軍貫使いはZEXALで寿司を握る 作:Dの軍貫 シンキハヨ・チョーダイナ
ちなみに現在はアニメだと53話です。サクサクススメナイト……
WDC特設スタジアムのすり鉢状の観客席を埋め尽くす何千、何万もの観衆。その中心にそびえ立つ巨大なホログラムモニターが、突如として極彩色のフラッシュを放った。
数多のホログラムが交差する中、画面に大写しになったのは、ハートランドシティの顔とも言える大会運営委員長、Mr.ハートランドである。彼はステッキを華麗に回し、マイクを握りしめた。
「勝ったのは九十九遊馬選手、ゴーシュ選手!ここで第一セクションも終了だァァァーッ!」
スピーカーからスタジアム全体に響き渡るハイテンションなマイクパフォーマンス。その一声を合図に、観客席からは地鳴りのような大歓声が巻き起こった。
「熱戦に次ぐ熱戦が繰り広げられたパークセクションも、これにて終了!」
彼は大袈裟な身振り手振りで会場の熱気を煽り立てる。激しいサバイバルレースを見届けた観客たちの興奮は、未だ冷める気配を見せない。
「ここを突破した者たちは、次なる難関ッ!地下セクションに突入だァッ!」
モニターの背景が、太陽の照りつける遊園地から、深く暗い地下トンネルの映像へと切り替わる。これから選手たちが挑む未知の領域に、スタジアムのどよめきが一段と大きくなった。
「第一セクションを突破した者は計15名!引き続き、ハゲしく熱いデュエルをご期待ください!」
23人の参加者の中から生き残った、15人の猛者たち。たった8人と数に示せば簡単だが、彼らは激戦をくぐり抜けた決闘者だ。その瞬間を目撃し続けた彼らたちによる次なる戦いへの期待が、会場のボルテージをさらに引き上げていく。
「それでは会場の皆さん、このセクションの見どころを説明しましょう!」
Mr.ハートランドは画面の向こうで不敵な笑みを浮かべ、ステッキの先端をビシッとカメラに向けてみせる。
「ここでの目的は先ほどとまではガラリと変わり、ズバリそれは、一騎討ちの相手を決めること!」
これまでのコースターによる様々な角度からの勝負からの、決闘者同士の純粋な真向勝負へ。ルールの変更を告げると共に、彼はさらなるサプライズを用意していた。
「その戦いの舞台とはっ!ズババリこちらーっ!」
ステッキを振り下ろした瞬間、モニターが四分割され、それぞれ全く異なる過酷な環境が禍々しいエフェクトと共に次々とフラッシュバックしていく。
「マグマ!」
山から灼熱の炎が吹き上がり、ドロドロに溶けた岩がうねる地獄のような空間。
「スペース!」
無数の星々が瞬き、重力の概念すら失われた冷たい宇宙空間に漂う、宇宙ステーション。
「ジャングル!」
鬱蒼と生い茂る巨大な植物と、獣の咆哮が木霊する熱帯の密林。
「キャニオン!」
切り立った険しい岩肌がどこまでも続き、乾燥した風が吹き荒れる荒涼たる峡谷。
「以上4つの特性を持つフィールドッ!」
地下深くの閉鎖空間に建設されたとは到底信じられない、常軌を逸したスケールの立体ホログラムフィールド。観客たちはその圧倒的と言わざるを得ない視覚効果に釘付けとなっていた。
「自分が有利なところに相手を誘い込み、デュエルをするのだッ!当然、道中でデュエルを挑むこともできまーす……が、どう使うかはあなたたちにお任せ!作戦は無限大、私のワクワクも無限大!頼みましたよ、決闘者諸君!」
地下へと下っていくコースターに乗る彼らたちにもまた、このエンターテイナーの熱狂的な説明が聞こえていた。選手たちがその説明に基づく作戦もとい策謀を脳内で巡らせながらも、安全な観客席では熱狂のショーが最高潮を迎えようとしていた。
「それでは観客の皆様、ぜひご唱和ください……!行きますよッ!」
Mr.ハートランドは胸の前で両手を広げ、スタジアムの観客全員の息を吸い込ませるかのように大きく息を吸った。そして、数万人の声と完全にタイミングを合わせて、その言葉を絶叫する。
「燃えろッ!」
スタジアムの屋根を吹き飛ばさんばかりの大合唱と共に、巨大な花火が打ち上がる。
「ハァァァーーーット、バーニング!!」
会場を包み込む今日一番の熱狂と狂騒の中、WDCの第二幕が華々しく切って落とされた。
####
スタジアムに歓声が、轟音となって鳴り響く。
「……こういうのをできる辺り、本当に天職なんだろうな」
正直、Mr.ハートランドの人を沸かせることに対しての才能は俺も少し尊敬するところがある。
「あのオッサン、すげぇよなー……実況もあの人がやってるんだろ?」
「まぁ、そうだな」
「ふーん。それで町長もやってるとかやり手だなぁ」
アンナの口から賛美の声が漏れ出る。それに同感すると同時に、残念ながら、泥棒だったり詐欺師だったりすることも忘れてはいけない。天賦の才も使いよう、というやつだ。嘘と盗みのエンターテイナーは見栄えも言動も一流だ。裏の顔はどす黒いが。
ともかく、ところ変わって、ここは地下セクション。俺こと、赤司寿とアンナはコースターになし崩し的にそのまま乗り込み、第二ステージへと歩みを進めていた。
寿 LP 1100
完全に周辺の空気が太陽に熱されたものから、地下の少し肌寒い空気に変わった辺りで、俺のライフポイントが再表示される。
「あれ、師匠。ライフポイントが減ってるぜ?これってデュエルが終わったら勝手に4000にならねぇのか?」
「引継ぎ制だ。お前が来るのと同時に後ろにぶっ飛ばされていった奴がいただろ?そいつとのデュエルで削られたんだ」
「ああ、なるほど。結構削られちまったじゃねぇか。俺は見れてねぇけど、どんな奴だったんだ?」
黒咲鷹翔。あいつ、俺がいなければ第二セクション進出はどう考えても実力差から決まったようなものだっただろう。原作であいつを倒したのは果たして誰だったのだろうか……Ⅴだろうか……いや、そもそもあいつ、俺とデュエルするためにここまで執着してきたのだったな。ならば原作では居ないのか。よく考えてみれば当たり前だが、何故か当たり前と思えなかった自分が恐ろしい。
「……凄みのある奴だったよ」
総括して、そうとしか言いようのない奴だった。
「……ふーん」
「興味なさげだな」
「いや、師匠にそこまで言わしめるなんてとんでもねぇ奴だったんだなぁと」
最強の竜たちに加え、尋常ならざる精神力の持ち主だったのでまぁ間違ってはいないか。そう俺は脳内で結論付け思考を打ち切り、コースター据え付けのモニターを見る。
13、と標識が書かれたコースターを中心として、他に様々なコースターがレーンに沿う形で縦横無尽に前へと駆けて行っているのが分かる。なるほど、俺は13番目に地下セクションに突入したのか。
「ところでアンナよ、ここにTとMって書かれたマークがあるだろ?」
「ああ。これがどうしたんだ?」
狭い運転席から前方の視界を確保しつつ、俺はコントロールパネルに埋め込まれたルートモニターを指差した。暗闇の中、電子の光がアンナの興味津々な顔を青白く照らし出している。彼女は身を乗り出し、食い入るように画面を覗き込む。
「Tが罠カード、Mが魔法カードの設置ポイントだ。ライフポイントは魔法カードで回復できるらしい、罠は危険色でそのままバーンダメージだ。俺は操縦桿を操るので忙しいから誘導してくれないか?」
迫り来る分岐点と加速するコースターの制御。これ以上のマルチタスクは致命傷になりかねない。だからこそ、助手席に居座る彼女をナビゲーターとして有効活用しようと提案したのだが。
「ああ!分かったぜ!ところで、師匠よ。今しがた指さしたTのマークなんだけどよ……」
あ。
彼女の快諾の声が急に焦りを帯びたものに変わった瞬間、目の前に罠カードの設置ポイントが迫ってきていた。逃げようと反射的に操縦桿を限界まで切るも、時もはや遅し。車輪は無情にも、俺がたった今説明したばかりの罠のポイントを通過しようとする。
お待ちしておりました、と言わんばかりに無情に跳ね上がった、伏せカードは。
《ギフトカード》
相手は3000ライフポイント回復する。
2000バーンはくれぐれも勘弁してくれ……と思い目を思わず瞑ると、システム音と共にそこには逆の効果が待ち受けていた。
「「え?」」
目を開けて、現実を疑う。
寿 LP 1100 → 4100
だが、ライフポイントは回復されている。確かに、回復したのだ。
「「えええええーっ!?」」
嘘だろ!? なぜ罠ポイントでライフポイントを大回復させるカードが発動するんだ!?このデュエルコースターの仕様上、罠は俺に牙を剥くはず。なのに、きっちりと俺のライフが回復している。あまりの不可解な現象に俺とアンナが揃って硬直していると。
『全く、おちおち安心して寝てもいられん主だ……何だ、何をそんなに驚くことがある』
脳内に直接響いてきたのは、聞き慣れた荘厳で重みのあり、それでいてどこか怠惰な感情を滲ませたな声だった。
「デュガレス!?」
「罠なのに回復って……え、どうしたんだ師匠?」
混乱の極みにあるアンナをよそに、俺は心の中で問う。
これ、お前の仕業か!?
『そんなに喚くでない、主よ。我が少し訪れる時を操作しただけだ。ほんの少し、な』
悪びれる様子など微塵もない。じゃあ本来の罠カードは……と俺が焦って尋ねると、奴はひどく退屈そうに答えた。
『案ずるな。《運命の分かれ道》だ』
コイントスで表なら2000回復、裏なら2000バーンのカードだ。今のライフ状況で裏を引けば即座に敗北が確定する、まさに死のルーレットである。
『ただ、貴公は運が無い者だからな、コイントスの不確定要素を排除したまでよ』
……確かに、50%を当てるほどの自信はない。俺の運の無さを見越して、強引に安全な未来を引き寄せたということか。いつもなら何かと文句を言ってしまうだろうが、今回ばかりは命拾いした。
ありがとう、デュガレス。
『何、礼には及ばん……さて、主よ。我との念話に勤しんでいる暇があるのなら、モニターを見てはどうだ?』
「師匠、後ろからコースターが来てるぜ!」
デュガレスの忠告とアンナの叫び声が重なる。ハッとしてモニターを見ると、後方の闇の中から猛スピードで接近してくる光点があった。
「もう来たか!」
俺は手札を改めて握りしめ、接敵の瞬間を待つ。並走するレーンに隣接してきた赤い車体。その運転席の人物の顔が薄明かりに照らされた瞬間、俺は思わず目を丸くした。
「って、お前は……」
「ああーっ!寿じゃねぇか!」
「遊馬!?」
何故ここに!?自力で脱出を……って違う!こんなところで会う訳にはいかない、まだ彼とデュエルするには早すぎる!
「っていうか、何でアンナまでいるんだよ!?」
不味い不味い不味いッ。
だが彼は知ったこともなく、並走するコースターから身を乗り出して、素っ頓狂な声を上げる。
「師匠~遊馬の奴、怖えよ~」
アンナはわざとらしく俺の腕にしがみつき、弱々しい被害者ぶった声を出す。そのたくましい腕力と胸に締め付けられ、骨が軋む。
「あーよしよし、じゃねぇんだよ!」
無意識に頭を撫でてしまった自分に盛大なツッコミを入れつつ、俺は遊馬の助手席へ視線を移す。
「赤司君……」
ジトー、と見られる。いや、あなた当然のように主人公の隣に乗り込んでますけど、本来同伴者はNGなんですよ……と隣に遊馬同様に座っている弟子がいる自分が言えるはずもなく、ただ冷や汗だけを流す。
「落ち着け!遊馬、観月さん!今はそんな場合じゃねぇ……いや、違うな。遊馬、俺とデュエルするか!?」
分かった、ここは虚勢を張るしかない。
俺は気を取り直し、一人の決闘者としての鋭い視線を真っ直ぐに向けた。
「……」
おい、何故あからさまに目を泳がせる。さっきまでの威勢の良さはどこへ行ったのだ。
「遊馬、ライフポイントが残り300で赤司君に挑むのは無茶よ」
小鳥の呆れたような指摘に、俺は遊馬のモニターを盗み見る。LP300……マジか。どれだけ罠カードを踏み抜いたのだ、この男は。
「ちなみに、俺のライフポイントは4100だ。どうだ、覚悟はできているか」
先ほどのデュガレスの操作をへつらうようで大変心苦しいが、ここは利用させてもらうしかない。俺はわざらしく余裕のある笑みを浮かべ、圧倒的なライフ差を見せつける。
「遊馬、赤司君は選択肢を残してくれてる。早くレーンを外れるのよ」
「……悔しいけど、そうしかねぇか」
よかった、彼女には俺の意図が伝わったらしい。遊馬はギリッと悔しそうに歯を食いしばり、不本意そうに操縦桿を握り直す。
「悪いな寿、お断りだ!俺のライフはギリギリなんでな!」
彼は己の不利を隠すように声を張り上げ、コースターのレバーを強く引いて別のレーンへと急激に逸れていく。
「そう言うと思ってたさ、なら遊馬。今度は決勝トーナメントで会おう!負けんなよ!」
「ああ!じゃあな!」
あ、危なかった……。
デュガレス「我が書き換えたのだ」
??・?????「それ我のセリフ……」