軍貫使いはZEXALで寿司を握る 作:Dの軍貫 シンキハヨ・チョーダイナ
「「「デュエル!!!」」」
カイト LP 4000 / シャーク LP 4000 & 寿 LP 4000
屋上のコンクリートが、激しいデュエルの火花を浴びてチリチリと熱を帯び始める。 対峙する天城カイトの放つ威圧感は、もはや一介のデュエリストのそれではない。彼の背後に渦巻く青白いフォトン・オーラは、重苦しい曇天さえも押し潰さんばかりの質量を持って俺たちに圧しかかってくる。
(……やべぇな、このプレッシャー。アニメの画面越しに見てた時とは次元が違う。魂が直接削られるような、この感覚……!)
だが、ここで膝をつくわけにはいかない。俺は震えそうになる足を一歩踏み出し、腹の底から声を絞り出した。
「客を待たせるのは板前の恥だ。まずは俺からいくぜ! 俺のターン、ドロー!!」
引き抜いたカードを、俺は迷わず叩きつける。それはまな板に極上のネタを置く、凛とした所作そのもの。
「俺は手札から《ゴブリンドバーグ》を召喚! さらに効果発動、手札から《しゃりの軍貫》を特殊召喚する! 荒波を越え、極上のシャリを運んでこい!」
轟音を響かせて旋回するプロペラ機から、漆黒の海苔を纏った巨大なシャリが重厚な音を立てて着陸した。カイトの冷徹な射抜くような視線が俺の盤面を捉えるが、臆することなく言葉を繋ぐ。
「効果を使った《ゴブリンドバーグ》は守備表示。さあ、仕込みは完了だ。レベル4の2体で、オーバーレイ・ネットワークを構築! 現れろ、《弩級軍貫-いくら型一番艦》!!」
仮想の海を割り、真っ赤なイクラを甲板に満載した巨大戦艦が浮上する。
「素材の《しゃりの軍貫》の効果で1枚ドロー! ……よし、いいカードが来た。カードを1枚セットして、ターン終了だ!」
俺の隣で、シャークが低く鼻で笑った。
「フン、相変わらず腹の減るデッキを使いやがって。だが……初手の捌きとしては及第点だ。次は俺の番だ、ドロー!」
シャークは淀みない動きでカードを提示する。その瞳には、かつての荒んだ暴力ではなく、冷徹な勝利への執念が宿っていた。
「俺は《シャクトパス》を召喚! カードを1枚セットし、ターン終了だ!」
うねる触手が盤面を支配し、シャークの伏せカードが静かに牙を研ぐ。
「……おい赤司。あいつを止めるぞ。あの光、ただのデュエリストの放つもんじゃねえ」 「分かってますよ。でも、負ける気は更々ありませんからね。」 「当然だ。……タダで遊馬の鍵を持っていかせるわけにはいかねぇからな」
二人の連携を前にしても、天城カイトの表情はピクリとも動かない。絶対零度の静寂。
「……オレのターン、ドロー」
彼が指を弾くと、空間を裂いて光の戦士たちが現れる。
「フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは特殊召喚できる。現れろ、《フォトン・スラッシャー》! さらに《フォトン・クラッシャー》を召喚!」
光を纏う二体の戦士。その眩い輝きが屋上を白く染め上げる。カイトの冷徹な声が、俺たちを断罪するように響く。
「赤司寿、貴様の所持しているエクシーズ以外の攻撃力は一貫して低いはずだ。ならば……小細工を弄する隙など与えず、正面から叩き潰すのみ!」
カイトの瞳がフォトン・モードの輝きを増し、背後に巨大な銀河の輪郭が浮かび上がる。彼は天空に向かって十字型の槍を投げつける。
「オレは攻撃力2000以上のモンスター2体をリリース! 闇に輝く銀河よ、希望の光になりて我が僕に宿れ! 光の化身、ここに降臨! 現れろ、《銀河眼の光子竜》!!」
コンクリートが悲鳴を上げ、空に天を裂く咆哮が響き渡る。光の奔流の中から姿を現したのは、美しくも凶暴な輝きを放つ青き竜。そのプレッシャーだけで、俺のデュエルディスクがノイズを走らせる。
「ターン終了だ。邪魔者は、早く退場してもらうぞ」 「いいや、退場するのはあなたということになっている! 俺のターン、ドロー!!」
俺は即座に永続罠をオープンした。
「永続罠《一族の掟》を発動! 俺は『ドラゴン族』を宣言! これで、あんたの誇る《銀河眼の光子竜》は攻撃できない! 態度の悪いドラゴンは立ち入り禁止だ!」 「……チッ、姑息な真似を」
光の竜の周囲に目に見えぬ檻が形成され、その動きを縛る。
「さらに俺はカードを1枚伏せて、ターン終了だ!」
続くシャークのターン。彼は容赦なく追い込みをかける。
「俺のターン、ドロー! 《キラー・ラブカ》を召喚! さらに《アクア・ミラージュ》の効果を発動! レベル3の2体でオーバーレイ! 現れろ、深海からの刺客! 《潜航母艦エアロ・シャーク》!!」
巨大なサメの潜水艦が屋上の空を支配する。
「オーバーレイ・ユニットを取り除き、効果発動! 俺の手札1枚につき400ダメージ……合計1200ダメージを受けてもらう! 『エアー・トルピード』!!」
爆風がカイトを襲うが、彼は眉一つ動かさない。
カイト LP 4000 → 2800
「さらに永続魔法《シャーク・レイアー》を発動! 手札の《ビック・シャーク》を捨て、攻撃力1800以下の攻撃を封じる!」
完璧なロック。銀河眼は《一族の掟》で止まり、小型はシャークが止める。だが、カイトの不敵な笑みが、俺の背筋を冷たく撫でる。
「……無駄だ。オレのターン、ドロー! 魔法カード《融合》を発動! 現れろ、《ツイン・フォトン・リザード》!」
巨大な双頭のトカゲが現れるが、カイトは即座にそれを解体した。
「自身をリリースし、素材2体を特殊召喚! そして、その2体でオーバーレイ・ネットワークを構築!」
カイトの背後に現れたのは、光の竜とは対極にある、どす黒いエネルギーを放つ巨像だった。
「現れろ、No.30! すべてをその忌まわしき力で溶かしつくせ! 《No.30 破滅のアシッド・ゴーレム》!!」
「ナンバーズ……!」 シャークが身構える。カイトは冷酷に指揮を振るう。
「バトル! 《アシッド・ゴーレム》で、《いくら型一番艦》を攻撃!」
毒々しい拳が俺の戦艦に迫る。だが、そこを狙っていたのはシャークだ!
「墓地の《キラー・ラブカ》の効果発動! 攻撃を無効にし、その攻撃力を500ダウンさせるぜ!」
巨像の腕が強引に止められ、カイトは忌々しげに「……ターン終了だ」と告げた。 俺のスタンバイフェイズ。屋上の風が一段と冷たくなる。
(……《銀河眼の光子竜》に《アシッド・ゴーレム》……攻撃力3000が二体。まともにやり合ってこいつらを処理するのは、今のエクシーズ頼りの俺の力じゃ不可能だ)
盤面を睨みつけながら、俺は冷汗を拭う。一貫して攻撃力の低い軍貫デッキでは、正面突破は絶望的。ならば、俺が成すべきことは一つ。
(俺が勝つ必要はねぇ。……カイトの盤面をズタズタにして、俺の全てを餌にしてでも、シャークさんに繋ぐ!)
「各スタンバイに、《アシッド・ゴーレム》は素材を1つ取り除く。……くっ!」
カイトのフィールドの《アシッド・ゴーレム》から、素材がパージされた。さらに、《一族の掟》の維持コストとして、俺の《いくら型一番艦》がリリースされ、光となって消えていく。俺のフィールドは、丸裸だ。だが――。
(……フィールドが空。かなりリスキーだが、勝つためにはやるしかねぇ!)
「魔法カード《予想GUY》発動! デッキから《しゃりの軍貫》を特殊召喚! そして……これがあんたへの最高のプレゼントだ。魔法カード《強制転移》発動!!」
「何だと!?」 初めてカイトの顔に驚愕が走る。
「俺は《しゃりの軍貫》を選択!」 「……《アシッド・ゴーレム》を、オレは選択する」
「それぞれが選択したモンスターのコントロールを、入れ替える!」
屋上のフィールドが反転する。真っ白なシャリがカイトの元へ、そして毒の巨像が俺の元へ。 その瞬間、身体の奥底を冷たい泥が這いずるような、悍ましい衝撃が駆け抜けた。
(……ぐっ、これがナンバーズの精神汚染か……! 頭の中をどす黒い憎悪が埋め尽くそうとしてやがる……!)
心臓が早鐘を打ち、吐き気がこみ上げる。だが、俺は自らの腕を強く掴み、無理やり意識をデュエルに引き戻した。
「赤司!」
「……大丈夫だ、今のところは……!」
「だが…!分かっているのか!?「分かっているさ!」ッ!」
「この盤面を返すにはこれしかねぇんだ…!」
魂を削るようなプレッシャーを強靭な精神力で封じ込め、俺はディスクを睨みつける。アシッド・ゴーレムの放つ呪いを、制御ではなく、自らその毒を受け止めることで盤面に留めたのだ。
「罠発動、《エクシーズ・ソウル》! 墓地の《いくら型一番艦》を選択し、アシッドの攻撃力を800アップさせる!」
選択したいくら一番艦はEXデッキに戻り、攻撃力3800へと膨れ上がった巨像が吼える。
「行け、《アシッド・ゴーレム》! そのシャリを叩き潰せ!」
少々不本意だが、俺はしゃりの軍貫を攻撃する。その巨体から繰り出される、凄まじい衝撃波がカイトを襲う。
「……ぐわぁっ!!」
カイト LP 2800 → 1800
「……ターン終了だ。感想はどうだい?」
「ノーコメントだ」
つれない奴、と思いつつシャークのスタンバイフェイズが始まる。《アシッド・ゴーレム》のエクシーズ素材が、ついに底を突いた。
「赤司。チッ……俺のターン、ドロー!」
シャークは容赦なく、《エアロ・シャーク》の効果で、さらに1600のダメージを叩き込む。
「俺の手札は4枚だ、1600ダメージを食らえ!エアー・トルピード!」
カイト LP 1800 → 200
爆風がカイトを飲み込むが……彼は、膝をつきながらも執念で耐えていた。
「これでチェックメイトだ。俺はカードをセットして、ターン終了!」
そして。運命のカイトのスタンバイフェイズが訪れる。
「……あ、あぐっ……!!グハァッ!」
突然、俺の全身を強烈な電撃が貫く。素材のない《アシッド・ゴーレム》の呪いだ。
「赤司!?」 「……呪いですよ。スタンバイフェイズ時に、オーバーレイ・ユニットが1つもなければ2000ダメージを食らう呪い……結構、腹に響くな……」
赤司 LP 4000 → 2000
(……これでいい。俺のライフも、この巨像も、全部カイトを追い詰めるための材料に過ぎない。最後にシャークさんが決められる盤面さえ残れば……俺はここで力尽きても構わねぇ!)
「……オレの、ターン! ドロー!! 《フォトン・サプライメーション》発動! 墓地の《フォトン》2枚を除外し、2ドロー! さらに《フォトン・クラッシャー》を召喚!」
カイトは冷徹に俺を指差した。
「都合よく奪ってくれて感謝するぞ。まずは貴様から排除する。《フォトン・クラッシャー》で、《アシッド・ゴーレム》を攻撃!!」
「……そうだ!それを待ってたぜ、その攻撃を! 罠発動、《赤酢の踏切》!!」
俺は残る力を振り絞って叫ぶ。ディスクのレバーが真っ赤に発光する。
「盤面の縦列にあるすべてのカードを手札に戻す! 吹き飛べ、《銀河眼の光子竜》!!」
光の竜が霧の向こうから現れた列車の影に轢かれ、カイトの手札へと戻る。
「しかし、バトルは続行だ!」カイトが吠える。
「その通り……《アシッド・ゴーレム》の効果発動! 素材のない状態で攻撃を受けたとき、俺は2000ダメージを受ける。……シャークさん、あとは頼みましたよ……。最高の盤面は、用意したつもりだ……」
「赤司――!!」
凄まじい闇の奔流が俺を飲み込む。ライフポイントが、一気にゼロまで転落した。
寿 LP 2000 → 0
(あとは、頼んだぜシャークさん)
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赤司のライフポイントが消えゆく間際に見せた、どこか清々しささえ感じさせる微かな笑みが、俺の脳裏に焼き付いて離れない。 赤司の身体は、その場に力なく崩れ落ちた。
ただの気絶――だが、その消耗しきった寝顔は、彼がどれほどのプレッシャーの中で、このデュエルを制御し続けていたかを物語っていた。
静まり返った屋上で、カイトの冷徹な声だけが、硬いコンクリートに跳ね返る。
「……フン、泥に塗れた策を弄したところで、結果は変わらん。邪魔者は消えた。残るは貴様一人だ」
カイトは手札に戻った《銀河眼の光子竜》であろうカードを忌々しげに睨みつけ、それから視線を俺へと戻す。その瞳には、一人のデュエリストを文字通り命を削るまで追い込んだことへの感慨など、微塵も存在しない。あるのはただ、獲物を追い詰めた狩人の冷酷な確信だけだ。
「オレはカードを1枚伏せ、ターンエンド。……さあ、そのペンダントを渡してもらおうか。抵抗は、もう無意味だ」
突きつけられた要求を、俺は低く地を這うような声で一蹴した。
「……断る!!」
ゆっくりと顔を上げる。視界の端、赤司が最期に守り抜いた俺の伏せカードが、静かにその時を待っているのが見えた。 あのお人好しは、自分の身を盾にし、泥を啜ってまで、俺にこの一瞬を繋いだのだ。奴が気絶する間際まで盤面に刻みつけた執念が、今もこの場に渦巻いているのを肌で感じる。
「俺には負けられない理由があるんだよ……!遊馬のためにも、チャンスを作ってくれた赤司のためにもな!」
「俺のターン……ドロー!!」
引き抜いたカードに、全ての執念を込める。カードが空気を切り裂く鋭い音が響いた。
「魔法カード、《ディープ・シー・アタック》発動!!」
手札から《ジョーズマン》を墓地へ叩きつける。その瞬間、屋上の風景が一変した。 コンクリートの底から、底冷えのする濃紺の海が溢れ出し、フィールド全体を飲み込んでいく。それは光を拒絶する、深海という名の処刑場だ。
「手札の攻撃力2000以上の水属性モンスター1体を墓地へ送ることで、このターン、俺のフィールドのモンスター1体は相手への直接攻撃が可能になる!」
カイトの頬がわずかに引き攣った。 奴のライフは、わずか200のみ。対する俺のフィールドに浮上しているのは、鋼鉄の牙を持つ深海の捕食者。
「これで終わりだ、カイト!」
俺は全力で、カイトの喉元を指差した。 《潜航母艦エアロ・シャーク》のハッチが重厚な音を立てて開き、内部に装填された魚雷が、残光を放つカイトの胸元へとロックオンされる。
「行け、《潜航母艦エアロ・シャーク》!! 銀河の果てまで追い込みやがれ!! 『ビッグ・イーター』!!!」
咆哮と共に放たれた巨大な魚雷が、空間を震わせながらカイトへと肉薄する。板前が用意した盤面の仕上げを、俺は怒号と共にぶちまけた。
UNDER-SRで軍貫使った人は私くらいなんですかね?
一回も当たらなくて悲しかったです。