死んで若返ったら色んな人がヤンデレだった   作:かわうそ☆ゆう

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13.元凶

「お前だけは殺してやる!!!」

 

俺はそう言いゴミ捨て場から拾い上げた瓶を父親の頭めがけ振りかざす。

振りかざされた瓶は父親に当たる直前に現れた何者かに蹴り飛ばされ阻止される。

俺はその衝撃で仰け反り我に返った。

 

「何してんだ翔!」

 

瓶を蹴り飛ばしそう言ったのは柊だった。後ろを見ると響もこちらに走ってきており、その更に後ろには結衣と夏樹の姿も見えた。

菜々は急な出来事に困惑した様子を浮かべていた。

 

「どけ!柊!そいつは俺のクソ親父だ!絶対に殺す!」

 

我に返った俺だったが父親の顔を見ると再び殺意が溢れ出し声を荒らげる。

柊はそんな俺を見て俺を押し倒しそのまま押さえ込んだ。

 

「落ち着け翔!お前おかしいぞ!」

 

そんな事を言う柊の言葉は俺の耳には届かず、俺は柊の束縛から逃れようと体を捩らせる。

だが、やはり近接戦は柊の方が上手で俺の抵抗は一切通用しなかった。

 

「ふん、クソガキが誰に手出そうとしてんだ?またボコボコにしてやろうか?」

 

押さえつけられた俺を見て父親が遂にその口を開きそう言った。この声、口調…間違いなくコイツは俺のクズ親父だ。

 

「おいオッサン、誰が誰をボコボコにするって?」

 

そういい父親の肩を叩いたのは遅れて到着した響だった。

父親の先程のセリフを聞き柊も何かおかしいと思ったのか、俺の束縛を解き父親の方を向いていた。

 

俺は立ち上がろうとするが柊に押さえつけられていたせいか、

思うように体が動かず起き上がる事が出来なかった。

 

するとそんな騒ぎを聞き付けたのか

隣の家の玄関が開き、女の人が顔を出していた。

 

「チッ、今日はもういいわ。またな翔」

 

何をしに来たのかは分からないが、そんな状況を見て分が悪いと思ったのか

父親はそう言い捨てるとその場を後にしようと振り返り歩き出した。

 

「オッサン調子乗った事言って何逃げようとして」

 

その場から歩き去ろうとする父親を響が再び腕を掴み制止するが、その瞬間父親の肘打ちが響の顔面に炸裂し、不意をつかれた響はそのまま後ろに倒れた。

 

「アイツ!」

 

「待て柊!」

 

そんな様子を見て柊がすかさず走り出そうとしたが、俺はそれを引止めた。

何が目的なのかは知らないがクズな性格は変わっていない所か、知らない子にも手を出す様な立派なクズになっているようだ。

 

溢れ出す殺意を無理やり押し殺す。

ひとまずは鼻血を出して倒れている響の応急手当が最優先だ。

 

 

響はタオルで鼻血を押さえながら苦笑した。

 

「いや〜危ねぇなぁ俺。思いっきりもらったわ……へへ」

 

無理して明るく振る舞ってるのがわかる。

俺はしゃがみ込み、ティッシュで血を押さえる響の手をそっと支えた。

 

「悪い……巻き込んだ。俺だけでよかったのに」

 

「バカ言え」

 

その言葉を切ったのは柊だ。俺の肩を掴み、低い声で続ける。

 

「殴られたのは響だが、あれ見てて思った。

 お前……1人で背負おうとしてただろ」

 

「……」

 

「そういうの、1番ムカつくんだよ」

 

いつもは能天気な柊の瞳が、今だけは真っ直ぐ俺を刺した。

 

「殴るなら俺らにも殴らせろ。逃げるなら俺らも一緒に逃げる。

 翔が戦うなら、俺達も隣で殴る」

 

「……そういうこと。オレの鼻血分、利子つけて返すしな」

 

響も笑う。血まみれのくせに、やけに頼もしい。

胸の奥に熱いものが湧き出して、俺は俯きそうになる。

なんでだ。

俺なんかのために、こんな……。

 

「……ありがとう」

 

それしか言えなかった。

 

家に戻ると、母さんは心配で何度も玄関を覗き、菜々は俺の袖をずっと握って離さなかった。

夏樹と結衣は状況に付いて行けないまま固まっていたが、最後には短く声をかけてくれた。

 

「翔、今日はもう休みな。無理すんな」

 

「……翔くん。明日、ちゃんと話聞くから」

 

二人も理解しきれてないはずだ。

けど責めずにそう言ってくれたことが有り難かった。

響と柊は帰る間際、玄関で立ち止まった。

 

「なぁ翔」

 

柊が言う。

 

「今日のオッサンの顔、忘れんな」

 

「……」

 

「忘れたら、その時が“本当にやられる時”だからな」

 

響が拳を突き出す。

 

「俺らが横にいるうちに終わらせろ。

 翔が壊れる前に」

 

息が詰まるほど熱い友情だった。

 

俺も拳を合わせる。

 

「壊れねぇよ。……守られてばっかじゃダサいしな」

 

「それでいい」

 

柊は俺の頭をくしゃっと掻き回し、続けた。

 

「でも殺すなら俺も呼べ。鈍器持ってくる」

 

「いや物騒すぎるだろ」

 

「チェーンソーもあるぞ?」

 

「もっとダメだわ馬鹿」

 

久々に笑えた。

響も親指を立てる。

 

「翔はオレらのセンターだ。落ちたらライブ終わり。

 だから絶対立っとけよ?」

 

意味わからん例えなのに、胸に刺さる。

俺は深く頷いた。

 

その日、皆はそれぞれの帰路についた。

玄関の灯りが消え、部屋に静寂が落ちる。

 

布団に横になると、今日あった出来事が波のように押し寄せる。

 

父親――

 

死んだはずの人間が生きて目の前にいた。

逃げられなかったあの恐怖と怒り。

瓶を振りかざした自分の手の震えがまだ残っている。

 

菜々の寝息が隣から聞こえる。

顔は嬉しそうに寝ていて、少し安心した。

けど、瞼を閉じた瞬間、

「またボコボコにしてやろうか?」

あの声が頭の中で鮮明に蘇る。

 

怖い。

寒気がする。

心臓がうるさく鳴って止まらない。

枕を抱え、掌を握り締める。

 

――逃げねぇぞ。

 

今度こそ。

俺はゆっくりと息を吐いた。

二度目の人生で、同じ地獄を繰り返す気はない。

拳に力が入る。

絶対に――終わらせる。

 

 

夜が深まっていく。

 

家の前の電柱、薄暗い道。

誰も居ないはずの場所に、影が一つ。

タバコの火が赤く灯り、男が呟く。

 

「……やっと見つけたぞ、翔」

 

その目には笑みでも後悔でもない。

――執念だけがあった。

 

次の地獄は、まだ始まったばかりだ。

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