──噴上裕也は逃がさない──   作:よくメガネを無くす海月のーれん

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迷い猫を探し出せ その3

 『ハイウェイ・スター』は足跡状に身体を分解し、それぞれが匂いを頼りに対象を追跡する事が出来る。もちろん、養分の吸収は足跡一つ一つに有効であり、多ければ多い程養分吸収率も上がる。それにどこまで吸収できるのかを調整することだって出来た。

 

 だからこそ、ひっそりと噴上は『ハイウェイ・スター』に伝えていた。もし見つけて生きていた場合には、一枚、それも極小に養分を吸収させることを。遠隔操作型の特性、『ハイウェイ・スター』の位置情報がわかる噴上にとっては、足止めとマーキング両方を行える手段であった。

 

 鬱蒼とした森の中をかき分ける。足元を見れば鳥の羽がちらほら見えた。向かう先にまるで道しるべのように。判断するに…風雷ちゃんが鳥を追いかけていったのだろう。慌てて逃げたのか、あるいは捕まりそうになって怪我をしたのか…。

 

 鳥の羽は小さく美しかった。触れてみたいとも思ったが衛生面を考えると手を引っ込める。どの種類の鳥の羽かによるが、リスクを背負う必要もない。そうしていると反応。

 

 『ハイウェイ・スター』はすでに猫を見つけていた。命令通りに足跡を一枚だけ張りつかせ、極小の養分吸収を行っている。その反応だった。

 

 ズンズンと奥に進み、『ハイウェイ・スター』の案内に従っていると、微かに猫の声が聞こえる。

 

「向かうぞ『ハイウェイ・スター』の養分吸収が出来たということはやはり生きていたか…! この依頼、噴上裕也の勝利だッ!」

 

 初の依頼が失敗に終わるという幸先悪いことにならずに済んだ。ホッとしながら茂みをかき分けた先には奇妙な光景が広がっていた。

 

 少し開けた場所に、猫…おそらく風雷ちゃんだろう…がにゃーにゃー鳴いている。その周りには囲むように鳥の羽があり、近く、一本の大木を止まり木にしている小さな鳥が居た。

 

 その鳥は足元に居る猫を睥睨しているようだった。

 

「一体何が…? いや良い。まずは猫だ。『ハイウェイ・スター』…良いぞ。そのままだ」

 

 奇妙な絵面、しかし『ハイウェイ・スター』に足止めを頼みつつ、万が一にも逃げないよう慎重に近づいていく。猫に手が届きそうな距離でようやく、『ハイウェイ・スター』に解除を命令した。

 

 その瞬間だった。

 

「ニャーォ」

 

 低く鳴いた風雷ちゃんが解かれた枷に身震いしつつ、近づきつつある噴上に飛びつく…! そのまま腕を伝って肩に乗り、背中を踏み台に後ろへとジャンプした。

 

「ちょっおまっ!」

 

 グラリ、バランスが崩れる。思わずと言った風に足を踏み出した…。

 

 その先に鳥の羽がある事に気づかないまま。

 

 ドッシュウゥゥゥ───ッッ!!!

 

なにィイイイィ───ッ!!

 

 鳥の羽を踏んだ瞬間、宙を舞う噴上ッ! そのまま前へとつんのめり…

 

 ドグシャアッ!!

 

「ってェ─なオイ!」

 

 頭から地面へと倒れ込んだ。大きく頭を打ったためかこめかみから血が出ていた。流れる血を手で拭いながら、地面へ手を突いて立ち上がろうとする。その左手、小指の先がまたもや落ちていた鳥の羽に触れた。

 

 グルンッ!!

 

 グキリっ!!

 

「がぁア─ッ!」

 

 噴上の左手が背中側へと弧を描き、そのパワーは左腕を脱臼させる。思わず喘いだがスタンド使いによる精神力か気合で自身の半身に命令する。

 

「『ハイウェイ・スター』─ッ!! 脱臼した腕を押しこめェ─ッ!!」

 

 ゴキリっ!

 

 とっさの判断、鈍い音と共に押し込められた腕が元の状態へと戻る。ここで倒れると非常にまずいと直感が告げていた。倒れそうになった体を『ハイウェイ・スター』が受け止めつつ、荒い息で周囲を見回した。猫、先ほどまで噴上がいた位置で毛繕いをしている。ボロボロだが、それは森の中を駆け回ったからだろう。出血している様子も見られなかった。

 

 周囲、風雷ちゃんのいた場所であり周りが鳥の羽に囲まれていた。この羽が先の謎現象のトリガーだとすれば此処は監獄─ッ! 鳥の羽による籠の中─ッ!

 

 すぐさま見上げれば、小さな鳥がこちらを睥睨している。鳥の羽と同じ色! つまりは…!

 

「テメー…スタンド使いだな─ッ!! 動物のスタンド使い…! SPW財団で居ることは聞いていたが…!」

 

 噴上裕也は知っていた。スタンド使いは人だけに非ず。動物や物がスタンドを持つことだってあるのだと。鳥のスタンド使いだって居てもおかしくはないし、この街にもネズミのスタンド使いが居たと聞いた。

 

 奴のスタンドは今のところヴィジョンがない。『ハイウェイ・スター』のような人型の姿形を持つ者が居れば、実像を持たず、道具や体の一部と同化しているスタンドもあると聞いた。

 

 そう考えるなら奴のスタンドは羽! 羽に触れた対象に強い力を与える事…! 噴上は計2回触れた。足、左腕。足は数メートル浮くほどのパワーであり、左腕は指先だけ触れたハズなのに腕ごと振り回された。指先だけが振り回されなかった。

 

 つまり、触れた部分だけが対象ではないということ…! 触れた部分も含めた部位に対して力を与える事が出来る…!

 

「猫は動かなかったんじゃあない。『動けなかった』んだ。鳥の羽で囲われた檻の中、そんな中、手を差し伸べたおれを辿り、逆におれが閉じ込められた。ふてェ猫野郎だ…だがよォ…」

 

「このおれに怪我を負わせた鳥公─ッ! お前も重罪だぜ! 『ハイウェイ・スター』の養分にしてやる─ッ!」

 

 十数に分割した『ハイウェイ・スター』を即座に鳥公に飛ばす! 宙を舞う足跡が鳥に張り付かんと速度を増した時、鳥が羽ばたき空を飛んだ。

 

 ……()()()()()()

 

「なっ、戻れ『ハイウェイ・スター』ッ! 羽を打ちはらうんだ─ッ!」

 

 とんぼ帰りする『ハイウェイ・スター』が舞い散る羽のいくつかを打ち払う。がしかしっ! 羽に体当たりした足跡は羽に込められたパワーにより弾き飛ばされ、全てを打ち払う事が出来ない! 地面には羽の檻! 一歩踏み出せば打ち上げられる! 一か八か噴上裕也は鳥檻(オリ)の外へダイブした。

 

「がァ─ッ!!」

 

 ジャンプした噴上、回避できたと思った瞬間の激痛─ッ! 何が起きたのか見れば……!

 

「足に─ッ! ()()()()()()()()()()()─ッ!!」

 

 舞い散る羽、その一枚が偶然にも飛び退いた噴上のふくらはぎに当たっていた。ひらりと落ちていた羽の根本が偶然にも…! ふくらはぎをかすっていたのだ! しかし羽は触れたものに対して容赦がなく力を込める。垂直に当たった故か…羽はふくらはぎを貫いていた…!

 

 痛みに喘ぐ噴上に鳥はさらに追撃を仕掛ける。噴上の頭上で周回し始め、羽をはらはらと落とし始めていた。

 

 落ちる速度はゆっくりだ。しかし、その挙動は不安定であり、思ったよりも横へと動く。避けやすく避けにくい。矛盾した軌道が足にダメージを抱えた噴上の歩みをさらに遅くした。判断が遅れる…! ならばと己の半身を信じて叫んだ。

 

『ハイウェイ・スター』─ッ! ()()()()()()()()─ッ!!

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