エラン「逃げよう、ここから。」
アインとファラが死んだ日の夜、エランは皆を集めてそう言った。
プル「…。」
ルガ「逃げる…?そんなことができるのか?あのマダムから…?」
ルガは疑問を口にする。それは、皆が思っていることだった。
フォウ「…それに、ファラの言葉だってある。外に出ても、薬で死んでしまうんじゃないの?私は反対よ。」
ファラ『ベアトリーチェに改造された奴の中には、奴に投薬された奴らもいる。…今奴を殺したら、薬の在処や治療法が分からなくなって、禁断症状で死ぬ奴らが出る。』
ステラ「し、死ぬ…!?」
ファラが言ったことは、的を射ている。
実際、ルガ、クロト、シャニ、テグ、アウル、ステラの6人は、過剰なまでの投薬をされている。
プル「…でも、このままじゃマダムに殺されるよ。」
フォウ「…!」
ルガ「…ああ、そうだな。」
アウル「…どうせなら、僕は外を見てから死にたいよ。」
ステラ「…わ、私も死にたくない!」
クロト「僕もマダムの毒牙で死ぬのはごめんだね!」
シャニ「ああ、俺もだ。」
テグ「俺達は投薬されちゃいるが、しばらくの間なら動ける。俺達が出られなくても、仲間が出られるならそれでいい。」
フォウ「あなた達…!」
ロザ「…ねぇ、フォウお姉ちゃん。もういいんじゃない?」
フォウ「ロザ…!」
ロザ「マダムは私達を生かすつもりは無いよ。ファラお姉ちゃん達のことを考えたら分かるでしょ?」
フォウ「…でも…!」
ゾル「…俺達は元々は違う所の奴らだ。…しかし、皆の願いは一緒、「自由が欲しい」そうだろ?
だったら、一人でもその願いを叶えてくれるなら、俺は乗るぜ。」
フォウ「…はぁ、分かったわ。皆、覚悟は出来てるのよね?」
全員が、首を縦に振る。それは、その作戦に乗る、という意思標示であった。
エラン『作戦はこうだ。僕がバシリカを破壊し、その混乱に合わせて全員がカタコンベに向かう。もし爆発が無くても、時間になったら皆でカタコンベに向かってくれ。
僕もすぐに合流する。皆、また後で。』
エランは立てた作戦通り、バシリカの近くに接近していた。
エラン「…ここで爆発させれば…っ!」
物音。その方向を覗き込むと、マダムと見知らぬ大人がいた。
その後ろには、なにか巨大な物がある。
ベアトリーチェ「なるほど、これがそのⅡネオジオングですか。」
デカルコマニー「そういうこった!」
ゴルゴンダ「ええ。まだ未完成ですがね。後はジャック機能をテストして…」
エラン(…なんだ、あれは…?)
ベアトリーチェ「…そこ、誰か見ていますね、出てきなさい!」
エラン「しまっ……!」
ゴルゴンダ「彼女は?」
ベアトリーチェ「伝えたロイヤルブラッドの実験台の一人です。…ああ、なるほど。大体察しがつきました。」
ゴルゴンダ「?」
ベアトリーチェ「ゴルゴンダ、あなたのテスト、できるかもしれませんよ。」
時間になった。しかし、爆発はまだない。
プル「エラン…」
フォウ「…時間ね、皆、行きましょう。」
ゾル「!エランを置いていくのか!?」
フォウ「エランの言葉を忘れたの?…私だって助けに行きたいわよ…」
ルガ「…とにかく行こう。それが、エランの望みだから…」
ゾル「…ああ、分かっ……っつ!?」
その時、ゾルは違和感を覚えた。自分が自分で無くなるような、そんな感覚。
プル「ゾルタン?どうしたの…?」
ゾル「ぐっ!来るな!これはきっとマダムの…!」
ステラ「ゾルタン!?」
ゾル「離れ……
目が覚める。死体。死体。死体。
ゾル「…は?」
プル「ゾルタン、元に戻ったんだね…良かった…。」
プルは倒れ込む。ゾルの手には、血の着いた1本のナイフ。
ゾル「あ…?」
ゾルはそれを見て、理解した。いや、理解してしまった。
ゾル「
フォウ「ゾル…」
フォウを。
ロザ「見つけた…お姉ちゃん…!」
ロザを。
ルガ「クソッ……!」
ルガを。
クロト「僕は…僕はねぇ…?」
クロトを。
シャニ「うわぁぁぁぁああ!!!」
シャニを。
テグ「馬鹿な…」
テグを。
アウル「母さん…」
アウルを。
ステラ「皆、好き…」
ステラを。
ゾル「あ、あああ、ああああ……!」
プル「…。」
プルを。
ゾル「▓▓▓▓▓▓▓▓▓ッ!!!!!!」
言葉にならない叫び。叫んでみても、戻ってくるのは、悲しい現実。
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エラン「………ぐぅっ……!」
ベアトリーチェ「おや、目が覚めましたか。」
エランは拘束されている。
エラン「…マダム。」
ベアトリーチェ「ええ。よくも私から逃げようと思ったものです。しかし、これではっきりしましたね。」
エラン「…?」
ベアトリーチェ「実験台は一人でいい。無駄な反抗を防ぐためにもね。」
エラン「…まさか。」
ベアトリーチェ「ええ。ロイヤルブラッド実験台は、丹内ゾルを除いて処分しました。あとはあなただけです。」
エランの頭上に光が灯る。
エラン「…最後に一つ、いいですか?」
ベアトリーチェ「いいでしょう。冥土の土産に、なんでも答えましょう。」
エラン「…今日は、何日ですか?」
ベアトリーチェ「?2月9日ですが、それが何か?」
エラン「そうですか…それは、良かった。」
ベアトリーチェ「…何故ですか?」
エラン「…今日は、あの子、ゾルタンの
誕生日ですから。」
ベアトリーチェは装置のスイッチを入れる。
…happy Birthday to you…
…happy Birthday Dear ゾルタン…
…happy Birthday to you.…」