──噴上裕也は逃がさない──   作:よくメガネを無くす海月のーれん

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迷い猫を探し出せ その4

 『ハイウェイ・スター』は確かに半身の声に応えた。

 

 分離した足跡をもって落ちている羽を踏みつけ、その込められたパワーにより高速で空中に打ち上げられる。

 

 羽を利用した足跡の逆さ雨は、しかし! いくつかの羽に触れ弾き出される。だがその羽の中を抜けて…頭上を周回している鳥公の脚先を掠めた。

 

 それが運命を分けた。

 

「『ハイウェイ・スター』─ッ!! ()()()()()()()()─ッ!!!」

 

 ドシュッ、ドドシュッ

 

 いくつかの羽が噴上へ突き刺さる。ぐふっ と血を吹くものの噴上は確かに鳥公から吸収する養分を感じていた。『ハイウェイ・スター』の養分吸収は相手がスタンド使いである程効率が良くなる。動物と言えどもスタンド使い…! この怪我でも動ける程度まで回復できることは容易だった。

 

 一方、鳥公側は困惑していた…!

 

 自身を追いかけてくるウザったらしい捕食者(風雷ちゃん)を閉じ込め、あとは羽でもってトドメを刺すつもりが変な男に邪魔された。それだけでなく、男は自分と同じく不可思議な力を持っており、その力で自分は攻撃されている─ッ!

 

 不遜な地を這うしかできない猿擬き(人間)に負ける自分ではない…! 力が抜けていく身体に叱咤激励し、自らのスタンド能力を開放した。

 

 正しく鳥肌…! ヤマアラシのように羽を突き立てた鳥は身体を大きくたわめた。全身が羽でもって隠れるように…! それと同時に…! 羽に触れた足先の『ハイウェイ・スター』が弾き飛ばされる─ッ! そして大きく羽ばたいた。

 

 それはまるで爆発反応装甲(リアクティブアーマー)のように…! 全身を覆う羽を一斉に発射したのだ!

 

「ぐっ…『ハイウェイ・スター』!」

 

 人型に纏めた『ハイウェイ・スター』に引っ張ってもらいながら着弾地点から離れる。その勢いのまま、大木の陰に隠れてやりすごした。

 

「妙だな…。羽が突き刺さらない…」

 

 噴上の目に奇妙なものが映った。先のスタンド能力が羽に触れたものに力を与えるものなら、地面や大木に触れた時点で突き刺さったり強い力によりくぼんだりしてもおかしくなかった。それが起きていないという事は…だ。

 

「恐らく…おれと同じようなスタンド。生物にしか効果がないのか」

 

 果たしてそれは正解だった。

 

 鳥のスタンド、名付けるなら『パワー・オブ・ラヴ』。

 

 【破壊力-A/スピードーD/射程距離ーC/持続力ーA/精密動作性ーE/成長性ーE】

 

 スタンド使いである鳥の羽と同化し、羽に触れた生物に対して強いパワーを与える。そのパワーは成人男性程度なら軽く吹っ飛ばせるものであり、触れた方向に強く働く性質を持つ。また、羽の根元から触れさせることで羽が突き刺さるといった応用も可能。スタンド故なのか、飛ばした羽は数分と立たずに回復する。

 

 射程は短いものの持続力に優れ、空から撒けばまさに空爆であり、地面へ落ちれば即席の地雷となる。万が一鳥を捕まえ、握りしめたりすれば手が爆散するだろう。それは鎧であり武器…! 攻防一体のスタンド─ッ!

 

「どうする…? 『ハイウェイ・スター』は触れてないと意味がない。触れたら終わりの奴とは相性が悪い」

 

 思案する噴上、状況は悪化している…。本来の目的である風雷ちゃん確保の前に自分が死にそうだった。流血は養分吸収で真っ先に止めたものの、ダメージ自体は残っている。

 

 その時、傍らの『ハイウェイ・スター』が動きを見せた。手に取っているのは奴の……羽ッ!

 

「『ハイウェイ・スター』ッ! 手を─ッ!?」

 

 掴んでいる…! 羽を!

 

 よく見れば、『ハイウェイ・スター』は羽の根元、羽毛がない部分を触っていた。咄嗟に近くの羽、その根元を触ってみれば能力は発動しなかった。

 

 つまり、奴のスタンドは羽…正しく言えば羽毛に宿っている…!

 

 だから根元、それも横から触れてしまえば効果は発揮しない…! 突き刺さることもなく…! まるでペンを持つようにすれば奴のスタンドは無効化出来る…!

 

「良くやったぜ『ハイウェイ・スター』! これで奴に一泡吹かせてやる─ッ!」

 

***

 

 妙だ…。鳥公は警戒を怠らなかった。大木に隠れた人間…後ろに回り込みたかったが、男の不可思議な力を警戒する故だった。死角から襲われるよりは待っていたほうが良い。少なくないダメージ…時間はこちらの味方だった。

 

 鳥公は自身のスタンド『パワー・オブ・ラヴ』に絶対の自信を持っていた。自らより大きな捕食者(カラスやネコ)を撃退してきた実績が鳥公を上長させていた。

 

 しかし、鳥公には致命的な欠点があった─ッ! スタンド使いとして、対スタンド使いの経験値が圧倒的に不足していることに!

 

 噴上裕也がスタンド使いとの戦いで学んだ()()()()()()()()()()()()()()という知恵と覚悟に─ッ!

 

 気付くことが出来なかった鳥公は、飛び出してきた人影に対して羽を飛ばした。逃げ惑う人影を嘲笑う。

 

「掛かったな─ッ! 飛べェ『ハイウェイ・スター』!」

 

 あえて姿を晒した噴上は足跡状に分解した『ハイウェイ・スター』に羽を踏ませた。その込められたパワーにより次々と加速する『ハイウェイ・スター』は元々の時速60kmを優に超え、鳥公に地面から空へ振り注ぐ。

 

 バカめ…! 鳥公は嗤った。同じ手は通用しない! また足に張り付かれないように体をたわめ全身を羽で覆う。そうすれば触れたとしても、羽が弾き返してくれる…!

 

 その判断が、『ハイウェイ・スター』が指先で握っていた()によって吹き飛ばされる…!

 

「テメーのスタンドは羽に触れた生物に発動するってんならよォ〜〜〜ッ! テメー自身が羽に触れた場合、どーなるんだ〜〜〜???」

 

 吹き飛ばされる鳥公ッ! 全身を撓めていた故に対応が遅れたッ! その先には分離した『ハイウェイ・スター』! これまた羽を持ち、飛んでくる鳥を羽で撫でた─ッ!

 

 スタンド『パワー・オブ・ラヴ』は、部位ごとに与えるパワーを変えられこそすれ、パワー自体をなくせるわけではない。ましてや、自身に部位別発動すればどこかしらの骨が折れるだろう─ッ!

 

 故に何もできない─ッ!

 

「テメーのスタンドで死になッ! 鳥野郎───ッ!!」

 

 飛ばされた鳥公は空へと配置された『ハイウェイ・スター』により次々と打ち出されていく。そして…!

 

 最後の『ハイウェイ・スター』、その足跡が地面に向け、羽を撫でた。

 

 それにより地面へと加速する鳥公、羽ばたき、なんとか回避しようとするが…!

 

 ドグシャアッ

 

「焦ったぜ。マジにな。だが、この噴上裕也、勝利の匂いは決して逃さない─ッ! …マジに薄い勝ち筋だったが、アンタの負けだぜ鳥公ッ!」

 

 ブゥ───ン

 

 足跡状から重なりあい、人型となった『ハイウェイ・スター』を背後に、噴上裕也は静かに、しかし自信をもって鳥公を見下ろすのだった。




やっぱりスタンド使いなら自分のスタンドの特性を生かしながら相手を利用して勝つってのが王道よ
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