明けましておめでとうございます。
書き続けてまいりますのでどうぞよろしくお願い致しますm(__)m
「嘘だろ……」
精霊と出会った翌日の学校。
士道は渡された紙を呆然と見つめていた。
その紙は何日か前に行われた数学の小テスト。…あまりにも丸の数が少なかった。人に言えるような点数でもない。
しかも、赤点をとったら補習授業。
(あり得ない…俺は馬鹿じゃないのに…)
最近精霊の件で立て込んでいたからだろうか。いや、そんなものは言い訳にならない。
(帰ったらしっかり勉強しないと……)
授業終了後、はぁ、とため息をついたところで、数学の教師が士道を呼んだ。
「五河、ちょっと来なさい」
「え?はい」
テストの事だろうか。最近著しく低下し始めた成績について何かを言われると思った。
「どうした、そんなに身構えて」
「いえ……。何の用でしょう?」
「あぁ、そうだった。実はな、3年のクラスに新しい転校生が来るんだ。その転校生は放課後に来て、手続きをするんだが、校長室までの案内とかを頼めないか?」
「えぇ?何故俺が?」
「…お前、最近成績下がってるだろ。これは内緒だがな、先生は誠意を見せてくれたら何かしら理由をつけて単位をあげてるんだ。やってくれたら今回の補習授業見逃し「是非やらせてくださいお願いします」
それじゃあ、頼んだよ。と、教師は笑って教室を出ていった。
(それにしても、転校生か……。なんだか、転校生とかは何回もあったから驚きも薄れてきたな…)
★★★★★★★
〈フラクシナス〉
「副司令!上からの連絡が届きました」
慌ただしく、〈社長サン〉こと幹本が神無月の元へやって来た。
「ご苦労様です。それで?」
「はい。精霊は初現界のようですね。上は先日の精霊を〈オーディン〉と名付けたようです。それと、〈オーディン〉を捉えたテープも一緒に届きました」
「〈オーディン〉…。やはり〈フェンリル〉とは違ったようですね。…テープはいつでも再生出来るようにしてください。あと、司令に連絡をお願いします」
「了解です」
(初現界の精霊。それに情報もあまり無い…。今回の攻略は難しそうですね………)
★★★★★★
〈来禅学園放課後〉
(う、わ………)
転校生がやって来るであろう職員玄関の前にいると、現れたのは長身で、来禅の制服に身を包んだ男子生徒だった。
何よりの特徴はその整った顔立ち。モデルやアイドルにも負けてはいない。思わず、男である士道でさえ見惚れてしまうほどに。
「こんにちは」
「あっ……。こ、こんにちは」
「転校生の春野尊(はるのたける)です。君が案内役の人?」
「はい、五河士道です」
「よろしく」
「よろしくお願いします」
顔だけじゃなく声まで綺麗な転校生――尊と士道は校長室へつづく廊下を歩き始めた。
尊は、後輩あっても気軽に話しかけてくれるフレンドリーな性格のようで、士道はすぐに心を開いた。それどころか、興味本意で話しかけてきたその他の生徒とも簡単に打ち解け、すぐに友人が出来てしまっていたし、通りすがった女子生徒何人かが尊を見て黄色い歓声をあげていた。
「…先輩スゴいですね」
「なにが?」
「なんて言うか…コミュニケーション能力っていうか…世渡り上手ですか」
「褒めてるの?ソレ」
「褒めてますよ」
尊と士道はクスクスと笑う。何分か談笑をしていると、校長室が見えてきた。
「着きました。校長室です」
「ありがとう。ねぇ、五河くん。良かったら学校案内もしてくれないかな?もちろん、時間があるときに」
「あ、もちろんです!ではまた」
「うん。じゃあね」
そうして士道は尊と別れると、十香が待っているであろう校門へと走った。
「イツカシドウ……ね」
―――
「士道、十香。お帰り」
家へ帰ると、琴里が出迎えた。
「ただいまだ、琴里!」
「今日はどうしたの?」
「今日はだな!シドーの夕飯作りを手伝う約束をしていたのだ。フフン、楽しみにしておくといい」
「そう。期待してるわ。士道、ちょっとこっちへ来て」
琴里は手招きをして士道を呼んだ。士道は十香に料理の準備をしておいてくれと頼み、琴里の方へ行く。
「この間の精霊だけど、やっぱり〈フェンリル〉とは違ったみたいね。彼女は〈オーディン〉と名付けられたわ」
「〈オーディン〉、か」
「次の課題よ。『もう一人の私を見付けなさい』、この意味を解明しなくちゃ…」
そう。〈オーディン〉ことスプリングが最後に言った言葉。この意味が分からなければ彼女を救うことは出来ない。
それに謎も多く残る。
「なぁ、ソレじゃあ〈オーディン〉…スプリングは『もう一人の私』をみつけるまで現界しないってことじゃないか?精霊は自分の意思と関係なく現界するんだろ?」
「そこよ」
琴里は士道の質問に、チュッパチャプスを突き付ける。
「もしかしたら〈オーディン〉は自分の意思で現界することができるのかもしれないわね。『もう一人の私』を見付けることができたら、彼女は現界する」
「自分の意思で…?空間震が起きてしまうことも承知の上でか?」
「わからないわ、とにかく『私』を見付けることができるまで何とも言えない状況よ…。何かヒントでもあればいいのだけれど」
二人の間に沈黙が下りる。
あまりにも謎が多い。
もしかしたら、もう会う気すら無いのかもしれない。
マイナスへと進む思考を打ち切ったのは、台所にいた十香だった。
「シドー!終わったぞ!」
「!あぁ、今行くよ!」
なぁ、スプリング…。お前は一体何を考えているんだ?
俺には、お前が分からないよ……
★★★★★★★
〈とあるマンションの一室〉
「ただいま。姉さん、大和」
学校で手続きを終えた尊は帰ってくると、部屋に飾ってあった、写真に向かって言った。
「今日も…ちゃんと笑えてたかな?」
悲しげに。
「いい子で…いれたかな?」
寂しげに。
「……………………」
あぁ、ダメだ。
あの日の事を、思い出してはいけない。
泣いてはいけない。
「僕は…強くなくちゃ…いけないんだ…」
そうだ。僕は…僕は………
(お前は弱いだろう)
突然として聞こえた何かの声。あの日から続く、自分を貶めようとしてくる声。
無視しろ、気にするな。すぐに聞こえなくなる。
(笑えてた?いい子だった?強くなくちゃ?どの口が言うんだ。お前は悪い子だったじゃないか。あの日だってそうだ。お前が―――)
「っ!黙れぇ!!」
(気にくわないなら壊してしまえ。殺してしまえ。何もかも全部壊してしまえばいい。そうしたら解放される)
「ふざけるな……二度とお前なんかの口車にのってたまるか!もう…もうあんな事には…」
(どうせ耐えられやしない。お前は――)
「黙れ黙れ黙れ黙れえぇええええッッッ!!!」
頭をかきむしる。
その拍子に写真が落ちて、ガラスが割れる音がした。
(―――――――――………)
「はぁっ…!はぁっ………。………………………」
静かな沈黙が訪れ、聞こえるのは時計の針の音だけ。
床に座り込み、割れてしまった写真へ目を向ける。
写っているのは、花園の中で笑う二人の少年少女。
それは、この世から消えてしまった大切な兄弟。
「大丈夫……。僕は…強くなるから…」
瞼を閉じ、自分に笑いかけてくれる兄弟たちに向かって、静かに呟いた。
はい、尊くん登場。
彼はどんな存在なんでしょうね?
さぁ、次は登場していないあの精霊を登場させていきたいと思っております。
次回もどうぞよろしくお願い致します。