軍貫使いはZEXALで寿司を握る 作:Dの軍貫 シンキハヨ・チョーダイナ
ベクターお前遊馬好きすぎだろ!!!
あと列車MD実装おめでとう!!!コンペックスナイトは早く来て。
ゲートガーディアンとグスタフロケットの召喚演出は神。
しかし、もう半年程経ったという事実に震える。
失礼しました。今回場面転換かなり多めです。
地下のトンネルを抜ける冷たい風が、コースターの車体を叩きつける。先ほどまで隣のレーンを並走していた遊馬が乗るコースターが、暗闇の奥へと完全に姿を消したのをしっかりと見届けてから、俺は緊張で強張っていた肩の力を抜き、座席の背もたれに深く体重を預けた。
「ふぅ……どうにかなったな」
「師匠、遊馬を逃がして本当に良かったのかよ?」
狭い助手席で窮屈そうに身をよじるアンナが、不満げに唇を尖らせて抗議してくる。彼女の瞳には明確な不満の色が浮かんでいた。真っ直ぐな闘争心を持つ彼女からすれば、目の前に現れた好敵手を見逃すなどあり得ない選択なのだろう。
「ああ。あいつには勝ち残ってもらわなきゃいけねぇからな」
気持ちは分かる。だが、そうしてはならない事情というのが俺にはあるのだ。
「何か他に狙いがあるみてぇだな?どうだ、俺にでも聞かせてくれよ」
「秘密だ」
俺の素っ気ない返答に、アンナはあからさまに大げさな身振りで肩を落としてみせた。
「えぇ~っ?そりゃ無いぜ……」
だが、そんなのどかな会話は、突如として背後から響き渡った奇声によって強引に掻き消された。
「Wait!待て待て待てーい!」
「「ん?」」
振り返る暇すら与えなかった。強烈な殺気を纏った巨大なホログラムの獣が、俺たちの乗るコースターの真上へと躍り出てきたのだ。
「Goッ!《神獣王バルバトス》!そこのお前に直接攻撃!」
奇襲を仕掛けてきたのは、筋骨隆々の肉体に派手なペイントを施し、奇抜な衣装を身に纏った男だった。彼のコースターが俺の死角から急接近し、巨大な槍を構えた獣の王が真上から容赦なく振り下ろされる。重厚な風切り音が鼓膜を震わせた。
「げっ、いつの間に!?来てるぜ、師匠ッ!」
アンナが慌てて身を乗り出して叫ぶ。
「俺は手札から《予想GUY》発動!迎え撃て、《しゃりの軍貫》を特殊召喚!」
俺はもはや慣れからか慌てることなく、手札から流れるように魔法カードをデュエルディスクに叩きつける。虚空に眩い光の渦が生まれ、そこから巨大なシャリの軍艦が出現する。輝く純白のシャリが、バルバロスの強烈な一撃をその巨大な船体で見事に受け止めた。
《神獣王バルバロス》ATK 1900 vs 《しゃりの軍貫》ATK 2000
「受け止めろ、《しゃりの軍貫》!」
「何っ!?」
バルバロイ露馬 LP 2000 → 1900
反発した衝撃波が男の車体を激しく揺さぶり、逆に彼のライフを削り取る。妥協召喚によって本来の攻撃力を失い、弱体化していたバルバロスの槍では強固な装甲を貫くことはできなかったのだ。
「Opps……不意打ち失敗ッ!」
男は英語交じりの奇妙な感嘆符を漏らしながらも、その顔には余裕の笑みが張り付いていた。
「ならばここで我が一族の秘術を見よ!罠発動、《スキルドレイン》……ッ!ライフポイントを1000払う代償と引き換えに、全てのモンスターの発動する効果を無効にする力を得る!」
バルバロイ露馬 LP 1900 → 900
自らの血を捧げるかのようにライフポイントを削り、男のフィールドに禍々しい呪縛の罠が発動する。周囲の空間が歪み、ドス黒いオーラがフィールド全体を覆い尽くした。
「再び手札から現れよ、《神獣王バルバロス》……!」
男は宣言すると同時に、再びモンスターを呼び出す。
「この時、《バルバロス》の攻撃力は秘術により、3000のままとなる!」
スキルドレインの呪縛により解き放たれた二体目の獣王が、本来の力を取り戻して雄叫びを上げた。圧倒的な質量を持った槍が、再び俺の軍艦へと向けられる。
「束縛から解き放たれし蛮勇よ!今敵をめった刺しにせよ、Attackッ!!」
狂気を孕んだ男の号令と共に、バルバロスが渾身の力で突進してくる。だが、それすらも俺の想定の範疇だった。
「俺は手札から《強制転移》発動!相手のモンスターと自分のモンスターのコントロールを、入れ替える!」
振り下ろされる槍が直撃する寸前、俺は温存していた魔法カードをディスクに叩きつけた。目まぐるしい光の奔流が両者のモンスターを包み込み、空間が激しく歪む。光が収まった直後、男の目の前に鎮座していたのは彼自身の誇るバルバロスではなく、巨大なシャリの軍艦だった。
「何!?」
「行け!そのまま攻撃続行だ、《バルバロス》!!」
寝返った獣王の槍が、かつての主のフィールドに無慈悲に突き刺さる。巻き起こる爆風が地下トンネルを揺るがせた。
《神獣王バルバロス》ATK 3000 vs 《しゃりの軍貫》ATK 2000
バルバロイ露馬 LP 900 → 0
「不覚……ッ!オアァアァァァーッッ!!」
断末魔の叫びと共に、男の乗るコースターは上空の射出ハッチへと凄まじい勢いで吸い込まれていった。敗者を容赦なく退場させるシステムが作動し、煙を上げるレーンを見つめながら、俺は短く息を吐く。
「……何だったんだ、あいつ?」
「……さァ」
呆れたように呟く俺の隣で、アンナは全く別の方向を向いてのんきに鼻歌を歌っていた。ナビゲートを任せたはずが、完全にサボっていた証拠である。
「というか、アンナ。お前画面見てなかっただろ」
「バレたか」
悪びれもせずペロッと舌を出す彼女に、俺は本日何度目か分からない深いため息をついた。
####
地上に設置されたWDC特設スタジアムの中央を陣取る、巨大なホログラムモニターに、地下の暗闇で繰り広げられた一瞬の鮮やかな攻防が克明に映し出されていた。震える衝撃ののち、何事もなかったかのように平然とレールを進む寿の姿。
『おーっと、赤司寿選手!』
その劇的な決着を目の当たりにした実況のMr.ハートランドは、まばゆいスポットライトの下で大げさに身を乗り出し、マイクが壊れんばかりのハイテンションな勢いで絶叫した。
『九十九選手を見逃したと思いきや、今度は挑んできたバルバロイ露馬選手をあっという間に倒してしまいましたー!まさか寿司職人はデュエルの手さばきも超一流ということなのでしょうかー!?』
彼の放ったあまりにも突飛な寿司職人というワード。熱狂とうねりに包まれた観客席の一角で、遊馬の友人たちがモニターを見上げていた。
「寿司職人?寿って決闘者じゃなかったウラ?」
徳之助の素朴な疑問に対し、すぐに答えたのは鉄男だった。
「いや、寿の家は寿司屋だからな。遊馬御用達らしい」
その事実を耳にして、等々力委員長がどこか納得したような表情を浮かべる。寿が転校してきた当日の、あの賑やかで騒がしかったドタバタ劇の記憶が脳裏をよぎったのだろう。
「ああなるほど。そういえば、転校してきた時言っていましたね……」
だが、そんな周囲の会話など一切耳に入っていない様子で、キャッシーが突如として興奮気味に身を乗り出した。その猫のような鋭い瞳をキラキラと輝かせ、両手を口元に当ててメガホンの形を作ると、地下のトンネルを疾走する最愛の少年へと届かんばかりの、ひときわ高い黄色い大声をスタジアムの空へと張り上げた。
「遊馬ー!せっかく見逃してもらえたんだから、がんばるのよーー!」
そのあまりにも熱烈で周囲の目を気にしない直球な応援ぶりに、鉄男たちは呆れたように小さく肩をすくめて溜息をつくしかない。
「それにしても、キャッシーは遊馬にゾッコンウラ……」
「全くです」
等々力も首を横に振りながら深く同意の言葉を返した。スタジアム全体のスピーカーから、それらの音声を完全に掻き消すほどの爆音で再びハートランドのけたたましいアナウンスが響き渡った。
『ここで更にまたデュエルの香りが!』
彼はきらびやかな衣装の袖を大きく翻し、トレードマークのステッキを空へ掲げて、新たなエリアで発生した激しい戦火の到来を興奮気味に告げる。
『何々、元WDC運営委員のゴーシュがVにデュエルを挑んでいるようだァッ!』
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複雑に入り組んだ地下深くのレールの上。闘争本能を剥き出しにしたゴーシュの乗るコースターが、Vのコースターの背後にピタリと張り付いていた。前方の標的を逃がすまいと、ゴーシュは前のめりになり、苛立ちと共に大声を張り上げる。
「チッ、V!大人しく俺とデュエルしやがれッ!」
Vがハルトを奪った犯人だと知った彼がおめおめと逃がすわけもなく怒声を浴びせるゴーシュに対し、Vは振り返ることもなく、ただ冷淡に手元のモニターを横目で一瞥しただけだった。その整った顔立ちには、焦りも怒りも存在しない。あるのはただ、路傍の石に向けられるような圧倒的な無関心のみである。
「……しつこい奴だ、キミは私の眼中にない。失せろ」
氷のように冷たい拒絶の言葉。しかし、血の気の多いゴーシュにとって、その見下したような態度は自らの闘志に油を注ぐだけの結果にしかならない。彼は獰猛な笑みを浮かべ、デュエルディスクを勢いよく突き出す。
「本当にノリが悪ィ奴だ……なら、無理やりさせてやるよ!俺は《ヒロイック・コール》発動!」
ゴーシュのディスクから熱い光が放たれ、重厚な鎧を纏った巨大な戦士がレールの上を駆けるように顕現する。主の闘争心に呼応するように、屈強なモンスターは雄叫びを上げた。
「効果で効果を無効にして、手札から《H・C ウォー・ハンマー》を特殊召喚!行け、《ウォー・ハンマー》!直接攻撃ッ!!」
巨大なハンマーが、Vの乗るコースターを木っ端微塵に粉砕せんと凄まじい風圧を伴って振り下ろされる。だがVは微動だにせず、ただ静かに指先を動かし伏せカードを開く。
「愚かな。キミ如きに割くライフポイントなど微塵も無い。私は速攻魔法発動、《奈落の閃光》……攻撃を無効にし、そのモンスターを元々の持ち主の手札に戻す」
底知れぬ漆黒の閃光が突如として吹き荒れ、猛進していた戦士を完全に包み込んだ。抗う隙すら与えられず、誇り高き戦士の巨体は一瞬にして虚空へと掻き消され、強制的に手札へと送還されてしまう。
「何!?」
攻撃をいとも容易く無力化され、ゴーシュが驚愕に目を見開く。だが、Vの息もつかせぬ冷酷な反撃はそれだけで終わらなかった。
「さらに魔法、《処罰の火炎》発動!600ダメージを受けてもらおう」
ゴーシュ LP 4000 → 3400
虚空から突如として実体のない青白い炎が噴き出し、ゴーシュのコースターと彼の全身を容赦なく包み込む。肉体ではなく魂を直接焼き焦がすかのような強烈な熱が、彼のライフポイントを削り取っていった。
「ぐあああああーっ!」
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地下深くに響く断末魔の叫びと、モニターに映し出されたゴーシュの焦げ付いたライフポイント。その光景を、スタジアムの巨大スクリーンは無慈悲に、そして娯楽として消費していく。運営委員長としての興奮を隠そうともせず、ハートランドはこれ見よがしにステッキを振り回し、観衆の血を沸騰させるような煽り文句を吐き出した。
『おおっと!ゴーシュがバーニング!』
彼の過剰な実況に、スタジアムからは悲鳴に近い歓声が上がる。その熱狂の最中、カメラは別のエリアへと目まぐるしく視点を切り替えた。
『おっと、またまたもう一方ではアジアチャンピョンのⅣ選手がデュエルを始めているゥ!』
その映像がスクリーンに大きく映し出された瞬間、会場の空気がピリリと張り詰める。まるで獲物を逃すまいとする捕食者のような、殺気にも似た気配がモニター越しにさえ伝わってくるからだ。
『その後ろを走る神代凌牙選手が、Ⅳ選手を猛スピードで追いかけています!これはまさか、誘い出しているのか、それとも誘われているのかー!?』
スクリーンの中では、複雑に分岐する地下のレールを縫うようにして、二台のコースターが激しいデッドヒートを繰り広げていた。IVは余裕の表情を崩さず、一方で神代凌牙は、獲物を狙う鋭い眼光でその背中を見据えている。地下セクションの人工的な照明が、交差する二人の決闘者の影を長く、そして禍々しく引き伸ばしていた。表向きには二人とも大人気の決闘者。スタジアムの観客たちは息を呑んでその光景を見守り、次なる激突の予感に会場全体が沸く。
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地下のトンネルは、無機質な金属の壁と、眩い電子の光が交錯する迷宮と化している。だが神代凌牙にとって、周囲の景色などどうでもいい。彼の世界はただ、前方を走る忌々しい男の背中を捉えるためだけに存在していた。次々と立ちはだかる雑魚決闘者たちも、彼の怒りの奔流の前では等しく無力だ。凌牙は思考を巡らせる必要すら感じず、ただ本能のままにデュエルディスクを操り、圧倒的な力で障害を排除していく。
「行け、《ビック・ジョーズ》!モンスターに攻撃ッ!!」
深海より現れた獰猛なサメが、一人の決闘者のコースターを噛み砕く。
ホメーロス詩歌 LP 900 → 0
「うああああーッッ!!」
「チッ……手間取らせやがって」
その目には哀れみはおろか、喜びもない。あるのは、目の前の男だけだ。独りごちた凌牙は、苛立ちを隠すこともなく加速レバーを叩き込んだ。先を行くⅣの姿が、暗闇の中で妖しく揺らめく。Ⅳは逃げているのではない。まるで、より深く、より危険な場所へと獲物を誘い込む蜘蛛のように、優雅に、そして挑発的に先導していた。
「おっとこれは凌牙、スマートじゃないねぇ……私のほうが一歩先だったようだ」
「Ⅳ、待て!逃げるんじゃねぇ!!」
凌牙の怒号が、冷たい地下空間に反響する。だが、Ⅳの態度はどこまでも崩れない。彼は余裕の笑みを張り付かせたまま、あえて凌牙に距離を詰めさせるような軌道を描いて見せた。この余裕こそが、凌牙の理性を少しずつ、しかし確実に焼き切っていく。
「私は先に行かせてもらうよ……もっとも、君とデュエルするならば舞台は整えなくてはね」
「おい、待ちやがれ、Ⅳォォォ!!」
Ⅳの口角が、残忍な弧を描いて吊り上がる。その笑みを見た瞬間、凌牙の心の中に渦巻く復讐の炎が、より一層激しく燃え上がった。Ⅳが仕掛ける心理戦、その底意地の悪さを理解していながら、凌牙はあえてその掌の上で踊ることを選んだ。彼にとって重要なのは、理屈ではなく、この男をこの手で打ち砕くことだけだからだ。
「……そうだ、いいぞ凌牙ァ。そのまま付いてこい……俺が最高のステージに招いてやるよ」
「糞が……すぐに追いついてやる!このセクションで必ず貴様の首を跳ね飛ばすッッ!!」
Ⅳが確信に満ちた声で吐き捨てる。言葉の端々に滲む嘲笑が、凌牙の脳髄を刺す。すでに引き返すという選択肢は凌牙の辞書には存在しなかった。
「そうだ、いいぞ凌牙。このまま貴様をマグマフィールドに誘い込んでやる……」
「貴様のデッキは水属性……灼熱のマグマフィールドでは、お前に万が一にも勝ち目はない──!」
周囲の気温が、明らかに上昇し始めていた。それは、Ⅳが直々に選んだ死の舞台への入り口だった。
「待て、Ⅳォォォ!!!」
「フフフ……凌牙ァ」
「この俺が直々に、地獄へ案内してやるよ」
####
冷徹なまでに無機質な響きが、地下トンネルの空気を凍りつかせる。Vはもがき苦しむゴーシュを見下ろしても、その瞳には欠片の憐れみも浮かんでいなかった。彼にとって、このデュエルは感情を交える戦いではなく、あくまで数値上の処理に過ぎないのだ。
「本当に愚かだな……キミに割くライフなど存在しないと言ったはずだ」
ゴーシュのデュエルディスクから、無慈悲なシステム音が連続して鳴り響く。先ほど受けたダメージの追い打ちが、彼のライフポイントを臨界点ギリギリまで削り取る。
ゴーシュ LP 1200 → 400
「ぐああああーっ!!」
衝撃でコースターが激しく揺れ、ゴーシュはその身を折り曲げて苦悶の声を上げる。
「グッ……だが、俺はこの瞬間を……何!?」
突如、ゴーシュの体に激しい痙攣が走った。明らかに外部からの攻撃とは全く違う、感じたこともない痛み。ゴーシュ自身は知る由もないが、Vの目には確かに一瞬、黒いオーラが突出したのが見えた。
「グァァァッ!ハァ、ハァ、ハァ………」
彼は呼吸すらままならない様子で荒い息を吐き出すと、Vは怪訝そうな表情を見せる。
「今のは一体……まさか!」
Vは思わず声を上げる。だが、それはゴーシュが求めていた油断の隙だった。苦痛に歪んでいた彼の顔が、次の瞬間には不敵な闘志に満ちた表情へと一変する。
「うるせぇッ、テメェに心配してもらう暇なんてねぇ!俺はこの瞬間を待っていたんだァッ!!」
ゴーシュは血を吐くような気迫で叫ぶと、切り札を盤面に叩きつける。彼がずっと求めていたのは、あえて窮地に陥ることで真価を発揮する、一撃必殺の神剣だ。
「《H-C エクスカリバー》の効果!こいつは、自分のライフポイントが500以下になったときに攻撃できるッ!……俺は《H-C エクスカリバー》で攻撃するときに、効果発動!オーバーレイ・ユニットを全て使い、攻撃力を2000から倍にする!!」
《H-C エクスカリバー》ATK 2000 → 4000
光の奔流がゴーシュのフィールドを覆い尽くす。オーバーレイ・ユニットをすべて消費し、限界まで攻撃力を引き上げた聖剣が、黄金の輝きを放ちながらVのコースターへと振り下ろされる。
「行け、《エクスカリバー》!一刀両断、必殺神剣ッッッ!!」
「笑止」
勝利を確信したゴーシュの叫びに対し、Vは全く動じることなく、ただ冷たくそう言い放った。その指先が、墓地へと送られていた罠カードを指し示す。
「!?」
「私は罠カード、《奈落に蠢く者》発動。キミのモンスターの攻撃力を半分にし、その攻撃を我が身へと返す……」
《H-C エクスカリバー》ATK 4000 → 2000
神剣の放つ輝きが、ドス黒い瘴気によって瞬時に霧散する。攻撃力が半分に減らされただけでなく、その刃が反転し、ゴーシュ自身を襲う凶器へと変貌した。計算され尽くした絶望的な逆転劇に、ゴーシュは言葉を失う。
「2000ダメージ……!?」
「味方の刃に切り裂かれるとは、哀れな奴」
「くッ……」
ゴーシュが敗北を悟り、歯を食いしばったその瞬間。交差する別のレーンから、見覚えのあるコースターが猛スピードで飛び出してきた。誰もが諦めかけた刹那の乱入。それは計算外の変数だった。
「ちょっと待ったぁああああーッ!俺は《アチャチャチャンバラー》を特殊召喚!!」
「遊馬!?」
「受け止めろ、《アチャチャチャンバラー》!」
突如現れた炎の剣士が、ゴーシュへと迫っていた反射ダメージを正面から受け止める。その熱量はそのままVのライフポイントへと跳ね返った。
Ⅴ LP 5000 → 4600
「何、だと……私の……ライフが……」
完璧な計算を狂わされたVが、初めてその鉄面皮を崩して呻き声を上げた。
「くぅぅぅぅ……!」
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巨大な地下空間に、地鳴りのような重低音が響き渡る。三人の決闘者が一斉に召喚したモンスターたちは、この閉鎖された空間を埋め尽くさんばかりの異様な威圧感を放っていた。
「攻撃力2950、2700、4200……」
ベルイマン坂田、ガルシアパンサー、ノスフェラトゥ中島の三人が呼び出したモンスターの攻撃力を、トロンが読み上げる。《ラビードラゴン》が鋭い爪を剥き出しにして咆哮し、重戦車のような《ヘビーモス》が地を揺らす。そして、圧倒的な巨躯を誇る《マスター・オブ・OZ》が、その巨大な拳を構えてトロンへと迫る。
「すごいねー。僕一人のために、こんな超弩級モンスターが三体も……ご苦労なことだ」
トロンは仮面の下で口角を上げ、目の前に迫る絶望的な光景を、まるで美しい絵画でも眺めるかのような柔らかな口調で評した。彼の元には罠カード一枚すら伏せられていない。完全なる無防備。だが、その瞳には恐怖の欠片も宿っていない。
「だけど、君たち……無駄だよ。僕に、そんなモンスターじゃ効かない」
「「「何!?」」」
三人の決闘者が同時に声を上げる。
「どうだい、かかって来なよ……見ての通り、僕のフィールドは空っぽだよ?」
その挑発に応えるように彼らの背後で待機するモンスターたちが、一斉にトロンへと突進を開始する。岩壁を削り取りながら迫る質量。三体の怪物が一点に集中する、回避不能の猛攻。その衝撃がトロンのライフポイントを微塵に砕く……はずだった。
しかし、その瞬間、世界から音が消えた。
「あはは、焚き付けたらすぐかかってくる」
モンスターたちがトロンの目前まで肉薄したその時、空間がまるでガラスのようにひび割れ、奇妙なノイズのようなものが周囲を覆い尽くした。
物理法則を無視したかのように、巨大なモンスターたちの姿が静止する。いや、正確には、彼らのデータそのものが書き換えられているかのような、おぞましい光景だった。
攻撃の火炎も、爪の破壊力も、すべてが無意味な残像へと変わり、モンスターたちの巨体が自らの輪郭を溶かすようにして、虚空へと吸い込まれていく。彼らは攻撃を阻止されたのではない。最初からそこに存在していなかったかのように、因果律から消去されたのだ。
三人は理解不能な現象を前に立ち尽すしかない。自分たちが信じていたルールも、デュエルの道理も、すべてがこの少年の前では無力化される。戦慄が全身を駆け巡るよりも早く、彼らのライフポイントが削り取られていく。
ベルイマン坂田 LP 8400 → 0
ガルシアパンサー LP 5400 → 0
ノスフェラトゥ中島 LP 5900 → 0
断末魔すら上げる暇もなく、三人の決闘者はその場から強制的に射出されていく。まるでゴミを掃き溜めに捨てるような、淡々とした決着だった。トロンは、空っぽになった空間へ優雅に手を振る。そこに残されたのは、不気味な静寂と、彼という存在が持つ圧倒的な異質さだけだった。
「だから虫なんだよ。無駄だって、言ったのにね」
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コートを翻し、カイトは憎き元凶を求めてレールの上を疾走していた。一時的とはいえハルトを奪われた怒りが、彼の瞳に炎を灯している。その思考は、トロンという存在をこの手で完膚なきまでに叩き潰すこと以外、何も映していなかった。地下トンネルの湿った空気が彼の顔を掠めるが、カイトは一切の迷いなくアクセルを握り込み、闇を切り裂いていく。
「トロン……クリスがハルトを攫った命令元……」
憎しみのこもった呟きが、虚空へと響く。今の彼にとって、ハルトを傷つけた罪人への報復だけが、彼を突き動かす唯一の原動力となっていた。
「易々と生かしてはおけん!待っていろ、トロ……」
咆哮と共に加速したその瞬間、視界の端から車体が強引に割り込んできた。猛スピードで並走するその機体は、カイトの進路を物理的に遮断する。急ブレーキによる火花がレールの隙間に散り、二台のコースターが並列して激しい旋回を繰り返した。前に立ちはだかったのは、ドロワだった。
「待て、カイト!」
カイトは舌打ちをし、苛立ちを露わにしてコースターを操る。なぜこんな場所で、彼女が自分の邪魔をするのか。理解不能な行動に、カイトの眉間には深い皺が刻まれる。
「ドロワ!なぜお前がトロンを!?」
「トロンは私の獲物だ!誰にも手は出させん!」
ドロワは一切の感情を排した冷徹な表情のまま、カイトを真っ直ぐに見つめ返した。その瞳には、カイトのそれとは別の、硬質なまでの決意が宿っている。彼女は一歩も引く気がない。その姿勢から漂う殺気が、彼女の本気度を物語っていた。
「私はMr.ハートランドに忠誠を誓う者……故に彼に仇名す奴は誰であろうと叩き潰す!」
ドロワは自らの真意を隠すように、冷徹な仮面を被ってカイトの前に立ち塞がった。その言葉には一切の迷いがない。二人のコースターは並走したまま、暗闇の先へと流れていく。カイトの怒りと、ドロワの冷徹な壁。二つの意志が、地下セクションで激しく衝突した。
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スタジアムの巨大モニターが目まぐるしく切り替わり、脱落者のリストが赤く点滅していく。その無慈悲なカウントダウンは、観客たちの興奮を煽るための最高のスパイスとなっていた。Mr.ハートランドはマイクを握りしめ、まるで自身のショーを演出するように、両手を空高く突き上げた。
『絞られてきた、絞られてきたぁっ!』
彼の甲高い声が、スタジアムを震わせる。
『ここまでで6人が脱落!現在生き残っている決闘者は計9名ッ……これは誰が生き残るか分からなくなってきたぞ!!』
観客席からは、歓声とも悲鳴ともつかない地鳴りのような響きが巻き起こる。その熱狂の渦の中心で、ハートランドはモニターに映し出された新たな光点を見逃さなかった。
『おーっと!来た来た来たー!!今度はドロワだ!』
モニターには、優雅にコースターを操るドロワの姿が映し出される。その冷徹な横顔は、気高さを色濃く残していた。
『彼女も元WDC運営委員、当然デュエルの腕も超一流!ゴーシュと共に、突き進めー!』
スタジアム中に響き渡る自分の声をBGMにしながら、ハートランドはモニターの端に映る、カイトのコースターを執拗に妨害する彼女の姿を、内心冷ややかな眼差しで見つめていた。その表情には、エンターテイナーの仮面の裏に隠された、得体の知れない疑念が渦巻いている。
(ドロワは確かに、私に忠誠を誓っている……しかし何故カイトの邪魔を?)
彼女の行動原理が、計算通りなのか、それとも自身のコントロールを離れた何かなのか。ハートランドはわずかに眉をひそめたが、すぐに口角を吊り上げ、観客たちに向けて満面の笑みを振りまいた。
(いや、どちらにせよ、Dr.フェイカーの目的は成就される。なら、私は観客を躍らせるのみだ)
ショーを止めるわけにはいかない。たとえ盤上の駒が勝手に動き出したとしても、そのすべてがドラマとして消費されるならば、彼はそれを最大限に演出するだけだ。
(何が狙いなのかは知らないが、精々踊り狂ってくれたまえよ。ドロワ……)
地下の暗闇で繰り広げられる芝居を、彼は楽しそうに特等席から眺め続けていた。
####
カイトは血走った目で前方を遮るコースターを睨みつけ、苛立ちを咆哮へと変えて叫んだ。
「ドロワ!俺の邪魔をするな!」
だが、ドロワの操縦桿を握る手には一切の迷いがない。彼女は冷徹な眼差しで、カイトの進撃を完全に封じ込めるルート取りを強行した。彼女の機体がカイトの機体へ強引に体当たりを仕掛け、摩擦で火花が散る。強引な進路妨害に、カイトは制御を失いそうになりながらも激昂する。
「行かせない!トロンと戦うのはこの私!!」
「何を……」
「カイト、あなただけには邪魔はさせない!!!」
その激しい口調と衝撃がカイトのコースターを襲い、彼は操縦桿を制御しきれずに外側の別ルートへと押しやられた。コースターがガクンと大きく傾き、彼の車体はメインルートから大きく外れていく。
「くっ、思わずコースを……」
カイトは遠ざかるドロワの背中を見つめ、苦渋に満ちた表情で唇を噛み締めた。
「一体何を狙っている、ドロワ……」
カイトはなぜ彼女が、トロンとの戦いを自分から奪い取るような真似をするのか、その真意を測りかねていた。カイトの機体が遥か後方へと消えていくのを確認し、ドロワは安堵の吐息を漏らす。彼女の冷たい表情の奥底には、正反対のカイトに対する秘めたる熱き情愛と、彼を守り抜くという鋼のような決意が渦巻いていた。彼女の思考はただ一人の男の生存を願うことに支配されている。
(生き残るのよ、カイト……)
ドロワの狙いは一つだった。コースター据え付けのモニターを見ると、その目的地は近い。
「この先にあるのはジャングルフィールド。トロンを熱帯の密林に誘い込めば私にも勝機が…!」
トロンを密林の奥深くへ誘い込み、視界を遮って不意を突くこともできるはずだ。彼女は確かな勝機を確信し、決戦の地へ加速しようとした、その時だった。
「本当にそうかなー?」
「トロン!?いつの間に」
突如、背筋が凍るような無邪気な声が、風切り音を突き抜けてドロワの鼓膜に届いた。モニターを見ていたのに、後方にいることなど一切気づかなかった。そのあまりの異常性に、ドロワの背中に戦慄が走る。
「フフ。君、僕のことがご所望なんでしょ?なら、乗ってあげるよ」
トロンが挑発するかのように、ドロワに言い放つ。
「恋する乙女、さん?」
「何……だと」
トロンの仮面の下にある目が、ドロワの心の奥底に隠していたはずの感情を、まるで壊れたおもちゃでも観察するように品定めしていた。
モブデュエリストの名前は原作に出てきている人以外全員適当です。