最初に大型の異変を察知したのは、当事国ではなく魔導国の観測網であった。
──王国北部の村が、一夜にして更地になった。
──地震も竜の襲撃もなく、ただ地面が踏み潰されたような跡だけが残されている。
「……地面が踏み潰された?」
執務室でアインズは書類を手に取りながらうめいた。
そんなアインズに、アルベドも似たような報告が数件上がっていることを報告する。
──開拓村が消えた。
──街道沿いの宿場町が、跡形もなく押し潰されている。
──いずれも巨大な足跡のようなものが残されている。
そもそも、そんな巨大なものが押しつぶしたというなら、どこから現れて、どこに消えたのか。そんな当たり前の疑問がよぎる。
そんな中、執務室の扉がたたかれる。アインズは侍るアルベドに合図し入室を許すと、パンドラズ・アクターが巨大な鏡らしきものを抱えて現れた。
「アインズ様! こちらをご覧ください」
「(なんじゃこりゃ……)」
アインズは内心ツッコミをいれるほどのものが映しだされていた。
巨大な金属と思わしき足に支えられた小山と錯覚すほど巨大な物体。そして足元にある小さな村らしきものをなぎ倒し押しつぶしている。その姿は、巨象が足元の草花を気にせず踏みつぶすような、といえばよいのだろうか? 村一つが更地になるのはそれほどの時間もかからなかった。
問題は、その巨大な構造物がしばらくすると掻き消えるように姿を消したことだった。
「膨大な構造体が、村、森、地形そのもの踏みつぶしながら前進し、しばらくすると消えるを繰り返しているようです」
アルベドが、目を細める。
「これは、あの時に見たアレでしょうか」
(……歩く巨大構造物。
地面を踏み潰す巨躯。
なによりどこかで見た造形──)
アインズの脳裏に、嫌でも見覚えのあるシルエットが立ち上がった。
六本の脚。
鈍い金属光沢。
黒光りする胴体に光る眼を連想する砲塔。
──機動要塞デストロイヤー
学園世界において、一度は彼ら全員の前に立ち塞がった悪夢のような兵器。もっともサイズこそ違うが、この場にカズマがいれば「あー。これガチのサイズだわ」とあっけらかんと言っただろう。
(なんでだよ!!
なんでお前がこっちに来るんだよ!!)
アインズの心の悲鳴をよそに、世界は無情にも動き続ける。
出現場所が王国領内だったこともあり、各国の初動はばらばらだった。
魔導国は──観測と情報収集に徹した。
帝国は──魔導国の出方を伺い、「魔導国の兵器ではないか」という疑念を抱きつつも静観した。
スレイン法国は──三年前の魔導王の魔法による虐殺を見ており、“魔導国の真の兵器”の可能性を捨てきれず、表立った行動を控え監視にとどまった。
そして──当事者である王国は。
最悪の一手を選んだ。