軍貫使いはZEXALで寿司を握る   作:Dの軍貫 シンキハヨ・チョーダイナ

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私が一番最初に握ったデッキはRR。エクシーズなのに求められるのはシンクロの感覚という不思議なテーマです。
4+4+5=?





渇きさえ征して

猛烈な風圧が鼓膜を震わせ、鉄のレールが悲鳴を上げる。デュエルコースターだ。その移動が生み出す極限のGが肉体を支配する過酷なロケーションの中で、二人の決闘者の闘志だけが異常な熱量を放っていた。その光景は、まさに信念の激突そのものであった。

 

邪魔者は去った。今こそ、彼らの本来のデュエルが始まる。

 

「「デュエル!!」」

 

寿 LP 4000 vs 鷹翔 LP 4000

 

寿と黒咲が高らかに宣言すると同時に、ARビジョンは再び両者のライフポイントを空中に描く。盤面は連戦形式のため、リセットせずに飛蛾とのデュエルから引き継ぐ形で始まる。寿の盤面には《超弩級軍貫-うに型二番艦》が鎮座し、伏せカードも一枚ある安定の盤面。対して、黒咲の盤面には何のカードも無かった。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

だが黒咲はこの一見ピンチに思える逆境やコースターの風圧に一切怯むことなく、デュエルディスクから勢いよくカードを引き抜いた。迷いなく繰り出されたその腕の軌跡は美しく、ドローされたカードの表面を、日光が照らし出す。手札を確認した黒咲の、前髪に隠れた鋭い双眸が歓喜に細められた。

 

「フッ、ようやく来たか」

 

彼は会心の表情をして、後方で走るコースターにいる寿に言う。

 

「さて、赤司。お前のデッキの弱点はもう暴けたぞ」

 

風の唸りを突き破るほどの、冷徹で確信に満ちた声だった。並走するコースターの距離感を無視するかのように、黒咲の言葉はまっすぐに寿の鼓膜へと叩きつけられる。黒咲は片手を伸ばし、まるで獲物の命脈を正確に指し示すかのように、寿のバトルフィールドを鋭く指差した。

 

「何だと?」

 

寿は風に髪を激しくなびかせながらも、不敵な笑みを崩さずに問い返した。しかし、その視線は黒咲の張り詰めた空気を警戒している。黒咲の分析は、すでに寿の戦術を看破するにまで達していた。

 

「飛蛾とのデュエルでお前は様々なモンスターを呼び出したな?そのモンスターのうち、軍貫と名前の付く効果モンスターは何れもテキストに《しゃりの軍貫》を要求している……」

「……だったらどうした?」

 

苦し紛れのようにも捉えられる寿の言葉に、黒咲はここに確信得たりと言わんばかりにさらに冷酷な笑みを深める。その表情に寿が思わず目を細めると、黒咲の冷徹な横顔がはっきりと見え、また同時にその背後に潜む巨大な影を予感させた。

 

「お前のデッキの弱点。そう、それは、圧倒的なまでの《しゃりの軍貫》の依存度だ!しゃりが無ければ軍艦巻きは握れない!必須では無いようだが、十分に動くには致命的すぎる……そして今、それらは墓地に二体、《うに型二番艦》のオーバーレイ・ユニットに一体存在する!」

「……バレたか」

 

だが不思議と寿の口から漏れたのは、観念したような、しかしどこか楽しげな呟きだった。黒咲の指摘通り、寿のデッキは既に最重要のモンスターを使い果たしていた。尊大とはいえそれに見合うほどの実力を持った飛蛾とのデュエルで、リソースを消費してしまったのだ。しかし黒咲がここで寿に求めているのは、そんなことで瓦解するような柔な牙ではなかった。

 

「飛蛾とのデュエル、見事だったと言わせてもらおう。だが!ここで息切れしてては俺の渇きを受け止められやしない!」

 

黒咲の放った圧倒的なプレッシャーが、コースターの引き裂く風よりも重く寿の全身にのしかかる。強者を求め、その魂を極限まで削り合おうとする決闘者の狂気が、黒咲の瞳の奥でギラギラと燃え盛っていた。それを見た寿の魂が、静かに、かつ同時に激しく燃え上がる。

 

「はっ、言うじゃねぇか。俺にここまで執着するんだ、そこまでするお前の渇きは底知れない。だがこんなところでは俺は息切れしない、俺はこんなところで負けられねぇんだ!こい、黒咲!」

 

そう、寿はこんなところで負けられない。親父との約束もそうだし、何より遊馬にまだ会っていない。寿の咆哮が、並走する二つの車両の間に響き渡る。

 

「無論!俺の本気が、お前にぶつけるに値するかどうか、刮目しろ!」

 

その自らに応えようとする、正に自分が求めていた意志を歓迎するように、黒咲は静かに首肯して手札から一枚のカードをディスクへと叩き込む。

 

「俺は手札から魔法カード、《七星の宝刀》発動!手札からレベル7モンスターの《焔征竜-ブラスター》を除外し、効果でデッキから2枚ドローする!」

 

ディスクから噴き出した魔力の刃がカードを切り裂き、黒咲の指先へ新たな二枚のカードが滑り込む。だが、その寸分もない瞬間にフィールドに巻き起こった異様な熱波に、寿の理性と直感の両方が最悪の警戒を告げた。

 

「征竜だと!?」

 

征竜。ZEXAL期に燦燦たる登場を果たしてから絶滅するまであの手この手で環境に爪跡を残した、炎・水・風・地の親と子のペアで構成されたドラゴン族モンスターたちのことだ。その活躍はもはや語るまでもない。何せ、当時の環境を深く知らない寿でさえ逸話として認知しているのだから。思わず寿の驚愕の叫びが響く。

 

「黒咲、お前は鳥獣族のデッキじゃ……!?」

 

だが、寿が驚いたのはそのカード群の鱗片を見せたからだけではない。本人では無いにせよ天高く飛び、運命に反逆するはずの決闘者が、環境を支配した竜の力を引き出したのだ。驚かずには居られなかった。

 

「何を言っている、俺のデッキに鳥獣族は入っていない!竜のように高く舞えるという点では同じだがな!俺は除外された《焔征竜-ブラスター》の効果発動!デッキから《炎征竜-バーナー》を手札に加える」

 

だが当然そんなこと知ったことではない目の前の男は己の戦術の全貌を誇示するように、傲然と言い放ち、次なる弾丸を手札に装填する。

 

「そして速攻魔法《超再生能力》を発動し、手札から《炎征竜-バーナー》の効果発動!自身と手札にあるドラゴン族の《巌征竜-レドックス》を捨て、デッキから《焔征竜-ブラスター》を特殊召喚!」

 

天を割って、真紅の業火がコースターの線路に降り注ぐ。凄まじい爆音とともに現れたのは、灼熱のマグマを体内に宿した巨大な炎の竜だった。その咆哮一つでARビジョンのエフェクトが激しく揺らぎ、周囲の空気が歪む。

 

「まさか、ここまで本気を出していなかったのか!?」

 

寿の目に見える動揺を、黒咲は覇気溢れる言葉で一蹴した。奴の視線は、遥か高みにある勝利の二文字だけを見つめている。

 

「当然!邪魔者などに本気は出さない。貴様にぶつけるための覚悟、高みを目指す意志!それだけが俺がここにいる理由だ!」

 

その言葉で、寿はハッとする。そうだ、彼にとって飛蛾とのデュエルはただの邪魔でしかなかった。だから、本気を出さなかったのだ。サポートはせども、一切彼はこのような覇気を飛蛾に当てていなかった。最初から、眼中になかったのだ。

 

「俺はさらに墓地からドラゴン族の《エクリプス・ワイバーン》と地属性の《速攻のかかし》を除外し、墓地の《巌征竜-レドックス》を特殊召喚!この瞬間、除外された《エクリプス・ワイバーン》の効果により、除外ゾーンに送っておいた《光と闇の竜》を手札に加える!」

 

してやられた、と寿はそう思う他なかった。俺が飛蛾とのデュエルをしている間、黒咲はずっと俺のデッキを観察していたのだ。大地を象る岩石の巨竜が、ブラスターの隣へと轟音を立てて具現化する。レベル7モンスターがたった一ターンでこうも容易く盤面に降り立つ光景は、圧倒的な絶望感を醸し出していた。黒咲はその二体の巨竜を、冷酷に、そして美しく重ね合わせる。

 

「俺はレベル7の《焔征竜-ブラスター》と《巌征竜-レドックス》の二体でオーバーレイ!」

 

二体の竜がまばゆい光の格子へと分解され、大気を切り裂くような駆動音が周囲を満たした。

 

「天翔ける機龍よ、我らの命を運びここに飛翔せよ!エクシーズ召喚!現れろ、《幻獣機ドラゴサック》!」

 

コースターの上空から雲を突き抜けて現れたのは、無数のジェットを備え、竜を模した形状をした鋼鉄の巨大航空艦。その重量感が、並走するコースターの風圧を強引に圧殺する。

 

「そいつがお前のエクシーズモンスターか!」

 

両翼を成すランク7の代表格といえばドラゴサック。もう一つは……遊馬が持っているはずの、あのカード。そもそもあちらはナンバーズなのだから、目の前の黒咲が持っている訳が無いと、寿は自己の思考を完結させた。そうはいえども、ドラゴサックの脅威は本物だった。

 

「そうだ、これが俺がお前を凌駕するための一つ目のエクシーズモンスター!俺は《幻獣機ドラゴサック》の効果発動!オーバーレイ・ユニットを1つ取り除き、《幻獣機トークン》2体を特殊召喚する!」

 

一つ目?黒咲の言葉に寿は一瞬眉を傾げる。黒咲の号令の下、鋼鉄の艦底が開き、二機のホバー型随伴機が鋭い金属音を響かせながら射出される。黒咲は間髪入れずに、その巨大な質量を寿の防衛線へと仕向けた。

 

「さらに、《ドラゴサック》の更なる効果発動!《幻獣機トークン》1体をリリースし、お前の《超弩級軍貫-うに型二番艦》を破壊する!」

 

上空からの容赦のない精密爆撃が、寿の戦場を文字通り消し飛ばした。寿が操る高級戦艦が、爆炎の中で無惨に鉄くずへと変えられ、黒煙がコースターの後方へと激しく流れていく。

 

「こうもアッサリ倒すか。だが、その効果を使った《ドラゴサック》はこのターン攻撃できない……いや、違うか」

 

寿は冷静だったが、同時に最悪の結末を予測していた。ここまで彼の戦術には一切の迷いがない。まるで、ドラゴサックの攻撃制限など最初から織り込み済みのように。黒咲は冷徹に、自らの手札を見せつけるように掲げた。

 

「その通り。更なる高みを目指す俺にとって、これは通過点でしかない!俺はこのターン、まだ通常召喚を行っていない!残った《幻獣機トークン》と《幻獣機ドラゴサック》の2体をリリースし、アドバンス召喚!」

 

鋼鉄の巨体と随伴機が同時に光の粒子となって霧散し、代わりにフィールドを包み込んだのは、まばゆい聖光と、すべてを塗りつぶす漆黒の闇という、相反する二つの概念を持つ竜だった。

 

「光と闇の狭間から現れし竜よ、ここに降臨し飛翔せよ!現れろ、《光と闇の竜》!」

 

白と黒の二対の翼を持つ、神聖にして禍々しい絶対的な竜がコースターの頭上に君臨する。その圧倒的なオーラに、周囲の空間がビリビリと拒絶反応を起こすかのように震えていた。黒咲のバトルフェイズ宣言が、容赦なく下される。

 

「バトル!赤司、貴様の盤面はがら空きだ!《光と闇の竜》で直接攻撃!」

 

光と闇の竜が雄叫びを上げ、寿のコースター目掛けて上空から狙いを定める。

 

「罠カードオープン、《きまぐれ軍貫握り》!」

 

寿は決死の覚悟で伏せカードを発動させたが、黒咲はそれを鼻で笑い、竜の絶対的な支配力を誇示した。

 

「無駄だ、《光と闇の竜》の効果!モンスターの効果、魔法、罠が発動したら、その瞬間発動は無効になる!代わりに自身の攻守が500ダウンするがな」

 

竜の身体から漆黒の波動が放たれ、寿の罠カードは発動の光を失って虚空へと消滅した。

 

《光と闇の竜》ATK 2800 → 2300 / DEF 2400 → 1900

 

少し弱体化しながらも、その二色の口から放たれた壊滅的な光と闇のブレスが、寿の身体を容赦なく直撃する。衝撃波が寿のシートを激しく揺さぶる。

 

「くっ……うああああぁっ!」

 

強烈な衝撃に絶叫し、寿の身体が激しくのけぞる。ディスクに表示されているライフポイントが、一気に危険域まで減少していった。

 

寿 LP 4000 → 1700

 

「俺はこれでターンエンド。エンドフェイズ、このターン俺が手札から捨てたドラゴン族は《炎征竜-バーナー》と《巌征竜-レドックス》の2体。よって、《超再生能力》の効果でカードを2枚ドローさせてもらうぞ。さァ、かかってこい。並みのデュエリストではここで尽きるが……貴様は違う」

 

黒咲の手札が静かに3枚へと回復し、完璧なまでの布陣を維持したまま、静かに寿へとターンが渡される。だが、ボロボロになりながらも、寿の瞳の奥の光はまったく消えていなかった。むしろ、この状況が彼の決闘者としての闘志をこれ以上ないほどに研ぎ澄ましていた。

 

「俺は並み並みならぬデュエリストってことか?そりゃそうだ、俺はこんなところでネタが尽きたりなんてしねぇよ!」

 

寿が黒咲の確信に笑みを含ませながら返し、その威勢に負けじと勢いよくカードをディスクから引き抜く。

 

「俺のターン、ドロー!俺は《火炎木人18》を召喚し、続けて魔法カード《強制転移》を発動!」

 

寿が引き込んだのは、お世辞にも強力とは言えない下級モンスター。しかし、それでも最高の味付けとなる。燃え盛る木人が現れると同時に、お互いの支配権を入れ替える魔力の渦が巻き起こった。黒咲は、その強制効果の仕様に即座に対応する。

 

「……こうも早く突破口を見つけるとは。《光と闇の竜》の効果は強制。自身の攻守を500下げ、その発動を無効にする!」

 

彼は既に寿の狙いを感づいたようだ。聖なる竜の魔力が再び効果をかき消すが、それこそが寿の狙いだった。

 

《光と闇の竜》ATK 2300 → 1800 / DEF 1900 → 1400

 

ステータスが十分下がりきった竜を見据え、寿は力強くバトルを宣言する。

 

「よし!これで奴の攻撃力は1800、バトルだ!攻撃力1850の《火炎木人18》で《光と闇の竜》を攻撃!」

 

《火炎木人18》ATK 1850 vs 《光と闇の竜》ATK 1800

 

炎を纏った木人が大きく飛び跳ねながら上空へ真っ向から突撃し、弱体化した竜の胸を力強く打ち砕いた。光と闇の残滓が激しく飛び散り、黒咲のライフが初めて削られる。

 

黒咲 LP 4000 → 3950

 

「チッ……流石に甘く見すぎたか。俺は《光と闇の竜》が破壊された時の効果発動、墓地から《焔征竜-ブラスター》を特殊召喚する」

 

黒咲は苦々しく言いながらも、即座に次なる壁を呼び戻す。だが、寿の狙いはここからが本番。墓地のカードが眩しく輝き出す。

 

「俺は墓地の罠カード《きまぐれ軍貫握り》の効果発動!自身を除外し、墓地の《しゃりの軍貫》3体をデッキに戻してシャッフルし、1枚ドローする!」

「それでリソースを回復させるのか!」

 

黒咲の驚愕の声を、寿の快活な笑い声が置き去りにする。再利用されたカードたちがデッキへと吸い込まれ、新たな可能性が寿の手札に加わった。

 

「あぁ!確かに俺のデッキは《しゃりの軍貫》に頼っているところが多い。しかし、とうの昔にそれは対策済みということだ!俺はさらに手札から《二重召喚》発動!《ゴブリンドバーグ》を召喚し、効果で手札から今引いた《しゃりの軍貫》を特殊召喚!」

 

プロペラ機と、再び握られた輝くしゃりが並び立つ。寿の鮮やかな指捌きは、黒咲同様迷いが一切無い。

 

「俺はレベル4の《ゴブリンドバーグ》と《火炎木人18》でオーバーレイ!《ダイガスタ・エメラル》をエクシーズ召喚!」

 

緑の旋風の中から、宝石の輝きを纏った戦士が降臨する。寿はその効果を間髪入れずに宣言した。

 

「効果発動!オーバーレイ・ユニットを一つ取り除き、墓地の《超弩級軍貫-うに型二番艦》《弩級戦艦-いくら型一番艦》《うにの軍貫》の3体をデッキに戻してシャッフルし、1枚ドロー!」

 

新緑の戦士が墓地に眠る艦隊を元の居場所へと送り返し、寿の手札に彩を与える。

 

「エクシーズモンスターも簡単にEXデッキに戻すか……やるな、赤司寿!」

 

黒咲は敵ながら見事なリサイクル戦術に、感嘆の声を漏らした。寿は不敵にニヤリと笑い、自慢の仕込みを完了させる。

 

「客がいる限りネタを切らさないのが、寿司屋の仕事だ!俺はカードを1枚伏せてターンエンド!」

「エンドフェイズ、《焔征竜-ブラスター》は特殊召喚されているため、手札に戻る……俺のターン、ドロー。ふむ、しかし、反撃までは手が回らなかったようだな」

 

黒咲は引き入れたカードを一瞥し、寿の盤面を見据えた。確かに、その再利用は長期戦を見据えたもので戦略的には評価できるものだろう。だがしかし、攻撃の手は止まっている。そう思い黒咲は言うが、寿は涼しい顔で、その言葉を訂正した。

 

「そこは反撃のための仕込みと言ってほしいものだが」

「ふん、どちらにせよ変わらん。俺は手札の《焔征竜-ブラスター》の効果発動!自身と《炎征竜-バーナー》を捨て、《ダイガスタ・エメラル》を破壊する!」

 

無慈悲な爆炎が再びフィールドを覆い尽くし、寿の防護壁の一つを木っ端微塵に粉砕した。

 

「続いて墓地の《光と闇の竜》と《ブラスター》を除外し、墓地の《巌征竜-レドックス》を守備表示で特殊召喚!」

「守備力3000か……」

 

寿の呟きに、黒咲は絶対的な自信を漲らせて応じる。コースターの速度がさらに増し、吹き付ける風が肌を刺す中、さらなる征竜の共鳴が始まった。

 

「これでは容易く超えられまい!さらに俺は手札の《風征竜-ライトニング》の効果発動!」

 

竜の呼び声に呼応するように、黒咲は止まらない。

 

「自身とドラゴン族の《瀑征竜-タイダル》を捨て、デッキから《嵐征竜-テンペスト》を特殊召喚……そして墓地にあるドラゴン族の《バーナー》と《ライトニング》を除外し、墓地の《瀑征竜-タイダル》を特殊召喚する!」

 

暴風の竜と激流の竜が、夜空を裂いて同時に咆哮を上げる。圧倒的な自然災害のごとき二体の巨躯が、寿の目の前に立ち塞がった。黒咲の冷徹なバトル宣言が下される。

 

「バトル!《タイダル》で《しゃりの軍貫》を攻撃!」

「かかってこい!」

 

《瀑征竜-タイダル》ATK 2600 vs 《しゃりの軍貫》ATK 2000

 

激流の波濤がしゃりを完全に飲み込み、凄まじい衝撃がフィードバックされ。

 

「ぐっ!」

 

衝撃に耐えかねて寿の身体が震える。ライフは更に減少する。

 

寿 LP 1700 → 1100

 

「こうもあっさり……!」

 

寿の悔しげな声に、黒咲は冷たい眼差しを向ける。だが、その瞳の奥には、寿の伏せカードに対する強い警戒心がまだ残っていた。

 

「フン、儚いな。お前の本気はこんなところか?まさかその伏せカードはブラフなどと言うなよ?」

 

そうだ、彼が《巌征竜-レドックス》を攻撃表示で特殊召喚していたら、そのまま直接攻撃でライフポイントを削り切れていたかもしれない。

 

「さて、どうだろうな?お前が《巌征竜-レドックス》でそのまま攻撃していれば、お前はもう勝っていたかもしれないぜ?」

 

だがそれは黒咲の理知と本能が避けた。一つは伏せカードで防がれるくらいなら、守備力3000の壁を作って次のターンで仕留めるのが安定だという理性的思考。もう一つは彼がここで終わるはずが無いという本能的思考であった。

それを見越したような寿の挑発的な言葉に、黒咲の額に青筋が浮かぶ。自身の慎重さを逆手に取られた屈辱が、奴の闘志をさらに危険な領域へと押し上げる。

 

「……抜かせ」

「どうした黒咲。俺の盤面はカラ、お前の盤面には征竜三体がいる。最初と比べて随分と立場が逆転しちまったな。どうだ、これで十分じゃねぇのか?」

「抜かすな、寿ィ!お前にとって、飽くまで俺はダシでしか無いという訳か……!?」

 

黒咲は、その余裕綽綽の口調から感じ取った。目の前の相手は俺のことを本気で見ていない。言い換えれば、高揚していない。俺とのデュエルで、彼をひりつけさせられていない……と。絶対的に彼のほうが不利なのにも関わらず……!その更なる屈辱こそが、反発力を生み、彼の更なる衝動のグレードを引き上げる。

 

「……ならば!ならばこそ!!その思考、修正してみせよう!」

 

黒咲は意を決したように、大きく息を吸い込み、EXデッキに手をかける。

 

「刮目せよ、赤司寿!俺はレベル7の《瀑征竜-タイダル》と《嵐征竜-テンペスト》の二体でオーバーレイ!」

 

黒咲の叫びとともに、デュエルフィールドの空間全体が、激しいデジタルノイズを伴って歪み始めた。

 

「狂える電子の獣よ……今ここに、無限の可能性を穿つため暴鳴せよ!」

 

これまでの竜とは明らかに一線を画す、不気味で禍々しい漆黒のエネルギーが二体のレベル7モンスターを包み込んでいく。呪いの力を扱うのだ、本来代償は大きいはず。だが彼は覚悟すら通り越した執念の力で、やってのける。

 

「エクシーズ召喚!現れよ、《No.89──」

 

コースターの電磁ロックすら狂わせかねないその異常な魔力に、寿の表情が初めて戦慄に染まった。黒咲は、その力を今こそ高らかに解き放つ。

 

「──電脳獣ディアブロシス》!」

 

ノイズが風に流されて視界が元の快晴へと戻ると、そこには前世ではありえなかった交わりの未来が待っていた。

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