今回はこのキャラが登場です!!
〈七罪の部屋〉
「うー…」
昼下がり、七罪はソファに寝そべりながらうめき声を上げる。
理由は、士道の事である。最近は何か悩み事があるようで、上の空だったり、時々悲しそうな顔をしていたのを、四糸乃と共に見ていた。
不思議に思って昨日、士道の家付近で待ち伏せし、いざ話しかけようと勇気を出して士道の名前を呼んだのだが…。気づかなかったようで、そのまま家に入ってしまったのである。
「うぅうううう~」
(気づかなかった、のよね…)
(無視……とかじゃないよね……)
え?ウソ、無視された?でも士道が…いやもしかしたら「お前みたいなブスに話しかけられたくねーんだよ」とか思われてたら?でも士道だし…いやいやいやいやでも
ピンポーン
「うわきゃあっ!?」
突然としてチャイムが鳴ったので、驚いて飛び起きた。
この時間に訪ねてくるのはただ一人。
七罪は玄関に向かい、ドアを開けた。
「こんにちは……七罪さん」
立っていたのは可愛らしいワンピース姿の四糸乃。
「こ、こんにちは……。何の、用?」
「遊びに来ました……。迷惑でしたか…?」
「そんなこと、ないけど。あ、あああ上がる?」
「はいっ……!」
ーーーーー
「何飲む?お茶とか、ジュースあるけど…」
「ジュースで…お願いします」
「ん」
七罪は二人分のコップにオレンジジュースを注ぎ、お盆に乗せて運ぶ。
「ど、どうぞ」
「ありがとうございます…」
それきり沈黙が続く。四糸乃とはよく遊んだりしてるのだが、話しかけようにも何を話したら良いのか分からず、結局、沈黙してしまうというのがよくあった。
そういうときは大体…
『何して遊ぶ~?こないだのDVD の続き観ちゃう?』
四糸乃の左手に着いているパペットのよしのんが話題を振ってくれる。
ちなみに、こないだのDVDとは前によしのんが観たいと言っていたホラー映画の事である。つい先日、一緒に見たのだが…
「絶対にいや!!」
「わ、私も……っ!あれはもう無理……!」
そう、あの映画はあまりの恐怖に七罪の手は自然とリモコンの電源ボタンを押していた。
もう二度とあんなモノは見ない。そう心に誓っていたため、全力で拒否。
『じゃー何する?あ!そうだ七罪ちゃん聞いてよー!うちの四糸乃ったらね、昨日士道くんの部屋に泊まったんだ~♪』
「へ?」
「よしのんッ…!?な、ナイショって言ったのに……!」
『あれ、そうだったっけ?』
唖然とした。この大人しくて控えめな女の子である四糸乃が、士道の部屋に泊まったなどと…。
『言っちゃいなよ四糸乃~。士道くんと過ごしたあのあつーい夜のは・な・し』
「熱い夜っ!?」
「ち!違います七罪さん…!!それはよしのんがッ…!わ、私はただ、士道さんの所に行って、さ、最近悩んでたから…それで…それで…あううぅうう……」
四糸乃の反応をみてようやく分かった。恐らく、士道の悩みを聞きたいが、中々聞けないでいる四糸乃に、よしのんが何か吹き込んだのだろう。
『なによぅ四糸乃。抱きついてたくせに~♪』
「抱きつく!!?」
「よしのんっ」
『そうだよー!四糸乃ったら大胆にぎゅむぐぁ』
よしのんの口を四糸乃が塞ぐ。それどころか、持ってきていたカバンからガムテープを出したかと思うと、それをよしのんの口に張り付けた。
『んー!んー!』
「ね、ねぇ…よしのん苦しそうだけど…?」
「こ、琴里さんが…、困ったときはこうしろって……」
「剥がしてあげたら…?その…。可哀想だし」
「そうですよね…ごめんねよしのん…」
『ぷっはぁ!!死ぬかと思ったよ…。琴里ちゃんてば怖いこと教えるねー』
「…………で?」
「はい…?」
キョトン、と。四糸乃は七罪に顔を向けてくる。
「泊まったって…。何」
「あ、あのッ……あ!精霊さんのことで、悩んでたみたいで…」
その後、何分間か問い詰めたが、中々口を割らず、結局何気ない会話をして四糸乃と別れた。
「うぅうううう…」
四糸乃が帰ったあと、また七罪は悶々とした気持ちになる。
そうだ、また士道の部屋に…いやいや、さすがにそんな事…。大人に変身すればいける…いやいやいやいや…。何これ何これ何か落ち着かない…!胸のなかがムズムズする…!
そんなこんなでウジウジしていると、また玄関からチャイムが鳴り響いた。
もしかして四糸乃が忘れ物でもしたのだろうか。そう思って、先ほどまで四糸乃が座っていたリビングへと目を向ける。だがそこには四糸乃のものは何もない。
もしかして、士道…?
そうかもしれない。とたんに胸が熱くなる。
急いで玄関へ駆けようとした、その時。
「なるほど…対精霊用マンションとは聞いてたけど、確かに素晴らしい技術…。防音もきちんとされてるし、ある程度の攻撃には耐えられる作りになってる…。」
「!?」
背後から急に声がして振り向く。
そこには、とても大人びた少女が立っていた。
腰まで伸びた美しい黒髪。前髪の真ん中が顔に垂れ下がっている。
何とも異様なのは身に纏っているものだ。
黒い甲冑。右手に槍。左手に頭につける仮面。
「な…」
七罪は一瞬で理解した。こいつは人間ではない。精霊だと。
「何で…どうやって、入ってきたの…?あんたは誰!」
少女はゆっくりと顔を七罪の方へ向けてきた。
そして薄く笑う。
「あぁ、ごめんなさい。インターフォンを鳴らしても出なかったから居ないのかと思ったわ。…入ってきたのは情報収集。いずれ敵になるかもしれない奴等の事をなにも知らないのはまずいから」
「敵…?」
「あなたは知らなくていいことよ。さて…ここがどういうのかも分かったし、もう行くわ。さよなら」
「え、ちょっと…ま、待って!!」
勝手に人の家に上がり込んだというのに帰ろうと玄関に向かう少女を慌てて引き止めようとする。
たが。
「〈ウィンター〉。お願い」
「え」
彼女がその言葉を発したとたん、七罪の視界は真っ暗に染まった。
★★★★★★
「七罪!七罪!」
「あれ?」
目が覚めると、どういうわけか、目の前に士道の顔があった。
「え…?」
「良かった…起きた…!大丈夫か?具合悪かったのか?」
「え?え?どういうこと?」
「どういうこと?って…。七罪、お前玄関で倒れてたんだぞ。覚えてないのか?」
倒れた、のだろうか。でも頭も痛くなければお腹だって痛くない。目眩も吐き気もない。
それ以前に、倒れる前の記憶がない。
「七罪?」
「私、倒れてたの?」
「あぁ。体は何ともないのか?」
「うん…別に…」
「そうか、でも一応〈フラクシナス〉で診てもらおう。」
「え?!い、いや!!」
「ダメだ、何かあってからじゃ遅いんだぞ」
あぁ、士道がお母さんの目になっている…。
でもあそこの検査はもう嫌だ。前回うんざりするほどやられたというのに、またしてもやらなければいけないのかと考えると寒気がする。
「ほら、行くぞ」
「あー!頭痛い!動けない!あー!これダメだなー!ベッドで大人しくしてないと治りそうにないなー!(棒読み)」
明らかにわざとらしかったが、仕方ない。何とかして検査だけは避けなくては。
「………………」
士道の冷ややかな視線が飛んでくる。
ばれている。ウソだとばれている。
ダメだ。もう検査は確定だ…。
絶望した、その時。
「じゃあ、しょうがないな…。俺の家に来い」
「え?」
何がどうなって俺の家に来いなのだろうか。訳がわからない。
「俺の家に泊まって、1日様子を見よう」
「は?いや、別にここで」
「ダメだ」
七罪の言葉を遮って言う。
「何かあったとき、すぐ対応できないだろ。いいから、来い」
士道は真剣に、七罪に言ってくる。そんな士道に、七罪は
「わかっ、た…」
思わず、そう答えていた。
★★★★★★
〈五河家〉
「お邪魔します…」
「おう。もう遅いから、すぐ寝たらいい。2階行くぞ」
(遅い?)
チラリとリビングから見える時計に目をやると、すでに12時だった。
「七罪、何してるんだ?」
「何でもない…!ていうか、あの…」
「ん?」
「お腹、すいた……」
七罪お腹が、可愛らしい音をたてて鳴った。
続きますよ。えぇ続きますよ。
次回は「対抗心2」です。
ぼちぼちあのキャラも出したいなー、と考えているので、よろしくお願いいたします。