繭の内側 ── ワールドアイテム 山河社稷図内部の世界
そこは、現実の大地と良く似ていながら、どこか作り物めいた静けさを持った平野だった。
空は高く澄み渡り、遠くには山と湖が描かれている。ワールドアイテムが作り出した“絵の一部”でもあった。
特徴といえば、景色こそ広いが、実際にはデストロイヤーが動き回れるほど広くもなく、まともに戦闘行動が大きく制限された空間であった。
その中央。失墜する天空(フォールンダウン)の光さえも受け止めたシールドは、すでに消え失せているようだ。しかし六本の脚で巨体を支えた機動要塞デストロイヤーが、鈍い金属光沢を放ちながら立ちあがっていた。
「やはり。一撃で終わってくれるほど生易しくないか」
アインズは思ってもいないことをつぶやきながら、攻撃の余波が晴れた先に立つデストロイヤーを観察する。
蜘蛛を模した巨体。蜘蛛の目のような砲塔。体育祭でみたサイズとは比べ物にならない巨体。
その巨大な背中には、半壊した学校の壁や屋上。
折れた手すり。
破れた教室の扉。
転がる机と椅子、
そして“視聴覚室”と刻まれたプレート。
学園世界から、まとめて引きずり込まれた残骸たちだった。
アインズと守護者たちは、その光景の前に立っていた。
「……やっぱり、あの学校じゃないか」
アインズは思わず呟く。
(よりによって……。学校ごとセットでこっちに落ちてくるなよ)
シャルティアは、目を丸くしていた。
「アインズ様。この建物……どこかで見たような」
アウラも、ぽんと手を打つ。
「あの世界のだよね? アインズ様と行ってた。あの変な学校!」
(覚えてるじゃないか、お前たちも。いままでの忘れてました態度はなんだったんだ?)
しかし、今は思い出に浸っている場合ではなかった。デストロイヤーは頭部をさげ光る眼光を模した砲塔をゆっくりとアインズたちの方へ向けてくるのだった。
「来るぞ。構えろ」
アインズの号令と同時に、守護者たちは各々の位置へ跳躍する。
アウラが魔獣を率いて側面に回り、コキュートスが正面に立ちはだかるように氷の壁を展開しながら武器を構える。シャルティアは槍を構え、アルベドは盾を掲げてアインズの前に立つ。デミウルゴスは後方で分析を開始し、マーレも魔法を展開する。
そしてパンドラズ・アクターは、戦況を記録しながらも嬉々としてポーズを決めて、無駄に良い声で叫んだ。
「機動要塞デストロイヤーとの──開戦でありますな!」
(うるさい‼)
アインズはツッコンだ。