軍貫使いはZEXALで寿司を握る 作:Dの軍貫 シンキハヨ・チョーダイナ
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時は夕暮れ時。茜色に溶け始めたハートランドシティの空は、どこか切ない色をしていた。
(……もうすぐ「人生は祭り」とほざく彼氏気取りの泥棒野郎によってモノレールの終点駅辺りが警察騒ぎになるんだろうな)
原作の記憶を辿りながら、俺はそれをあずかり知らぬこととして深く溜息をついた。今はただ、この狂騒の一日から一刻も早くフェードアウトしたかった。
ビルの間に通る大通りから、今にも地平線へと沈みそうな太陽が映る空を見る。何もかも変わった今世だが、少なからずとも共通点はある。変わらず夕暮れは惚れ惚れするほどに美しいことはその一つだ。前世からずっと思っていたが、夕暮れは烈火を思わせる彩りがあり、本当に神秘的で魅力的だ。すぐに儚く消えてしまう幻想的な風景だからこそ、心に染みてしまうものなのか。
そんなことを考えつつ、俺は愛車のママチャリのペダルを重々しく踏み込む。背中の出前箱は空だが、俺の精神的なキャパシティもまた、空っぽに近かった。トロン一家との遭遇、そして健三郎を始めとしたハードに飢えるデュエリストたち。俺にとってこの街の野蛮人らの熱量はどうにも毒気が強すぎる気がしてならない。
「……早く帰ろう。店に戻って、明日の仕込みをするんだ。それだけでいい。それだけで……」
自分に言い聞かせるように呟いた、その時だった。
「どけどけどけぇーーい!!」
突然、前方から物体が迫ってくる。
「ん?へ?はぁ!?」
突如として頭上から降り注ぐ、暴力的なまでの轟音と突風。 重力に抗うようなエンジン音が鼓膜を震わせ、俺は反射的にブレーキを引き、歩道に自転車を滑り込ませた。コンクリートの路面をタイヤがこすり、火花が散る。視界が舞い上がった土煙で真っ白に遮られた。
「ゲホッ、ゲホッ! ……おい、何だよ今の……テロか!?」
土煙の向こう側から現れたのは、巨大なロケットランチャーを模した浮遊台座に跨り、ピンク色の髪を棚引かせた少女だった。一瞬で分かる、神月アンナだ。
彼女の原作で見た通りの破天荒極まるその姿は、およそ日常という言葉からは最も遠い場所にいる。それもそう、アニメにて彼女が登場する話はそれほど多くはない。しかしそれらの話はあえて多くの意味を込めて言うと、インパクトがあり印象深いものだからだ。
「あーあ、またハズレ! 遊馬の野郎、本当にムカつくぜ!」
…というか、また原作キャラかよ!?なんで今日はこうも遭遇するんだ!?というかムカつきたいのはこっちなんだが?
しかし首謀人であるアンナは俺に悪びれもせず、むしろ遊馬への苛立ちを隠そうともせず、地団駄を踏んだ。その拍子に足元の石が砕け散る。……脚力、どうなってんだよ。
「……あの、お嬢さん。危ないから、そういうのは広い場所でやってくれるかな?」
ぶつかってきたのは二の次にして、とにかく関わるな。俺の全細胞がそう叫んでいたが、注意だけはしておかなければ、この街の交通安全は守られないのも事実。遊馬とデュエルした後の彼女が少しでも常識が通じる相手であってくれと願いながら声をかけるが……。
だがそれが今日の俺の、最大にして最悪の間違いだった。
「あんた……」
アンナの鋭い視線が、俺の左腕、調理服の袖から覗くデュエルディスクを捉える。獲物を見つけた猛獣のような、獰猛な輝きが彼女の瞳に宿った。
「デュエリストじゃん!ちょうどいい、遊馬に会えなくてムシャクシャしてたんだ! あんたを遊馬だと思って、私のこのドッカンとした愛を全部ぶつけてあげるぜ!!」
不味い!完全にスイッチが入った!
「断る!!!」
「はぁ!?なんでよ!?」
「お前、WDCの出場者じゃないんだろ!?逃げさせてもらおうか!」
俺はそう言いって踵を返し、自転車に乗り込み逃げる。しかし、背後から迫る機械的な唸り声と快活な声の元凶はそう易々とは逃走を許してはくれなかった。
「待て待て待てーい!逃げるな卑怯者ー!捕まりやがれ!」
うん、やっぱり追いかけてきますよね。でも捕まれと言われて本当に真に受けるアホではないんでね!俺は立ち漕ぎで必死にペダルを回す。
「遊馬なら小鳥ちゃんにゾッコンでお前なんて眼中にないと思うぞ!」
乙女心を傷つけるようで悪いが、こうでもしなきゃ振り切れないし口撃させてもらわなきゃ割に合わない。
「えっ!?あー!今乙女の心を傷つけたな!?もう怒った!発射!」
彼女はそう言うと、まさかランチャーの主砲から砲撃をブチかましてくる。
「マジかよ。」
思わず俺はそう声が漏れる。まさかアンナがここまで倫理観のリミッターを解除していたとは思いもしなかった。砲弾は俺の前方の道に着弾し、爆風と共にアスファルトが抉れ、礫が飛んでくる。銃刀法違反とかテロ等準備罪とかそういう次元じゃないだろそれは。
「おい、本気か!?」
「大マジよ!まだまだー!発射!」
本気をマジって…あなたそういう年じゃないだろ!二段目は道のプランターに衝突し、陶器の破片と土が宙を舞う。空中で発射しているため命中率は低いのだろうが、それでも万が一自転車に当たったら不味いし、俺の身体に当たったらそれはそれでまた不味い、命の危険を感じ、俺は苦渋の決断で足を地面につけた。
(……クソ。また残業かよ)
俺は溜息をつき、デュエルディスクを起動させる。
「お!ようやく観念したようだな!ってことは俺とデュエルすんだな!?」
「ああ。逸散走りでお暇しようとしたが、まさかストーカーに武力行使されるとは思っていなかったものでな。さっさと終わらせて帰らせてもらうぞ。」
「「デュエル!!」」
寿 LP 4000 / アンナ LP 4000
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夕暮れ時。静寂に満ち溢れていれば良いものを、それを目の前の暴走列車が打ち消す。
その猛々しい威勢は、俺をも飲み込みそうだ。
「俺の先攻だ!ドロー!俺は手札から、《爆走特急ロケット・アロー》を特殊召喚!このモンスターの攻撃力は5000、超えられるもんなら超えてみやがれ!」
「やはり来たか!」
さっそく問題児のお出ましか。フィールドに現れた鉄の塊が、巨大な重圧となって周囲の空気を押しつぶす。
今アンナが言った通り、素で持ちうる攻撃力5000は遊戯王において一番高い数値。《F・G・D》を代表に、そのどれもが強烈な効果を持つエース級モンスターだ。
一方で《ロケット・アロー》はどうかというと…俺はDパットを使い、効果を確認するとそこには衝撃的な一文。
『このカードが自分フィールド上に存在する場合、このカード以外のカードは発動する事ができず、またセットする事もできない。』
なんだこの効果は…と言いたくなるほど強烈なデメリットがあるのだ。自分を《スキルドレイン》より厳しい状態にしてどうするんだよ。さらにそれに加えて維持コストも強烈だ。
『自分のターンのスタンバイフェイズ時に手札を5枚墓地へ送る。』
一瞬山札かと見間違うがそんなことはなく、確かに手札だ。嘘だと思うじゃん?ところがどっこい、嘘じゃありません。自分で全部ハンデスするとか論外だ。送り付けるにしても攻撃力が高すぎるだろ…ということで精々ネタカードぐらいにしか認知されない問題児モンスター、それが《爆走特急ロケット・アロー》なのだ。
「俺はこれでターンエンド!」
耐え切れず、俺は声が出る。
「おい、お前…」
「ん?ビビってるのかー?」
その、何も気にせず胸を張る表情に俺は一種の哀れみさえ覚えるが、これは真剣勝負。グッと堪えて俺はカードを引き抜く。
「いや、そうじゃない。俺のターン、ドロー。」
「俺は手札から《予想GUY》を発動!デッキからレベル4以下の通常モンスターを特殊召喚できる、よって《しゃりの軍貫》を特殊召喚だ。」
異次元の穴から、しゃりが積まれた軍艦が降り立つ。
「何だそれ、ネタが無いお寿司か!そんなので俺のロケットアローに勝てるわけないない!」
《しゃりの軍貫》も攻撃力2000とレベル4通常モンスターにしては最高級の攻撃力を持つモンスターだ。しかし今目の前にいるのは腐っても攻撃力5000のモンスター。《カード・フリッパー》などで越えられなくはないが残念ながら今の手札にそれは無い。よって無理だと割り切って素早く諦める。
「いや、バトルフェイズは放棄。俺は裏守備でモンスターをセット…さらに俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ。」
「ムー、なんか残念だな!まぁいいや!」
良くねぇだろ。というか後先考えなさすぎるだろ。
「俺はスタンバイフェイズに手札を5枚墓地へ送り、ドロー!」
思ってはいたが本当に墓地効果も無い辺り、本当に暴走列車の異名を持つだけあるな。
「俺は《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》をリリースなしで召喚し、二体でオーバーレイ・ネットワークを構築!」
さすがの引き。来るか、レベル10機械族エクシーズの最高傑作。
「現れろ、俺の切り札!《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》!」
やはり来た。効果は言わなくても分かるだろう、それほどにシンプルで強烈。
路地を埋め尽くすほどの巨大な砲身が、俺の鼻先へと向けられる。その銃口から漏れる熱気が、調理服を焦がしそうだ。
「まさかこんなに早く使うとは思ってもいなかったが、狙い通りだ!罠カード発動!《ドッペル・ゲイナー》!」
そうだ、俺はバーンを警戒していた。本来はアンナ対策で入れていたカードがここで光る!
「グスタフ・マックスの効果発動!オーバーレイ・ユニットを一つ使い、相手に2000ポイントのダメージを与える!くらえ、俺の熱い想いぃーーー!!」
ドゴォォォォン!
強烈な衝撃が通りを震わせる。
寿 LP 4000 → 2000
アンナ LP 4000 → 2000
明らかに人に向けるべきでない砲撃が俺とアンナに直撃する。鼓膜が破れんばかりの爆音と共に、ライフが半分まで削られる。かなり痛い。
「な、なんでだ!?なんで俺まで食らうんだよ!」
「お前が無視した《ドッペル・ゲイナー》の効果。俺が受ける効果ダメージはお前にも同じ分食らうんだよ。」
「なにっ!?ムカつくー!もういいや、グスタフ・マックスで攻撃! 《しゃりの軍貫》を粉砕しろ!」
《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》 ATK 3000 vs 《しゃりの軍貫》 ATK 2000
寿 LP 2000 → 1000
路線に乗った砲塔列車の、その過剰とも思える大きさの主砲から《しゃりの軍貫》があまりに強烈な砲撃を食らい、沈む。
「やっぱスカッとするぅー!俺はこれでターンエンドだ!」
「デュエルは爽快感だけじゃねぇからな?俺のターン、ドロー!」
俺は静かに、だが確実な逆転の布石を打つ。
「俺は伏せカード、《きまぐれ軍貫握り》を発動!俺はデッキから軍貫を3枚見せ、そのうち相手は1枚選ぶ。さぁ、お前は何を注文するんだ?」
俺が提示するのは《しゃりの軍貫》と、《いくらの軍貫》2体。
「えー?じゃあ《いくら》だな!美味そうだし!」
「そうか、相手が選択したモンスターを手札に加える。そして俺はリバースカードオープン、《ゴブリンドバーグ》を攻撃表示に変更する。」
「そして俺は《いくらの軍貫》を召喚し、効果発動!デッキから3枚捲り、《しゃりの軍貫》があれば特殊召喚できる!」
まぁおそらく来ないだろうが…、そう思いつつ捲る。《一族の掟》、《カード・フリッパー》、そして…《しゃりの軍貫》。
「来ただと!?お、俺は《しゃりの軍貫》を特殊召喚し、二体でオーバーレイ!」
正直来るとは思っていなかったが、運がよかった。
「荒れ狂う海を渡り、至高の味を届けよ!エクシーズ召喚!《弩級軍貫-いくら型一番艦》!」
「効果で2回攻撃を可能とし、さらに1ドロー!」
軍貫に攻撃力3000を超える術は直接攻撃以外には無い。しかし、それは昔の話。今の俺にはそれが可能だ!
「リバースカードオープン、《二重召喚》発動!このターン、俺は2回通常召喚できる!俺は今引いた《ゴブリンドバーグ》を召喚し、二体の《ゴブリンドバーグ》でオーバーレイ!」
初出勤だぞ、爺さん!
「出でよ、《No.60 刻不知のデュガレス》!」
黒霧の中から禍々しくも、知的な風格の老賢者が現れる。
『ようやく我の出番が来たか!赤司寿、貴様は何を求める?富か?力か?過去の遺物か?』
デュガレスの声は、頭蓋に直接響くような重低音だった。彼はその長い指先で、浮かぶ砂時計を弄ぶ。
「俺は、力を求める!」
『しかし、貴様はその代わりに訪れる時を失う。その代償は大きいぞ?』
俺は迷いなく言い切る。アンナの放つ直進の情愛という名の重圧を押し返し、一気に決着をつけるための、たった一つの答え。デュガレスの放つ圧力が路地裏の空気を凝固させる。その言葉は、勝負の鉄則を説く師のようでもある。
「構わん、このターン中に決めるからな!」
『よろしい!ならばその願い、叶えて進ぜよう!刹那の輝きに魂を焼くがいい!』
デュガレスが魔力を杖に込め、天空へと掲げる。
「俺は《デュガレス》のオーバーレイ・ユニットを二つ取り除き、効果発動!《弩級軍貫-いくら型一番艦》の攻撃力を二倍にする!」
その掲げた魔法杖から、濁流のような魔力が戦艦へと注ぎ込まれる。シャリの船体が軋み、溢れんばかりのイクラが赤々と、まるで煮え滾るマグマのように発光し始める。
《弩級軍貫-いくら型一番艦》 ATK 2200 → 4400
その溢れんばかりの力を元に、汽笛が鳴る。
「仕込みは済んだ、俺は《弩級軍貫-いくら型一番艦》で《グスタフ・マックス》を攻撃!」
巨大な寿司の戦艦が全速前進を開始する。 艦首から一斉に放たれたのは、超圧縮されたイクラの弾丸。それが真っ赤な流星となって、夕闇を切り裂きながら巨大列車の装甲へと突き刺さった。
「なっ……俺のグスタフがぁ!?」
轟音と共に、グスタフ・マックスの重厚な鉄の装甲が紙屑のように引き裂かれ、爆炎がアンナの視界を覆いつくす。
アンナ LP 2000 → 600
「ラストオーダーのお時間だ、何かあるか?」
「そ…そんなぁ…」
「無いようだな、俺は《弩級軍貫-いくら型一番艦》でダイレクトアタック!」
もはや盾となるカードはいない。イクラ型一番艦の主砲が最大出力で発射され、その圧倒的な光がアンナを包み込んだ。
アンナ LP 600 → 0
砲撃の光がアンナを包み込み、そのまま彼女をフライング・ランチャーごと後方のゴミ捨て場へと吹き飛ばした。
『おい、我への給料は出るんだろうな?』
「……やっぱ要るのか?」
デュガレスは空気を読まず俺に問うてくる。しかしデュエルを終えた安堵感から、少しだけ肩の力を抜いて答える。
『当然だ!我は契約には厳しい。…分かった、そんな顔をするな!我から提示する!炙った赤身よりやや脂身のあるマグロ、これを出せ!』
脂身がややあるマグロ……?ああ、あれか。
「炙り中トロか、たく、ニッチなところを。分かったよ。明日な!」
『うむ、よろしい!約束だぞ、寿』
そう言ってデュガレスは元のカードに引っ込む。案外話分かってくれるんだなぁ。
満足げに頷くと、老賢者は微かな笑みを浮かべてカードの中へと消えていった。
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ARフィールドが解除され、辺りは元の静かな路地裏に戻った。先ほどまでの爆音は嘘のように消え、ただ遠くを走る車の走行音だけが聞こえる。ゴミ捨て場の中から、ピンク色の髪が力なく動く。
「……う、うぅ……。うわぁぁぁーーん!! なんだよそれぇー!! 寿司なんかに負けるなんてぇーー!!」
アンナは地面を叩いて泣きじゃくった。その様子は、先ほどまでの威勢が嘘のように、ただの失恋した少女のようだった。 俺は溜息をつき、ママチャリを起こすと、泣き喚く彼女の前に歩み寄りハンカチを渡す。
「……泣くな。近所迷惑だろ」
「うぐっ、ひっ……。だって……俺のグスタフが……負けるなんて……」
やっぱりこのデュエルで感じた。アンナは師匠といえる人物がいるはずだが、それでもデュエルタクティクスを殆どと言っていいほど持っていない。
「あんたのデッキ、パワーは最高だ。線路の上を走る列車のように、直進の破壊力なら右に出る者はいない。……だがな、あんたのデュエルには少々わさびが足りねぇんだよ」
「……わ、わさび?」
アンナが涙を拭い、ポカンとした顔で俺を見上げる。
「ああ。攻めることしか頭にないから、自分の線路がどこで切れてるか見えてねぇんだ。あんたの戦い方は、まるでワサビ抜きの大トロをそのまま口に放り込むようなもんだ。美味いかもしれないが、すぐに飽きる。そして、その重さに胃がもたれるんだよ」
「……何だよ、偉そうに!」
「そうかもしれねぇ、けど聞いてくれ。物事には順序ってのがある。何も直進だけで物事を成し遂げることはないんだ、急がば回れというだろ?相手の動きを見据えてバランスよく攻め、隙を突く繊細さがなけりゃ、どんな大火力も空振りに終わる、いや避けられる。はっきり言うぜ、あんたの信条は真っすぐすぎるんだよ。」
夕闇が深まり、彼女の瞳が潤んでいるのがよく見える。
「…だ…だから俺は遊馬に負けたのか……?」
「俺はそのデュエルを見てねぇけどな。でも今言ったことは覚えておいても損はないんじゃねぇか?」
俺がデュエリストとしての持論を思わず熱く語る。するとアンナの瞳に、先ほどまでとは違う種類の輝きが宿り始めた。
「講釈垂れて悪かったな、別に俺の持論だしあんたはあんたで別の考え…」
「……繊細さ……。バランス……。そうか……!遊馬が俺の愛を受け止めるには、もっと緻密な計算と、ピリッとした刺激が必要だったんだ……! 凄いよ、あんた! 寿司のくせに、デュエルの真理を突いてくるなんて!」
すまん、遊馬。俺、遊馬に偉い迷惑をかけるかもしれねぇ。
「いや、だから……」
「よし、決めた!!」
アンナは勢いよく立ち上がると、俺の手を両手で握りしめた。その握力で俺の指が悲鳴を上げる。
「あんた、俺の第二の師匠になれ!! その『わさびの極意』、俺が完全にマスターするまで、死んでも離れないからな!!」
「……はぁ!? 弟子!? いや、うちは弟子とか募集してねぇし!」
まさか俺の言い分がここまで響くなんて思ってもいなかった。彼女はそういうことを言っても取り合わない性格だ。
自分が招いたこととはいえ。とどのつまり、詰みだな。
「いいじゃん、看板娘でも何でもやってあげるぜ! むしろ、師匠の側で学ばなきゃ、俺
のグスタフは進化できないって今確信した! さあ、早くお店に案内してくれよ! お腹空いて死んじゃいそうだよ!」
「ちょ、おい! 押すな! 荷台に乗るな! ママチャリのスポークが折れるだろ!」
アンナは勝手に俺の自転車の荷台に飛び乗り、グイグイと背中を押してきた。 「胸が当たってるんだよ!止めろ!」とも言うにも言えない俺の心の弱さが憎いし、全く嬉しくねぇ……。 俺は夕暮れの街を、予定外の重荷を背負って、ボロボロの体で漕ぎ出した。
「なんで俺の後ろに乗るんだよ!?お前は乗り物あるじゃねぇか?」「いいじゃん?師弟みたいな感じでさ?あと普通にエネルギーが切れたから乗れねぇんだよー。」
じゃあ歩けや。
「いや、やっぱり形から入ったほうがいいと思うんだよな!あ、そうだ!言い忘れてた、俺の名前は神月アンナだ!よろしくな、師匠!」
そう言ってアンナは俺に笑う。
「───くそ、しゃあねぇ。分かったよ、アンナ!WDCの期間ぐらいは世話を見てやるよ!」
「さっすがぁー!俺の目に狂いは無かったみたいだな!」
前世から思っていたが、コイツやっぱりスタイルだけは一等級なんだよな。スタイルだけは。
「師匠、明日の朝食は特上軍艦がいいな!」「うちは朝から営業してねぇよ!!」
今日だけで原作キャラに三人も会った事実に俺は辟易しつつも、明日への波乱の心の準備はまだできていなかった。
「そのランチャー降ろせないか?めっちゃ漕ぐ足が重いんだけど?」
「がんばれー!我らがロケット・ビークル号!」
「勝手に命名するな!」
というより、できる暇すら無いと言ったほうが正しいのかも知れない。
いよいよ紙に列車新規が来ましたね、私はMD専なので剥けませんが。
MDに列車新規が実装されるのは夏ぐらいになるんですかね?今から楽しみです。