――遠也や十代たちが破滅の光とのこの世界の存亡をかけた戦いに勝利を収めた、その頃。
デュエルアカデミア校舎内に存在する来島者用の宿泊室で目を覚ましたタイタンは、いつもの黒尽くめの格好に顔を隠す白い仮面をつけると、そこから外へと向かった。
朝というにはいささか遅い時間だが、タイタンは万丈目に敗れたことで既に大会への参加資格を失っている。朝から行われているであろうデュエルに参加できない以上、多少寝過ごしても問題はなかった。
校舎から出ると、途端に耳に入って来る歓声。最終日ということもあり、どうやら大会は盛り上がっているようだ。
そこに自分が知る彼らがいればいいのだが。もしくは、自分を負かした男……万丈目と言ったか。あいつあたりが勝ってくれると救われる。
そこまで考えたところで、タイタンは柄にもないことを考えていると自覚して苦笑した。そして、白熱したデュエルが行われているであろう高等部寄りの方面に背を向けて、タイタンは歩き出した。
最終日といっても、何もすぐに優勝者が決まるというわけではないだろう。最後の締めには顔を出すつもりだが、それ以外にわざわざ敗者の身で顔を出すこともないと考えたタイタンは、せっかくなので散策をすることにしたのだ。
デュエルアカデミアに来ることなど、そうはない。以前は依頼によるものであった上に、夜のことだった。そして今回は大会に参加するため。島の中を見て回る時間はなかったのである。
そのため、タイタンは負けてからしばしばこうして島内の散策を行っている。時おり行われているデュエルを覗きながらの、気楽な散歩のようなものだ。
本土に戻れば忙しい日々が待つプロデュエリストだけに、タイタンは休暇のつもりで島の中を歩き、楽しんでいるのだった。
「たまにはぁ、こういうのもいいものだ」
言いつつ、タイタンの足が向くのはデュエルアカデミアの中等部のほうであった。
中等部生には大会参加の資格はなく、この時間は通常の授業が行われているはずだ。外部の人間がそこに顔を出すわけにはいかないが、その近くを通るくらいは許されるだろう。そう思ってのことであった。
そうして中等部近くを通り、やがて中等部に通う生徒たちが暮らす寮付近へとタイタンの足は伸びる。寮もまたそこまで近づくことはしないが、今まで知らなかったアカデミアの島の中を見て回ることは、それなりにタイタンの好奇心を満足させた。
タイタンは左腕に着けられた腕時計を確認する。ゆっくり歩いていただけあって、それなりに時間が経っていた。
そろそろ戻るか。そう思って踵を返そうとしたところで、タイタンは寮のほうで動くものを見た気がして、高等部側に向けようとしていて身体を止めた。
この時間、中等部生は授業を受けているはず。そして寮監は教師が務めているのが普通であるため、この時間は寮監もまた授業のために出払っているはずだ。
だというのに、一体誰が。サボりの生徒だろうか。それとも、ただの勘違いだったか。
小さな違和感から真実が気になり始めたタイタンは、その動くものが何だったのかを確認しようと決めた。気になるなら、その原因を突き止めればいいのだから。
そういうわけで、タイタンは一歩、また一歩と寮の方へと近づいていく。そして寮の入口に掲げられた文字を見て、少々気まずい思いを味わった。
そこには、『中等部女子寮』と書かれていたのである。
さすがに、これ以上の詮索は社会的に自分の地位を危うくさせかねない。そう悟ったタイタンは、やはり戻ろうかと思い直した。
だが、その決断を下す数瞬前。タイタンの目に映ったものが、その決断を覆した。
「む……あれはぁ」
寮の裏から覗く、ヒトの半身。それだけならよかったが、その姿はどう見ても成人男性のそれであった。黒い革ジャンのようなものに、背中へと続くパイプのような管……変わった格好の男だった。
それを見咎め、黒いトレンチコートに黒の中折れ帽の全身黒尽くめ、更に仮面で顔を隠した男タイタンは――思った。
「……怪しい奴だぁ」
中等部の女子寮に男がいる。しかも、地面に見える影からすると、もう一人いるようだ。
何かよからぬことをしているのではないか。ここでそう考えるのは、当然と言ってもよかった。
ならば、様子を見つつ誰かに連絡でも入れるか。そう判断したタイタンだったが、ふと地面に映った影が変化したことで、その身を一気に男たちに向かって走らせることとなる。
地面に映った影……それは、男の胴部分からくの字に曲がった細いものが突出しているのを映しだしていた。その細いものの先は五つに分かれ、指であるとわかる。
その小ささから、女子のもの……だらりと下がった腕から察するに、意識がない女子を抱えているのだとわかったのだ。
それが調子が悪くなった女生徒を介抱しているのならいい。だが、そんな可能性は低いと言わざるを得ないだろう。
万が一があってはまずい。そう考えたタイタンは、全速力で男たちの元へ向かった。
もしもの際に奇襲するため、声も出していない。だというのに、男たちはタイタンの接近に気付いたようで、一人がその目をタイタンに向けた。
その間に、タイタンは寮の角から身を躍らせ、一体その場で何が行われているのかを目撃した。
そこには、全く同じ格好をした男が二人。黒い革ジャンに黒いズボン。背中に伸びる太いパイプのようなものとヘルメットに至るまで共通している。
そして、その腕に抱えられた一人の少女。それは、タイタンにも見覚えがある。小柄な体に、銀色の髪。万丈目とのデュエルを終えた時、皆本遠也の隣にいた少女で間違いなかった。
どう見てもその少女は意識を失っており、男二人はその少女をかどわかそうとしているようにしか見えなかった。
タイタンは自身の中に義憤の炎が燃え立つのを感じた。それに、彼女は自身の恩人たちの関係者。ここで借りを返さずして何とする。
その思いが、タイタンの身を突き動かした。
「お前たちぃ! 何をしているのだぁ!」
そう言って足早に接近するタイタンに、少女――レインを抱えていない方の男が、ヘルメットの奥からくぐもった声を漏らした。
『面倒だな……』
そして、男は近づいてくるタイタンに向けて高速で拳を突き出す。
「ぬっ……!?」
それを、タイタンは己の腕を咄嗟に持ち上げることで盾となし、どうにか防御することに成功する。
そして、その衝撃と痛みにタイタンの表情が歪んだ。
明らかに重たい拳と、恐ろしく速い攻撃だった。まるで鉄そのものを叩きつけられたかのような衝撃。事実、今の一発で防御に用いたタイタンの腕は痺れてしまっていた。
そして、その事実はどうにもおかしいものだった。そもそも今の攻撃、拳を振りかぶらずに行ったものだった。攻撃モーションがないゆえ速いのは納得できるが、だらりと下げた腕から放たれた拳にしては重過ぎるのだ。
その不可解さが、タイタンの心に躊躇いを生じさせた。
しかし、敵は待ってくれない。躊躇する間にもう一人の男がレインを抱えてこの場を離れようとしていることにタイタンは気づいた。
「むぅ、させん……!」
タイタンは再び一気に距離を詰めようと駆け出し、目の前の男に迫る。再び拳を繰り出す男。それに対して、タイタンは拳が放たれた瞬間、必然的に伸びきった腕に己の右手を添えた。
同時に左手で外側から男の拳を掴むと、添えた手と腕の接触面を支点に、タイタンは相手の懐に身体を巻き込むようにして身体を回転させる。
並行して添えた手に力を込めて外に押し出す力を加え、また拳を掴んだ手は内側に引くようにする。すると見事にタイタンと男の立ち位置は入れ替わり、タイタンは男と男の間にその身を置くこととなった。
突然体勢を崩されてたたらを踏んでいる男は放っておき、タイタンは即座にレインを抱える男に向かっていく。
レインを抱えているため自由を制限されている男は、迫るタイタンに蹴りを放つことによって対応する。
横から胴に叩きこまれるこれまた鋼鉄のように重い足。それによる激痛に眉をしかめながら、しかしタイタンは勢いを失わずに男に近づくと、抱えられていたレインの身にその手をかけた。
『む……』
「うぉおおッ!」
がっちりと腕で防御を固め、レインを奪われまいとする男と、奪い返そうというタイタン。
タイタンは知らぬことだが、この男たちはある歴史の未来においてイリアステルの幹部の一人によって使役されることになるゴーストと呼ばれる存在であり、量産型のライディングデュエリストと言っていい、いわゆるロボットであった。
構造としては簡単なそれはロボットだけあって命令には忠実、かつ自衛手段も持ち合わせた文字通りの鉄の肉体を持つ存在だ。並みの人間では歯が立たない。
ある歴史において、ゾーンはこの技術をイリアステルに下賜した。己自身には必要ないものだったからだ。しかし今は手軽に用意できるうえにそれなりに堅実な手段として、ゾーン自身がレインの回収のために用意したのである。
それゆえ、今のレインは鉄の檻に囲われているようなもの。いかに屈強なタイタンといえど、鉄の腕を動かすことは出来ない。
そう思われたが……しかし。
「ぬぅぉおおおッ!」
タイタンのコートに隠された筋肉が盛り上がる。その仮面の下の顔にも血管が浮き上がり、タイタンの顔が徐々に血による赤みを帯びていく。
そして、タイタンは驚異的な成果をもたらした。なんと、レインを捕まえていた腕が、徐々に引き剥がされていっているのだ。
『なに……』
無表情のまま驚きを示した男は、再度タイタンに蹴りを放つ。また、態勢を整えた先程の男もタイタンの背中から腕を回し、鉄の腕に力を込めて引き剥がそうと試みた。
「なぁめるなぁあああ!」
しかし、それも己の持てる力を十全に発揮したタイタンの力には敵わなかった。
いわく、人はその身にリミッターを持ち、十割の力を使い身体が壊れることが無いよう押さえているという。
今のタイタンはそれを一時的に緩めた状態に近い。いわば、火事場の馬鹿力というものが働いていた。
それゆえ、男たちの妨害を受けてもタイタンは諦めることなく自身の力を込めていく。コートの中のシャツが盛り上がった筋肉で破れる音を聞きながら、ついにタイタンはレインを拘束している腕をはがすことに成功したのだった。
「ぬぁぁあッ!」
瞬間、タイタンは男の腕からレインをかっさらい、そのまま男たちのことなど見向きもせず全力でこの場を離れる。
離れる瞬間もやはり攻撃を受けていたが、しかし痛みなど気にすることはなかった。
人一人抱えている分逃げ切れるかという不安もあったが、タイタンの身体は今持てる力を出し切れている状態だ。常人よりも走るスピードはかなり速くなっており、いかに未来製のロボットといえど、Dホイールなしで追いつくことは出来なかった。
『………………』
『………………』
去って行くタイタンを見送る形になった男たちは、しばし無言でその場に佇む。
そしてその数十秒後、彼らはその場からゆっくりと立ち去って行った。そして、後にはそこに誰かがいた痕跡など一つとして残ることはなかったのであった。
*
俺と十代、それぞれが行ったデュエルによって破滅の光が消滅し、身体を乗っ取られていた斎王とカイザーは解放された。
また、ネオス曰くもう破滅の光の気配は感じないとのこと。ネオスが言う以上、それは間違いないことなのだろう。これでようやく、一年の長きにわたって続いた騒動も終わりというわけだ。
とはいえ、斎王とカイザーにはやはり大きな負担があったらしく二人は大きく消耗している。特に斎王のような慣らし期間もなくいきなり破滅の光の全力をその身で引き受ける羽目となったカイザーの消耗は激しい。カイザーは今そのせいで意識をなくしているほどだ。
斎王は長く取りつかれていたことに対する慣れというか、抵抗力でもついていたのか、今では自分の足で立って歩けるほどには回復しているようだった。
周囲にはそんな斎王を始め、その隣に立つエド、寄り添って座る俺とマナ。そして俺がその身を抱える形となっているカイザーと、それを覗き込む十代と翔と剣山の姿がある。
そして、そんな俺たちに近づいてくる車の駆動音。カイザーが倒れてすぐマナが鮎川先生に連絡を取ったことが功を奏し、かなり早く来てくれたようだ。
校舎へと繋がる森を抜けてこちらに姿を現す、デュエルアカデミアの校章がペイントされた救護車。慌ただしく止まったそれから鮎川先生が飛び出してくるのを見ながら、俺たちは揃って安堵の息を吐くのだった。
鮎川先生の指示に従い、俺たちはカイザーを救護車の中に乗せる。そして俺たちも車に乗せてもらい、校舎へと連れて行ってもらった。少々手狭ではあったが、全員が乗れないほどじゃない。歩いて帰るほど気力に余裕はないのは俺だけじゃなかった。
そんなわけで校舎に辿り着くと、どうも騒がしい。何が起こっているのかと鮎川先生に問いかければ、鮎川先生は少し呆れたように口を開いた。
「何って……ジェネックスの決勝戦よ。今日が最終日でしょう?」
それを受けて、俺と十代は顔を見合わせる。
「あ」
「あ」
そして、揃って「忘れてたぁ!」と大声を上げるのだった。
すっかり破滅の光の件にかかりっきりになっていて、今日がジェネックスの最終日だということをすっかり忘却の彼方へと置き去りにしていた俺たちは、声を上げると急いで停めてあった車から飛び降りる。
そして一目散に騒ぎの中心となっている場所へと駆けていくのだった。
『気にしてないみたいだから、ジェネックスのことはもういいのかと思ってたんだけど……』
「そんなわけないだろ! 決勝となれば強い奴が残ってるんだから、戦ってみたいに決まってる!」
横を並行して飛ぶマナの声に、俺は当然だろうとばかりにそう返す。すると、俺と同じく走る十代もそれに合わせてきた。
「そうだぜ! 世界の強豪を相手に生き残ったデュエリスト……楽しみだぜ!」
そんなふうに騒ぎながらバタバタと目的地を目指して走る俺たち。
そうして走ることしばし、たいして時間はかけずに辿り着いた校舎前。盛り上がりを見せるそこに俺たちは目を凝らし、そして同時に聞き覚えのある声が聞こえてきたのだった。
「――これで最後だ! 攻守が逆転した《おジャマ・イエロー》で直接攻撃! クズの底力を食らうがいいッ!」
「きゃあぁああッ!」
レイ LP:900→0
万丈目のフィールドに揃ったおジャマ三兄弟の一人、おジャマ・イエローがレイに向かってヒップアタックを決め、レイのライフポイントが0を刻む。
負けたことを認め、がっくり肩を落とすレイと、勝利したことに喜ぶ万丈目。そんな二人の姿を見ながら、俺たちは再度顔を見合わせる。
「なぁ、遠也。これジェネックスの決勝だよな?」
「ああ、そのはずだ……。けど、なんでレイがここに? 中等部生は参加できないはずじゃ……」
そう、中等部は義務教育なので、ジェネックスに参加する資格はもらえないはずなのである。しかし、レイはこうして参加していたようだ。
どういうことかと首を捻っていると、少し離れていたマナが戻ってきた。
『なんか、レイちゃん顔を隠して参加してたみたい。それで、自分が実力を示したら、お願いを聞いてほしいって校長と約束をして万丈目くんと戦ったみたいだね』
「顔を隠して? ってことは授業はサボりか。レイの奴、無茶するぜ」
マナが周囲の喧騒から拾ってきた情報に、十代は少し呆れつつもどこか感心した声でそうこぼす。
俺も同感だったが、それよりも俺は気になることがあった。
「お願い、ってのが気になるな。一体何のことなんだ?」
「さぁなぁ。……お、遠也。どうやらそれが今からわかるらしいぜ」
言われ十代に顔を向ければ、視線で校舎の上を示される。そこにはマイクを手に持った校長が立っていて、どうやらこれから話をするらしい。
なるほど、校長との約束という話だから、恐らくそれにも言及するだろう。俺たちは黙って校長の話を聞く態勢に入った。
『ゴホン。これにより、両者の勝敗が確定した。しかし、負けたとは言っても早乙女レイ君は十分に実力を示してくれたと思う。……どうかね?』
校長が最後にそう周囲を見渡すと、そこかしこから歓声が上がる。彼らもレイが高い実力を持っているということを認めたということだろう。
それを満足げに見た後、校長は再び口を開いた。
『うむ。では、レイ君。約束通り、君の願いを言ってみなさい。可能な限り、叶えることを約束しよう』
「……ボクは」
レイはしっかりと校長を見上げる。
そして、大きな声ではっきりとその願いを告げた。
「ボクの願いは……ボクとボクの友達を、高等部に編入させてもらうことです!」
至極真面目にそう言い切ったレイを前に、万丈目が「なにぃ!」と声を上げた。
「お前の友達というと……レインのことか!?」
「そうだよ! ボクと恵ちゃんを高等部に編入させてほしい!」
そして、レイはお願いしますと校長に向けて頭を下げた。
それを受け、ふむと校長は顎に手を当てる。
『レイン恵君ですか……確か彼女は中等部でトップの成績でしたね』
校長が階下にいるナポレオン教頭に目を向ける。
「でアールのです。筆記、実技ともに優秀な生徒なのでアール。高等部に来る時にはぜひ我輩が便宜を図りたいものでアール」
「ちなみに、このシニョーラ早乙女はそれに次ぐ成績でスーノ」
ナポレオン教頭が答え、その隣にいたクロノス先生が補足するようにレイについての情報を述べる。
それらを聞いた校長は、再び顎に手を当てて僅かに考え込んだ。
俺たちと行動を共にすることが多い二人は、中等部だけでなく高等部でもそれなりに名前を知られている。どうにも十代や俺といった面々は目立つみたいなのだった。
ともあれ、そういうわけでこの場にいる面子でレイやレインのことを全く知らないという人間は少ない。
それもあって、生徒たちは校長が一体どんな判断を下すのかが気になって仕方がないようだった。当事者であるレイ、その前に立つ万丈目、そして少し離れたところに立つ教頭、クロノス先生、明日香、三沢、吹雪さんといった面々も校長を見上げて答えを待つ。
無論俺と十代も校長が言ったどんな決断を下すのか、じっと聞き耳を立てていた。すると、背後から俺たちを追ってきた翔と剣山が合流してくる。「何してるの?」と聞いてくる翔に俺たちは指を口に当てて静かにするように伝えると、二人は察して口を噤んだ。
そして、ついに校長が顔を上げてマイクを口元に向かわせた。
『……君たちの成績ならば問題ないでしょう。よろしい、二人の高等部編入を認めましょう!』
校長が笑ってそう告げた瞬間、随所から上がる歓声。
その歓声に後押しされるように、嬉しさゆえか頬を上気させたレイが、「ありがとうございます!」と折り目正しくお辞儀をし、それを見て校長は一層相好を崩すのだった。
そして、俺と十代の後ろで静かにしていた翔と剣山はいきなりの展開に驚きを隠せないようで、どういうことなのかと俺たちに問いかけてきた。
俺と十代は二人に振り返り、それに短く答える。
「要するに、レイが実力を見せたら自分とレインを高等部に編入させてくれって校長にお願いして――」
「レイはそれを見事成し遂げたってわけだ! やるなぁ、レイの奴!」
しかし、まさかレイがこんなことを考えていたとはなぁ。そう言えば前……十代と明日香のデュエルの頃に、レイが授業をさぼったことが原因で補習を受けていたことがあった。今思えばジェネックスに隠れて参加していたから授業に出ていなかったんだろうな。
そして、レインはその時付き添いとしてレイと一緒にいた。もとより二人は仲がいいし、こうしてレインの名前を出した以上、恐らくレインもこのことを知っていたのだろう。
高等部への編入を計画していたとは、まったくもって驚いた。
そんなふうに驚きながらも感心していると、不意に聞こえてくる万丈目によるサンダーの掛け声。どうやらレイのお願いが聞き届けられてひと段落したのを見計らって、優勝を決めた万丈目がいつものノリで始めたようだった。
「サンダー!」と断続的に響く声に、俺と十代は苦笑をしているが、翔と剣山は不満顔である。
「兄貴たちが苦労して世界を救ったっていうのに……」
「だドン。メダルをまだ持ってるんだし、兄貴も先輩も今から乱入して万丈目先輩の優勝を掻っ攫えばいいドン」
翔に続く剣山の過激な意見に、やはり俺たちは苦笑するがその言う通りにしようとは思わなかった。
というのも。
「そりゃ、知らない誰かが優勝してたなら俺もデュエルしに行ったかもしれないけどさ」
「万丈目だろ? あいつとはいつでもデュエルできるしな!」
俺と十代にとって、重要なのはそこだ。この日を逃せばデュエルすることが難しくなる外部の人間だったなら多少無理をしたかもしれないが、万丈目なら島にいる限りいつでもデュエルできるのだ。
せっかく誰もがお祭り騒ぎで気分良くしているのだ。いきなり乗り込んでいって、わざわざ引っ掻き回すこともないだろう。それが俺と十代の考えだった。
無論、自分たちが優勝したいという気持ちがなかったと言えば嘘になるが、それよりも俺と十代にとって重要だったのはまだ見ぬ強敵とのデュエルだった。だから、これでいいのだ。
付け加えれば、俺も十代も夜から色々あって限界でもあるのだ。俺は少々わざとらしく伸びをした。
「それに、正直今日はもう疲れたしな」
「遠也の言う通りだぜ。今日はゆっくり休むことにするさ」
『本当に、二人はお疲れ様だからね』
俺と十代の言葉にマナがそう言い、俺は「お前もだろ」とソーラ破壊の立役者であるマナに返す。マナはにっこり笑った。
そして俺たち本人がそう言えば、翔と剣山としてはそれ以上言うこともないのか、まだどこか不満そうだったが、一応納得したようだった。ま、俺も十代もこういう奴なんだと諦めてほしい。
俺たちは熱気冷めやらぬ校舎前の広場に目を向ける。そこでは、万丈目の優勝を祝う歓声がそこかしこから上がっている。そして、そんな彼らを前に校長がマイクで再びスピーチを始める。
徐々に集まる視線。それらを受けて校長は参加者全員の健闘を称える旨のコメントを発し、そして最後にこう言って締めくくった。
『――これをもって! 第1回、世界大会ジェネックスの閉会を宣言する!』
そして、再び爆発的に上がる大歓声。同時に湧き起こる拍手の嵐は、それだけこのジェネックスという大会が楽しまれたということの証左でもあった。
俺と十代も皆に倣って手を叩く。翔と剣山も一参加者としてやはりジェネックスという企画には感謝しているのか、先程とは違って笑顔での拍手だった。
今ここにはいないが、鮎川先生と共にカイザーの近くにいるだろうエドや斎王も手を叩いているだろうか。
色々あったが、それでも振り返ればこの大会期間中の出来事は悪いことばかりではなかったと思う。エドたちもそう考えてくれていればいいな、と考えながら、俺たちは拍手を続ける。
万雷の拍手に見送られ、こうして世界大会ジェネックスはその幕を下ろしたのだった。
*
さて、校長によるジェネックスの閉会が宣言され、数分。
校舎前に集まっていた面々に解散を言い渡したことで、今やこの場に残っている人間は少数しかいない。
俺、十代、翔、剣山、そして万丈目、明日香、三沢、吹雪さん、そしてレイ。ようするにいつものメンバーが残っているというわけだった。
姿を現した俺たちに、真っ先に駆け寄ってきたのは明日香だった。明日香は途中まで十代と一緒にいたし、ヘリが墜落した現場でホワイト寮に向かう俺とも会っている。その後の俺たちのことが気にかかっていたのだろう。
大丈夫だったかと聞いてくる明日香に、俺と十代は揃って笑みを浮かべることで答えを返した。そして、ホワイト寮の問題も斎王のこともすべて解決したと伝えると、明日香含め聞いていた皆は一様にほっと胸を撫で下ろしたようだった。
また、クロノス先生にカイザーが倒れたこととホワイト寮の問題が片付いたことを校長に伝えるようにお願いしたので、今頃は校長も保健室で斎王と顔を合わせていると思う。
これであとは校長がホワイト寮のことなどの対処を終えて元のブルー寮に戻してくれれば、本当にめでたしめでたしとなるわけだ。
そこまでを聞き、皆は俺と十代にお疲れ様と言って労をねぎらってくれる。そんな中、万丈目は鼻を鳴らして腕を組んだ。
「ふん、どうせならこの俺が直々に手を下してやりたかったが……仕方がないな」
「はいはい。あ、そうだ万丈目。これやるよ」
「なんだ? って、これは……ジェネックスのメダル!?」
訝しげにこっちを見た万丈目に俺が差し出したもの、それは俺がこの大会期間中に集めたメダル全てだった。
「俺と十代たちは色々忙しくて最後は大会に顔出せなかったからな。今更持ってても何だし、優勝したお前にやるよ」
はい、と万丈目の手にそれを乗せる。万丈目は、たらりと一筋の汗をたらした。
「あ、じゃあ万丈目。俺のももらってくれよ」
「僕のもあげるっす」
「俺のもだドン」
そして、俺に続いて十代、翔、剣山までもが持っているメダルを取り出す。次々と万丈目の手に乗せられるそれを見て、周囲は何とも言えない顔をしていた。
「つまり、万丈目君の優勝って……」
「十代君たち抜きでの成績ってことになるねぇ」
「は、はははは。しー、しー!」
明日香と吹雪さんの呟きに、万丈目は空笑いの後にそれは言わないでくれと迫る。ついでに言えばカイザーとエドも抜きでの成績である。
まぁ、万丈目の実力がかなり高いのは事実なので、全員含めたうえで優勝していた可能性も大いにある。今となっては、どうでもいいことではあるが。
慌てる万丈目の姿を見ながらそんなことを思っていると、俺の肩と十代の肩が同時に叩かれる。手の先を見れば、そこには気やすい笑みを受けべた三沢の姿があった。
「ま、なにはともあれ。お前たちが無事でよかったよ」
「へへ、サンキュー三沢」
「心配かけたな。そういや、お前の成績はどうだったんだ?」
俺が問いかけると、三沢は僅かに肩をすくめてみせた。
「残念ながら、レイちゃんの前に万丈目に挑んで負けたよ。やっぱり強いな、あいつは」
「そうか……」
そう言う三沢の顔は悔しそうではあっても、後悔はないようだった。それだけ全力を出したということなのだろう。
実力者である三沢を退け、そしてレイすらも退けた万丈目はやはり流石と言える。尤も、レイのライフを0にしたとき、万丈目のライフは残り100だったらしいのでだいぶ苦戦したのは事実のようだが。
傍で見ていた明日香曰く、《おジャマ・デルタ・ハリケーン!!》を引けていなかったら、万丈目の負けだったとか。その前の状態だと、レイの場には、万丈目の《アームド・ドラゴン LV7》がおり、更に《パワー・ツール・ドラゴン》が《ハッピー・マリッジ》を装備した状態で存在していたとか。
つまり、パワー・ツール・ドラゴンの攻撃力は5100になっていた。その攻撃を凌いで迎えた万丈目のターンで、万丈目は《おジャマンダラ》からのハリケーン、更に《シールド・アタック》でイエローの攻守を逆転させ勝負を決めた、ということらしい。
明日香曰く、万丈目らしいおジャマを巧みに使ったいいデュエルだったそうだ。すっかりおジャマ使いとして名前が定着してきた感のある万丈目だった。
そして、そんな万丈目に追いすがったレイもさすがだ。俺はレイのもとに寄っていった。
「なに、遠也さん?」
見上げてくるレイの頭を、俺は上から抑えつけるようにして撫でた。
「きゃっ、な、なに!?」
「まさか高等部編入を考えていたなんて、ビックリしたぞ! 授業時間中のはずなのに浜辺で会ったり、補習を受けたりしていたのはそれでか」
撫でるのをやめて手を離せば、レイはさっと髪を直しながら俺の言葉に答えた。
「うん。やっぱり遠也さんたちと一緒にいたかったから。恵ちゃんの協力がなかったら、難しかったかもしれないけど……」
「ってことは、やっぱりレインは知ってるのか」
「うん! 一緒に高等部に行こうって約束したんだ!」
笑顔で言ってブイサインを見せてくるレイに、でもサボりはよくないぞと返して軽くデコピンをお見舞いする。
それに痛いと抗議しつつもどこか嬉しそうなのは、やはり高等部への編入が決定したからだろうか。レインと一緒に俺たちが通う高等部へ行く。それを目的にここのところずっと頑張ってきたみたいだし、その頑張りが実ったことが嬉しいのだろう。
去年の時にも思ったが、相変わらずこうと決めた時の行動力が並外れた子である。
やれやれと嬉しそうにしているレイを見ていると、精霊状態のマナがこっそりと俺の耳に顔を寄せてきた。
『でも、実は遠也も嬉しいでしょ。レイちゃんたちと一緒に通うの』
そして囁かれた言葉が図星だったので、俺は照れもあってマナから顔を逸らした。
それを見て俺の内心を察したマナがにやにやと微笑ましいものを見る目で見てきたので、俺は気恥ずかしさを誤魔化すようにレイに話しかけて雑談に興じるのだった。
俺と同じく、十代たちも皆とさっきまでのことなどを話しているようだ。皆も色々聞きたいことがあったようで、熱心に話を聞いている。一年間悩まされた光の結社の問題が解決したのだから、気になるのもむべなるかなだ。
あとはきりのいいところで話を切り上げて寮に戻り、徐々にホワイト寮が出来る前の日常に戻っていけばいい。
そんなふうに光の結社が存在しない普通の学園生活に思いを馳せながらレイと話していると、不意に校舎脇の森から黒ずくめの大男が飛び出してきた。
咄嗟のことに驚きつつもレイを背中に回す。十代たちのほうも、明日香を庇うようにして男のほうに振り返っていた。
しかし、飛び出してきた男は不審者ではなかった。それどころか、俺や十代にとって久しぶりの再会をこの間交わしたばかりの相手だったのである。
「タイタン!?」
そう、森から出てきたのはタイタンだった。驚きと共に名前を呼んだ十代を一瞥し、俺もまたタイタンを見やる。
そして、その腕に抱えられている少女に気が付いた。
「レイン!? いったい……!」
俺と十代が駆け寄ると、タイタンは力が抜けたかのように片膝をついた。どうやら随分と走ってきたらしく、顔は汗で濡れていた。
「じ、十代に遠也かぁ……。どうやら、安全なところまで、来れたようだなぁ……」
「どうしたんだよ、タイタン! それに、なんでレインが……」
息を切らしながら言うタイタンに、俺が当然の疑問を投げかけると、その間にレインの様子を見ていたレイが叫び声を上げた。
「と、遠也さん! 恵ちゃん、恵ちゃんが……!」
息をしていない。そう続けられたレイの言葉に、一瞬この場にいる全員が何を言われたのかわからないといった顔で呆然となった。
そんな中、真っ先に我に返ったのは三沢だった。
「ッ、な、何をしているんだ皆! 万丈目! お前はこのことを鮎川先生に! 女性陣は確認のあと蘇生を試みろ! やり方は授業で習っただろう!」
「あ、ああ! わかった!」
「っすぐに試すわ!」
万丈目がPDAを取り出し、保健室に向けて駆け出しつつ電話を繋ぐ。そして明日香は混乱しているレイを押さえ、レインの身体をゆっくりと地面に横たえた。
「マナ! お前も協力を!」
『うん!』
回復魔術を使えるマナならば、普通ならば無理な何かがあったとしても何とかできる可能性がある。既に動き出そうとしていたマナに俺は呼びかけ、マナはすぐにレインの元へと向かっていった。
唐突に動き出した状況。それを見つつ、タイタンは「まさか、そこまで切迫していたとは……」と悔しげにこぼした。逃げることに精一杯で、レインの様子は眠っているだけだと思っていたという。
一体何があったのか。そんな疑問を抱きつつも、俺は胸の内に広がる不安を前に言葉をなくすしかなかった。
*
デュエルアカデミア保健室。
この部屋には今、二人の人間がベッドに寝かせられている。一人は破滅の光の意思に乗っ取られて、極度の疲労とストレスから意識を失ったカイザー丸藤亮。
そしてもう一人は、突然呼吸を止めた状態でタイタンに運び込まれてきた中等部所属の女子生徒、レイン恵だった。
そのレインだが、今は保健室内の別室にいてこの場にはいない。鮎川先生が詳しい検査をすると言って別室に連れて行ったからだ。
それを見送ったのは、この場に揃った多くの関係者たち。俺や十代を始めとする面々に加え、カイザーと共に保健室にいたエドと斎王、実際にレインを連れてきたタイタン。そしてこの学園の責任者である鮫島校長。
それら全員が一堂に会し、そして誰もが重々しく押し黙っていた。
レインの現状に一番ショックを受けていたレイは、今は俺の隣で俯いて座っている。実体化したマナがレイを包み込むように肩を抱き、少しは落ち着いたところだ。
レインは結局、呼吸が戻らないままだった。しかし、不思議なことに身体は冷たくならない。これは一体どういうことなのか。もしかしたら……。
それだけを希望に、俺たちはじっと黙って鮎川先生の診断の結果を待っている。どうか、残酷な現実に直面することだけはないように。そう祈りながら。
すると、別室へと繋がる扉が開き、鮎川先生が出てきた。一斉に俺たちの視線が向けられるが、鮎川先生は表情を全く変えずにそれを受け止めた。
「……どうかね、鮎川先生」
代表して、校長が口火を切る。主語がなくとも、尋ねているのはもちろんレインのことだ。そして、校長の質問に鮎川先生は真剣な顔で答えた。
「結論から言えば、レインさんは亡くなったというわけではありません」
はっきりとした声が保健室内に響き渡る。誰のものかわからない安堵の息が漏れたのが聞こえた。
顔を上げたレイの表情にも微かな安堵の色が見てとれた。
「……正確には、機能を停止した、という言い方が正しいのかもしれません」
しかし、僅かに緩んだ空気も即座に引締められる。
どう考えても人間に使うにはおかしい表現を用いた鮎川先生に、校長は変わらず厳しい視線を向けた。
「どういうことかね」
その問いかけに、鮎川先生は言葉を詰まらせる。逡巡した後、意を決したようにその口が開かれた。
「……彼女、レイン恵さんの身体の多くは機械で構成されています。いわゆる、サイボーグ……それに近いと思います」
冗談でもなんでもなく、真剣な顔のまま告げられた衝撃的な話に、俺たちは誰もが目を見張って驚きを露わにするのだった。
鮎川先生によると、レインの身体の心臓部分には心臓ではなくそれに代わる何かだと思われる機械の塊が存在していたらしい。簡単なスキャンを行っただけなので詳細は分からないが、それが動いていないことから呼吸も止まっているのだろうとのことだ。
温かさを失わない肌については、そういう素材であるのか、もしくはなにがしかのエネルギーがまだ残っているからなのではないか。そう鮎川先生は言った。
それ以外にも様々な個所が機械によって構成されているのは、身体をスキャンすれば明らかだったとか。以前に鮎川先生はレインの異常な低血圧の原因を調べるために体を調べたと言っていたが、それはあくまで簡易なものであったため気付かなかったようだ。
また、学園で行われる健康診断というものもあるのだが、校長いわくレインの場合は免除になっていたらしい。きっと彼女の背後にいる存在の影響なのだろう。
レインが純粋な人間ではないこと。それは確かに俺たちに驚きをもたらした。しかし、だからといってレインのことを蔑視するような奴は俺たちの中にはいない。ただレインのことを案じる気持ちだけが俺たちにあった。
そんな中、鮎川先生に三沢が声をかけた。レインは機械で出来ていて、心臓部分の機械がその活動を支えていた。ならば。
「その機械を動かすことが出来れば、助けられるということですか?」
三沢のその言葉に、俺たちの顔に希望が灯る。
つまり、止まってしまった心臓部の機械を何とかできればレインは蘇ることが出来る。レインは死んだわけではないのだ。なら、確かに三沢の言った方法でレインを元に戻すことは可能なはずだ。
俺たちは期待を込めた視線を鮎川先生に向ける。三沢の言葉にしばらく考え込んでいた鮎川先生は、熟考の末に言葉を返した。
「……そう、ね。私は医学に詳しいだけだから断言はできないけれど……恐らく、大丈夫だと思うわ。もちろん、専門の人に調べてもらわないといけないけれど」
その言葉は、俺たちに確かな希望をもたらした。
それを受けて、俺は早速ペガサスさんに連絡を取る。すると、三沢も何やらどこかに連絡を取ろうとしていた。訊けば、ツバインシュタイン博士と親交を持つようになったので、博士にも聞いてみるとのこと。
博士は真の意味での天才、その知恵は助けになるはず。三沢はそう言った。そのため、ツバインシュタイン博士への連絡をお願いし、俺はペガサスさんのほうに集中する。
僅かな間を置いてペガサスさんに連絡のついた俺は、とにもかくにもレインのためにどうかペガサスさんの力を貸してほしいと頭を下げた。
相手は一流企業の会長だ。その権力は強大であり、だからこそ俺は個人的なことでその権力に頼らないよう自戒してきた。
しかし、今回ばかりはそうは言っていられない。個人的なことに権力を……それも他人の権力を借りる、それが褒められた行為でないのは分かっている。
だが、それでも。俺はそれがレインのためになるのだとわかれば、頼らざるを得なかった。一流企業の会長の力。それがあれば、レインをかなり精密に検査することが出来るし、そのぶん対策も明確にとれるはずなのだから。
……結論から言えば、ペガサスさんはこちらの頼みを承諾してくれた。しかし、ただ甘い顔をしてはいけないということもわかっているのだろう。ペガサスさんは、代わりにカードの開発に一時俺の身を貸せと要求してきた。
俺にとって、それはあまり苦なことではない。ペガサスさんは、俺が苦でなくそれでいて社の利益にもなることをわざわざ考えて提案してくれたのだろう。俺はその配慮に、ただ感謝して頭を下げるしかなかった。
――こうして、レインは一時その身をI2社預かりとし、その系列の病院にて保護されることとなった。レインの身体は未知の技術の塊でもあるので、その保護は厳重である。
また、レインの存在は隠され、その存在は信用できるごく僅かの人数に限られている。また、治療に関しての事柄以外で決して手を出すことがないよう厳命したらしい。本当に、どこまでも頼りになる人である。
レインのことで落ち込んでいたレイも、徐々に元の明るさを取り戻そうと努力していた。レインが元に戻る可能性を見た以上、落ち込んでばかりはいられないと自ら奮起したようだ。
レインがI2社の小型機で運ばれていく時も、しっかりした面持ちで見送っていた。「恵ちゃんが帰ってきた時にボクの顔が曇ってたら、恵ちゃんが悲しむもんね」とは、その時のレイの言葉だ。
そんなレイの頭を俺は黙って撫で、マナはぎゅっとその小さな身体を抱きしめた。レイは目尻に涙をためて、恥ずかしそうに笑っていた。
*
I2社の病院へと送られるレインを見送って俺たちはそれぞれの寮へと戻っていった。自室に戻った俺は、ふとテーブルに置いたままになっているデュエルディスクを手に取った。
それを見つめながら、思う。破滅の光との戦いで成功させたアクセルシンクロ。本来ならエネルギーが足りず、失敗するだけだったそれが成功したのは、ひとえにレインによる改良があったからだ。
それがあったから、カイザーを助けられたし、破滅の光も倒すことが出来た。すべて、レインのおかげだった。
「……レイン」
俺はデュエルディスクにつけられた小さなボタンを押す。すると、直後に空中に浮かび上がるディスプレイ。そこに書かれたメッセージを再び読み直しつつ、俺はそのディスプレイに触れると指を上に滑らせた。
すると、画面が下へとスクロールして見えなかった文章が見えるようになる。
そう、あのメッセージにはまだ続きがあったのだ。破滅の光の意思とのデュエルの後に気が付いたことではあるが。
そこには、こう書かれていた。
『レイのことを、お願いします。それから、遠也先輩は気を付けて。私のマスターは、あなたを危険視しているから』
これを見て、俺はレインが自分の身に何が起こるか知っていたのではないかと思うようになった。
自分がいなくなる。そう確信していなければ、こんなことは書かないだろう。なにせ、いずれも口頭で伝えればいい内容だからだ。前者なんて、何でもないのにわざわざ口に出すようなことではない。
ならば、レインがそんな確信を抱くに至った理由とは何だろうか。まさか寿命だったなんてことはないだろう。それなら、こんなに唐突な事態が起こることはないはずだ。事前になにがしかの準備をしているだろうから。
となれば、考えられるのは外部からの干渉。それによってレインは機能を停止することになったと考えるべきだ。
そこまでくれば答えは一つしかない。レインほどの技術の塊。そこに外見に何の変化もなく機能を停止させるほどピンポイントに手を加えられる存在なんて、一人しかいない。
彼女のマスターにして、未来世界の救世主――ゾーン、その人である。
思えば、タイタンが俺たちに語ってくれたレインを助けた時のこと。そこに出てきた男というのも、見覚えがあるのだ。全身黒、背中に繋がるパイプ、ヘルメット……そんな恰好をしたサイボーグが出てきたような記憶がある。
ということは、あれはレインに対して乱暴をしようとしたわけではなく、機能を停止したレインを回収しようとしていたのではないだろうか。つまり、ここにもゾーンの手によるものだという予測が立つのである。
俺は、デュエルディスクのボタンを再度押し、ディスプレイを消す。そして、腰を下ろしていたソファの背に体重を預けて天井を見上げた。
……狙われている。あのゾーンに、俺が。
実感が湧かないが、恐らくそのためにレインは俺のデュエルディスクを貸してくれと言ってきたのだろう。その脅威に対抗する力を与えるために。そういえば、そう言い出した時のレインの表情は随分必死だった気がする。
だとすれば、あちらにとってレインは裏切り者となるはず。であれば、機能を停止させられたとしても、おかしくはない。
つまり。
「……俺のせい、か」
吐き出した言葉は、思った以上に刺々しかった。それだけ、俺は自分に怒りを感じていたのである。
俺はそんなこととは知らず、ただデュエルディスクを受け取った。知ってどうにかなっていたとは思わない。けれど、そこまでのことをしてくれたレインの気持ちを察することなく、のうのうとしていた自分に腹が立っているのだ。
思わず拳を握りこむ。何が仲間だ、絆だ。こんなに近くにいた友達一人助けられないで、何を偉そうに俺は言っていたのか。
拳を握る力が強くなる。胸の内に渦巻く怒りを発散するかのように、拳へと力が集約されていく。
やがて力を込めた爪が手の平に食い込み、血が滲もうとした、その時。不意にその手が温かな何かに包みこまれた。
「もう、抱え込みやすいのは変わらないんだから」
「マナ……」
手を包んでいるのは、俺のそれに比べれば小さなマナの両手だった。いつの間に実体化してそこにいたのか、握りこまれていた手に込められた力が、少しだけ緩む。
しかし、力が緩んだのはわかるだろうに俺の手を握ったままマナは離さない。そして、その状態のままマナは俺の前に立つと、正面からぐいっと顔を覗き込んできた。
そして、次の瞬間。俺の手からパッと手を離したマナは、その手を俺の頭の後ろに回すと、そのまま俺の頭を自分の胸へと押し付けた。
「おわっ!? い、いきなりなにを――!」
「んー」
狼狽して問いかけるも、マナからの明確な返答はない。
少し力を込めて逃れようとするが、しっかり抱え込まれているので逃げられなかった。真剣に考え事をしていたので、ふざけられるような気持ちではない。けれど、それは傍で見ていただろうマナにも分かっているはず。
だというのに、こういう行動に出ている以上、無意味なことではないはずだ。それぐらいには信頼している。
だから、俺はひとまずマナの気が済むまでこのままでいることにした。とはいえ、ふざけている時ならまだしも、今の心境で女性の胸に顔を埋めている現状はどうにも恥ずかしいものがあった。
だから、俺はただ黙ってマナの温かさに身を任せた。少し自分の頬が熱くなっている自覚はあったが、今更気にする間柄でもない。
開き直ってみれば、マナの体温はやはり心地いいものだった。ひと肌、というものはそれだけで人を安心させるという。その気持ちがわかるような気がした。
こうして抱かれているだけで、ささくれ立った心が癒されていくような感覚にすら陥る。それはさすがに言い過ぎだとしても、しかし気分が落ち着いたのは確かだった。きっと、マナはこれを見越して今回の行動をとったのだろう。
とはいえ、こうしているだけというのも何か居心地が悪くなった俺は、心を落ち着かせてゆっくりとレインのことについて考え始める。
レインのことは、俺のせいだ。いや、少なくとも俺がきっかけだったのは間違いない。それが今のレインの状態に繋がっているのは、認めなくてはならない事実なのだ。
俺が安易にシンクロ召喚を……アクセルシンクロをやろうとしなければ、こうはならなかった。もしくは、レインの前でフォーミュラ・シンクロンを召喚しなければ、こうはならなかったに違いない。
きっと、あれで向こうに警戒を与えてしまったのだろう。俺にシンクロ召喚のその先に辿り着く可能性があると示してしまったから。
そして、警戒されたが故に俺の身は危険になり、その危機を俺自身が回避もしくは対抗するためにレインは俺のデュエルディスクに手を加えるという選択を取った。
アクセルシンクロを可能にするために。それによって、俺が生き残れるようにするために。それに、レインの命がかかっていると俺は知らないまま。
先程と同じように、自分に対する怒りが湧く。しかし、マナの温かさがその怒りを僅かに和らげてくれた。そして、それによって生まれた心の余裕が、ある疑問を俺に抱かせた。
――自分の命が危ないなんて、レインにだってわかっていたはず。なのに、なんで実行したんだ?
その疑問に辿り着き、俺は思わずハッとする。そうだ、なんでレインは自分の身の危険を顧みずに俺に力を貸してくれたんだ。俺はシンクロ召喚の発展を加速させている男であり、言うなれば破滅の未来へと繋がる道を補強しているようなものなのだ。
ゾーンの陣営にしてみれば、度し難い行為を行っているに違いない。俺自身はシンクロ召喚には破滅の未来すら超える可能性があると思っているが、そんなことはあちらには関係がない。
そう、敵対しているのが自然なのだ。だというのに、何故……。
「……なぁ、マナ」
「なに?」
俺には、わからない。だが、わからなければ誰かに聞けばいい。意見を求め、一緒に考えればいい。
幸いにも俺は、一人ではないのだから。
「たぶんレインは、俺のデュエルディスクを強化したことが原因で、ああなったんだと思う。……けど、その結果自分がどうなるかレインはわかっていたはずなんだ。なのに、なんで俺のためにそこまでしてくれたんだと思う?」
自分の命を懸けてまでレインが何故、そこまでしたのか。
わからないがゆえの問いかけに、マナは「そんなの、レインちゃんじゃない私にはわからないよ」と何でもないように答えた。
聞きようによってははぐらかされたかのような答えだったが、しかし俺は気分を害することもなく「そうか」と返す。何故なら、俺自身わかるはずがないと思っていたからだ。レイン本人ではない以上、それは仕方がない。
だから、今の問いかけは無意味なものだった。そのはずだった。
しかし、マナの口はそこで止まってはいなかった。――けど。そう再び言葉が紡がれ、俺はマナの顔を見上げた。
「けど、たぶん遠也や十代くんと一緒なんじゃないかな」
「……俺たちと?」
予想外の言葉に少々呆けた声で応えると、マナはそうだと頷いた。
「トラゴエディア、三幻魔、破滅の光……。二人は命を懸けたデュエルに勝ってきた。逃げ出さずに、命を懸けてきた。それは、どうして?」
「それは……」
そんなの、簡単なことだ。答えなんて一つしかない。
だから、当然とばかりに答えを返そうとしたところではたと気づく。
……俺がそうだったんだから、レインもそうだったのかもしれないと。その可能性に気が付いた。
それは、俺にとって都合のいい妄想でしかないのかもしれない。けれど、レインならそう思っていたとしても不思議じゃない。
レインはその感情が現れにくい表情ゆえに誤解されがちだが、優しく、仲間を……友達を大切に思えるそんな子だった。レイに向けていた温かな眼差し、俺達と一緒にいた時の笑顔。それは、きっと俺と同じ答えを示している。
だから、マナの問いかけに俺ははっきりと答えた。
「――仲間の、友達のためだ。トラゴエディアも三幻魔も、俺たちの後ろに仲間がいたから頑張れた。破滅の光も、カイザーを助けるために逃げなかった」
俺たちが倒されれば、世界が……ひいては皆に危害が及ぶ。それを認めるわけにはいかないから、俺や十代は戦った。たとえ命が懸かっていようと、皆が背中にいたからこそ俺たちは立ち向かっていっていたのだと、悟る。
それはきっと、俺や十代だけじゃない。たまたま俺たちがその立場にいただけで、万丈目や三沢だってその立場になれば逃げずに戦っただろう。仲間の……友達のために。
万丈目や三沢だけじゃない。翔だって、剣山だって、明日香だって、吹雪さんだって、きっとレイも……皆そうしていたと俺は思う。なら、もしかしたらレインだって……。
「私は、そういうことだと思うな」
マナは最後に短く、そう呟いた。
それに、俺は内心で頷く。本当はレインがどう思っていたのか、俺にはわからない。けれど、レインの立場を考えれば恐らく俺たちは初めてできた彼女の友達だ。
俺たちにとってレインがそうであるように、レインにとっても俺たちは大切な仲間だったと、そう思えるほどには絆があったと信じられる。
なら、きっとそういうことなのかもしれない。俺たちだってレインのためとなれば、きっと命を懸けていた。きっと、そういうことなのだ。
だから、レインは俺のデュエルディスクに改良を加え、俺の身に襲い掛かるだろう脅威から守ろうとしてくれた。そこに込められた思い、それを感じ取った俺の心にさっきまでの曇った感情はなくなっていた。
俺の頭を抱えているマナの手に触れ、そっと外す。さっきとは違い抵抗なく解放された俺は、正面に立つマナを真っ直ぐに見つめた。
もう迷いはない。自分自身の至らなさに後悔するのも、ひとまずは止めた。それよりも、いま俺がするべきことを俺は見つけたのだ。
「――よし、決めたぞ俺は。マナ」
「うん」
ただ頷いて先を促してくれるマナに感謝し、俺は俺自身が決めたレインの気持ちに応える方法を、確固たる意志と共に宣言した。
「絶対にレインを助ける。レインが俺を助けてくれたように、今度は俺がレインを助ける番だ」
言ってしまえば、たったそれだけのこと。それだけの答えを出すのに、随分と遠回りをしてしまった。
うじうじと自分を責めていたって、何も始まらない。レインの気持ちにきちんと応えるには、そうじゃない。俺自身が決めて、俺自身の意思で以って前に進まなければならないのだ。
それが、俺の答え。そして俺自身の意思で、レインを助ける。それが、俺の願いだ。
何故なら、レインは俺の友達で仲間だから。だから、絶対に助けてみせる。
「うんっ、それでこそ遠也だよ」
そんな俺の決意に、マナは笑顔で頷いてくれる。
迷って、俺が自暴自棄になろうと、こうして掬い上げ支えてくれる存在がいる。そのことが、どれだけ幸せなことなのか。
目の前の笑みを見て、俺はそれを再度確認する。そして、最大級の感謝を込めて、今度は俺がマナを抱きしめた。
びっくりしたように小さく声をこぼしたマナの耳元で、はっきり「ありがとう」と告げる。途端、沈黙の後に聞こえた微かな笑み。そして、俺の背に回されたマナの手が軽く俺の背を叩いた。
言葉はなくとも、それが俺の感謝に対する答えだった。それに満足し、俺たちはしばしそのまま互いの体温を感じる一時を過ごしたのであった。
*
俺がそうして己のやるべきことを定めたように、皆もそれぞれの思いを経て自分が何をするべきかを決めたようだった。
まず三沢だ。三沢は、自分も何か力になれるかもしれないと言ってツバインシュタイン博士の元に身を寄せることを決めた。もともと誘われてはいたらしいが、卒業してからでもいいかと思っていたらしい。
しかし、レインの件があって自分にも何かできることがあればと三沢は考えたようだ。その結論が、ツバインシュタイン博士の下での研究だったのだ。
俺がペガサスさんに連絡を取っていた傍らで三沢はきちんと博士に話をしていたらしく、ツバインシュタイン博士も三沢に協力的らしい。基本は新たなエネルギーの研究の手伝いが主になるらしいが、世界最高峰の頭脳の元で色々とやってみるとのこと。
そして三沢がこの島から旅立つ日、俺たちの見送りを前に三沢は笑っていた。
「ついでにデュエルの研究でもしてくるさ。……そうだな、乗り物に乗ってデュエルとかどうだ? 自転車でのサイクリング・デュエル、なんてな」
冗談交じりだったのは、湿っぽい空気になるのを嫌ったのだろう。三沢は笑顔に見送られて、一時デュエルアカデミアを離れることとなった。
また、斎王は島を離れて養生することとなった。破滅の光に長期間憑依されていたことで、些か身体に無理が生じていたらしい。レーザー衛星ソーラに備え、身体をデータに溶け込ませていた妹の美寿知も元に戻り、妹と一緒に本土で過ごすと決めたようだった。
タイタンもまた島を去って行った。ジェネックスが終わった以上当然のことだったが、レインを助けてもらったことには感謝してもしきれない。本人は俺と十代に対する借りを返しただけだと嘯いていたが……。またいつか会いたいものである。
そして今日。目を覚ましたカイザーが島を発つ。消耗していた身体も元の調子を取り戻した今、いつまでも休んでいられないと笑っていた。
「お兄さん……」
「……ふ、今生の別れではない。翔、また会う時を楽しみにしている」
港にて見送りに来た俺たちを前に、カイザーは常と変わらぬ悠然とした態度で俺たち一人一人の顔を見渡した。
そして俺を見た時にその動きが止まり、口を開く。
「すまないな、遠也。お前とのデュエルがあんな形になったのは、本当に悔やまれる」
「またその話か? 気にするなって。今度はしっかりしたデュエルをすればいいさ」
俺がそう言えば、カイザーはああと頷くが……本当にわかっているのかね。
あれ以来、目を覚ましたカイザーは何度かこうして俺に謝ってきた。せっかく互いに約束を交わしたというのに、その約束があんな形になってしまったからだ。
ただ約束が叶わなかっただけならよかった。それが、本人の意思に寄らぬところである意味において叶っていたことが、カイザーに後悔の念を抱かせているようだった。何より、破滅の光の意思に負けた己の弱さが許せないらしい。
とはいえ、それを気にしている様子もある時に校長と二人で出かけたのを機に鳴りを潜めていたのだが……最後とあって再燃したようだった。
そんなカイザーは、見送りのために時間を取ってこの場にいる校長に目を向ける。そして「師範……」と呟いたカイザーに、校長は大きく頷いて答えた。それに一度頭を下げ、カイザーは船へと続くタラップに足をかけた。
「……皆、また会おう」
そう言って甲板へと続く階段を上っていくカイザーの背に向けて、十代を始めとした俺たちはそれぞれ別れを惜しむ声やカイザーの活躍を祈る声をかけた。それに振り返ることなくただ手を挙げてカイザーは応えた。
その姿が船に乗り込んで見えなくなるまで声をかけ続け、そして船が出港してからは手を振ってその姿を見送る。
カイザーもまた、レインのことについて何か力になれることがないか探してみると言ってくれた。カイザー自身はレインとそれほど親しいわけではないが、曰く「お前たちの仲間なら、俺の仲間だ」ということだそうだ。
そして、島に残る俺、マナ、十代、翔、剣山、明日香、万丈目、吹雪さん、レイ……。皆も今回の件には思うところがあったらしく、全員一致でレインを助けようと決意した。
具体的に何が出来るのか、まだわからない。けれど、たとえ普段通りの日常を過ごしていたとしても、何か解決に繋がりそうなことがわかれば報告し合うことを決めた。
俺たちだけじゃない、島を離れる皆も、そして校長や鮎川先生も、ペガサスさんだって。皆がレインを助けようと動いてくれる。
レインには、気付けばこれだけ多くの仲間がいるのだ。そして、仲間の力を結集すれば、きっと叶えられないことなんてない。
だから、レインを含めた皆で笑い合う日がもう一度来ることを願って。
離れていても繋がっている決意を胸に、俺たちはそれぞれ新たな一歩を踏み出していくのだった。
二年生 了