軍貫使いはZEXALで寿司を握る   作:Dの軍貫 シンキハヨ・チョーダイナ

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後書きにてアンケートを取らせていただきます。本筋には一切関係ないので、気軽に答えていただけると幸いです。





コースター・デュエル!アクセラレーション!

WDC決勝大会。

 

それは10000人を超える参加規模の過酷な予選を勝ち抜いた、わずか23人の精鋭がしのぎを競い合い、世界一のデュエリストを決めるデュエルの祭典である。

なんでも優勝した暁には、シティにある遊園地の生涯無料パスポートに加えて、ハートランド市長が直々に願い事を一つ叶えてもらえる権利を得るのだとか。

 

(……よくよく考えなくても遊園地の生涯無料パスって言われても、遊びに行く暇なんてねぇんだよな。願い事にも店の家賃免除とか、それくらいしか思い浮かばないし)

 

と言っても、鼻から優勝するつもりはないのだけど。カーテンを開ければ、眩いばかりの日差しが差し込んでくる。いつもと変わらない爽やかな朝の光だ。見上げる空には、鳥が気ままに羽ばたいているのが見える。だが、同時にそこにはいつもと違う、張り詰めた空気と大会開幕をド派手に告げようとする祝砲の花火があった。

 

「……いよいよ始まるのか」

 

窓の外から聞こえる爆音を鼓膜に受けながら、俺はぽつりとした呟きを漏らした。

サイドデッキなし、シングル戦、負けたら即敗退の一本勝負。

正直、昨日までは実感が薄く、全く緊張していなかった。しかし、いざ戦いの瞬間が目前に迫るのを肌で実感すると、どうにも妙なプレッシャーを感じてしまう。心臓の鼓動が少しだけ早くなるのは何ともむず痒いものだ。その感覚を誤魔化すように大きく背筋を伸ばしてから、俺は自室のドアを開けた。

 

トントンと小気味いい音の響く階段を降りると、そこにはすでに厨房に立って仕込みをしている親父の真っ直ぐな背中があった。長年見慣れた職人の背中だ。そして、それを見入るように、いつもより少し姿勢を正してカウンター席に座るアンナの姿あった。

 

「あ、師匠!おはよう!」

 

気付いたアンナがパッと顔を輝かせ、弾けたような声で挨拶をしてくる。

 

「ああ、おはようアンナ。朝から随分と元気だな」

「あったりまえじゃん!今日は師匠の大舞台なんだから、弟子の俺がのんびり寝てられるわけないだろ!」

 

いつになく鼻息の荒いアンナは、身を乗り出して小さな拳をグッと握る。その並々ならぬ熱意を宥めようとしたが、厨房からの親父の低い声がそれを遮った。

 

「声がでかいぞ、アンナ。……寿、今のうちに腹に入れておけ」

 

親父が言葉短く、カウンター越しに器を差し出してくる。そこにあったのは、手際よく握られたばかりのシンプルな塩むすびと、出汁の香りがふわりと立つ温かい味噌汁、それに綺麗な黄色に焼き上がった厚焼き玉子だった。店の本格的な仕込みの合間に作ってくれた、ごくありふれた我が家の朝飯だ。

 

「いただきます」

 

一礼して席に着き、まずは味噌汁を一口すする。丁寧に引かれた出汁の風味が五臓六腑にしみわたり、胸の奥でガチガチに固まっていた緊張が、じんわりと解けていくのが分かった。続いて大ぶりの塩むすびをガブりとやれば、絶妙な塩加減と米の甘みが口いっぱいに広がる。余計な小細工のない、やっぱり親父の握る飯は美味い。

 

「ちょっと親父さん、俺の分は!?」

 

自分の前には何も置かれていないことに気付いたアンナが、不満そうに声を上げた。

 

「これは寿の分だ。食いたければ自分で握れ」

 

親父は包丁の手を止めることもなく、素っ気なくそう告げる。

 

「ええーっ! 大将のケチ!」

 

アンナがぷくっと頬を膨らましているのを横目に、俺は残りの飯を手早く平らげる。しっかり腹が満たされると、不思議と地に足がついたというか、腹の底に一本の覚悟のようなものが決まってきた。

 

「ごちそうさまでした」

 

空になった食器を丁寧に重ね、シンクに漬けてから再び部屋に戻り、出発の身支度を始める。

寝間着を脱ぎ、親父と同じく仕事服に袖を通す。……服装、OK。

棚を引き出し、昨日まで念入りに調整したデッキを手に取ってカードケースに入れる。……デッキ、OK。

机の上で充電を終えていたDゲイザーとDパットをケーブルから外し、カバンに入れる。……DゲイザーとDパット、OK。

 

「あ、そうだ。これを忘れたら参加すらできねぇ」

 

おっと、ハートピースを忘れるところだった。慌てて机の端から手に取ったそのハート型の結晶からは、まるで何一つ疑わないような、そんな純粋ささえ感じられた。お祭り騒ぎの街中で念入りに無くすことがないよう、カバンの奥底に眠らせておく。……ハートピース、OK。必要なものはすべて揃った。

 

「……親父、行ってくるよ」

 

玄関に向かう前、背中に向かって声をかける。親父は包丁を動かす手を止めることなく、相変わらずの威圧感を放ちながら、ドスの利いた声でプレッシャーをかけてくる。

 

「言っておくが、早々に負けて店の名に泥を塗るような真似はするな。お前が背負っているのは、ただのカードじゃねぇ。この店の看板だ」

「分かってるよ。ただでさえこんな格好で出るんだから、嫌でも目立つ。宣伝くらいはしっかりしてくるさ」

 

俺は自身の体に馴染んだ白い調理服と紺色の前掛けを見下ろした。予選の時からずっとこの仕事着を貫いているが、決勝という大舞台になればなるほど、周囲のデュエリストたちに対する自分の場違い感が際立ってくる。

 

「師匠は予選をきっちり勝ち抜いてきたんだからさ、泥なんて塗るわけないぜ!ほら、背中出しなよ!」

 

横から割り込んできたアンナが、励ますようにニカッと笑った。

 

「ん? うわっ」

 

言われるがままに振り返った瞬間、バシィィィン!! と、その小柄な体からは想像もつかないほど重い衝撃が俺の背中に炸裂した。せっかく食べた美味い朝飯が胃から丸ごと飛び出るかと思った。

 

「痛っ……!お前、何すんだよ」

 

あまりの痛さに背中をさすりながら睨むと、アンナは悪びれもせず胸を張った。

 

「気合いの注入だよ!これでバッチリだろ!俺も会場の特等席で応援してあげるから、思いっきり暴れてこいよ!」

 

なるほど、気合注入……OKということか。これで完全に目が覚めた。

 

「……行ってこい。無様な姿は見せるな」

 

最後に親父の短く不器用なエールを耳に押し込み、アンナの賑やかな見送りを背に受けつつ、俺は重い木製の引き戸を開けて店を出た。そして、決勝の地であるスタジアムへと向かった。

 

 

 

####

 

 

 

寿が店を出て行ってすぐ、カウンター席のアンナが時計を見てハッと目を見開いた。

 

「……あ!親父さん、俺もしなきゃいけねぇことがあったんだった!」

「何だと?」

 

突然立ち上がったアンナに、親父が怪訝そうに眉をひそめる。

 

「ごめん親父さん、もう行くぜ!じゃあな!また会場で!」

 

そう言い残すと同時に、アンナは自分の大きなカバンを引ったくり、脱兎の勢いで家を出ていくのだった。バタンと大きな音を立てて閉まる扉を、親父は見つめる。

 

「……全く、眩しいやつらだ」

 

一瞬呆気に取られた後、誰に似たもんだか、と少しだけ口元を緩めて独り言ち、職人の顔に戻って仕込みを再開する。

 

 

 

####

 

 

 

雲一つない青空に、割れんばかりの大歓声が吸い込まれていく。

巨大なすり鉢状のスタジアム。周囲を埋め尽くす観客たちが熱狂の渦に包まれる中、俺はスタジアムの中央に並んだ23人のファイナリストの末席で、ひっそりと冷や汗混じりの息を吐いていた。

 

「寿ーっ!いよいよ決勝だぜ!かっとビングだ、俺!!」

 

すぐ隣では、まるで自分の家の庭にいるかのように、遊馬が興奮しきった様子でぴょんぴょんと飛び跳ねている。

その後ろには、険しい表情のシャークや冷徹な眼差しのカイト、そして独特の不気味さを纏うトロン一家の姿もある。他にも名前までは知らずとも、そいつらに引けを取らないほどに個性的な雰囲気をしている奴ら。……プラス、コートで巧みに隠しているつもりだろうが、妙に既視感のある雰囲気を持っている奴。

ともあれ、この世界の運命を左右するバケモノ連中が勢揃いしている中、いつもの白い調理服に紺色の前掛け姿でぽつんと立っている俺の場違い感は、客観的に見ても異常だった。

 

「おい遊馬、少し落ち着け。周りから浮いてるぞ」

「なんだよ寿! お前ももっとテンション上げていこうぜ!」

 

間違いなく浮いてるのは俺の服装の方なのだが、緊張を微塵も感じさせない遊馬のこの底抜けの明るさこそが、このお祭りの主役にふさわしいのだろう。

 

「お前はいつでも元気だな……一つ聞いておこうか。遊馬、優勝したらどんな願いを叶えてもらいたいんだ?」

 

俺は少し気になって、隣の少年に問いかけてみた。

 

「そうだな……俺は、居なくなっちまったアストラルを取り戻してもらおうかな!」

 

遊馬は一瞬だけ寂しそうな目をしたが、すぐに前を向いて笑った。

……そうだったな。

遊馬の胸元で鈍く輝く、黄金のペンダント。皇の鍵には、今、遊馬の傍にいるべき相棒の姿がないのだ。

 

「ああ、お前の言う幽霊が蘇った時には盛大に祝ってやれ」

「幽霊じゃねぇって!」

 

遊馬が頬を膨らませて抗議したその時、スタジアムに地鳴りのような大音量のファンファーレが鳴り響いた。

 

「なんだ!?」

 

遊馬が驚いて上空を見上げる。ホバークラフトのような乗り物で上空に浮遊するMr.ハートランドが、スポットライトを一身に浴びて優雅に舞い降りてくるのが見えた。

 

『レディース・アンド・ジェントルメン!ついにこの日がやってまいりました!ハート燃え上がる戦いの祭典、WDC決勝大会の開幕ですぞーっ!!』

 

四方八方に投影された立体ホログラムがド派手なエフェクトと共にそう宣言すると、スタジアムのボルテージが最高潮に達した。それと同時に、ズゴゴゴゴ……という腹に響く重低音と共に、スタジアムの巨大な床が左右に割れ始めた。

突如として起きた地鳴りとともに地下からせり上がってきたのは、無数の小型カートと、まるでジェットコースターのように複雑怪奇に絡み合う巨大な鋼鉄のレールだった。

 

『さぁ、ファイナリストの皆さん!まずはこのデュエルコースターで、ハート熱く激突していただきまーす!』

 

観客たちの歓声が爆発する中、俺は目の前に現れた凶悪な絶叫マシンをあんぐりと見上げた。

 

「……マジで乗るのか?」

 

走行中のコースターの上で、時速何十キロもの風を受けながらカードを捌くなど、物理的に考えて正気の沙汰ではない。カードが風で飛んだら色々と問題が起こるだろうに。一体どう責任を取るつもりだ、この運営は。

 

「すっげえええ! 面白そうじゃねーか!」

「おお……」

 

遊馬は目を輝かせて駆け出していく。だが、驚いて周りを見渡してみても、この狂ったアトラクションに困惑している様子の人は誰一人として見当たらない。カイトもシャークも当然のように受け入れている。これ、もしかして俺の感覚がおかしいのか??

 

「よし、またデュエル中に会おうぜ、寿!」

 

完全に置いてけぼりを食らいつつ、自分のカートへと走り出す遊馬の背中を見送りながら、俺は今日一番の深いため息を吐いた。

 

(……やるしかねぇか。親父に店の宣伝を任されてる以上、ここで敵前逃亡するわけにもいかない)

 

俺は調理服の袖を気合を入れ直すようにまくり直し、腹を括って指定された自分のカートへと向かった。

 

「よし、搭乗完了。シートベルトよし、Dゲイザーよし、デッキセットよし」

 

割り当てられたカートの硬いシートに乗り込み、手慣れた動作で各種設定を済ませる。カチリとロックされたシートベルトの強固なホールド感を確認しながら、俺は自分のデッキケースにそっと手を触れた。どうか走行中にバラバラに飛び散らないでくれよ、と祈りを込めて。

 

そんな心配をしていると、カートのフロントパネルに設置された液晶モニターがピカリと青く点灯した。

 

『さあ、ファイナリストの皆さん!レーン選択の時間です!各自、お好みのレーンをタッチしてください!』

 

Mr.ハートランドの軽快なアナウンスがスピーカーから響き渡るとともに、画面に血管のように複雑に入り組んだ路線図が浮かび上がる。見れば、すでにいくつかのレーンは他の血気盛んなデュエリストたちによって選択され、画面上で赤や青のランプが点滅していた。

 

「ええっと、一番無難で、急カーブが少なそうな直線多めのルートは……」

 

俺が激しい横Gを避けるために真剣に画面を睨みつけていると、すぐ左隣のカートから、聞き覚えのある鋭く野太い声が響いた。

 

「おい、大将。ずいぶんと弱気なルートを選ぼうとしているな」

「……ゴーシュさん」

 

声の方を振り向くと、そこには不敵な笑みを浮かべてこちらを見抜いてくる男がいた。その目は、昨日エントランスで少し言葉を交わした時の警備責任者なんていうお堅いそれではなく、完全に血の気の多い、闘争のみを求める純粋な決闘者の目をしている。

 

「昨晩は恩に着たな。だが、それとこれとは話が別だ。決勝の舞台に上がったからには、手加減なしでいかせてもらうぜ?」

「いや、俺は別にあなたと激突したいわけじゃ……」

「フッ、その白い仕事着、戦場でどこまで汚さずにいられるか見ものだな!俺は一番ノリの良いだろう中央レーンで行く! 遅れをとるなよ、大将!」

 

こちらの穏便な拒否を無視して、ガシャン! と音を立ててゴーシュのカートのバイザーが閉じ、彼の中央レーンが確定する。熱い男なのは知っていたが、いざ面と向かってロックオンされると、精神的な意味で胃のあたりが妙に重くなる。

 

「……やっぱり、この大会の参加者、全員どうかしてるな」

 

今更感しか無いその台詞は、コースターの起動音と観客の声援に掻き消され、空に吸われるかのように消えていった。すべてはノリと勢いだけで進んでいる。

俺はゴーシュの選んだ危険な激戦区ルートから一番遠い、スタジアムの最外周をひっそりと走る、最も安全そうなレーンを指でタップした。ライフ回復ポイントがあるにしろ、とにかく、最初は安全第一だ。それに越した事は無い。一発勝負のシングル戦で、開幕早々ライフを大量に失うような、マヌケな真似だけは絶対に避けたい。

 

『全車のレーン確定を確認!』

 

モニターに緑色の「READY」の文字が点滅する。

 

『いよいよ、コースターに命を吹き込む時が来た!君たちが予選で集めたハートピースは、このデュエルコースターを動かすカードキーとなっている!コックピットの所定の位置に、ハートピースをセットだ!』

 

Mr.ハートランドの指示に従い、周りがハートピースを取り出す。遅れるまいと俺もカバンの奥から先ほど仕舞ったハートピースを取り出し、カートのダッシュボードにある凹型の型にあてはめた。カチリと小気味いい音がして、ピースがピッタリと嵌まる。瞬間、カートのエンジンが唸りを上げ、駆動系が駆動を始めた。

 

『さぁ、時は来た!君たち、準備はいいかね!?』

 

スタジアム全体に鳴り響くカウントダウンの電子音が、一秒ごとに皮膚を刺すような緊張感を跳ね上げていく。

5、4、3、2、1――。

 

『デュエルコースター、ファイアーーーッ!!!』

 

ドンッ!!! と、シートを通じて背中を強打されるような強烈なGとともに、各カートが猛烈な勢いで前方に弾き飛ばされた。

 

――遊馬一人のカートを除いて。




On Your Mark,Get Set,DUEL!



さて、ご存じかと思われますがWDC決勝進出者にはトロン一家や遊馬にカイト、シャークにゴーシュ、ドロワといった原作キャラが出ています。ですがそれで23人が埋まるという訳は無いですよね。当然それに加え、精々微々たる言及しかされず案の定一瞬で退場したモブキャラが存在するわけです。

仮にデュエルコースターで行われたデュエルは原作アニメで描写された部分のみである、としますと原作介入すると考えている部分以外のほとんどのデュエルをカットする羽目になってしまい速攻でデュエルコースターが終わってしまいます。

そうしますとストーリー的には問題ないにしろ、小説的には非常に行間の空いた肩透かしのような内容になってしまい、味気ない進行になってしまうことが予想されます。
そこで前書きで書いた通り、この先を執筆するにあたり少しアンケートを取らせていただきます。ぜひお答えください。

この後の展開について

  • モブと寿がデュエルした後、本筋に合流する
  • モブは寿とデュエルせず、速攻で本筋に入る
  • 知らん、そんなことは俺の管轄外だ
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