軍貫使いはZEXALで寿司を握る   作:Dの軍貫 シンキハヨ・チョーダイナ

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タイトルに他意はありません。
不遇な時期が長かったにしても、私は理不尽なEXWINを許さない~





お目覚め姉様

「おいで、《No.41 泥睡魔獣バグースカ》……。私はこれでターンエンド……おやすみなさい……」

 

彼女が力なく宣告すると同時に、フィールドには巨大なバクを思わせる醜悪な魔獣が姿を現した。それは前世において「レベル4が二体並ぶならとりあえず入れておくべき」とまで称された汎用ランク4のエクシーズモンスター。同時に、そのあまり簡単な召喚とは全く見合わない拘束力の高さから数多の決闘者を絶望の淵に沈めた、悪名高き封殺の象徴だ。

 

バグースカがフィールドに降り立った瞬間、周囲の酸素までが希薄になったかのような強烈な睡魔が津波となって押し寄せ、俺の意識を闇へと引きずり込もうとする。魔獣はこれ見よがしに抱えた大きな酒瓶を枕代わりにし、今にも不快ないびきをかきそうなほど重苦しい空気を撒き散らしていた。先日の《パラダイスマッシャー》といい、俺が遭遇するナンバーズは禁止カードのバーゲンセールでもやっているのかと、俺は霞む視界の中で毒づいた。

 

「ナンバーズの正体はそれか……。とんだ居眠り野郎が出てきやがったな」

 

俺の隣で、アンナが眠気を堪えるように自分の腕を強くつねりながら、ランチャーのグリップを握り直した。

 

「困ったな……。この状況、一筋縄じゃいかないぞ」

「でも、守備力は2000! 師匠だったら簡単に倒せるぜ! ほら、しゃっきりしなよ!」

 

アンナは元気よく鼓舞してくれるが、現実はそう甘くはない。この魔獣の真価は、その見かけ倒しの数値ではなく、周囲を強引に眠りへと誘うその制圧能力にある。バグースカが守備表示で存在する限り、フィールドの全てのモンスターは強制的に守備表示へと固定され、さらにその状態で発動された効果はすべて無効化される。前世でも猛威を振るったこの雑な封殺能力を前に、俺は重い溜息を吐いた。

 

「ええ!? 全員守備で効果無効なんて、どうやって戦うんだよ! これじゃ俺の列車も動けねぇじゃねぇか!」

「アンナ、落ち着け。こういう時こそ、職人の腕が試されるんだぞ。ネタが新鮮なら、寝かされても味は落ちない」

 

俺は襲い来る睡魔を無理やり振り払うべく、右掌で自分の頬を思い切り叩いた。鋭い痛みが脳を突き抜け、霧がかかっていた思考に冷徹な電流が走り出す。

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

引き抜いたカードを確認した瞬間、指先に確かな熱が宿った。俺は静かに口角を上げ、セットしていた魔法カードを勢いよくオープンする。

 

「俺は伏せカード、《予想GUY》を発動だ。デッキから《しゃりの軍貫》を特殊召喚。さらに《二重召喚》で召喚権を増やす。現れろ、《火炎木人18》!」

 

フィールドに漆黒のシャリが着水し、続いて激しく燃え盛る木造ロボットが轟音と共に現れる。しかし、彼らがその威容を誇る暇もなく、バグースカの吐き出すどろりとした霧が彼らを包み込んだ。モンスターたちは糸が切れた人形のようにガクリと膝を突き、強制的に深い眠りへと落とされ、守備表示へと固定されてしまう。

 

「……それは守備表示だよ……。さらに効果も発動できない……。しかもそれは、ずーっと続く……永遠の、おやすみなさい……」

 

虚ろな瞳で勝利を確信したようにお姉さんが呟く。だが、こいつらはどちらも通常モンスターだ。効果を無効にされたところで、元より持っていないのだから関係ない。

 

「しかし、ずっと寝かせておくつもりはないぞ。俺は魔法カード《カード・フリッパー》発動! 手札を一枚捨て、《バグースカ》を守備表示から攻撃表示に変更だ!」

 

居眠りにはこの特効薬がよく効くだろ。一瞬、この効果で魔獣が飛び起きるかと期待したが、バグースカは不機嫌そうに鼻を鳴らし、のっそりと寝返りを打って攻撃態勢に入っただけだった。期待していたほどの劇的な変化ではないが、ともかくこれで戦場を支配していた厄介な制圧効果は消え失せた。

 

「師匠、でも墓地に《いくら型一番艦》がある! これじゃレベル4が並んでるけど、エクシーズ召喚しても効果が使えないし、第一攻撃力で勝てない! 意味が無いぜ!?」

「確かにそうだ。でも、それは昨日までの話。アップデートされた俺のメニューを見せてやる!」

 

俺は《しゃりの軍貫》と《火炎木人18》の二体を選択し、渦巻く光の中へと導く。

 

「俺は二体でオーバーレイ! 現れろ、《ダイガスタ・エメラル》!!」

 

オーバーレイ・ネットワークの光の中から、一際清廉な風を纏って《ダイガスタ・エメラル》が現れる。翡翠の鎧に身体を包み、背中からは鋭角的な翼が優雅に伸びている。手にした錫杖の先からは、バグースカが撒き散らす酒気を含んだ霧を浄化するかのような、澄み切った旋風が絶えず溢れ出している。初めて実戦で召喚したが、このアスファルトの戦場において、その気高き騎士の立ち姿は一際異彩を放っていた。

 

「うおお! 師匠の新しいエクシーズモンスターだ! 緑色でかっこいいじゃん!」

「こいつの効果は最高だぞ。仕込みは完璧だ!」

 

俺は騎士の錫杖のオーブを光らせ、戦場の因果を巻き戻すように墓地のカードを指定した。

 

「《ダイガスタ・エメラル》の効果発動! オーバーレイ・ユニットを一つ取り除き、墓地のモンスター三体をデッキに戻して1ドローだ!」

 

騎士が錫杖を掲げると、墓地から《いくらの軍貫》、《しゃりの軍貫》、そして先ほど破壊された《いくら型一番艦》の魂が光の粒子となってデッキへと還り、自動的にシャッフルされる。指先に伝わるデッキの重みが、再び勝利への路筋を示してくれる。

 

「さらに俺は伏せカード、《きまぐれ軍貫握り》を発動! デッキから《いくらの軍貫》と《しゃりの軍貫》をお姉さんに提示する。……さぁお姉さん、聞こうか。どっちがお好みです?」

 

ホログラムで映し出された二つのネタを前に、お姉さんは少しだけ目を輝かせ、無意識に喉を鳴らした。

 

「うーん……今日は、いくらかなぁ……。ぷちぷち、してるやつ……」

 

「あいよ! ならば俺はデッキから《いくらの軍貫》を手札に加える! 続けてフィールド魔法《軍貫処『海せん』》を発動! 威勢よくいくぞ、《いくらの軍貫》を召喚だ!」

 

店構えがフィールド全域に広がり、活気ある声が響き渡る。俺は淀みない動きでカードを次々と展開し、再び最強の布陣を整えていく。

 

「召喚成功時に効果発動! デッキトップに《しゃりの軍貫》をセットし、《いくら》の効果で三枚捲り、そのまま《しゃり》を特殊召喚! 再び現れろ、エクシーズ召喚! 《弩級軍貫-いくら型一番艦》!」

 

先ほど破壊されたはずの軍艦が、さらに洗練された蒸気を噴き上げながら、アスファルトの海を割って再び浮上した。厨房の活気、職人の魂、そしてエメラルが運んできた追い風が一体となった時、もはやナンバーズの睡魔など入り込む余地はない。

 

「1ドローと二回攻撃が可能だ! 食らえ! 職人の意地を込めた一撃だ!!」

 

一番艦の主砲がバグースカの腹部を真っ向から貫く。衝撃波が交差点を揺らし、お姉さんのライフポイントが初めて削られた。

 

「……んぅ……あいたっ! ちょっと、響くじゃない……」

 

お姉さん LP 4000 → 3900

 

砲煙が晴れると、そこには未だにバグースカが眠っている。

 

「ナンバーズは……ナンバーズ同士での戦闘じゃないと、破壊されない……。つまり、まだ寝足りないんだよ……」

 

そうじゃん。完璧に忘れてた。

 

「そんな原作限定の効果もあったな……俺は《いくら型一番艦》の効果発動! 戦闘ダメージを与えたとき、相手フィールドのカードを1枚破壊できる! 俺はお姉さんの伏せカード1枚を破壊だ」

 

俺はバグースカがなおも不気味にフィールドに居座り続けるのを見て、二の矢を放つ準備を整えた。変わらずバグースカのどて腹は伸縮を続けているのが見える。

 

「……予想外……。私は《威嚇する咆哮》を発動。その攻撃は、これ以上受け付けない……」

 

「俺はカードを一枚伏せる。これで、ターンエンド!さあ、目を覚ましてもらおうか」

 

ナンバーズを倒されたことで、ようやく彼女の意識に鋭い痛みが突き刺さった。栗色の髪を振り乱して起き上がった彼女の瞳には、先ほどまでの朦朧とした色に代わり、ナンバーズの魔力に突き動かされた昏い執念が宿っていた。

 

「私のターン……ドロー……」

 

「この瞬間、罠発動!《赤酢の踏切》!同じ縦の列にあるカードをすべて手札に戻す!よってバグースカは退場だ!」

 

これは対象にとる効果ではないため、攻撃対象の耐性持ちのバグースカにもしっかり効果が発動するのだ。霧の向こうから列車が獏へと体当たりする。強烈な衝撃波がお姉さんのスカートを激しく揺らした。ナンバーズ特有の闇のオーラが霧散し始め、戦場を支配していた重苦しい睡魔が目に見えて薄らいでいく。轟音と共に泥睡魔獣が爆散する。

 

「……いたいじゃない……。せっかく、いい夢……見てたのに……。お返し……だよ……」

 

ふらふらと、しかしどこか機械的な正確さで、彼女はセットされていた魔法カードへと指を伸ばした。発動されたカードから放たれる柔らかな光が、一時的に戦場の殺気を中和していく。

 

「私は《平和の使者》発動。攻撃力が1500以上のモンスターは攻撃できない……これで……眠れる……」

 

そのカードから放たれた不可視の障壁が俺のフィールドにあるモンスターの動きを封じる。強制的な静寂。発動されたものは仕方ないので一旦デッキの回転を止めてカードをセットした。

 

「また厄介なカードのお出ましだな。……ん? おい、お姉さん! そっちは危ないって!」

 

「ううん……もう少し暗い場所で寝たいよぉ……」

 

盤面が再び膠着したと思ったのも束の間、俺とアンナの目の前で、事態はカードゲームの枠を超えた最悪の局面へと転がり始めた。意識が混濁したままのお姉さんが、ふらふらとした足取りで、よりによってトラックのクラクションが鳴り響く交差点の中央へと舞い戻っていったのだ。

 

「「えっ!?」」

 

鼓膜を突き破らんばかりの轟音。視界の端から、制動距離を無視したような速度で配送トラックが迫り来る。運転手はパニックに陥っているのか、ブレーキをかけるどころか蛇行しながら、まさに死神のような勢いで彼女へと肉薄していた。

 

「おい、師匠! デュエル中断だ、あのお姉さんが轢かれちまう!!」

 

アンナが即座にフライングランチャーを構えた。その銃口がトラックのエンジンルームを狙う。だが、ここでトラックを直接破壊すれば、積載物や車両の破片が周囲に降り注ぎ、余計に被害を拡大させるのは目に見えていた。

 

「待て、アンナ! それじゃ被害が広がるだけだ。わさびだ、わさび!」

 

「わさび……!? ああ、そうか! 真正面からぶつかるだけが能じゃないんだよな!」

 

俺の意図を汲み取ったアンナの表情が、一瞬で職人のそれに変わった。彼女はランチャーの角度をミリ単位で調整し、あえて女性の足元にある路面へと照準を固定した。

 

「真正面からぶつかるだけが、列車の走り方じゃねぇんだな! 喰らいな、特製爆風デリバリーだ!! 発射ァァァ!!」

 

空気を引き裂く轟音と共に放たれた榴弾が、お姉さんの背後の地面で炸裂した。強烈な爆圧が彼女の体をふわりと持ち上げ、まるで巨大な見えない手が彼女を掬い上げたかのように、トラックの進路から外れた噴水へと彼女を押し流した。その直後、巨大な金属の塊が猛烈な風圧と共に、さっきまで彼女がいた場所を通過していった。

 

「……ふぇ? ……空……飛んでる……?」

 

噴水の冷たい水飛沫を全身に浴びて、ようやく彼女の瞳からナンバーズの澱んだ濁りが消え始めた。水浸しのスーツで呆然と空を見上げる彼女に対し、俺は新たなカードをデッキから引き抜き、デュエルを完遂させるべく宣言した。

 

「お姉さん、路上で寝るのはもう終わりだ。……俺のターン、ドロー!!」

 

引き当てたのは《エクシーズ・ギフト》。俺の盤面にはエメラルと一番艦という二体のエクシーズが存在する。勝利へのレシピは既に完成していた。

 

「俺は《ダイガスタ・エメラル》のオーバーレイ・ユニットを1つ取り除き、効果発動! 墓地にある《しゃりの軍貫》を特殊召喚だ! 《軍貫処『海せん』》の効果でデッキトップに《うにの軍貫》を!」

 

さらに《エクシーズ・ギフト》でドローを加速させる。俺は翡翠の騎士をリリースして新たな素材をフィールドに並べる。三体目となるエクシーズ。それは、荒波を越え、全てを飲み込む軍艦。

 

「俺は《しゃりの軍貫》と《うにの軍貫》でオーバーレイ! 現れろ、《超弩級軍貫-うに型二番艦》!!」

 

「……そんなの……私の《平和の使者》と伏せカードで……」

 

噴水の中でずぶ濡れになったまま、彼女が最後の抵抗を試みて罠を発動させる。だが、俺の軍艦には既にその対抗策が備わっていた。

 

「浮上しろ、軍貫よ!」

 

「それはダメ……罠発動、もう一回《威嚇する咆哮》!」

 

彼女は目をようやく見開き、罠を発動させる。しかし、すでにそれは無力だ。

 

「それと《平和の使者》は《超弩級軍貫-うに型二番艦》の効果で無効にする! 夢から覚める時間だ、逃げ場はないぞ!」

 

二番艦から放たれた無効化の波動が、彼女を守るカードを紙屑へと変えた。防波堤を失った彼女のライフを、豪華絢爛な軍艦たちの同時攻撃が飲み込んでいく。

 

「《いくら型一番艦》で攻撃だ!」

 

戦艦からの掃射が何も守るものの無い彼女のフィールドを飲み込む。

 

お姉さん LP 3900 → 700

 

「これで……とどめだ! 《超弩級軍貫-うに型二番艦》でダイレクトアタック!」

 

激しい爆光が噴水の水を蒸発させ、彼女のライフは完全に尽きた。

 

お姉さん LP 700 → 0

 

軍艦たちの放った一斉射撃が噴水の水柱を鮮やかに切り裂き、彼女のライフを完全に削り取った。

 

 

 

####

 

 

 

「ん……私……何してたんだっけ?」

 

衝撃波が収束すると同時に、街を覆っていた毒々しい紫色の霧は、まるで朝日を浴びた残雪のように急速に消え失せていく。彼女はようやく目覚めたようだ。

静寂が戻った路上で、彼女の胸元から一枚のカードが力なく剥がれ落ち、乾いた音を立ててアスファルトの上で静止した。

 

そこには、巨大な酒瓶を抱えて眠りこける醜悪な獣の姿――『No.41 泥睡魔獣バグースカ』が描かれていた。俺はそれを拾い上げると、ナンバーズ特有の不気味な熱量を確認する。

 

「デュガレス、お前これどうにかできないか?」

 

………

 

返事は来ない。寝ているのだろうか? 叩き起こすのは申し訳ないので、俺はEXデッキにデュガレスの隣にバグースカを滑り込ませることとする。これでどうにかなるだろう。

 

「よし、ナンバーズは確保だ。……しかし、なんで俺がこうも次から次へとナンバーズハンターみたいな真似をする羽目になってるんだろうな」

 

俺のぼやきを耳にしたアンナが、自身の巨大なランチャーを背負い直しながら、興味深そうに俺の懐を指差した。

 

「そのナンバーズはどうすんだ? 昨日は別のナンバーズを使ってただろ。それもそのまま自分のもんにするのか?」

 

「いや、ナンバーズを集めている熱心な友人がいてな。そいつに会った時にでも譲ってやるさ。もっとも、この広いハートランドで今日会えるかどうかは分からんけどな」

 

あえて遊馬の名前は口に出さない。面倒くさくなるからな。

 

 

 

####

 

 

 

「えぇ!?私が!?交差点で寝てた!?」

 

「はい、危なかったので起こしたんですよ」

 

「うう……恥ずかしい……」

 

その後、噴水の水で強制的に酔いを覚まされたお姉さんは、事の顛末を聞いて文字通り顔を真っ赤に染め上げた。自分が路上で一升瓶を抱えて寝ていたこと、そしてトラックに轢かれそうになったところを爆風で救われたことを知ると、彼女は壊れた玩具のように何度も頭を下げ続け、震える手で迷惑料と称してハートピースを差し出してきた。

 

「まったく、とんでもないお姉さんだったな。朝から一升瓶なんて……」

 

聞くと、彼女は仕事終わりの宴会で深夜から朝までずっと一升瓶を飲み続け、俺が起こしたときには無意識のうちに飲み干していたらしい。何という肝臓強者なんだろうか。遠ざかっていくお姉さんの、水浸しのスーツを翻して逃げるような背中を眺めながら、俺は手の中のハートピースを転がした。

 

「でもハートピースを3つもくれたぞ! 昨日から数えたら、結構な収穫なんじゃないか?」

 

アンナは能天気に笑う。意識が朦朧とした状態でのデュエルなのに、渡してもいいのかと再三念を押したが、それでも彼女は「恥ずかしすぎて死にそうだから受け取ってくれ」と強引に押し切ってきた。結局、受け取った3つのピースのうち、型が合ったのは1つだけ。残りの2つは無念にも形状が異なっていたが、それでも前進したことに変わりはない。

 

「へへっ、でも師匠! 俺のあの爆風デリバリー、しっかり『わさび』が効いてただろ?」

 

アンナが自慢げに鼻をこすり、俺の顔を覗き込んできた。その誇らしげな表情は、ただ無秩序に物を壊すことを楽しんでいた昨日までの彼女とは明らかに違う。どうやら俺の説いたデュエル哲学が、彼女なりに腑に落ちたらしい。そんな期待に満ちた目で見つめられては、素直に認めないわけにはいかないだろう。

 

「……ああ。助かったよ、ありがとうな、アンナ。最高のサイドメニューだったぞ」

 

俺がそう告げると、彼女は分かりやすく「へへーん」と胸を張り、鼻を高くした。その様子はどこか微笑ましくもあったが、俺はわざとらしく視線を逸らし、意地の悪い指摘を付け加えた。

 

「だがな、あの爆風でお姉さんのスカートが派手に捲れ上がったのは、あれも計算通りだったのか?」

「えっ!? ……そ、それは……不慮の事故だ! 師匠の変態!」

 

アンナは顔を真っ赤にして叫び、恥ずかしそうにランチャーの影に隠れた。俺たちはそんな冗談を交わしながら、再び決闘者の集う広場へと足を動かし始める。弟子入りされてからまだ一日に満たないが、俺の弟子も少しずつ、力押しではない確かな味を覚え始めているようだ。

 

「ま、助けてくれたのは本当だ。店に戻ったら特別にいくらの軍艦巻きを握ってやるよ。それでいいだろ?」

「よっしゃあ! 師匠、最高!!この後ももっとすごい『わさび』を見せてやるからな!」

 

アンナの元気な声が、晴れ渡った二日目の空に突き抜けていった。







節酒は大事。《ダイガスタ・エメラル》さんがデッキのスタメン入りです。
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