ロイヤルブラッドの失敗作【完結】   作:セルビア

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24話

ピーコックスマッシャー。

孔雀(ピーコック)の名を冠し、羽根があしらわれたこのクロスボウは、かつて鉄仮面が製作し、しかし使うことは無かった。

孔雀は、トリニティ及びアリウスの経典の両方において不死性、永遠の繁栄を現す。

ならば。

 

その命を削って作られたこのクロスボウは。

 

 

不死を削る力があるも同義ではないか?

 

 

 

 

 

───────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

矢はエンジェルハイロゥに命中した。

 

“一体どこから…!?”

 

先生は周りを見渡す。

そして、建物の上に、一つの人影を見つけた。

 

フロンタル「………。」

 

“……君はあの時の……!”

 

先生はフロンタルを見る。

そして、あることに気付いた。

 

“………!?”

 

そのヘイローは。

 

アツコ「!まさか…!?」

 

そのヘイローは。

 

 

 

 

 

 

 

 

イア「……生きていたのですね。

()()()………。」

 

確かに死んだはずの、丹内ゾルのヘイローだった。

 

フロンタル「………。」

 

“!”

 

フロンタルは屋根から飛び降り、その場から逃走した。

 

“待っ……!”

 

アツコ「待って先生。今はあの光輪を……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

おかしい。

 

本質的に私に死などない。

私は機械であり、ヘイローだ。

その性質を失っていたとしても、本質は変わらない。

ヘイローである私に死などない。

 

 

 

だが、これは何だ?

 

痛い。痛い。痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!

この私が、何故痛みを感じる!?

 

 

「……君も悲しい存在だね。」

 

 

……お前たちなら分かるのか?

何故この身体が痛むのか。存在しない筈の痛みが。

 

 

「……今君が受けているのは、命を削る矢。」

「本来、君には効かないはずのものだけど…」

 

 

ならば、何故?

 

 

「これは先生にも伝えた話だけどね。」

「魂と身体は深く繋がっている。」

「魂がダメージを受ければ、身体はダメージを受ける。」

「たとえ、身体がなくても。」

 

 

……何を言っている?

私に魂など……ある筈が……

 

 

「本当か?」

「お前は本来、エンジェルハイロゥの搭乗員をサポートする人工知能だ。」

「本来なら、お前に魂なんて宿らなかったろうよ。」

「……しかし、イレギュラーが起こった。」

「ちょうど、3年前の今日。」

 

 

()()の、搭乗……か?

 

 

「そうだね。」

「ベアトリーチェは、君を使うために、私達の死体を利用した。」

「そして君は、サポートのしようがない搭乗員の為に…。」

 

 

()()()()()()()()()

自分で考えて行動できるよう。

 

 

「そう。それが、『君』という存在に魂が宿った瞬間。」

「……所謂、『Birthday』。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうか。

私はもはや望みを叶える機械ではなく…。

 

 

一つの命になっていたのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、残念だ。

命が終わる瞬間に、命を得たことに気づくとは。

 

「残念だけどね。」

「安心して。あなたが死ねば、私達も呪縛から解き放たれる。」

「死ぬ時は、一人じゃない。」

 

……そうか。

 

 

 

最後に一つ、頼みをしても?

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

アツコ「何……!?」

 

ヒヨリ「ど、どういうことですか…?」

 

サオリ「()()()()()()()()……?」

 

サオリ達の前には、地に落ちたエンジェルハイロゥの姿があった。

 

イア「!みんなッ!!!」

 

イアは駆け出す。

 

 

 

 

スバル「ちょっと!どういう……ぐっ!?」

 

マイア「先輩!?」

 

スバルは頭痛を感じ、うずくまる。

 

マイア「先輩、一体…!?」

 

スバル「……マイア…!?

そうだ!私は、私はあなたを!!」

 

スバルは、マイアを見つめる。

その様子は、錯乱しているようだ。

 

サオリ「スバル…お前記憶が…!?」

 

 

 

 

スバル「マイア、私はあなたをあんなに傷つけてしまった…!

……私は、アリウスを守ろうと…でも、結局……。

あなたを傷つけ…他の子の不安を駆り立てて……

私は……私なんて……。」

 

 

マイア「…そんなことないです。」

 

スバル「……マイア?」

 

マイア「そんなこと、ないです!!」

 

マイアは大きい声を出して言った。

 

マイア「先輩は、私達を守ろうとしてくれていました!!

自分から危ない仕事にも手を出して…!

私達の為に、行動してくれていたんですよね?」

 

スバル「それは……。」

 

マイア「だったら!!」

 

マイアはスバルの手を取り、抱き寄せる。

 

スバル「……!」

 

マイア「今度は、私達が先輩を支える番です!

私達、アリウス生が!!」

 

スバルは気づく。周りに、アリウス生達が集まっている。

 

アリウス生a「先輩……!」

 

アリウス生b「スバル先輩のお陰で、ここまで来られたんです!」

 

アリウス生c「スバル先輩は、私達の……守護神でした。」

 

アリウス生d「これからも…私達、先輩と一緒にいたいです!」

 

スバル「皆さん……。」

 

マイア「先輩、これ……。」

 

マイアは懐から一つの物を取り出す。

 

スバル「これは……。」

 

マイア「はい。先輩のハーモニカです。

今は無理かも知れないけど……。

いつかまた、聞かせてください。」

 

 

 

スバル「マイア…それに皆さん……。

 

……ありがとう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イア「みんなッ!!!」

 

イアはエンジェルハイロゥに近づく。

その時、光が見える。

 

イア「なっ………!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イア。イア。」

 

イア「……その声は…まさか…!?」

 

イアは振り向く。

見えない。だが確かにいるのが分かる。

 

イア「みんな……。」

 

「ありがとう、イア。君達がエンジェルハイロゥを止めてくれたお陰で、溶け合っていた僕達の意識は再び個を取り戻した。」

 

「まあ、少し力技すぎた気もするけどね……。」

 

「これで、わたしたちはやっと逝ける。

……今まで迷惑をかけたね。」

 

イア「いえ…いえ!!私にとって、

あなた達は一番の…一番の仲間でしたから!!」

 

「…ありがとう。私達をそんなに思ってくれて。」

 

イア「……ゾル姉の所に行ってあげてください。

あの人が…一番苦労しましたから。」

 

「うん。そうだね。そろそろ行こうか。」

 

 

イアは、敬礼の姿勢をとる。

 

「そこまでしなくてもいいのに……。まあ、あなたらしいっちゃらしいけどね。」

 

「じゃあね。……元気で。」

 

 

 

 

 

 

 

イア「ありがとう…ございました……!!」

 

その機体のカメラから、水が流れた。

それはただの冷却水と言うにはあまりに悲しく、

 

 

あまりに喜ばしいものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……。」

 

相変わらずだね、ゾルタン。

 

「……あぁ。戻ってきたかよ。」

 

  の前には、確かにあの時の仲間がいるように感じた。

 

 

 

 

 

 

「自分のこと、好きになれた?」

 

ああ。色々あったからな。

 

 

 

 

 

「やっと、お姉ちゃんに会いに行ける…。」

 

姉妹水入らずでゆっくりしてこい。

 

 

 

 

 

 

「ゾルタンって名前、気に入ってくれた?」

 

ああ。割と…いや、かなり気に入った。

 

 

 

 

 

「バカだねぇ…無理に復讐なんてする必要なかったのに。」

 

だが、割とスッとしたぜ?敵討ちってのはよ。

 

 

 

 

 

 

「好きな物は見つかったか?」

 

そうだな…今はそれを仕事にしてる。

 

 

 

 

 

 

「アリウスの外って、楽しい?」

 

結構楽しいぜ?色々な奴がいるしな。

 

 

 

 

 

「気に入った音楽の一つでも見つけたか?」

 

ああ…トリニティのアイドル、ってやつの曲は割と好きだったな。

 

 

 

 

「夢は見つけたか?」

 

そりゃあな。今はその途中だ。

 

 

 

 

 

「アリウスの外って、綺麗なの?」

 

……ああ。素晴らしいほどな。

 

 

 

 

 

 

「ゾル、みんな…私、好きだったよ。」

 

ああ。俺も…お前らのことが、大好きだった。

 

 

 

 

 

「ゾル…あの日のこと、まだ気にしてるのかい?」

 

…いや、もう気にしちゃいない。過去は過去だからな。

確かに辛いが……。

俺は、俺自身を肯定する。それが、お前らに教わったことだ。

 

「それは、良かった。」

 

……もう、行くのか?

 

「そうだね。そろそろ時間だ。」

 

そうかい……

 

「ありがとうゾルタン。私達の分まで生きていてくれて。」

 

 

 

 

 

あばよ。

 

俺の最高の仲間たち。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────

 

 

 

 

終わったか?

 

「うん。終わったよ。」

 

ならば、約束を果たしてもらおう。

 

「それはいいけど、そんなことでいいのかい?」

 

いいのだ。……頼む。

 

「分かった。……じゃあ、行こうか。」

 

 

 

 

 

 

…happy Birthday to you…

…happy Birthday to you…

 

…happy Birthday Dear…

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