19話
ポルタパシス内部。
先生達はスバルに連れられ、内部を歩いていた。
スバル「正直驚きです。まさか先生がここまでやってくるとは。黙っていなくなる生徒など放っておけばいいのに。」
“生徒は、学園に通って勉強するから生徒なんだと思うよ。”
スバル「ですがそれは先生の基準。私たちの意思を無視して、トリニティのやり方を押し付けるつもりなのですか?」
“……。”
スバル「そんなことはない、とでも言いたそうですね。分かりますよ。今の私は、アリウス分校のことなら。
さて。話は変わりますが、アリウス分校。この呼び方はあまり好きではありません。どこかに属しているようでしょう?
一つ質問があります。
…エデン条約、スクワッドが裏切ったあの日。
マダムが死んだ、いえ殺されたあの日。
ゾルの暴走によって、アリウス生の将来が閉ざされたあの日。
なぜ貴方は、私たちに手を差し伸べてくれなかったのです?」
先生は事情を話す。
スバル「なるほど。ティーパーティーの臨時代表。…まさかアレらを信じるとは。全く、お人好しですね。
ともあれ、そういうことでしたら、貴方に責任はないでしょう。
どちらにせよ、アリウスは地獄でしたが。」
“………。”
スバル「あなたは、少々人を信じすぎます。事実、先生は見落としていた。
アリウスから出た子供が、どのような扱いを受けたか。
勇気を振り絞った先に、何を見せられたのか。
アリウスの生き方に頼るしかなくなってしまったのか。
あなたは見落としたんです。トリニティの上層部を信じて。アリウスを。」
“……。”
スバル「全ての現在は過去の上にあります。過去は関係ないという意見は全くの間違いです。
現に今、私たちは過去に囚われているのですから。
過去の恩恵を受けるのに、罰を拒むのは成り立ちません。
アリウスからすれば、それは傲慢です。
あの日、先生はトリニティのやり方を尊重し、アリウスには干渉しなかった。そんな先生を、私は許せません。罪も無いのに、許すも何もありませんから。
ですが、その分アリウスのやり方を認めてください。
まさか、トリニティのやり方だけを認める…なんて言わないでしょうね?」
“………。”
スバル「アリウスにはアリウスの生き方があります。だからどうか、スクワッドを連れてアリウスから立ち去ってください。
黙示録の…ラッパ吹きの天使は、私が対処出来ます。」
“ラッパ吹きの天使…!”
スバル「なるほど。さすがです。生徒のこととなれば察しがいい。であるなら…私たちの願いも尊重してください。
お帰りはあちらです。もう二度とこの地を訪れることのないように。…今まで、お疲れ様でした。」
スバルは歩を進める。
サオリ「待てスバル。」
サオリが口を開く。
サオリ「アリウスのやり方、と言っていたな。」
スバル「何か言い残したことでも?」
サオリ「…お前の言うアリウスのやり方の先には、何が残る?」
スバル「……!」
サオリ「さっきの話を聴いてふと、思い出してな。」
スバル「…衰えましたね。過去にすがるとは。」
サオリ「私は学び、経験した通りにしか人と接すことができなかった。スクワッドは精鋭だったからな。訓練も厳しかったし、それでいいと思っていた。
──アリウスにいた頃まではな。」
スバル「それは、どういう…。」
サオリ「人は過去から学び、進む。お前の考えも、一概に間違いとは言えないだろう。
だが、望みのまま生きることも、人にはできる。…これは、アリウスを出てから学んだことだがな。」
スバル「だからなんです?」
サオリ「お前のやり方も正しいさ。道を迷った子供に、光を与える。それは、お前の生きる意志にもなっていた筈だ。
だが…その先に何がある?お前の言うアリウスのやり方で、何が残る?
…答えなくてもいい。私にも分かる。そこにあるのは、憎悪と怒りだ。それに意味はない。何も残らない。
…私も、お前と同じようになっていたかもしれない。誰のものかも知らない憎悪を、胸に抱き続ける。」
スバル「…このやり方が間違っていると…!?」
サオリ「正しいも間違っているもない。ただ…自分の知らない世界を知ってからでも、遅くはないのではないか?という話だ。
…底辺を這いずり回ったのは、私も同じだ。いや、きっとこのアリウスの全てがそうだろう。
だが。世界は醜いと認め、虚しいと認めながら。それでも決して諦めない人がいた。結局、絆されてしまったのかもしれない。」
サオリは横目で先生の方を向く。
サオリ「「それでも」。不利な状況でも、それでもと前を向く。この言葉にも、意味があると分かった。」
スバル「…あなただって大差ないでしょう!
コソコソ逃げ回るお尋ね者のくせに!!!」
サオリ「ああ。だからもうやめる。」
スバル「……はい?」
“………え!?”
サオリの元に、他のメンバーが集まる。
ミサキ「まあ、そういうこと。」
ヒヨリ「サオリ姉さんがそう決めたなら…。」
アツコ「こんな生活はずっと続けられるものじゃないからね。」
“皆、本当に大丈夫なの…?”
四人は頷く。
サオリ「ああ。この一件が終われば、私たちは自首する。」
スバル「忘れたんですか?あなた達はテロリストです。どれほどの刑に処されるか…。」
サオリ「自分でやったことのケジメは、自分でつける。
これ以上自分から逃げるのは嫌なんだ。
他のアリウス生の刑も、私が請け負う。だからお前も──」
スバル『何が言いたいの、錠前サオリ。』
サオリ「……何?」
スバルの雰囲気が変わる。恐ろしいものに。
スバル『いや、答えなくていい。見え透いてるから。
自首する?逃げたくない?今さら善人ぶるつもり?
世界を憐れんで、全てを諦観するつもり?』
スバルの拳に力が籠もる。
スバル『お前が世界の全てを知り尽くしたとでも?そんな風に分かったような顔をして、アリウスを見下すな。トリニティの連中と同じだ…!!
ふざけるのも大概にして!!!
目がついているならアリウスを見ろ!お前が出ていった時から、変わらない、いやもっと酷くなった!!
お前に…マダムがいなくなったアリウスのことなど何が分かる!お前達も先生と同じだ!!ここを守ってきたのは私達だ!
お前らは全部捨てて逃げたくせに!!」
サオリ「落ち着け!私はそんなつもりではない!ただ…」
サオリは回想する。外の世界。アズサ。警句。そして先生。
サオリ「ただ──自分の人生が惜しいと思うようになっただけだ。」
スバルはそれを耳にした。
─────────────────
そんな風に 言うな。
裏切って 逃げ出したくせに、
どうして そんなことを言うの。
人生が惜しい?
なら、私達アリウスは?
この巣を守ろうとした私は?
スバル「過去は!決して消えやしない!!」
サオリ「スバル!?」
スバル「過去はいつまでも残る!過去が現在を証明している!
ここが!ポルタパシスが!アリウスの歴史が、私そのものなんだ!自分が終われば世界が終わる!自分こそ世界そのものだ!
…誰も、人生の責任は取ってくれない。だから私は、子どもたちから不安を取り除いた!!
どんなことがあっても、ちゃんと生き抜けるように!」
スバルの雰囲気が再び豹変する。
スバル『あなたは間違っていましたよマダム。でも遺した全てが間違いだったわけじゃない。
丹内ゾル。お前のやったことも、今となっては理解できる。
意味のないことは起こらない。出来事は、起きることで意味を得る。だから意味のない苦しみも存在しない。意味のない過去が無いように。』
スバルの周りが歪む。それはまるで、スバルの在り方が変わっていくような。何かに塗り替えられるような。
スバル『……!!』
瞬間。スバルの姿が変わる。
サオリ「先生!私達の後ろへ!」
爆発。その爆煙の中にいたのは。
天使『……。』
黙示録の天使となった、スバルの姿。
ミサキ「リーダー、ちょっと煽りすぎたね。」
サオリ「私はそんなつもりじゃ…!」
アツコ「この話は後にしよっか。今は…。」
フォォォォオオオン…
第七の御使が吹き鳴らすラッパの音がする時。
地を滅ぼす者、偽りし者。
その名を汚す者どもを
ついに滅ばされる時が来ました。
アツコ「目の前のことから始めよう。」
アリウス旧校舎。
フォォォォオオオン…
アリウス生「今のってまさかラッパの…?」
アリウス生「!?昼なのに空が暗くなってきてる!?」
アリウス生「何が起こってるの…?」
フォォォォオオオン…
フォォォォオオオン…
アリウス市街。
アリウス生「いきなり夜になっちゃった、ってこと……!?」
アリウス生「経典にもそんなことが…!」
フォォォォオオオン…
フォォォォオオオン…
フォォォォオオオン…
ポルタパシス周辺
アリウス生「また…?」
アリウス生「これじゃ7回じゃなくて、14回になっちゃうよ?」
フォォォォオオオン…
オーガスタ聖堂
ナラティブ『……来てしまった。
???
イア「……来る!!」