死んで若返ったら色んな人がヤンデレだった   作:かわうそ☆ゆう

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9.命懸けの中間テスト

菜々の事件からしばらく時間が経ち、俺たちは朝日ヶ丘高校に入学して初めての中間テストを迎えようとしていた。

 

あれから夏樹、結衣にはもちろん、柊や響にも菜々の事情を話した。

俺と菜々がひとつ屋根の下で暮らしていることについては、みんな納得してくれている。夏樹と結衣は若干まだ反対気味だが――あれはただ嫉妬してるだけだろう。たぶん。

 

問題を起こした蓮と颯太は謹慎処分を食らい、部活でもトラブルは起こらず、日常は驚くほど平和だった。

 

……だがしかし。

 

学生全員が嫌いなイベント、中間テストが来てしまった。

何の問題もないのは菜々くらいだろう。

 

俺を筆頭に、ほかの連中は点数を少しでも上げるため、休みの日に勉強会を開くことになった。

 

そして今――俺の家のリビングに、女子三人組を筆頭に、柊、響、俺の六人が集結していた。

 

「よーし! では皆さん! 今回の中間テストは全員上位を目指して頑張りましょう!」

 

勉強会の進行、そしてバカ……いや、勉強が苦手な五人に教える係は、全教科・学年トップの菜々だ。

 

というか菜々以外に任せると、ほぼ確実に勉強会が“遊び会”に変わる。

 

「今回の中間テスト! この中で国・数・英・理・社、五教科総合一位の人は――翔くんとのデートが確約されます! 命懸けでやりましょう!」

 

「「おーーー!!!」」

 

菜々がそう言うと、夏樹と結衣が即反応し、さらに菜々本人までやる気の顔になる。

一方、男性陣の反応は冷え切っていた。

 

「男性陣はどうなるんだよ!」

 

響がブーイングしながら叫ぶ。

そりゃそうだ。男二人にとっては、俺とデートとか何の得にもならない。

 

「そんなの知りませんよ。ハンバーガーでも奢ってもらったらどうです?」

 

菜々が響をじとっと睨みつけながら言うと、響はしゅんとして柊に泣きついた。

 

かわいそうだが、それでこそ響だ。

 

「ではでは! 中間テストまでもう日がないので、各自頑張りましょう! 分からないところは全部、私に聞いてください!」

 

そうして勉強会が幕を上げた。

各々が苦手教科を中心に進め、分からないところは全教科万能の菜々がサポートする。

菜々も教えることでアウトプットできて、知識の定着とレベルアップに繋がる。

なんて効率の良い勉強会なんだ。流石、菜々が企画しただけはある。

 

……っていうか、俺とのデートって菜々がほぼ確定じゃね?

こ、こ、こ、こいつ……全部計算してやがった……!

 

勉強が始まって十分ほど。

一番最初にギブアップしたのは柊だった。

 

柊はおもむろに立ち上がり、「コンビニ行ってくるわ」と言って俺の家を出た。

そして、全員がこう思った。

 

「「「「「絶対あいつ帰って来ねぇ……」」」」」

 

皆の予想通り、柊は最後の最後まで帰ってくることはなかった。

柊がいなくなってから数時間。時刻は十六時。

 

意外と勉強中でも時間は早い。というか、俺がこんなに勉強できるとは思わなかった。少し感心する。

 

「あー! 疲れた! 皆でファミレス行こ〜よ」

 

「「いいね! 行こーぜ!」」

 

夏樹の提案に、響と結衣が即座に乗った。

朝から勉強してるし、腹も減ってる。俺も賛成だ。

俺たちはファミレスへ行き、そこで解散することにした。

 

 

そんな日を何日か繰り返し、絵に描いたような“青春”を送った俺たちは、ついに中間テスト当日を迎えていた。

 

「さぁ〜、勉強会の結果を存分に発揮しますか」

 

気合いを入れ、配られた問題用紙と答案用紙を、先生の合図と同時に表にする。

 

一発目の教科は――俺の苦手教科、英語。

 

苦手とはいえ、菜々の勉強会のおかげでペンはスラスラ進んだ。

行き詰まることなく、答案用紙が埋まっていく。

前の人生では英語なんて一ミリもできなかった。

それが今は、“分かる”という感覚がある。菜々の教え方、マジで凄い。

 

周りを見ると、響も夏樹も問題なく記入を続けている様子だった。

あいつ、将来教師とか向いてるんじゃないか?

そんなことを思いながら記入を続けていく。

 

……が、最後まで書き切る前に終了チャイムが無情にも教室に響いた。

 

それでも、俺の中では大成長だ。

苦手だった英語が、ここまでできた。それだけで十分だ。

 

その後も国語、数学、理科、社会と順調に進み、一日目が終了。

 

中間テストは二日間で、二日目は情報や保健体育など副教科がメイン。全教科が終わったあと、先生により結果が発表される。

 

「いや、マジですげぇわ菜々。スラスラ記入できたもん」

 

「ほんとほんと! 流石学年トップって感じだよね!」

 

俺と夏樹がそう言うと、菜々は顔を赤らめ、嬉しそうに「いやいやそんなことないですよ!」と言って――露骨に照れてるやつのお手本みたいな反応をしながら、鼻歌を歌い始めた。

 

勉強面では言わずもがな学年トップ。

チョロさ加減も、おそらく学年トップだな。

そして二日目も無事に終えた俺たちは、テスト終わりの打ち上げとしてカラオケへ来ていた。

 

勉強会になるとすぐ帰る柊だが、こういうのは意外と好きらしい。

一番早く到着し、みんなが嫌がるトップバッターをノリノリでこなしていた。

 

「響〜、二人でなんか歌おうぜ〜!」

 

「お! いいね〜! 何歌……」

 

俺がそう言ってタブレットを響に渡そうとした瞬間、無情にもそれは女子三人組に奪われた。

 

なんて可哀想な響……ほんと不遇な扱いばっか受けるな。

 

「翔さんと一緒に歌うのは私です! 響さんは引っ込んでてください!」

 

「そうだぞ! なんでよりによって響なんだよ! 意味わかんねぇ!」

 

「間違いないです! 翔くんと歌うならせめて柊くんでしょ! 響くんはないわぁ……」

 

「もういい……柊……お前だけは俺の味方だよな……」

 

女子三人の一斉射撃でメンタルを削られた響が、いつも通り柊に泣きついた。

 

……が。

 

「今回ばっかしは皆に同感かな。お前、歌下手だし!」

 

柊がそう言った瞬間、部屋は笑いに包まれる。

響は半泣きで、ドリンクバーから持ってきたメロンソーダを一気飲みし、ふて寝を始めた。

 

いじられキャラの響が、今日はいい味出してる。

中間テストで張っていた気持ちが、一気に緩んだ気がした。

 

それからも“THE青春”を味わい尽くした俺たちは、十七時半にカラオケを後にして帰路についた。

自転車で来ていた柊と響は、そのまま自転車で帰宅。

俺たち四人は、いつも通り歩いて帰ることにした。

 

帰り道、女子三人が「点数勝ったら翔とどこ行くか」で盛り上がっているのを聞きながら、俺は前の人生では味わえなかった青春の余韻に浸っていた。

 

みんなで遊んだり、何かを乗り越えたりするたび、強くなったような気がする。

間違いなく明るい未来へ進んでいる――そんな確信があって、今の人生はとても充実していた。

 

「幸せだなぁ」

 

思わず漏れた心の声。

 

「翔さん、今なんか言いましたか?」

 

「翔、ひとりごとか〜?」

 

「翔くんも喋りたいなら混ざればいいのに」

 

俺の独り言に過剰反応する三人。

俺の二回目の人生が良い方向に進んでいるのは、間違いなくこの三人のおかげでもある。

 

最初は“ヤンデレ三人”で絶望してたけど、慣れれば意外と大したことなかったなぁ。

 

――しかし、この時の俺は「ヤンデレ」というものを侮っていたと、後で強く後悔することになる。

 

だがそれは――まだ少し後の話。

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