはどうでしょうか』
なにっ。
や、闇のマリアンヌ、何を知っている……?
まあ、何を言ったところで、所詮は虚言だ。
言ってみるがいいさ。俺は、幼馴染を信じる。
『〈聖剣〉を起動した個体は交われば確実に子を宿すようになっています。本人に自覚がなくても、寝込みを襲われていればすでに産み落としていてもおかしくはないでしょう』
ホゲッッッッッッオゴオオオォォッ!!!
「フィ、フィン? どうしたの? 急にビクって……」
「な、なんでもない……」
美人三人旅。
トラブルの多い冒険の中で一度くらいは下手を打っていてもおかしくない。宿に泊まった三人は薬を盛られ深い眠りに落ち、俺と同じような金等級冒険者や白金等級の男に襲われ、一晩中弄ばれ知らない合間に子を成して……
気がつけば膨れた腹部、絶望しながら産んだ子供、ひっそりとどこかの孤児院に預け……悟られないように三人だけの秘密、なんて処理をしていたら……
あがっ!!
うわああああああああっ!!
やめろっやめてくれぇ! 脳が壊れる!! 気持ちいいいいっ!! 苦しいいいいっ!! アリアに子供がいるなんて、そんなの嘘だああああっ!!
ハァッハァッ……!!
ね、寝取られどころの快感じゃない。
これは、あまりにも危険だ。
アリシアさんの罵倒に匹敵する快楽……! 封印せねばならん。闇のマリアンヌ、これからこの類の妄想は封印で。
『気持ちよかったですか?』
ああ、最高だった。
誕生日とかにまたやってくれると助かる。
『きもっ……』
ウギャッ♡
「おや、仲良しだねぇ。妬いてしまいそうだよ」
「師匠。仕事中にすまん」
「気にしなくていい。正直に言えば、フィンのことは何よりも優先してあげたいんだ。何度も訪ねてきてくれて嬉しい限りだよ」
おお。
「それは俺も嬉しいな。師匠に嫌われたら立ち直れん」
「私が君を嫌いになるわけないだろう? 英雄の自覚を持つんだね」
そう言いながら師匠は隣に座った。
あ、隣なんすね。
アリアもまた、俺の後ろから抱きつくのに飽きたのか、師匠とは反対側に座った。
両手に華……というより、五年前に戻った感じだ。
懐かしいなぁ。
【払暁】のことは大事だが、それと同じくらいあの頃の記憶は大切に想ってる。師匠とアリアをエッチな目で見るのがなんとなく良くないと思ってるのもそれが要因だろう。
別にエロい目で見てるカルラとかアリシアさんが大切じゃないって話じゃないんだよな。
なんと言えばいいものか……家族ともまた違うし……
「それにちょうど私の方も用があったんだ。少し聞きたいことがある」
「聞きたいこと? 俺が知ってることでよければ答えるが……」
「まあ、知ってればで構わない。最近、アリシアがぼーっとすることが多くてね」
そう言いながら師匠はため息を吐いた。
そうなのか?
俺といる時はそんな風に感じないけどな。
それともアリシアさん、俺との行為がかなりの負担だったのだろうか。
好きでもない男と、金でもない関係で行為に及ぶのは、そんなに辛いことか?
確かに俺も見知らぬ女に突然罵倒されても嬉しくはない。
悦びはするが、嬉しいとは思わないだろう。
それと同じだろうか……?
別にエッチ自体は嫌いじゃないが、嬉しくはない……。
ううむ……調子に乗りすぎたか……?
「あー、確かにね。呼んでも反応しなかったり、急にため息吐いたり、ご飯の最中にスープこぼしたりするもんね」
「うん。拠点も購入したことでかなりのお金を支払ったけど、彼女だけがどうしようもない金額を支払ったわけでもない。生活を不安に思ってのことではないのだろうから、プライベートで何かあったのかと思って調査したんだけど……」
エッ調査したの!?
どどどどどーしよ闇マリ!
ばれちゃう? 俺たちの淫らな関係ばれちゃう!?
俺の杞憂を知らずに、師匠はもう一度ため息を吐いた。
「聞いても『なッんでもないわッ!』と、明らかに何かあるような慌てっぷりだったんだが、事件に巻き込まれてるわけでもない。新たに出会った交友関係で悩んでるわけでもなさそうで、正直お手上げでね。重大な何かがあればすぐに相談してくるだろうし、五年の旅でそういう関係を構築したからそれはないと思うんだ」
「……なんでそうなったのかの理由はさっぱりわからんが、俺に出来ることなら協力するぞ」
あっ…………ぶねぇ〜〜……!
俺とアリシアさんの関係は悟られていなかった。
ヒヤヒヤしたぜ。
このままバレて尋問からの集団凌辱が起きるかと思った。
『起きるわけねえだろ……』
うおっ闇!?
「ふふ、そう言ってくるだろうと思った。五年も付き合いがあると、まあ、あまり言いたくないようなことも出来るものなんだ」
「それで、ちょうどいいから俺を利用しようってことだな」
「そうなる。無論、タダでとは言わない。どうだい?」
「いいぞ。アリシアさんにはアリアも世話になっただろうし、恩人が辛そうなまま放置はしておきたくない」
原因は多分俺だしな……。
そんなに辛いなら言ってくれりゃいいのに。
嫌がる女性に無理強いするようなことはしたくない。なんだかんだノリノリだから俺も調子に乗ってただけで、本当に嫌なら謝らないと。
アリシアさんは俺の心を救ってくれた一人だ。
もし本当に無理だってんなら、ちゃんと謝って関係も清算したい。
「助かるよ。……それで、フィンの用事は?」
「ん、ああ。……急ぎじゃないし、また今度でも構わないか? また来る理由にもなる」
「おや、理由がないと来てくれないのかい?」
「来てもいいのか?」
「当たり前じゃんね! 毎日来てよ! 私のご飯食べさせてあげるから!」
「いや、飯は普通に師匠に作ってもらいたいが……」
「……ひん」
だって師匠の飯うまいし。
アリシアさんもそっちの方が嬉しいと思う。
「冗談だ。ありがとな、アリア。気持ちだけで嬉しいよ」
「うっ、えへへ。うん」
にへらと顔をだらしなく溶かしたアリアの頭を撫でつつ考える。
合法的にアリシアさんに近付く理由はできたが、そんなに負担になっているとは……
あんなに二人きりになったらノリノリなのに……
ちゃんと嫌なら嫌って拒絶してくれりゃあいいのに。
そんなことで目くじら立てたりするほど心が狭いわけではない。
勢いでやっちまったのは、俺に責任がある。
ちゃんと話し合わないとな。
カルラの一件も含めて。