校舎内でデュエルゾンビと化した生徒たちが徘徊している、そんな時。
薬品や生活物資の補充を目的に潜水艦へと向かっていたアモンは、共に向かった十代らともども無事に学園へと帰りついていた。
明日香や剣山らと合流後、襲い掛かってきたデュエルゾンビ。アモンは彼らを逃がすために「自分が食い止める」と提案することで彼らから離れることに成功。その後、静かに図書室へと足を踏み入れた。
この非常時に読書を楽しむ者はおらず、図書室の中は暗い闇に包まれている。しかし、現在。この場所には明かりが灯っていた。
しかしそれは電気によるものではない。揺らめく朱色の煌めきは原始的な蝋燭による照明であることを示している。
その光源を目指し、アモンは歩を進める。そして辿り着いたのは、図書室の中央部分。立ち並ぶ本棚の空隙となるその小さな広場には、ゆっくりと読書を楽しめるように少々大きめのテーブルが設えられている。
しかし、今やそのテーブルはある一人の独占状態にあった。置かれた燭台がテーブルの奥に座る少年の顔を照らし出す。アモンはその顔を複雑な面持ちで見つめた。
コブラの元から持ち去り、アモンが己の力としようとした存在。心の闇が強い者を求めていたはずのその存在がアモンを選ばず、目の前の少年を選んだためだ。
この異世界へと自分たちを連れてくるほどの大きな力。それ程の力を手に入れれば、弟のためと押し殺してきた自分の欲望を叶えられる。そう思っていたアモンにとって、この少年の存在は受け入れがたいものだった。
この少年は、自分よりも強い心の闇を持っているというのか。弟殺しにすら手を染めかけた自分よりも。結果がその答えを示しているとわかっていても、考えずにはいられない。
アモンにとっては、自らが手にするはずだったものをかすめ取られたようなものなのだ。それが自分勝手な決めつけであったことをアモンは自覚しているが、だからといって納得しきれるものでもなかった。
「――やぁ、どうだったアモン」
目の前の少年が、気安げに語りかけてくる。
それを前に、アモンは小さく笑った。その相手にひとまずとはいえ付き従っている自分が、滑稽に思えたからだ。
だが、それもまた自分勝手な感傷に過ぎない。アモンはすぐに笑みをひっこめると、ラーイエローの制服の上から黒いマントを羽織った少年――加納マルタンを見つめた。マントから覗く左腕は、悪魔のごとき異形の腕となっている。
「十代たちは全員無事に帰還した。薬品や食糧を手に入れてな」
端的に今回の結果を伝える。すると、大きな存在を身に宿したマルタンは満足そうに頷いた。
「そうか。さすがは僕の十代だ。あの程度の妨害は、君にとって何でもないことだったね」
妨害とは、道中《岩の精霊 タイタン》に一行を襲わせたことである。ここにはいない十代に語りかけるその口調は、アモンでもわかる程に熱がこもっていた。
どうもこの存在は遊城十代にご執心のようだが、やっていることは彼のためになっているとは思えない。アモンは目の前の存在の不可解さに改めて怪訝を抱きながら、更に言葉を続けた。
「しかし、この学園の現状は何だ? あのゾンビのような生徒たちは一体……」
アカデミアに着いた時、アモンは驚いたものだった。何故なら、生徒たちの多くがリビングデッドのように生気を失くして徘徊していたからだ。
実際、ここまで来る途中もデュエルと称して襲われている。なんとか自慢の身体能力で振り切ったものの、不気味であったことは間違いない。
デュエルを受けている生徒も見かけたが、アモンはそうしようとは思わなかった。勝っても負けてもどうなるかわからなかったからである。
そして、そんな事態を引き起こせるような存在は目の前の存在を置いて他にいない。アモンはその確信の下、マルタンに問いかけた。
マルタンの口元が愉悦に歪む。
「ああ、あれかい? あれは……そうだな。言ってみれば前座みたいなものだよ」
「前座だと?」
マルタンは頷く。
「そうとも。僕の望む結末までに繋がる1ピースさ。ふふ……」
マルタンは薄く笑いながら、アモンに説明していく。
あれはデュエルをただひたすら挑む亡者のような存在だと。倒されても復活し、決して数が減ることはない。そして彼らに倒された者は同じく亡者となり、他の者に牙を剥く。そういう存在にしてある、と楽しそうに語る。
アモンとしては、冷や汗ものの話だった。そこまで自由に人間を操ることが出来るという事実に恐怖したのだ。しかし、同時にだからこそ手に入れたいとも思う。恐怖すら感じる強大な力だからこそ、手に入れる魅力もまた巨大だったのだ。
「彼ら一人一人の強さはそれほどでもない。けど、倒してもきりがない相手というのは、厄介なものだろう?」
「……確かにな。ここに来る途中に皆本遠也がデュエルしているのを見たが、やりにくそうにしていた」
相手が生徒であるうえに、倒しても復活してくるのだ。実に厄介だと言える。
アモンが納得の表情をしていると、不意にマルタンの顔が歪んだ。ついさっきまでの笑みから一転、その唐突さにアモンが目を見張る。
「皆本、遠也ね……」
忌々しげな口調は、遊城十代を語る時とは対照的だ。
だからこそ、アモンは気になった。十代とは反対の意味とはいえ、この存在の関心を引いたことに。
「皆本遠也が、どうかしたのか?」
だから、目の前の存在にとって遠也がどんな存在なのか尋ねてみる。わからなかったから、その程度の軽い質問。
しかし、その返事はアモンに襲い掛かった暴風であった。
「くッ……!」
衝撃波に吹き飛ばされ、アモンは床に背中を打ちつける。本気ではなかったようだが、気分を害したようだと痛みに顔を顰めつつアモンはゆっくり立ち上がった。
「気に入らない奴さ……! 僕がいない間に、十代に取り入っていた男だ! 親友だって? 本当に忌々しい……!」
仲のいい友人という意味なら、ヨハンも十代にとってはそうだった。親友かと聞かれれば、十代は遠也とヨハンの名を挙げることだろう。
しかし、ヨハンと十代の付き合いは短く、それぐらいならば気の迷いだと受け入れる度量があった。十代だって、それぐらいの間違いは犯す。なにもマルタンに宿る存在は、十代に完璧を求めているわけではないのだから。
しかし、遠也は違う。既にこの時点で二年も十代の側におり、かつ十代はそれを快く思っているようだ。
それが、この存在には我慢できない。二年ともなれば、それは気の迷いではない。十代が自分の意思で受け入れていると見るのが当然だった。
気に食わない。十代に真に受け入れられるべきは自分ひとりであるべきなのだ。
ゆえに、彼あるいは彼女は、遠也のことが嫌いだった。
激情に身を委ねたあと、マルタンはすとんと椅子に腰を下ろした。そして立ち上がったアモンに目を向けると、「ああ、ごめん」と形だけの謝罪を口にした。
「もう行っていいよ、アモン。君に頼みたいことが出来たら、またよろしくお願いするよ」
「ああ……」
ひらひらとマルタンが手を振れば、痛みが残るのか少し表情を硬くしたアモンが図書室を辞した。
それを見送り、一人になったマルタンは椅子に深く腰掛ける。揺らめく蝋燭の炎が、その狂気に歪んだ顔を照らした。
「ふふ……楽しみだなぁ。十代、もうすぐ君に会えるよ。それまでに最高のお膳立てをしないとね。君は気に入ってくれるかな? ふふ……」
今の騒動も、全ては十代との再会の時のため。その瞬間の甘い夢想を噛みしめながら、マルタンはくつくつと笑みをこぼすのだった。
*
俺とパラドックスは襲い掛かってくるデュエルゾンビと化した生徒たちを相手に、大けがを負わせないよう細心の注意を払って攻撃をしていた。
「《シューティング・ソニック》!」
「《黒炎弾》!」
攻撃の指示に従い、スターダスト・ドラゴンとSin 真紅眼の黒竜が近づいてきた生徒をまとめて吹き飛ばす。
が、しばらくすればまた立ち上がって向かってくることだろう。何度目かもわからない行動だが、しかし怠るわけにもいかない。保健室には鮎川先生とレイがいるのだ。なんとしても二人は守らなければならない。
と、その時。保健室の中から爆発音が鳴る。俺とパラドックスは思わず保健室の扉に目を向けた。
間違いなく何か異変が起こったのだ。果たして鮎川先生たちは無事なのか。もしものことを危惧していると、扉の中――保健室からマナの切迫した声が届く。
「遠也! 天井から生徒たちが……! 私が二人を守ってるけど、このままじゃジリ貧だよ!」
「く……」
天井裏を移動してきたのか。意外に頭が回るというかなんというか。ゴキブリじゃあるまいし。
しかし、そんなことを言っている場合ではない。侵入経路が出来たということは、もはや籠城も大して意味を為さないということだ。マナがいてくれるからすぐに駄目になることはないだろうが、それでも安全度は遥かに下がったとみていい。
ここまでくると、レイを動かさないメリットよりも危険地帯に置いたままのデメリットの方が勝ってきたと言えるだろう。
なら、取るべき行動は一つだ。
そう俺が内心で決断したその時、パラドックスは再度Sin 真紅眼に黒炎弾の指示を出す。そして、すぐさま保健室に入っていった。
「パラドックス!?」
一体何をするつもりなのか。そう思った直後、レイを背負ったマナと救急道具らしき箱を持った鮎川先生を連れたパラドックスが出てきた。
ただし、その連れ方は膝の裏と背に手を回して抱え上げるというもの。
つまり、お姫様抱っこだった。
「うわぁ」
「あ、あんまり見ないで……遠也君……」
俺の視線を受けた鮎川先生はめちゃくちゃ恥ずかしそうだった。さもありなん、こんな時にこんなロマンチックな状態になるとは想像もしていなかっただろうから当然と言える。
そして、それをしているパラドックスはというと、全く意に介していないようで平然としていた。
「行くぞ、遠也。ここにこだわる意味は最早薄い。お前にもわかっているだろう」
「ああ、まぁ……」
元から俺もここを離れることを決めたところだったので、文句はない。
そして、移動するからには最速が好ましい。運動能力に疑問がある鮎川先生に走らせないのは、正しい選択であり合理的だ。だからこそ、パラドックスも鮎川先生を抱えているのだろう。
なら、もう突っ込むまい。どのみち、そんな時間もないのだ。
「マナ、レイを俺に。お前には進路の露払いを頼めるか?」
「うん、わかった」
即座に頷き、マナは背負っていたレイを俺に託す。俺はパラドックスがしているようにレイを抱きかかえ、そしてマナはそんな俺たちの先頭に立った。
さて、これで準備はOK。俺たちは一度顔を見合わせて出発の確認を取る。
そして、
「スターダスト・ドラゴン!」
俺の声に応え、スターダストが真空の光線を放ち、進路上の生徒たちを吹き飛ばす。それを見てとった直後、俺たちは一斉に走り出した。
保健室を離れ、ひとまずは安全と思われる体育館を目指す。あそこには多くの生徒が集まっているはずだし、なによりデス・デュエルで倒れた生徒たちを休ませるために毛布なども持ち込まれているからだ。
レイを休ませるには最適な場所のはず。そう思って足を動かし、先行するマナが角を曲がった瞬間。曲がり角の向こうから「うわっ!?」という聞き慣れた声が耳に届いた。
今の声の持ち主にはっとしつつ、俺は急いで角を曲がる。するとそこには、突然やってきたマナに驚いた顔をしている十代とヨハン、オブライエンがいた。
そして、マナの後にやってきた俺たちと視線が合う。
「三人とも! 無事に帰ってきたのか!」
「遠也! ああ、ジムとアモンも無事だぜ! 今はここにいないけどな!」
それに、と十代が続け、その手に持ったケースを掲げてみせた。
「薬もちゃんと持ってきたぜ!」
「でかした、十代!」
得意げな顔を見せた十代に賞賛を送る。
これでレイの治療の見込みは立った。あとはここを離れて落ち着ける場所に行くだけである。
その時。
「横だ、遠也!」
何かに気付いたヨハンが声を上げる。
曲がり角で三人と鉢合わせた俺は、言うなればT字路に差し掛かる手前にいた。すなわち、直進していた場合の道の先にいる生徒から丸見えだったのだ。
デュエルディスクを構え、今まさにモンスターカードを実体化させようと生徒が構える。パラドックスも俺も人を抱えていて咄嗟に動けない。瞬時にオブライエンがディスクを構えようとしたが、
「――雑魚は引っ込んでいろ! 《XYZ-ハイパー・ディストラクション》!」
そんな声と共に轟音が響き、生徒たちが空中を舞ったことでオブライエンがデュエルディスクを展開することはなかった。
轟音、恐らくは攻撃によって生まれた煙の向こうから、誰かがやってくる。といっても、今の声や叫んでいた攻撃名。それに、「やーん、兄貴カッコイイ~ん」「さっすがぁ」「いかすぅ~」と続く三つの声を聴けば、おのずとのその答えは出ていたが。
果たして煙の向こうから姿を現したのは俺たちの仲間の一人。
「ふん、やはり貴様らは俺がいなければダメなようだな」
「万丈目!」
いやに気障っぽく格好つけた万丈目が颯爽と歩きながら現れる。
たった今その背後で消えていったのは《XYZ-ドラゴン・キャノン》か。万丈目のデッキでエースを担う一体であり、強力な機械族モンスターだ。
やはりいざという時には決めてくれる男であると改めて思うが……しかし、万丈目は確か食糧保管庫を守っていたはず。なんでここにいるのだろうか。
そのことを疑問に思うが、しかし今はそれどころではない。
「サンキュー、万丈目! じゃ、行くぞ!」
「なに? 遠也、貴様はもっとこの万丈目サンダーを敬う気持ちを……って、そいつはレイじゃないか! 薬はどうした!」
言葉の途中で俺の腕の中で苦しげに吐息を漏らすレイに気付いた万丈目が、驚いた声を上げる。
恐らくは俺と十代たちが一緒にいるのを見て、レイのことなどは既に解決したと思っていたのだろう。
だが、実際には違う。
「今十代たちと合流したばかりなんだよ! 早く落ち着けるところまで行かないと……!」
「ちっ、ならばこちらの道に来い! ある程度の生徒は蹴散らしておいたからな、少しは通りやすいはずだ!」
確かに、たったいま万丈目が通ってきた道ならば、他の道よりは安全が確保されているはずだ。それは途中の妨害が少ないということであり、そのぶん早く目的地に着ける可能性が上がるということである。
ならば否はない。俺たちは揃って万丈目の下へと足を向けた。
「さっすが兄貴ぃ~。伊達男ねぇ~ん」
「貴様らはさっさと先行して偵察にでも行ってこんかぁ!」
顔の周りをイエローが飛び回り、それを鬱陶しがった万丈目はおジャマ三兄弟をまとめて道の先へとぶん投げる。
サンダーのいけずぅ~、とドップラー効果を残して飛んでいったおジャマたちを苦笑して眺め、マナがその後を追って飛んでいく。
先行はおジャマたちとマナに任せておけば大丈夫だろう。なら、あとは一心に体育館を目指して走るだけだ。
「よし、行くぞ皆!」
俺が声をかけ、皆が頷く。
そして、俺たちは背後から迫るデュエルゾンビたちの声を振り切るように勢いよく地を蹴った。
万丈目がなぎ倒してきたのだろう通路に転がった生徒たちの間を抜けるように走り、俺たちは幸運にも足を止めることなく最速で体育館へとたどり着くことが出来た。
中に入ってみれば、そこにはデス・デュエルの頃からいて見覚えのある者や、俺たちと同じように逃げてきたのだろう未だ息の荒い者もいる。
「十代! 遠也!」
「鮎川先生もいるドン!」
「おおー、シニョールたち無事だったノーネ!」
「心配したのでアール!」
そこに、聞き慣れた声が耳朶を打つ。
見れば、明日香と剣山、クロノス先生とナポレオン教頭が安堵と喜びの表情を浮かべて俺たちに駆け寄ってきていた。俺も仲間が無事であったことを知り、知らず表情に笑みを浮かべた。十代たちは俺たちのところに来る前に明日香たちに会っていたらしいので無事とは聞いていたんだが、やはり自分の目で見るのと聞くのとでは安心感が違う。
この現状についてなど、話したいことはたくさんある。だが、今は何よりもレイの治療のほうが先だ。
俺たちはすぐに空いているスペースに向かい、毛布を敷いてレイを寝かせる。そして持ってきた薬を鮎川先生に渡し、治療をお願いする。
鮎川先生は力強く頷いた。
「任せておいて。明日香さん、手伝ってもらえるかしら?」
「あ、はい!」
助手として明日香を指名して明日香がそれを受諾すると、鮎川先生は迅速かつ慣れた手つきで治療を始める。
その直後、十代たちを保健室に行かせるために襲ってくる生徒の足止めをしていたというヨハン、ジム、アモンが体育館に合流してくる。そしてレイを前に作業をする先生を見ると、俺たちと共に固唾を呑んで見守るのだった。
レイの治療は、マナが回復の魔術を素早くかけていたこともあったのか、先生曰く充分薬でどうにかなる範囲であったらしい。明日香の手伝いもあってか、治療は比較的スムーズに終えることが出来たようだった。
もう大丈夫。そう言って肩の力を抜いた鮎川先生を見て、俺達の口から吐息が漏れる。知らずこちらも息を詰めていたらしい。喜びと安堵が混じる苦笑の輪が広がった。
俺は少し身を乗り出してレイの顔を上から覗き込む。すると、その気配に気づいたのかレイはうっすらと目を開ける。茫洋とした瞳と視線が交わった。
「……遠也さん……?」
「ああ。よく頑張ったな、レイ。あとは俺たちに任せて、ゆっくり休め」
出来るだけ穏やかに、言い聞かせるよう言えば、レイは安心したように「ん」と返事だけをして再び目を閉じる。
そして再度小さな寝息を立てはじめた姿にほっと一息つき、俺は居並ぶ仲間たちに顔を向けた。
十代、ヨハン、万丈目、ジム、オブライエン、アモン、パラドックス、明日香、剣山。クロノス先生とナポレオン教頭は他の生徒の様子を見に行くと言ってさっき離れて行ったから今いないのはいいとして……一人足りないことに気が付く。
「翔はどうしたんだ?」
すると、万丈目やパラドックスを除く全員の顔が曇った。その表情に俺は悪い予感を抱かずにはいられなかった。
「まさか……」
「そのまさかだ。俺達は保健室へと向かう途中で、デュエルゾンビとなった翔に会っているんだ」
苦々しげな表情でヨハンが言った事実。予感が的中したことを知り、俺もまた自然と表情が厳しくなる。
「ち、あの馬鹿。油断しやがったな」
万丈目が忌々しげに毒を吐く。
だが、言葉の裏を返せば油断さえなければこうはならなかったと言っているのだ。言い方こそキツイが、つまりはそれだけ翔のことを信じているということである。
本人がその意識で口にしたのかはわからないが、友の身を案じる気持ちを感じることができる言葉であった。
できれば翔を早く元に戻してやりたいが、私情だけで先行してもいいことはないだろう。なにせ百人近い生徒がこちらにはいるのだから。一人の勝手が全員の危険に繋がっては目も当てられない。
翔には悪いが、今はこちらの態勢を整えることを優先した方がいいだろう。実際、昨日まで仲間だった人間が襲い掛かってくるという事態に生徒たちには動揺が広がっているようであるし。
その考えを伝えると、皆も同意してくれた。が、十代や剣山など翔と付き合いの深い奴ほどその顔には悔しさが見て取れる。今すぐにでも向かいたい気持ちなのだろうことは、同じく一年生のころから一緒にいる俺にもわかることだ。
しかし、今は我慢の時だ。そうしてどうにか折り合いをつけたところで、ふと気になっていたことを思い出した。
「万丈目、お前食糧保管庫はどうしたんだ?」
おジャマを鬱陶しそうに見ていた万丈目に声をかける。
そう、万丈目は食糧保管庫の警備を任されていたはずなのだ。だというのにここにいるということは恐らく何か異常があったということ。まぁ、この状況を考えれば察しはつくが……。
それでも、詳細を把握しておくに越したことはない。俺が問いかけると、万丈目は「ああ、そのことか」と頷いて口を開いた。
「こっちにもあのゾンビどもが押し寄せてきてな。最初は相手をしていたんだが……奴らは倒しても倒してもきりがない」
その時のことを思い出したのか苛立ち交じりに言う。が、すぐにその顔は得意げなものへと変化していった。
「そこで、俺は食糧保管庫を離れることにしたわけだ。どうせ鍵はトメさんしか持っていないうえ、あそこの扉は特別頑丈に作られているからな。知性の欠片もない奴らでは到底突破できんだろうさ」
『まぁ、要するに逃げたのよねぇ~ん』
「人聞きの悪いことを言うな! 戦略的撤退と言え、戦略的撤退と!」
おジャマ・イエローの余計な一言で得意げ一転憤慨しはじめた万丈目は、イエローをひっつかんでその頬をぐいぐいと引っ張っている。半泣きで許しを請うイエローを苦笑して見ていると、ヨハンが不意に「いや」と呟いた。
「万丈目の取った手は最善だ。保管庫の扉は確かに頑丈だと聞いているし、数で襲ってくるあいつらに付き合っていたら万丈目までやられていた可能性もある」
「Yes。ジェネックスで優勝するほどの実力者が敵に回らずに済んだのには、それだけで価値があるってものだ。保管庫のほうは、後で取り返せばいいだけだからな。一人で対抗しようとしなかったのはCoolな判断だぜ」
更にジムも続けて万丈目の行動を支持すると、万丈目は「はーっはっは! 当然だ! この万丈目サンダーに間違いはない!」と自信満々に笑い始める。
それを呆れたように見る剣山と明日香。十代やアモン、ヨハンにジムも、すぐに機嫌を直した万丈目には肩との力が抜けたのか小さく笑みを浮かべている。オブライエンは相変わらずいつもの表情のままだが、意図せずして空気がほぐれたのは確かだった。
「それじゃ、俺が今から保管庫を見に行ってくるわ。もう気付けば夜だしな……今晩の食事には間に合わないだろうけど、明日の分を持ってこないといけない」
俺がそう言って名乗り出ると、全員が了解とばかりに首肯する。
「だが、単独行動を許すわけにはいかないぞ」
「わかってるって、オブライエン。つーわけで、誰か一緒について来てくれないか?」
マナが常に傍にいるとはいえ、形式上で俺一人が行動するということになるのはマズい。こういう閉鎖された環境で好ましくない前例を作ることは避けるべきだ。オブライエンもそれを思って言ったのだろう。
だが、俺もそれほど考えなしではない。オブライエンに頷いて同行する人を募れば、何人かがぐっと身を乗り出したのがわかった。
「私が行こう」
だが、彼らが口を開く前に名乗りを上げた男がいた。
皆の輪からわずかに外れてこちらを見ていたその男に、俺は視線を移す。
「パラドックス、いいのか?」
「問題はない。それとも、同行者が私では不服だとでも?」
「まさか! むしろ心強いってもんだ」
にこりともしない無表情で佇むパラドックスの言葉だったが、俺は言葉通りにパラドックスの同道を頼もしく思っていた。
なにせこの男、歴代主人公三人を相手取ってあと一歩まで追い詰めた男なのである。俺が勝てたのは、アクセルシンクロやエクシーズ召喚といった本来はまだないであろう要素を駆使したからに他ならない。
そんな人間が一緒に来てくれることほど心強いものはないだろう。俺が心底からそう思っていることが分かったのか、パラドックスは鼻白んだような表情になる。パラドックス的には違う言葉が返ってくると思っていたらしい。
まぁ確かに元々敵同士ではあるが、昨日の敵は今日の友とも言う。むしろパラドックスのことを敵だとはまったく思っていなかったり。それゆえの反応が、どうにもパラドックスには収まりが悪いようだった。
「なぁ、遠也」
「ん、どうした十代」
そんなパラドックスの態度に苦笑していると、十代が俺に口を寄せてくる。
問い返せば、十代は仏頂面で立つパラドックスに目を向けた。
「お前がそこまで言うってことは、あいつ強いのか?」
どこか期待を滲ませた声で言う十代。
何度も対戦してきて互いに実力を認め合う仲である俺がそうまで認める相手、ということで十代は興味を持ったらしい。デュエル馬鹿としては気になって仕方がないのだろう。
とはいえ強い相手を求めるその気持ちはわからなくもないので、俺は素直に頷いてみせた。
「ああ強い。俺だと、十回戦ったら一回は勝てるんじゃないかってレベルかな」
「え、マジかよ!」
俺の言葉に驚愕を露わにする十代。そして同時に、パラドックスに対して挑戦的かつキラキラと期待に満ちた瞳を向け始める。
それをどこか引き気味に受けるパラドックスは、短い付き合いながらも新鮮である。
「なあなあ! 後ででいいからさ、俺とデュエルしてくれよ、パラドックス!」
「……気が向けばな」
さすがのパラドックスも純粋にデュエルがしたいと言う気持ちを無碍にすることには罪悪感を感じたのだろうか。それとも俺とデュエルをした時以降に何か心境の変化でもあったのか、らしからぬ返答を十代に送る。
それに「よっしゃ!」と喜ぶ十代だが、直後にヨハンらから「状況が状況だからデュエルをしている時間はないぞ」と窘められていた。
無論その辺りは十代も分かっていたらしく、帰ってからの話だと弁明している。その光景を眺めつつ、俺は「さて」と気持ちを区切る呟きを放った。
「それじゃ、早速行ってくる。戸締りや皆のこと、それにレイのことも、頼んだぞ」
俺が改めて言えば、その場にいる全員が力強く頷いた。
「ああ、任せとけ遠也。お前こそ無理すんなよ」
笑って言う十代。それに対して俺が拳を突きつけると、察した十代も拳を出して互いにこつんと合わさる。
視線を交わらせニッと笑うと、俺は一度パラドックスに目を向けて体育館の出入り口に向かう。共に歩きだしたパラドックスの存在を感じつつ、俺たちは食糧の確保と保管庫の様子を見るためにゾンビ蠢く廊下へと一歩踏み出すのであった。
夕食を運ぼうとしていたトメさんから鍵を借り、食糧保管庫を目指す俺とパラドックスは出来るだけデュエルゾンビに見つからないように気を払いながら進んでいた。
デス・ベルトを着けていないパラドックスがいるので、エナジーを取られて倒れる心配こそないものの、やはり相手をすれば立ち止まることになるので時間を取られてしまう。
出来るだけ迅速に目的を達したい今、それは悪手であった。
その点はパラドックスも賛成なようで、大人しくスニーキングミッションに付き合ってくれている。合理的と判断すればある程度の融通をきかせてくれるのがパラドックスという男のようだった。
逆を言えば合理的でない時は一切妥協しないということにもあるが、そこらへんは科学者らしいところと言えるかもしれない。
そんなことを考えながら通路の角から先に繋がる道を見る。そろそろ保管庫に近づいてきたはずだが、今のところ見える範囲にゾンビたちはいないようだ。
ホっと一息ついた時。
「遠也」
突然パラドックスに名を呼ばれ、俺は「どうかしたのか?」と振り返って周囲を見る。
しかし特に異常はない。ならどういうことかと思ってパラドックスを見れば、パラドックスは何が気に入らないのか苛立たしげな目で俺を見ていた。
心当たりがない俺は、首を傾げるしかない。それを見て、今度は「やはり、理解できない」と呟く。何のことを言っているのやらさっぱりである。
俺が全く理解できていないことを悟ったのか、パラドックスは目つきを鋭くさせる。そして、強い口調で俺に言葉を浴びせる。
「遠也、お前は何故そうも警戒心がない。確かにお前の命を今は奪うつもりはないと言ったが、しかし命を奪わずにお前から力を奪うことなど私にとっては容易いこと」
その目が睨む先にあるのは、俺のデッキとデュエルディスク。なるほど、確かにパラドックスの言う通りだ。サイボーグであるパラドックスと、何の訓練も受けたことのない俺では抵抗するまもなく両方とも奪われて終わりだろう。
「お前たちを見ていて、私は既に知っている。遠也、お前がいなくとも奴らは元の世界への帰還方法を探し続けることを。お前の存在は帰還の助けにはなっても、必要不可欠ではない」
「………………」
「それに三沢という男、まだまだ荒削りだが量子力学を修めたというのは本当らしい。私が協力すれば、脱出への理論だけならば確立できるだろう」
パラドックスは、ただの事実であるというようにそう言った。
俺はそれを聴いて、まぁそうだろうなと思う。他にも多くの生徒を抱えている以上、たとえ俺がいなくなっても、落ち込みこそすれ十代たちはすぐに帰還への行動を再開するだろう。皆の責任感は強い。
それに、俺に何が出来るわけでもないというのも間違いない。せいぜいデュエルしかできない男だ。論理立てて脱出方法を模索している三沢よりも役に立てるとは言い難かった。
そしてパラドックスが出来ると言った以上、脱出への理論だけなら既に道が見えているのだろう。なら、一層俺のことはどうなってもいいはずだ。
さっきの共闘も、あれはパラドックスが治療を受けた鮎川先生に借りを返すためにやったこと。安全な場所まで鮎川先生を運んだ今、借りは既に返されていると見ていいはず。
つまり、何が言いたいかというと。確かに俺は今、何をされても不思議ではないということだった。
『……っ!』
マナが剣呑な言葉を聞いてパラドックスに杖を構える。何があっても対応できるように、ということだろう。
パラドックスに現状の危険性を突きつけられ、そして睨みつけられているという状況。その中で、俺が返した反応といえば。
「なんだ、そんなことか」
だった。
これにはパラドックスだけではなくマナも目を見開いて俺を見る。
だがしかし、そんなの俺からすれば今更である。これまでだって俺をどうにかしようと思えばパラドックスにはいくらでも手段はあったのだ。俺は所詮素人の高校生だ。力尽くで来られても負けただろうし、デュエルでだってもう一度勝てるかはわからない。
そんなことは承知の上だったが、レイのことやデュエルゾンビの件などもあり、正直そんなことまで気を回していられない状況だったのだ。
だから、パラドックスのことはそうなったらそうなった時だと俺は割り切っていたのである。
あの時のデュエルで、俺は俺なりの考えをパラドックスに見せたつもりだ。そのうえで全てを否定して全力で俺を消しに来るなら、きっと今がどうにかなってもやがては負けることになる。
向こうは何と言っても超科学力を持った未来においても天才と称されるべき科学者集団なのだ。そのうえデュエルも強く、社会的な影響力も強大。勝てる要素が見当たらなかった。
なんとかデュエルに持ち込んで勝ったに過ぎない以上、向こうがそのつもりなら結局遅かれ早かれ俺は助からない。なら、気にするだけ損というものである。
だから、俺は信じることにしたのだ。自分の気持ちを、自分の考えを。自分が信じたそれが、きっとパラドックスにも何かを伝えてくれていることを。
そして同時に、かつて誰かが言った言葉を俺は信じたのである。それはこの世界に来てデュエルをし続けたことで、俺が実感した言葉でもあった。
「“デュエルをすれば、それはもう仲間だ”」
「――なんだと」
訝しげに眉を寄せたパラドックスに、俺は表情に笑みを乗せて肩をすくめた。
「どこの誰だったか、そんなことを言っていた奴がいたんだよ。確かに人間、色々なしがらみがあるだろうけどさ。デュエルで、俺たちはお互いのことを沢山知ったはずだ」
「………………」
「憎しみも、恐怖も、怒りも……俺はお前から痛いほど知った。けど、お前だって俺の気持ちを少しは知ってくれただろ?」
デュエルによって俺たちは言葉以外のものを受け取っているはずだ。俺だけじゃない、デュエルをした以上、パラドックスだって何かを感じただろう。俺の言葉に怒りをあらわにしたことから、それは確かなはずだ。
そして、互いのことを知ったなら俺たちはもう他人じゃない。そして今は共にこの世界の脱出を目指す間柄だ。どんな関係なのかと聞かれれば、答えは一つしかない。
「そうだ、もう俺たちは何も知らない関係じゃない。デュエルを通して俺はお前を知ったんだ。なら、俺にとってお前は仲間だ。敵同士だった・・・のさ、俺の中ではな」
そして仲間なら、信じるものだ。たとえその背景に何があっても。
俺だって十代たちに隠し事をしている。俺の出身や知識のことなどがそうである。もちろん俺だけじゃない。皆だってそれぞれ何かしら人には言えないことを持っているだろう。大なり小なり、それが人間というものだ。
そんなのは当たり前のことであり、気にするようなことではない。ただ俺にとって皆は互いのことを信じ合い、気のいい奴らだから好きなだけである。
きっと皆もそれは同じだ。なら、仲間なんてそんなものだ。
“ああ、いい奴だな”――過去に何があっても、一度だってそう思えればそれはもう仲間と呼べる存在なのである。俺の中では。
とはいえ。
「もちろん、そんなの俺の考えだからな。押し付けるつもりはないさ。けど、俺はそう思ってるってこと。それだけのことだよ」
そう言い切って、俺は再び通路の先の様子を見る作業に戻る。
無論、信じた結果痛い目を見ることだってあるだろう。けど、なんというか俺の場合、誰かを嫌いになるというのが苦手なのだ。なるべくいいところを見つけて、誰とでも仲良くなれたらいい。そんな考えなのだ、俺は。
世の中を舐めてるなぁと我ながら思うのだが、まぁ疑ってかかるよりはいいかなと自己完結。存外そんな自分を俺自身が嫌いでないあたり、どうしようもない気がする。
そんな甘い考えに自嘲を浮かべ、もう一度通路の先を確認する。そこにはやはりゾンビ化した生徒の姿は見られない。
「よし、行くぞ!」
『あ、ちょっと、遠也!』
隠れていた角から足を踏み出す。いきなりの前進にマナが声を上げるのを聞きながら、俺は通路の先を見据えた。
だが、パラドックスはどうするのか。そんな微かな不安を抱きながら更に一歩足を進めた時、耳に届いた「……理解できん」の一言。
直後、背後から少し遅れてついてきてくれた足音に喜びを感じながら、俺は勢いよく地を蹴った。
*
パラドックスにとって、前を行く男はある意味で特別な存在であった。
未来の世界において破滅へと導いたシンクロ召喚を操り、モーメントすら所有する男。更に、後の時代においても数名しか実例のないアクセルシンクロを既に習得している。
それだけならば、パラドックスはゾーンに言われたように遠也を処分して終わりとしていただろう。だが、パラドックスはその決断を下すことが出来なかった。
その原因は二つ。一つはエクシーズ召喚。過去にも未来にも、全く痕跡がない新しい召喚方法。遠也が使用したそれが自身にとって未知である故に興味をそそられた。
そして、遠也があの時のデュエルに勝つことによって証明した“新たな未来への可能性”。そのことが、パラドックスの心に躊躇を生み落としていた。
これまでのパラドックスなら、遠也の主張など一笑の下に伏して粉砕し、己が道を迷わず進んでいただろう。
しかし、実際は違った。エクシーズ召喚という全く新たな要素を突きつけ、更にはパラドックスを下したのだ。己のデッキには問題はなかった。既に実戦も問題がないと確信していたし、実際何も問題はなかった。
しかしそれでも、遠也に負けた。その要因をパラドックスは当然分析した。そしてわかったのは、エクシーズ召喚。そして、遠也の言葉に自分が動揺してしまったからというものであった。
その結果にパラドックスは愕然としたものだ。エクシーズ召喚はまだわかる。本当に予想外のものだったので、それが敗北に繋がる要因の一つであったことはすんなり納得できた。
しかし、もう一方。遠也の言葉に動揺した、という点には自身のこと故に驚きを隠せなかった。
そう、パラドックスは動揺したのだ。ということはつまり、遠也の言い分を心のどこかで認めている自分がいたことに他ならない。
絶対の自信を持っていたのなら、そもそも動揺などするはずがないのだ。だというのに気持ちが揺れ動いたということは、つまりそういうことであった。
“間違いを正すことのできる可能性”……遠也が言ったその言葉は、まさに自分たちが行っている過去の改変そのものであった。その可能性を信じたからこそ、パラドックスは時代を超えて未来を変えるべく動いていたのである。
だから、遠也に新たな可能性を提示された時。すなわち「パラドックスが最善と信じた可能性」以外にも可能性は存在すると言われた時。自分が信じたものが唯一ではないと認めたくなくて、パラドックスは激しく怒り動揺したのである。
それは、自分たちの行いが多大な犠牲の上に成り立つものであることを自覚していたからだ。その犠牲も、唯一の可能性のための物ならば受け入れられた。歯を食いしばり、その悪を為そうと決意できた。
だから、他にも方法があるということをパラドックスは認められなかったのである。自分たちの方法こそが唯一であると証明しなければ、容認してきた犠牲は何だったのか。それを認めるわけにはいかなかったのだ。
だが、パラドックスは負けた。新たな可能性を示唆した遠也に、「未来はお前の知る未来のままじゃない」と突きつけられて。
屈辱だった。認めたくなかった。だが、同時に興味も持った。
――ならば、この男が目指す可能性とは何なのだ、と。
パラドックスが示した可能性を否定し、その犠牲を認めなかった男。その男の先に待つ未来の姿とは、いったいどんなものなのか。
自分には理解できない何かを見ている。それはわかりきった未来に絶望していたパラドックスにとって、久方ぶりの関心事であった。
とはいえ、遠也自身はごく普通の一般人に過ぎないことをパラドックスはわかっていた。だから、少しだけ突ついてみることにしたのだ。自身の死が、パラドックスという形を持って間近に存在しているのだということを教えることで。
結果は、拍子抜けだった。なんと遠也はまったくパラドックスのことを警戒していなかったのである。それは何故かといえば、「お前は仲間だから」と遠也は言う。つい昨日殺されそうになった相手に、である。
まったくもって尋常ではない感性だった。一般人にすぎないなど、見当違いも甚だしかったのだとパラドックスは思う。
こんな大馬鹿が、一般人のはずがあるものか。呆れ交じりに、パラドックスはそう内心で一人ごちる。
……本当に、理解できない男だ。
そう思いつつ、パラドックスはその男の後に続く。理解できないからこそ、自分たちの知らない未来をこの男は見ているのかもしれない。興味深い、と改めてパラドックスは思う。
その心の中に湧く興味が、絶望とは正反対の感情であることを自覚しないままに、パラドックスは遠也の背を追うのだった。
*
その後何度か見かけたデュエルゾンビを避けつつ進むこと数分。ついに俺たちは食糧保管庫のある場所へとたどり着いた。
保管庫へと続く扉がある一室に繋がるそこは、道中にゾンビの群れがいたことなど想像させないほどに静謐さを保っている。しんと静まり返った雰囲気はつまりゾンビがいないということなのだが、その静けさが逆に不気味でもあった。
とはいえ、そんな曖昧な感覚に臆して進まないというわけにもいかない。ゾンビがいないということは、食糧を手にするために障害がないということ。つまり、良いことのはずなのである。
「……よし」
そうポジティブに捉えた俺は、ネガティブな意見を抑えつけて背後のパラドックスに視線だけ送ってこれから扉を開く合図をする。そして、それに対する反応を待たずにいよいよその中へと踏み込んだ。
「………………」
扉を開いた先に広がっていたのは、想像通りがらんとした殺風景な部屋だ。奥にある保管庫の扉が存在感を放っている。
元々ここは風防のような役割の部屋であり、物を置くことを最初から想定しているわけではない。だから、何もない状態こそがある意味では正しくもあるのだ。
奥へと繋がる扉があるだけ。それこそが、この部屋の正常な状態を指す。
ゆえに、扉の前に立つ人影はこれ以上ないほどに目立っていた。
漆黒のマント、ラーイエローの制服、小柄な身体……。今はこちらに背を向けているが、ここ最近に一度見たこともあり、それが誰なのか俺はすぐに分かった。
「……加納マルタン、か?」
確認するかのように名を呼ぶと、そいつはゆっくりと振り返る。
その顔には気弱で卑屈気味だった俺が知る表情はなく、マルタンは強気な目を向けてにぃっと口の端を持ち上げた。
「――へぇ、君が来たんだね、皆本遠也。そういえば君は僕と会ったことがあるんだったね。だったら、久しぶりと言った方がいいかな?」
ともすれば気さくとも取れるような口調でそう言ったマルタンは、軽く手を挙げて俺に振る。それは左手であり、その腕は悪魔のごとき異形の腕となっていたが。
どう見たって正常ではないその腕は、やはりユベルに乗っ取られているゆえの物か。自然と厳しい表情になった俺は、意図的にマルタンを強く睨む。
「マルタン、なんでお前がここにいる!」
「遠也、考えるまでもないことだ」
俺がこの場にいる理由を問えば、マルタンよりも早く一歩前に出たパラドックスが俺に応える。
横に並んだ男に目を向ければ、パラドックスもまた厳しい目でマルタンを見ていた。
「あのゾンビどもはどこからでも侵入する。保管庫の中ならともかく、いくらでも侵入経路のあるこの場所で、無事に過ごせるわけがない」
ならば、答えは一つだとパラドックスは言う。
「デュエルゾンビなどという小賢しい真似をしているのは、貴様だな。少なくとも関係者であることに間違いはあるまい。あるいは、いま私たちがこの世界にいることすら……」
どこか自信が込められたその言葉に、マルタンは「へぇ」と感嘆とも取れる声を上げた。
「なかなか面白いことを言うね、お兄さん。デス・ベルトがない所を見ると、外部の人?」
笑顔でマルタンは言うが、しかしそれにパラドックスは何も答えなかった。
だがマルタンは気分を害した様子もなく「まぁ、いいか」と肩をすくめ、楽しくて仕方がないとばかりに凶笑を顔に貼りつけた。
「そう、僕があいつらの親玉だよ。さしずめ僕はマルタン帝国の主ってところかな。ふふ……まぁ、戯れにすぎないけどね」
「戯れ?」
「そうだよ。僕にとっての目的は一つだけだからね。もっとも、その過程にはクリアすべき目標もあるけど」
そう言うと、マルタンはその異形の指を真っ直ぐ俺に突きつける。
その指から手の甲を辿り、腕を伝った先にあるマルタンの顔。それは、いつの間にか笑みから憤怒の表情へと変わっていた。そのあまりに唐突な変化に、俺は息を呑む。
「お前だ、皆本遠也! お前こそが、僕にとって最も憎い存在……! 僕の十代の隣に立つのは、僕だけなんだ! お前ごときがいていい場所じゃない!」
「な、何を言っているんだお前は。そんなの俺の勝手だし、十代の勝手だろ。俺と十代の友情を否定する権利はお前にはない!」
当たり前といえば当たり前な反論。しかし、その反論はいたく奴の神経を逆撫でたようだった。
「調子に乗って……! ――けど、まぁいいさ。君が十代と親しいほど、君が敵対した時に十代はたくさん苦しんでくれるだろうからね。一番の親友に裏切られた十代は、きっと辛いだろうなぁ。想像するだけで、嬉しくなるよ」
心からそう思っているのだろう。陶酔したように語る奴の顔には、それ以外のことなど眼中にないかのような狂気じみたものが垣間見える。
隣にいるマナはどこか腰が引けて不気味そうにしているし、パラドックスに至っては露骨に眉を顰めている。皆、こいつから感じる印象は同じようだった。
「狂ってるぜ、お前……!」
「狂ってる? 僕が? まぁ、確かに僕は狂っているかもね、愛という名の感情に」
「く、狂ってる上に痛々しいな」
口元が引きつるのを感じる。ユベルってこんなにアレだったのか? 絶対にお近づきになりたくないタイプだ。
マナと同じくさすがに引いてしまう俺だったが、しかし奴がそんなことに頓着するわけもなく。やがて浮かんでいた笑みをひっこめたマルタンは、「さて」と呟いて俺にすっと腕を伸ばした。
そしてその腕からいきなり黒い光が放たれる。何らかの攻撃、あるいはさっきの言葉からすると俺を操るためのものか。当たれば当然危険な攻撃だが。
「させないよ!」
しかしその攻撃は俺に届く前に実体化して眼前に移動したマナが叩き落とした。無論、俺に被害はない。
だが、抵抗されたことにマルタンは再び怒りを露わにする。
「邪魔をするなァ!」
マルタンの瞳が怪しく光り、物理的な衝撃すら伴った圧迫感が襲い掛かる。さすがのマナも吹き飛ばされ、サイボーグであるはずのパラドックスすら扉の前まで後退させられてしまう。
しかし、俺はその場に立ったまま。どのように調整しているのかは知らないが、これで俺は奴の前に単身晒されたわけである。
そして、そんな俺に奴はもう一度光を放ち、それは今度こそ確実に俺を飲み込んだ。
「遠也ッ!」
マナの悲鳴が響く。
しかし、俺の身を襲った光はまるで溶け込むかのように俺の精神を蝕み始めており、俺はそれに答えを返す余裕がなかった。
「ぐ、ぁ……ッ!」
「ふふ、ははは! さぁ、君も僕と一緒に来なよ。十代のところに! 十代に、苦しみという名の愛を与えるためにさ!」
耳で聞くというよりは、脳に刷り込まれるように流れ込んでくるマルタンの言葉。老成した男性のような、それでいて純粋な少女のような二面性を持った独特な声が、徐々に心の中へと染み込んでくる。
それを感じつつ、しかし俺は抗っていた。十代を苦しめる、そんなことの片棒を担ぐわけにはいかない。十代の友を名乗る以上、その俺が友達を傷つけてどうするのだ。そんなことを認めるわけにはいかない。
「ぐ、ぐ……」
俺は染み込んでくる闇の力を否定しつつ、己の心に潜っていく。俺にとっては、既に何度か経験している感覚だ。
自分の内側。そこにあるのは、誰しもが持っているだろうただ一つの境地。確固たる自分が、譲れない思いが、信じるべき心が眠る、何人にも侵されない個人の聖域。
そこに俺は足を踏み入れる。そしていったん気持ちを落ち着けると、俺は自分自身を改めて強く意識する。心の中に存在するそこは、たとえ何があっても揺るがない。己という存在そのものを確立させている、誰もが心の深奥に持つ究極の境地。
――“
「だ、れがっ……! お前なんかに、従うかぁッ!」
「なに!?」
俺がそう咆えた瞬間、俺を取り込もうとしていた嫌な感覚が綺麗さっぱりなくなる。それはマルタンからの干渉を自力で破ったということであり、そのことにマルタンは驚愕の声を上げた。
まさかただの人である俺に自分の術が効かないとは思わなかったのだろう。成功を確信していたはずだからこそ、一層その驚きは強かったに違いない。
「馬鹿め。
パラドックスがいかにも馬鹿な奴だと言いたげな口調でマルタンに言葉を投げる。俺がアクセルシンクロをすることを知っており、身近にクリアマインドの会得者がいるからだろう。パラドックスは心配すらしていなかったようだ。
そしてその言葉を聞いたマルタンは驚きから一転、その表情を怒りで歪めた。
「やっぱり、君は邪魔だね……! なら、こうさせてもらう!」
再びマルタンの左腕に宿る闇色のエネルギー。そして同時に右手の指を鳴らすと、マルタンの横の空間に歪みが生まれる。
次元の狭間とでも表現すれば適切だと思える、ゆらりと空間が揺れている不可思議な現象。やがてその中から一人のデュエルゾンビと化した生徒が姿を現した。
現れたのは、俺やマナにとっては馴染み深い人間。突然のその姿を前に、俺たちは驚きを込めてその名前を呼んだ。
「翔!?」
「翔くん!?」
しかし、翔が何か反応を返すことはなかった。完全にデュエルゾンビ化してしまっているようだ。
「ふふ、君にとっては実に面白い相手じゃないかな。何度でも蘇ってデュエルしてくれるお友達だ、嬉しいだろ?」
「お前……!」
思わず憤りを込めてマルタンを睨むが、しかしマルタンは堪えた様子もなく笑みを浮かべるだけだった。
そして、不意にその視線をマナとパラドックスのほうに向ける。
「けど、君たちが思う存分デュエルするには邪魔な二人がいるよね。くく……」
言うと、マルタンは左手に溜めていたエネルギーを二人に向かって解放した。
腕から離れた黒いエネルギーは、高速で飛翔して二人に迫る。
「きゃあっ!?」
「く……」
突然のことだったからか、二人は避けることも出来ずにマルタンからの攻撃を受けてしまう。
その衝撃によって開いたままだった扉の向こうにまで押し戻される二人。そしてその直後に扉が勝手に閉まり、更にオレンジ色の膜が壁ごと扉を覆い尽くした。
「ちょっとこの部屋を覆うように障壁を張らせてもらったよ。単純な力でも、精霊の力でも突破できない奴をね。あっちのお兄さんはどうも普通の人間じゃなかったみたいだし、念の為にね」
事もなげに言うそれは、扉の外にも聞こえていたのだろう。恐らくはパラドックスだろうが、扉を強く叩く音が聞こえてくるもののビクともしていない。
しかし、まさかパラドックスが肉体的には純粋な人間でないことに気が付いているとは……。
「さて、それじゃ僕はそろそろ行こうかな。もう食べ物は十分確保できたし……」
ちらりと保管庫のほうに目を向けながらマルタンは言う。どうやらマルタンがここにいたのは、食糧を手に入れるためだったようだ。手元に見えないところを見ると、やはり不思議な力でどこかに送ってあるということだろう。
「さぁ、皆本遠也。デュエルを楽しみなよ。けど、あまり勝ちすぎるとベルトが君たちの体力を根こそぎ吸い尽くしちゃうかもしれないけどね」
「く……」
その言葉に俺は唸るしかできない。
さっきマルタンからの支配を跳ね除けることが出来たことから、俺はたとえ負けてもデュエルゾンビとなることに抵抗できるらしい。だから俺までゾンビ化するという事態は避けられる。
しかし、翔は既にデュエルゾンビとなっている。倒しても倒してもまたすぐに復活して襲いかかってくることだろう。
デス・ベルトを互いにつけた状態でそんなことをしたら、いずれ体力が底を尽きて俺たちは共倒れとなるしかない。
「特別サービスだ。この場に張ってある障壁はこのままにしておいてあげるよ。誰にも邪魔されずに、デュエルをしているといい。彼は絶対にデュエルを止めない。どっちかが倒れるまで、頑張るといいよ。ふふ、ははは!」
「マルタン――!」
わざわざそんな計らいまでしていくあたり、こいつは本当に俺のことを邪魔者だと思っているらしい。
笑い声とともに姿を薄れさせていく奴に、俺は苦々しげに名前を呼ぶことしかできなかった。
そしてマルタンの姿が完全にこの場から消えた時。オレンジの膜に覆われた扉の向こうからマナの声が聞こえてきた。
「遠也! 大丈夫!?」
こちらの安否を心底気にしていることがわかる、必死な口調。それを聴いて俺は一度深呼吸する。ここでマナを不安がらせたくはない。そう考えた俺は、安心させるように意識して平静な声を心掛けた。
「ああ、大丈夫だ。お前はこのことを十代たちにも伝えてきてくれ。けど、助けはいらない。どうもこの部屋に侵入できなくなっているみたいだし、俺のことはいいから」
努めて明るく言うが、しかしそれに対する返答は遅い。マナは納得いかないようで「でも……」と渋るが、現状俺のことに固執するわけにもいかないのが実情だ。
生徒全員の守りを薄くしてまで俺一人のために重要な戦力を割けるわけがない。むしろ、そんなことをしたら俺が怒る。
洗脳がどうやら効かない俺なら一人でも何とかできる可能性があるが、他の面々はそうではない。混乱と不安の中にあるそんな彼らを守ることのほうが、どうにかできるかもしれない俺の身よりも重要なのだ。
というわけで、マナには納得してもらいたい。そうもう一度言えば、直後に返ってきたのはパラドックスの声だった。
「どいていろ、遠也。――Sin サイバー・エンド! 《エターナル・エヴォリューション・バースト》!」
「おい!?」
言われたとおりに扉の前からどいていたものの、いきなりのデカい攻撃に思わず慌ててしまう。が、その動揺は無駄なものであったようだ。
壁は僅かに揺れたものの扉はびくともしていなかったからである。よほどマルタンが張った障壁は強固なもののようだ。
「ち、これでも駄目か」
「成功してたら、器物損壊どころじゃなかったわけだが……まぁいい。しかし奴さん、だいぶ力を取り戻しているみたいだな」
デュエルエナジーは問題なくユベルの力となっているようだ。あるいはマルタンという依り代とよほど波長が合っているのか。
いずれにせよ、サイバー・エンドの攻撃でも駄目となるといよいよ俺のことは後回しにしてもらわなければならないな。
「やっぱり、外からはどうにも出来ないみたいだな。マナ、こっちはこっちで何とかする。だから……」
先に戻っていてくれ。そう俺が言うと、マナは沈黙する。
時間にして数秒、その間どんな逡巡があったのか俺にはわかりかねるが、しかしマナは俺の頼みに是と答えたのである。
「……わかった。お願いだから、ちゃんと帰ってきてね。絶対だよ」
必死に懇願するような声音で念を押すマナ。これまで幾度もあったピンチでも聞けなかったようなその言い方に、大げさだなと俺は苦笑を浮かべる。
しかし同時に悪い気分ではない。胸の内に温かなものが宿るのを感じつつ、俺は口を開く。
「ああ、待ってろ! ちゃんと帰るさ、翔も一緒にな!」
そうしっかりと言葉を返し、俺はもう一人のほうに声をかける。
「パラドックス。マナをちゃんと送り届けてくれよ」
「……遠也、お前にはまだ聞きたいことがある。早く戻って来い」
「ああ」
そのやり取りを最後に、俺は意識を扉の向こうから離す。確認せずとも、あの二人は既に走り出していることだろう。このことを十代たちに伝えるために。
なら、俺は俺ですべきことをするだけだ。
その決意を固めた俺は、ポケットから生徒手帳にもなっているPDAを取り出す。電源を入れると、その画面はやはり砂嵐になってしまい何も映さない。
「……PDAもいつの間にか使えなくなってるし、連絡は取れないか。発電施設が生きてればなぁ」
PDAが利かなくなったとわかった時にヨハンとジムが発電施設の様子を見に行ったことがあったが、発電施設は砂に埋もれて機能を停止していたらしい。動いていれば、何かあった時に十代たちへ伝えることも出来たのだが……。
まぁ、出来ないことを考えても仕方がない。それよりも、今は。
「……さて、と。お前とデュエルするのも久しぶりだよな考えてみりゃ。あまり歓迎できないシチュエーションだけどさ」
「遠也くぅん……でゅえるぅ……」
何でもないことのように話しかけるも、返ってくるのは自我の感じられない虚ろな言葉。
俺は肺の奥から大きく息を吐きだし、この場にはいないマルタンに対する怒りを徐々に落ち着かせていく。
「俺の友達をこんなにしやがって……いくぜ、翔! 何度デュエルすることになっても、必ずお前を元に戻してみせる!」
デュエルディスクを展開。モーメントが持つ七色の輝きが煌めき、デッキが自動的にシャッフル。そして俺はそこから5枚のカードを抜き取り手札として左手に持った。
翔もまた起動済みのディスクから手札を用意する。それを確認して、俺は力強く宣言をする。
「――デュエルッ!」
*
パラドックスと共に体育館への道を駆けながら、マナは後ろを振り返る。
既に遠くなってしまった食糧保管庫へと続く部屋。その中に残っているだろう遠也のことが、マナは心配で仕方がなかった。
いつもなら、もっと安心して遠也を信じていられるのに。どうして今日はこんなに胸が騒ぐのだろう。マナは言い知れない不安に嫌な予感を覚えずにはいられなかった。
(遠也……大丈夫だよね……?)
いつものように、逆境を乗り越えて帰ってきてくれる。今日だって、絶対にそうだ。
自分に言い聞かせるように胸の内で繰り返しながらマナは通路を行く。根拠のないこの予感が、どうか予感のまま終わりますように。そう強く願いながら。