ロイヤルブラッドの失敗作【完結】   作:セルビア

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過ぎ去りし刻のオラトリオ編 3章
19話


ポルタパシス内部。

先生達はスバルに連れられ、内部を歩いていた。

 

スバル「正直驚きです。まさか先生がここまでやってくるとは。黙っていなくなる生徒など放っておけばいいのに。」

 

“生徒は、学園に通って勉強するから生徒なんだと思うよ。”

 

スバル「ですがそれは先生の基準。私たちの意思を無視して、トリニティのやり方を押し付けるつもりなのですか?」

 

“……。”

 

スバル「そんなことはない、とでも言いたそうですね。分かりますよ。今の私は、アリウス分校のことなら。

さて。話は変わりますが、アリウス分校。この呼び方はあまり好きではありません。どこかに属しているようでしょう?

 

一つ質問があります。

…エデン条約、スクワッドが裏切ったあの日。

マダムが死んだ、いえ殺されたあの日。

ゾルの暴走によって、アリウス生の将来が閉ざされたあの日。

 

なぜ貴方は、私たちに手を差し伸べてくれなかったのです?」

 

 

 

 

 

 

 

先生は事情を話す。

 

スバル「なるほど。ティーパーティーの臨時代表。…まさかアレらを信じるとは。全く、お人好しですね。

ともあれ、そういうことでしたら、貴方に責任はないでしょう。

どちらにせよ、アリウスは地獄でしたが。」

 

“………。”

 

スバル「あなたは、少々人を信じすぎます。事実、先生は見落としていた。

アリウスから出た子供が、どのような扱いを受けたか。

勇気を振り絞った先に、何を見せられたのか。

アリウスの生き方に頼るしかなくなってしまったのか。

 

あなたは見落としたんです。トリニティの上層部を信じて。アリウスを。」

 

“……。”

 

スバル「全ての現在は過去の上にあります。過去は関係ないという意見は全くの間違いです。

現に今、私たちは過去に囚われているのですから。

過去の恩恵を受けるのに、罰を拒むのは成り立ちません。

アリウスからすれば、それは傲慢です。

 

あの日、先生はトリニティのやり方を尊重し、アリウスには干渉しなかった。そんな先生を、私は許せません。罪も無いのに、許すも何もありませんから。

ですが、その分アリウスのやり方を認めてください。

まさか、トリニティのやり方だけを認める…なんて言わないでしょうね?」

 

“………。”

 

スバル「アリウスにはアリウスの生き方があります。だからどうか、スクワッドを連れてアリウスから立ち去ってください。

黙示録の…ラッパ吹きの天使は、私が対処出来ます。」

 

“ラッパ吹きの天使…!”

 

スバル「なるほど。さすがです。生徒のこととなれば察しがいい。であるなら…私たちの願いも尊重してください。

お帰りはあちらです。もう二度とこの地を訪れることのないように。…今まで、お疲れ様でした。」

 

スバルは歩を進める。

 

 

 

サオリ「待てスバル。」

 

サオリが口を開く。

 

サオリ「アリウスのやり方、と言っていたな。」

 

スバル「何か言い残したことでも?」

 

サオリ「…お前の言うアリウスのやり方の先には、何が残る?」

 

スバル「……!」

 

サオリ「さっきの話を聴いてふと、思い出してな。」

 

スバル「…衰えましたね。過去にすがるとは。」

 

サオリ「私は学び、経験した通りにしか人と接すことができなかった。スクワッドは精鋭だったからな。訓練も厳しかったし、それでいいと思っていた。

──アリウスにいた頃まではな。」

 

スバル「それは、どういう…。」

 

サオリ「人は過去から学び、進む。お前の考えも、一概に間違いとは言えないだろう。

だが、望みのまま生きることも、人にはできる。…これは、アリウスを出てから学んだことだがな。」

 

スバル「だからなんです?」

 

サオリ「お前のやり方も正しいさ。道を迷った子供に、光を与える。それは、お前の生きる意志にもなっていた筈だ。

だが…その先に何がある?お前の言うアリウスのやり方で、何が残る?

 

…答えなくてもいい。私にも分かる。そこにあるのは、憎悪と怒りだ。それに意味はない。何も残らない。

…私も、お前と同じようになっていたかもしれない。誰のものかも知らない憎悪を、胸に抱き続ける。」

 

スバル「…このやり方が間違っていると…!?」

 

サオリ「正しいも間違っているもない。ただ…自分の知らない世界を知ってからでも、遅くはないのではないか?という話だ。

…底辺を這いずり回ったのは、私も同じだ。いや、きっとこのアリウスの全てがそうだろう。

だが。世界は醜いと認め、虚しいと認めながら。それでも決して諦めない人がいた。結局、絆されてしまったのかもしれない。」

 

サオリは横目で先生の方を向く。

 

サオリ「「それでも」。不利な状況でも、それでもと前を向く。この言葉にも、意味があると分かった。」

 

スバル「…あなただって大差ないでしょう!

コソコソ逃げ回るお尋ね者のくせに!!!」

 

サオリ「ああ。だからもうやめる。」

 

スバル「……はい?」

 

“………え!?”

 

サオリの元に、他のメンバーが集まる。

 

ミサキ「まあ、そういうこと。」

 

ヒヨリ「サオリ姉さんがそう決めたなら…。」

 

アツコ「こんな生活はずっと続けられるものじゃないからね。」

 

“皆、本当に大丈夫なの…?”

 

四人は頷く。

 

サオリ「ああ。この一件が終われば、私たちは自首する。」

 

スバル「忘れたんですか?あなた達はテロリストです。どれほどの刑に処されるか…。」

 

サオリ「自分でやったことのケジメは、自分でつける。

これ以上自分から逃げるのは嫌なんだ。

他のアリウス生の刑も、私が請け負う。だからお前も──」

 

 

 

 

 

 

スバル『何が言いたいの、錠前サオリ。

 

サオリ「……何?」

 

スバルの雰囲気が変わる。恐ろしいものに。

 

スバル『いや、答えなくていい。見え透いてるから。

自首する?逃げたくない?今さら善人ぶるつもり?

世界を憐れんで、全てを諦観するつもり?』

 

スバルの拳に力が籠もる。

 

スバル『お前が世界の全てを知り尽くしたとでも?そんな風に分かったような顔をして、アリウスを見下すな。トリニティの連中と同じだ…!!

ふざけるのも大概にして!!!

目がついているならアリウスを見ろ!お前が出ていった時から、変わらない、いやもっと酷くなった!!

お前に…マダムがいなくなったアリウスのことなど何が分かる!お前達も先生と同じだ!!ここを守ってきたのは私達だ!

お前らは全部捨てて逃げたくせに!!」

 

サオリ「落ち着け!私はそんなつもりではない!ただ…」

 

サオリは回想する。外の世界。アズサ。警句。そして先生。

 

サオリ「ただ──自分の人生が惜しいと思うようになっただけだ。」

 

スバルはそれを耳にした。

 

 

 

 

─────────────────

そんな風に 言うな。

裏切って 逃げ出したくせに、

どうして そんなことを言うの。

 

人生が惜しい?

なら、私達アリウスは?

 

 

この巣を守ろうとした私は?

 

スバル「過去は!決して消えやしない!!」

 

サオリ「スバル!?」

 

スバル「過去はいつまでも残る!過去が現在を証明している!

ここが!ポルタパシスが!アリウスの歴史が、私そのものなんだ!自分が終われば世界が終わる!自分こそ世界そのものだ!

…誰も、人生の責任は取ってくれない。だから私は、子どもたちから不安を取り除いた!!

どんなことがあっても、ちゃんと生き抜けるように!」

 

スバルの雰囲気が再び豹変する。

 

スバル『あなたは間違っていましたよマダム。でも遺した全てが間違いだったわけじゃない。

丹内ゾル。お前のやったことも、今となっては理解できる。

意味のないことは起こらない。出来事は、起きることで意味を得る。だから意味のない苦しみも存在しない。意味のない過去が無いように。』

 

 

 

スバルの周りが歪む。それはまるで、スバルの在り方が変わっていくような。何かに塗り替えられるような。

 

スバル『……!!』

 

 

瞬間。スバルの姿が変わる。

 

サオリ「先生!私達の後ろへ!」

 

 

 

 

 

爆発。その爆煙の中にいたのは。

 

 

 

 

天使『……。』

 

黙示録の天使となった、スバルの姿。

 

ミサキ「リーダー、ちょっと煽りすぎたね。」

 

サオリ「私はそんなつもりじゃ…!」

 

アツコ「この話は後にしよっか。今は…。」

 

 

フォォォォオオオン…

 

第七の御使が吹き鳴らすラッパの音がする時。

地を滅ぼす者、偽りし者。

その名を汚す者どもを

ついに滅ばされる時が来ました。

 

アツコ「目の前のことから始めよう。」

 

 

 

 

 

 

 

アリウス旧校舎。

フォォォォオオオン…

 

アリウス生「今のってまさかラッパの…?」

 

アリウス生「!?昼なのに空が暗くなってきてる!?」

 

アリウス生「何が起こってるの…?」

 

フォォォォオオオン…

フォォォォオオオン…

 

アリウス市街。

 

アリウス生「いきなり夜になっちゃった、ってこと……!?」

 

アリウス生「経典にもそんなことが…!」

 

フォォォォオオオン…

フォォォォオオオン…

フォォォォオオオン…

 

 

ポルタパシス周辺

アリウス生「また…?」

 

アリウス生「これじゃ7回じゃなくて、14回になっちゃうよ?」

 

 

 

フォォォォオオオン…

 

 

 

オーガスタ聖堂

ナラティブ『……来てしまった。()()()()()()()()()()()()()()()()。』

 

 

 

 

???

イア「……来る!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異常を検知しました。

異常を検知しました。

 

14回目のラッパを確認

審判者に異常ありと判定。

コード149『聖霊のバプテスマ』発令。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エンジェル・ハイロゥを起動します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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