軍貫使いはZEXALで寿司を握る 作:Dの軍貫 シンキハヨ・チョーダイナ
「「「デュエル!!!」」」
寿 LP 4000 & 鷹翔 LP 4000/飛蛾 LP 4000
「俺のターン、ドロー! 俺は手札からフィールド魔法、《軍貫処『海せん』》を発動!」
勢いよく引き抜いたカードをフィールドゾーンに差し込むと、並走するレール一帯の空間が歪み、巨大な寿司屋のカウンターを思わせる暖簾と、荒波打つ大海原のARビジョンが重なり合って出現した。異様な光景に周囲の空気が一変する。
「俺は手札から《しゃりの軍貫》を召喚、さらに手札からフィールドに《しゃりの軍貫》があるので《いくらの軍貫》を特殊召喚だ。軍貫モンスターが特殊召喚されたので《軍貫処「海せん」》の効果でデッキトップに《しゃりの軍貫》を置かせてもらうぞ」
レールの上の空間に、文字通り巨大な白米の塊である《しゃりの軍貫》がどっしりと鎮座し、続いて艶やかな大粒のいくらを乗せた《いくらの軍貫》が水しぶきを上げて並び立つ。間髪入れずにフィールド魔法の効果が誘発し、寿はデッキトップにカードを置く。
「ここで《いくらの軍貫》の効果発動!デッキトップ3枚を捲り、その中に《しゃりの軍貫》があれば手札に加えるか特殊召喚できる!」
寿はデッキトップから3枚のカードを突き出す。空中を舞うように提示されたカードは――。
《しゃりの軍貫》、《予想GUY》、《きまぐれ軍貫握り》。
ご予約の商品のご到着だ。
「俺は、もう一体の《しゃりの軍貫》を手札に加える!そしてレベル4の《しゃりの軍貫》と《いくらの軍貫》の二体でオーバーレイ!二体のモンスターで、オーバーレイ・ネットワークを構築!」
2体の寿司モンスターが目まぐるしく回転する光の渦へと吸い込まれていく。コースターの風圧を切り裂き、寿の頭上に眩いエクシーズの光が弾けた。
「現れろ、《弩級戦艦-いくら型一番艦》!」
轟音と共に水面から浮上したのは、無数のいくらの粒を砲弾のように装填した戦艦だった。圧倒的な存在感がレールを威圧する。
「効果で1枚ドロー、そして二回攻撃が可能となる!俺はカードを二枚伏せターンエンド!」
「お前、デュエルでも寿司握ってるんじゃねェよ!僕のターン、ドロー!僕は手札から魔法カード、《おろかな埋葬》発動!効果で《甲虫装機 ダンセル》を墓地に送る!」
インゼクター飛蛾が顔を真っ赤にして叫び、即座に魔法カードを発動させた。彼の足元のレールから不気味な墓標が出現し、一体の甲虫の影が吸い込まれるように闇に消える。
「さらに僕は《甲虫装機 センチピード》を召喚!さらに手札から《甲虫装機 ギガマンティス》の効果発動、こいつを《センチピード》に装備だァ!こいつは《ギガマンティス》の効果で元々の攻撃力が2400になる!」
レールの路面に這い出してきたのは、甲虫をモチーフにした禍々しい装甲を構えた人型のモンスター。さらに飛蛾の手札から飛び出した巨大なカマキリが、光の粒子となって百足の身体に重厚なアーマーとして装着された。
「モンスターなのに装備できて、さらに攻撃力が上がるだと!?」
黒咲が目を見張る。
《甲虫装機 センチピード》ATK 1600 → 2400
不気味に蠢く百足の鋭いハサミが、禍々しい輝きを放ち始める。悠々と《いくら型一番艦》の攻撃力を上回るな、と寿は内心で毒づいてしまう。
「行け、《センチピード》!その生意気な奴のモンスターを破壊しろ!」
飛蛾の冷酷な命令を受け、巨大な虫兵士が戦艦目がけて肉薄する。だが、その時だった。
「だがインゼクター、俺のことを忘れてないか?ドロー、俺は《月読命》を召喚、効果でその虫を裏守備表示に変更する。よって装備魔法扱いの《甲虫装機 ギガマンティス》は墓地に送られる。攻撃力は元に戻る!」
忘れてはいけない、コースターのルールはフェイズ共有だ。それはチーム戦であっても同様。
横から黒咲が冷徹な声を響かせる。彼のフィールドに妖しい月光を纏った神々しい姿の男が降臨し、そこから放たれた霊力がセンチピードを包み込むと、瞬時に光の繭に包まれ、レールの上にうつ伏せの状態で沈黙した。装備されていたカマキリの鎧が、ガラス細工のように砕け散って墓地へと送られる。
「助かったぜ、黒咲!」
「ふん、これしきで助かったと思うな」
黒咲は視線すら交わさず、ぶっきらぼうに言葉を返す。
《甲虫装機 センチピード》ATK 2400 → 1600
「チッ、《ギガマンティス》が装備魔法扱いで墓地に送られたから僕は墓地にある《甲虫装機 ダンセル》を特殊召喚!」
飛蛾が忌々しげに舌打ちを鳴らすが、その目はまだ死んでいない。墓地から這い出てきたのは、細身の羽を背中に持つ虫兵士だった。
「僕は《甲虫装機 ダンセル》の効果発動!墓地にある《甲虫装機 ギガマンティス》をまた装備魔法扱いで装備する!」
地に落ちたカマキリの魂が再び実体化し、今度はダンセルの全身を覆う禍々しい外骨格へと変貌を遂げる。
《甲虫装機 ダンセル》ATK 1000 → 2400
凄まじい風圧を撒き散らしながら、再び攻撃力2400の脅威が寿たちの前に立ちはだかった。飛蛾はハンドルを激しく叩きつけ、二人を睨みつける。
「チッ、カードを一枚伏せてターンエンド!お前、僕の道を邪魔しやがって……!」
「……随分と自己中だな、エンドフェイズに《月読命》は手札に戻る。ドロー!俺は速攻魔法《皆既日蝕の書》を発動、《甲虫装機 ダンセル》は裏側守備になる」
黒咲は冷ややかに言い放ち、手札から魔法カードを突き出した。途端にフィールドに不気味な日蝕の闇が広がり、せっかく現れたばかりのダンセルの全身を黒い影が覆い尽くしていく。
「またかよォ……《甲虫装機 ギガマンティス》は墓地に送られる……」
飛蛾が髪をかきむしりながら激昂する。主を失ったカマキリの防具が再び霧のように霧散し、ダンセルはレールの上に縮こまるようにして裏側守備表示へと変更された。強固な布陣を瞬時に無力化された飛蛾の顔が屈辱に歪む。
「バトルは任せろ、《弩級戦艦-いくら型一番艦》で《甲虫装機 ダンセル》を攻撃!」
《弩級戦艦-いくら型一番艦》ATK 2200 vs 《甲虫装機 ダンセル》DEF 1800
フェイズ共有の利点を最大限に活かし、チームプレーで寿が堂々と攻撃を宣言した。並走するいくら型の戦艦がその巨大な砲門を一斉に傾け、裏側守備表示で身を潜めるダンセルめがけて容赦ない砲撃を叩き込む。凄まじい爆炎がレール上を包み込み、身を隠していた甲虫を跡形もなく吹き飛ばした。
「こいつは二回攻撃が可能、《甲虫装機 センチピード》も攻撃だ!」
《弩級戦艦-いくら型一番艦》ATK 2200 vs 《甲虫装機 センチピード》DEF 1200
続けざまに、寿の戦艦の第二砲塔が火を噴く。轟音と共に放たれた大口径の弾丸が、同じく裏側守備表示のまま身動きの取れなくなっていたセンチピードの繭へと直撃し、哀れな百足を木っ端微塵に粉砕した。
「黒咲!」
「ああ、俺は手札から《エクリプス・ワイバーン》を召喚!そのまま直接攻撃だ!」
寿の鋭い合図に応え、黒咲が間髪入れずにカードをスロットへ滑り込ませた。彼のコースターの前方に、烈火の翼を持つ飛竜が咆哮を上げて出現する。ワイバーンは滑空すると、ガラ空きになった飛蛾のコックピットめがけて鋭い爪を振り下ろした。
飛蛾 LP 4000 → 2400
「うぎゃあああッ!?」
強烈なソリッド・ビジョンの衝撃波が飛蛾のカートを直撃し、車体がレールの上で激しく左右に揺さぶられる。飛蛾はハンドルにしがみつきながら、痛みに顔を歪ませた。
「俺はカードを二枚伏せてターンエンド!さぁ赤司、早くあいつに引導を渡せ!」
「ああ!ドロー!俺は手札から」「僕のターン、ドロー!僕は《死者蘇生》を発動!」
寿が自分のターンを開始しようと指をかけた瞬間、隣を走る飛蛾が狂ったように笑いながら、黄金に輝くアンクのカードを強引に発動させた。その割り込みに、寿は思わずハンドルを握る手に力を込めて声を荒らげる。
「おい、今はお前のターンじゃねぇだろ!」
「随分と呑気だねぇ、僕のターンといえば僕のターンになる、それがこのコースターのルールなんだよォ!」
飛蛾はDゲイザーの奥の目を血走らせ、狂気じみた笑みを浮かべて言い放つ。コースター特有の変則的なシステムを完全に掌握しているかのような動きだった。
「だから、こんなこともできる!僕は魔法の効果で墓地から《甲虫装機 ダンセル》を特殊召喚!そのまま効果発動、手札から《甲虫装機 ホーネット》を装備!レベルは3から6に、攻撃力と守備力も上がる!」
光の柱が立ち上り、墓地から這い出たダンセルが再びフィールドに直立する。さらに飛蛾の手札から、鋭い針を持つ巨大なスズメバチが実体化し、ダンセルの腕へと不気味に合体した。
《甲虫装機 ダンセル》ATK 1000 → 1500 DEF 1800 → 2000
「攻撃力と守備力がまた上がったな、しかしそれでは赤司のエクシーズモンスターを突破できないぞ?」
黒咲が冷静に盤面を分析し、冷淡な口調で指摘する。確かに強化されたとはいえ、寿の《いくら型一番艦》の攻撃力2200には及ばない。だが、飛蛾はクスクスと不気味な笑い声を漏らした。
「いいや、僕の狙いはそこじゃあない!」
「何!?」
黒咲が表情を険しくした瞬間、飛蛾は勝ち誇ったように腕を突き出した。
「《甲虫装機 ホーネット》の効果発動、こいつが装備カード扱いなら、墓地に送ることができる!」
「自ら墓地に?」
「効果で《弩級戦艦-いくら型一番艦》を対象に破壊!」
ダンセルの腕から放たれたホーネットが、自爆を厭わぬ特攻を仕掛ける。強烈な羽音と共に迫る蜂の針が、寿の巨大な寿司戦艦の船腹へと深く突き刺さった。直後、凄まじい爆発が巻き起こり、いくらの粒を散らしながら一番艦が煙の中に沈んでいく。
「何!?赤司、不味い、直接攻撃が来るぞ!」
防壁を失ったことに黒咲が焦りの声を上げるが、寿の表情は微塵も揺らいでいなかった。彼は不敵な笑みを浮かべ、フィールド魔法のコントローラーへと手を伸ばす。
「安心しろ黒咲、《弩級戦艦-いくら型一番艦》が相手に破壊されたとき、《軍貫処『海せん』》の効果発動!その守備力分のライフポイントを失う!」
破壊された一番艦の無念を晴らすかのように、フィールドから少なくともしっかりとした衝撃波が放たれ、飛蛾のカートを直撃した。一番艦の守備力は300。その数値がそのまま飛蛾の精神を削り取る。
飛蛾 LP 2400 → 2100
「たかが300ダメージがぁッ!」
飛蛾が煙を払いながら忌々しげに叫ぶが、寿の追撃はそれだけで終わるはずがなかった。寿はデッキに力強く指をかける。
「いいや、代金はまだ済んでないぜ。さらに《軍貫処『海せん』》の効果適用!俺は手札から《しゃりの軍貫》を特殊召喚し、その上に軍貫と名のつくエクシーズモンスター1体をその上に重ねて特殊召喚できる!」
寿の場に再び純白の白米《しゃりの軍貫》が堂々と現れる。そして寿は、その巨大なシャリに向けて高らかに右手を掲げた。
「俺は《しゃりの軍貫》一体でオーバーレイ!現れろ、《超弩級軍貫-うに型二番艦》!」
眩い光の渦がシャリを包み込み、今度は大粒のウニをこれでもかと敷き詰めた、一番艦をも凌駕する超巨大な黒塗りの装甲戦艦がレール上に君臨した。その圧倒的な威容が周囲の空気を震わせる。
「《軍貫処『海せん』》の効果で《うにの軍貫》をデッキトップに置き、さらに《うに型二番艦》の効果で1ドローだ。さぁ、もう終わりか?」
寿はそう言って目の前の相手を煽ってみるが、その彼は一切そのような素振りを見せない。
「いやいや、まだ僕のお楽しみはこんなんじゃない、悪夢はこんなんじゃない!《ダンセル》がフィールドにいて、こいつに装備されていたカードが墓地に送られたとき、デッキから自身以外の甲虫装機と名前のつくモンスターを特殊召喚できる!僕は《甲虫装機 グルフ》を特殊召喚!」
虫兵士が、また別の虫兵士を呼ぶ。
「《甲虫装機 グルフ》の効果発動!墓地にある《甲虫装機 ホーネット》を装備し、またこいつを墓地に送ってさっきから小賢しい《軍貫処『海せん』》を対象に破壊だ!」
当店は蜂と思われる虫兵士の特攻により、一時閉店とさせていただきます。
「そして、そしてそしてそしてェ?僕の墓地には闇属性のモンスターの《甲虫装機 センチピード》、《甲虫装機 ギガマンティス》、《甲虫装機 ホーネット》の3体がいる!」
飛蛾は髪をかきむしり、狂気的な笑みを浮かべながら自身のデュエルディスクの墓地スロットを指差した。その目は完全に血走り、勝利への執念でギラギラと輝いている。
「最初から、最初からこうすればよかったんだ! 現れろ、僕の最終兵器! 降臨しやがれッ──」
突き出された飛蛾の手から、どす黒い闇のオーラが噴き出し、並走するレール一帯を包み込んでいく。空を割って轟く咆哮と共に、漆黒の鱗を持つ凶悪な竜のシルエットが姿を現した。
「──《ダーク・アームド・ドラゴン》ッッッ!!」
凄まじい風圧を撒き散らしながら、圧倒的な存在感を放つ闇の化身がコースターの群れを見下ろす。攻撃力2800の凶暴な竜の出現に、寿と黒咲の表情が同時に引き締まった。
「何だと!?」
「《ダーク・アームド・ドラゴン》の効果発動! 墓地から闇属性のモンスターを1体除外し、フィールドのカード1枚を対象として破壊できる! 僕は《甲虫装機 ギガマンティス》を除外し、黒咲ィ! お前の伏せカードを1枚破壊だ!」
飛蛾が叫ぶと、竜の鋭い爪から漆黒の衝撃波が放たれ、黒咲のフィールドにセットされていたカードの1枚を容赦なく爆破した。しかし、黒咲は眉ひとつ動かさずに冷淡な声を上げる。
「……ハズレだ!《DNA改造手術》は墓地に行く。残念だったな」
「何勘違いをしてるんだよッ! この効果は墓地にある闇属性のモンスターが尽きない限り何度でも発動できる!《甲虫装機 センチピード》を除外して、またお前の伏せカードを破壊する!」
狂ったように笑う飛蛾の命令を受け、竜はすぐさま第二の衝撃波を放つ。黒咲が残していたもう1枚の伏せカードが、激しい爆音と共に木っ端微塵に砕け散った。
「チッ、そういう訳か。伏せカードは《超再生能力》だ」
目の前の竜の効果にターン1制限はない。黒咲は忌々しげに舌打ちするが、それでもまだ視線は死んでいない。それを見た飛蛾は、さらに執拗に追い打ちをかける。
「悪夢は終わらないんだよォ、《甲虫装機 ホーネット》を除外し、《エクリプス・ワイバーン》を破壊する!」
三度放たれた闇の波動が、黒咲の場にいた飛竜を直撃した。凄まじい爆発が巻き起こり、ワイバーンは悲痛な叫び声を上げて光の粒子へと還っていく。
「《エクリプス・ワイバーン》は墓地に送られた場合、デッキからドラゴンを1体除外できる! 俺は《光と闇の竜》を除外する!」
黒咲は即座にデッキから特定のカードを引き抜き、除外ゾーンへとセットした。どれほど場を荒らされようとも、一歩も引く気はない。
「関係ねェよ! さっきはよくもよくも邪魔してくれたなァ!《ダーク・アームド・ドラゴン》で黒咲、テメェに直接攻撃!」
飛蛾の場には二体の虫兵士と、その隣で牙を剥く巨大な闇の竜がいる。ダーク・アームド・ドラゴンが咆哮をあげながら黒咲のカート目がけて急降下を開始する。直撃すればひとたまりもない。
「調子に乗るな。確かに、そいつは強い。だが、干渉できるのは盤面だけ!俺は手札にある《速攻のかかし》の効果発動、自身を墓地に捨てることで直接攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる!」
だが、それすらも黒咲は防ぐ。
黒咲が手札から引き抜いたカードを墓地へ送ると、彼のカートの前に不格好な鉄製の案山子が突如として出現した。竜の放った強烈な一撃は、その案山子が放つ奇妙な波動によって完全に押し返され、霧散していく。
「糞がァ! ターンエンドォ!」
渾身の一撃をあっさりと止められた飛蛾は、悔しさのあまりハンドルを激しく叩きつけ、荒い息を吐きながら叫んだ。
「余裕が早々になくなるあたり、ジュニアって感じだな。俺は罠カード、《赤酢の踏切》発動!こいつと同じ縦列にあるカードをすべて持ち主の手札に戻す!」
寿は不敵に笑うと、前のターンにセットしていた伏せカードを鋭く指し示した。リバースカードが跳ね上がり、レールの上に突如として真っ赤な踏切のホログラムが出現する。遮断機が下りる不気味な警告音が空に響き渡った。
「バーカ、ここはデュエルコースター!フィールドは共有はされているけど、カードの位置情報は無効になるんだよ!」
飛蛾は鼻で嗤い、我が世の春を謳歌するかのように両手を広げた。変則ルールであるデュエルコースターにおいて、縦列を参照する効果は本来なら不発に終わるか、対象を見失うはずの愚策。彼にとって、寿の行動はただの初心者のミスにしか見えなかった。
「いいや、俺はこれで同じ縦列にある《超弩級軍貫-うに型二番艦》を手札に戻す!」
だが、寿の狙いは最初から飛蛾の陣形を崩すことではなかった。遮断機が激しい光を放ちながら、寿自身のフィールドに鎮座していた巨大なウニの戦艦を包み込む。巨大な鉄塊が光の粒子へと分解され、静かに巻き戻っていった。
「何!自らエクシーズモンスターを戻すだと、何を考えている赤司!」
タッグを組む黒咲が、思わず並走するカートから身を乗り出して驚愕の声を上げる。せっかく呼び出した攻撃力2900の主力を、わざわざ自分の罠で消し去るなど正気の沙汰とは思えなかったからだ。寿のフィールドは一瞬にして完全にガラ空きとなった。
だが、それこそが寿の狙いだ。
「魔法発動、《予想GUY》!こいつは俺のフィールドにモンスターがいると発動できないもんでな、だからどかしたって算段だ。さぁ、これが俺の最後のしゃりだ、受け取りな!《しゃりの軍貫》をデッキより特殊召喚!」
寿は一切の迷いなく、手札から次なる魔法カードをスロットへと滑り込ませた。何もない空間から眩い光のゲートが開き、寿のデッキから本日三体目となる巨大な純白のシャリが、凄まじい重量感を伴ってレール上へとドスンと召喚される。
「さらに手札の《うにの軍貫》の効果発動!手札にある《おすすめ軍貫握り》をデッキに戻し、こいつを特殊召喚。さらに効果で《しゃりの軍貫》のレベルを4から5に変更!俺はレベル5の《しゃりの軍貫》と《うにの軍貫》の二体でオーバーレイ、エクシーズ召喚!」
流れるような手捌きでカードを扱い、寿の戦術が目まぐるしく展開していく。シャリの傍らに《うにの軍貫》が飛び出し、即座に《しゃりの軍貫》のレベルを上昇させる。二体のモンスターが再び超高速で回転し、空に再び巨大な銀河の渦を生み出した。
「再誕せよ、《超弩級軍貫-うに型二番艦》!」
眩い光柱を突き破り、先ほど手札に戻したはずの超巨大なウニ型戦艦が、より洗練された威容を誇りながら再び戦場へと舞い戻ってきた。その漆黒の船体から放たれるプレッシャーは、先ほどよりも確実に増している。
「またそいつか!何度出てきたところで無駄ってことが分からないのか!?」
飛蛾は顔を歪ませて叫んだ。一度は手札に戻ったとはいえ、結局は同じモンスター。自分の場には攻撃力2800の《ダーク・アームド・ドラゴン》が健在なのだ。仮にこいつが倒されたとしても、手はいくらでもある。何度出し直したところで、状況は変わらないと信じて疑わなかった。
「果たしてそうかな?」
不敵に微笑む寿の瞳が、Dゲイザーの奥で怪しく光る。その絶対的な自信に満ちた声に、飛蛾の背筋を冷たい戦慄が駆け抜けた。
「ひょ?」
「俺は《超弩級軍貫-うに型二番艦》の効果発動、《しゃりの軍貫》をオーバーレイ・ユニットにしたことで1ドロー、さらに《うにの軍貫》もそこに加えたことで直接攻撃が可能になる!」
寿がデッキから鮮やかにカードを引き抜くと同時に、超巨大なウニの船体から無数のサーチライトが照射され、その全照準が飛蛾のコックピットへと真っ直ぐにロックオンされた。回避不能の鉄槌が下される合図に、飛蛾の顔が恐怖で痙攣する。
「直接攻撃!?ダメだ、それはダメだ!僕は罠カード、《激流葬》発動!僕の盤面が更地になる代わりに、お前のモンスターも破壊だ!」
半狂乱になった飛蛾が伏せカードを叩きつけるようにオープンした。その瞬間、並走するレールを丸ごと飲み込むような、凄まじい濁流のソリッド・ビジョンが周囲一帯に溢れ出す。すべてを押し流す大津波が、寿たちのモンスターを容赦なく襲った。
「赤司! チッ、俺が仕留める他ないということか……」
黒咲が迫り来る決死の激流を見上げ、苦々しく息を漏らす。自陣をも巻き込む飛蛾の捨て身の特攻に、誰もがモンスターの全滅を確信した。
「しかも、僕は墓地から《甲虫装機》カードを何度でも装備して、出しなおすことができる!そう、何度でも! お前とは違うんだよォ!」
激流に呑まれる自らのモンスターたちを見届けながら、飛蛾は狂ったように勝ち誇りの声を上げた。
しかし、流れるような滝が視界を遮り、やがてその水飛沫が晴れたところからでてきたのは、何一つ動じない様子で悠然と佇むモンスターたちだった。漆黒の装甲は傷一つなく、濡れたウニの粒は依然として輝いている。
「な、なぜだ!?僕の《激流葬》は確かに……」
有り得ない光景を前に、飛蛾の顎がガチガチと震えだす。
「赤司、これはどういうことだ!?」
隣を走る黒咲もまた、驚愕に目を見開いて寿を振り返った。
「ああ、確かに《激流葬》は発動した! だが、俺はその時、《うに型二番艦》の効果を発動していたのさ!」
「な、何だと!?」
飛蛾が絶望に染まった声を上げる。寿は不敵に笑い、自慢の戦艦の砲身をさらに深く傾けさせた。
「《超弩級軍貫-うに型二番艦》はただ攻撃するだけじゃない……自分メインフェイズに一度、相手の表側表示カードを対象として無効にできるのさ!」
「な、何ィィィ!? だから……」
「そう! だから、《激流葬》の効果は効かなかったんだ! ここまで説明してやったんだ、最後くらいは派手に散っていけ! 行け、《うに型二番艦》! インゼクター飛蛾に直接攻撃!」
寿の峻烈な号令の元、超弩級戦艦の全砲門から、大粒のウニを模したエネルギー弾が一斉に発射された。空を埋め尽くすほどの光の雨が、逃げ場のないレールの上で飛蛾のカートを真正面から文字通り爆破する。
飛蛾 LP 2100 → 0
「う、うわあぁァァぁああああーっ!!!」
凄まじい爆風と衝撃波の中、飛蛾は鼓膜を劈くような悲鳴をあげた。それと同時に、彼のコースターの座席がセーフティシステムによって強制脱出装置のように上空へと激しく飛ばされていった。コクピットだけを失った哀れな機体は、そのまま火花を散らしながら地面へと脱落していく。
「よし、邪魔者は消え去ったな」
黒咲は飛蛾の負け様を見届けたのち、ようやく自分の本命が果たされる、と言わんばかりの厳しい表情で寿に問いかける。
「さて、赤司!早速で悪いが、デュエルはまだ終わっていない!準備はいいか!?」
彼の問いかけに、寿は全力で答える。
「ああ、黒咲!当然、最初からそのつもりだ!改めていくぞ……」
邪魔者は消えた。
寿の呼びかけに呼応するかのように、二人は息を合わせて宣言する。
「「デュエル!!」」
寿 LP 4000/鷹翔 LP 4000
ということで連戦です。盤面を整理しますと、
寿:
フィールド:《超弩級軍貫-うに型二番艦》と伏せカード一枚
墓地:《しゃりの軍貫》二体、《いくらの軍貫》、《弩級戦艦-いくら型一番艦》、《赤酢の踏切》、《予想GUY》、《軍貫処『海せん』》
手札:三枚
黒咲:
フィールド:無し
墓地:《皆既日蝕の書》、《エクリプス・ワイバーン》、《DNA改造手術》、《超再生能力》、《速攻のかかし》
除外ゾーン:《光と闇の竜》
手札:二枚(《月読命》が一枚)
になっていると思います。間違ってたらコッソリ感想で指摘してください……