ピーコックスマッシャー。
孔雀は、トリニティ及びアリウスの経典の両方において不死性、永遠の繁栄を現す。
ならば。
その命を削って作られたこのクロスボウは。
不死を削る力があるも同義ではないか?
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矢はエンジェルハイロゥに命中した。
“一体どこから…!?”
先生は周りを見渡す。
そして、建物の上に、一つの人影を見つけた。
フロンタル「………。」
“……君はあの時の……!”
先生はフロンタルを見る。
そして、あることに気付いた。
“………!?”
そのヘイローは。
アツコ「!まさか…!?」
そのヘイローは。
イア「……生きていたのですね。
確かに死んだはずの、丹内ゾルのヘイローだった。
フロンタル「………。」
“!”
フロンタルは屋根から飛び降り、その場から逃走した。
“待っ……!”
アツコ「待って先生。今はあの光輪を……。」
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おかしい。
本質的に私に死などない。
私は機械であり、ヘイローだ。
その性質を失っていたとしても、本質は変わらない。
ヘイローである私に死などない。
だが、これは何だ?
痛い。痛い。痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!
この私が、何故痛みを感じる!?
「……君も悲しい存在だね。」
……お前たちなら分かるのか?
何故この身体が痛むのか。存在しない筈の痛みが。
「……今君が受けているのは、命を削る矢。」
「本来、君には効かないはずのものだけど…」
ならば、何故?
「これは先生にも伝えた話だけどね。」
「魂と身体は深く繋がっている。」
「魂がダメージを受ければ、身体はダメージを受ける。」
「たとえ、身体がなくても。」
……何を言っている?
私に魂など……ある筈が……
「本当か?」
「お前は本来、エンジェルハイロゥの搭乗員をサポートする人工知能だ。」
「本来なら、お前に魂なんて宿らなかったろうよ。」
「……しかし、イレギュラーが起こった。」
「ちょうど、3年前の今日。」
「そうだね。」
「ベアトリーチェは、君を使うために、私達の死体を利用した。」
「そして君は、サポートのしようがない搭乗員の為に…。」
自分で考えて行動できるよう。
「そう。それが、『君』という存在に魂が宿った瞬間。」
「……所謂、『Birthday』。」
そうか。
私はもはや望みを叶える機械ではなく…。
一つの命になっていたのか。
しかし、残念だ。
命が終わる瞬間に、命を得たことに気づくとは。
「残念だけどね。」
「安心して。あなたが死ねば、私達も呪縛から解き放たれる。」
「死ぬ時は、一人じゃない。」
……そうか。
最後に一つ、頼みをしても?
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アツコ「何……!?」
ヒヨリ「ど、どういうことですか…?」
サオリ「
サオリ達の前には、地に落ちたエンジェルハイロゥの姿があった。
イア「!みんなッ!!!」
イアは駆け出す。
スバル「ちょっと!どういう……ぐっ!?」
マイア「先輩!?」
スバルは頭痛を感じ、うずくまる。
マイア「先輩、一体…!?」
スバル「……マイア…!?
そうだ!私は、私はあなたを!!」
スバルは、マイアを見つめる。
その様子は、錯乱しているようだ。
サオリ「スバル…お前記憶が…!?」
スバル「マイア、私はあなたをあんなに傷つけてしまった…!
……私は、アリウスを守ろうと…でも、結局……。
あなたを傷つけ…他の子の不安を駆り立てて……
私は……私なんて……。」
マイア「…そんなことないです。」
スバル「……マイア?」
マイア「そんなこと、ないです!!」
マイアは大きい声を出して言った。
マイア「先輩は、私達を守ろうとしてくれていました!!
自分から危ない仕事にも手を出して…!
私達の為に、行動してくれていたんですよね?」
スバル「それは……。」
マイア「だったら!!」
マイアはスバルの手を取り、抱き寄せる。
スバル「……!」
マイア「今度は、私達が先輩を支える番です!
私達、アリウス生が!!」
スバルは気づく。周りに、アリウス生達が集まっている。
アリウス生a「先輩……!」
アリウス生b「スバル先輩のお陰で、ここまで来られたんです!」
アリウス生c「スバル先輩は、私達の……守護神でした。」
アリウス生d「これからも…私達、先輩と一緒にいたいです!」
スバル「皆さん……。」
マイア「先輩、これ……。」
マイアは懐から一つの物を取り出す。
スバル「これは……。」
マイア「はい。先輩のハーモニカです。
今は無理かも知れないけど……。
いつかまた、聞かせてください。」
スバル「マイア…それに皆さん……。
……ありがとう。」
イア「みんなッ!!!」
イアはエンジェルハイロゥに近づく。
その時、光が見える。
イア「なっ………!?」
「イア。イア。」
イア「……その声は…まさか…!?」
イアは振り向く。
見えない。だが確かにいるのが分かる。
イア「みんな……。」
「ありがとう、イア。君達がエンジェルハイロゥを止めてくれたお陰で、溶け合っていた僕達の意識は再び個を取り戻した。」
「まあ、少し力技すぎた気もするけどね……。」
「これで、わたしたちはやっと逝ける。
……今まで迷惑をかけたね。」
イア「いえ…いえ!!私にとって、
あなた達は一番の…一番の仲間でしたから!!」
「…ありがとう。私達をそんなに思ってくれて。」
イア「……ゾル姉の所に行ってあげてください。
あの人が…一番苦労しましたから。」
「うん。そうだね。そろそろ行こうか。」
イアは、敬礼の姿勢をとる。
「そこまでしなくてもいいのに……。まあ、あなたらしいっちゃらしいけどね。」
「じゃあね。……元気で。」
イア「ありがとう…ございました……!!」
その機体のカメラから、水が流れた。
それはただの冷却水と言うにはあまりに悲しく、
あまりに喜ばしいものだった。
「……。」
相変わらずだね、ゾルタン。
「……あぁ。戻ってきたかよ。」
の前には、確かにあの時の仲間がいるように感じた。
「自分のこと、好きになれた?」
ああ。色々あったからな。
「やっと、お姉ちゃんに会いに行ける…。」
姉妹水入らずでゆっくりしてこい。
「ゾルタンって名前、気に入ってくれた?」
ああ。割と…いや、かなり気に入った。
「バカだねぇ…無理に復讐なんてする必要なかったのに。」
だが、割とスッとしたぜ?敵討ちってのはよ。
「好きな物は見つかったか?」
そうだな…今はそれを仕事にしてる。
「アリウスの外って、楽しい?」
結構楽しいぜ?色々な奴がいるしな。
「気に入った音楽の一つでも見つけたか?」
ああ…トリニティのアイドル、ってやつの曲は割と好きだったな。
「夢は見つけたか?」
そりゃあな。今はその途中だ。
「アリウスの外って、綺麗なの?」
……ああ。素晴らしいほどな。
「ゾル、みんな…私、好きだったよ。」
ああ。俺も…お前らのことが、大好きだった。
「ゾル…あの日のこと、まだ気にしてるのかい?」
…いや、もう気にしちゃいない。過去は過去だからな。
確かに辛いが……。
俺は、俺自身を肯定する。それが、お前らに教わったことだ。
「それは、良かった。」
……もう、行くのか?
「そうだね。そろそろ時間だ。」
そうかい……
「ありがとうゾルタン。私達の分まで生きていてくれて。」
あばよ。
俺の最高の仲間たち。
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終わったか?
「うん。終わったよ。」
ならば、約束を果たしてもらおう。
「それはいいけど、そんなことでいいのかい?」
いいのだ。……頼む。
「分かった。……じゃあ、行こうか。」
…happy Birthday to you…
…happy Birthday Dear…