軍貫使いはZEXALで寿司を握る 作:Dの軍貫 シンキハヨ・チョーダイナ
墓穴死んだのはシンプルにショック。
何故墓穴を禁止にするならドロバを制限にしないのか。コレガワカラナイ
至天ーッ!早く来てくれーッ!!
「「デュエル!!」」
シャーク LP 4000 / 寿 LP 4000
研ぎ澄まれた空気の中で、凌牙は鋭い気迫を纏いながら右手をデュエルディスクにあてる。彼には今、ただ勝利と復讐の二文字だけしか見えていなかった。足元に広がるフィールドの投影が淡い光を放ち、決戦の幕開けを告げる電子音が静寂を切り裂く。
「俺の先行だ、ドローッ!」
迷いのない手つきでカードを引き抜いた凌牙は、そのカードを一瞥するやいなや、素早く手札へと加えた。彼の表情は厳しいものだった。対する寿は、どこか余裕を含んだ表情でその様子を見つめていた。
「俺は手札から《キラー・ラブカ》を召喚。さらに、魔法カード《フィッシュ・スポーン》発動!」
彼の宣言と共に、フィールドへ不気味にうねる深海の生物の姿が影を落とす。
「このカードは、ライフを1000払うことで自分フィールドに《フィッシュ・スポーントークン》を2体特殊召喚する」
シャーク LP 4000 → 3000
凌牙の息がわずかに荒くなる。だがその瞳の光は少しも衰えず、むしろ一層の凄みを増していく。
「ぐっ……俺は、二体を守備表示で特殊召喚!さらに!俺はこのターン、通常魔法を使ったため手札から《ビッグ・ジョーズ》を特殊召喚し、レベル3の《キラー・ラブカ》と《ビッグ・ジョーズ》の二体でオーバーレイネットワークを構築!」
空間が激しく歪み、幾重もの光の輪が幾何学的な模様を描きながら宙空に出現する。
「エクシーズ召喚!」
咆哮のような声と共に、空間の中心に開いた次元の裂け目から巨大な影が姿を現そうとする。闇と深海の底から這い上がるような禍々しくも美しい光が、床面を鮮やかに染め上げていく。
「現れろ、《潜航母艦エアロ・シャーク》!!」
鮫の戦艦が鋭い威圧感を放ちながら宙に現れ、静止する。
「先ずは挨拶代わりの砲撃だ!《エアロ・シャーク》の効果発動!!オーバーレイ・ネットワークを1つ取り除き、俺の手札の枚数×400ダメージ……俺の手札は3枚、よって1200ダメージ!」
砲口が獲物を捉えるかのように、一斉に寿の方角へと向けられる。
「食らいやがれッ!エアー・トルピード!!」
放たれた魚雷状のエネルギー弾が光の軌跡を引きながら、凄まじい爆音とともに寿へと直撃する。衝撃波が周囲の空気を激しく揺さぶり、吹き荒れる爆風が衣服を激しく打ち付ける。
「ぐっ……あぐあぁぁッ!!」
寿 LP 4000 → 2800
ライフの数値が削り取られ、寿の周囲に漂う気配がわずかに揺らぐ。しかし彼は倒れることなく、歯を食いしばりながらその場で必死に体制を立て直そうと身体を強張らせる。
「師匠っ!」
それを目の当たりにしたアンナが、いたたまれない表情で叫び声をあげる。彼女の瞳には心配が色濃く浮かんでいるのが見える。
「大丈夫だ、アンナ……こんなもの、シャークが食らった痛みからしたら何でもねぇよ……!」
寿は痛みに歪む顔のまま無理やり笑みを作り、心配させまいと強がり交じりの声を絞り出す。その声には揺るぎない覚悟と、負けられない意地がしっかりと込められていた。
「あ、ああ、そうだな……」
師匠の気迫に若干気圧されつつも、アンナは複雑な表情で頷き返す。目の前で繰り広げられる戦いの意味の重さに、理解しきれていない彼女の胸中には確かに、言い知れぬ不安と期待が入り交じっていた。
「アンナ、お前はあまり状況が分かってないかもしれねぇが、兎に角お前はそこで見てな」
寿は優しく、しかし確固たる意志を込めた視線をアンナに向け、距離をとるように促す。その背中には職人としての、そして一人の男としての背中がアンナの目には投影されていた。
「……ああ、分かってるよ」
アンナは静かに引き下がり、これ以上言葉を紡ぐことなく二人の戦いの行方を見守る姿勢をとる。その表情は静かだが、視線は一瞬たりともフィールドから離れることはなかった。
(違ぇんだよ、なんなんだよ、さっきからの、この胸の疼きはよ……!)
アンナの心の奥底で、言葉にならない焦燥感と熱量が渦を巻く。デュエルの中で突如として芽生えたこの感情の正体が何なのか、彼女自身にもまだ整理がついていなかった。
「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!さぁ、どこからでもかかってこい寿!!」
凌牙は冷ややかに言い放つ。その瞳には一切の油断もなく、次なる攻撃への迎撃態勢が完璧に整えられていることを誇示するかのような威圧感があった。
「へっ……なんだ、シャーク。俺のデュエルがそれほどに嫌だってか?」
寿は先ほどの痛みを吹き飛ばすかのように不敵な笑みを浮かべ、あえて挑発的な口調で凌牙の神経を逆なでしようと試みる。その余裕の態度は、凌牙の胸中の苛立ちを巧みに煽り立てていた。
「ああ?」
低く掠れた凌牙の返答には、鋭いナイフのような危険な響きが含まれていた。彼の纏うオーラが一段と重くなり、場の空気が凍りつくような冷たさが二人の間に漂い始める。
「今更だけれど、シャークと話すのは結構久しぶりなんだぜ?最後に話したのはWDCの始まる前くらいだったか?」
寿は過去の記憶を呼び起こすように遠い目をしながら、どこか懐かしむような口調で言葉を紡ぐ。その言葉の裏には、互いに経験した過酷な体験に対する複雑な感慨が隠されていた。
「……ああ。確かお前が、カイトのデュエルを俺に託してそのままぶっ倒れたのが最後だったな」
シャークは過去の一幕を思い出しながら、当時の寿の必死だった姿を脳裏に蘇らせる。その記憶の断片は、日々進化しつづけていった彼らにとって見れば遠い昔の出来事のようでありながら、昨日のことのようにも鮮烈だった。
「なら知らなくて当然だな。シャーク同様に、俺もWDCを通して進化したんだぜ?」
寿は胸を張って自身の成長をアピールし、以前の自分とは違うのだという強い意志を凌牙の瞳に直接焼き付けようとする。その姿には職人としての誇りと同時に、デュエリストとしての自信が満ち溢れていた。
「どうやらそのようだ。鼻につくような話し方も変わったな。覚えてないようだが、お前が俺に話すときはですます口調だったんだぜ?」
「……吹っ切れたっていうのが正しいらしいな、こういうのを世間では」
「ただ、頼んでもないのにデュエルを俺に振る舞うと言うのか?随分自分勝手な職人だな」
寿は苦笑する一方、凌牙は腕を組みながら、寿の突飛な行動に対する不満を真っ直ぐにぶつける。そうだ。Ⅳとのデュエルを終え、決勝トーナメント進出が決定した彼にとってみれば寿の行動は無意味で、意味不明なものとしか見えなかった。その冷めた態度の裏には、この状況を引き起こした相手の真意を図りかねる苛立ちがあった。
「寿司もデュエルも同じさ。どっちも、人の心を動かすことができる。俺がしたいのは、そういうことだ」
だが、寿の瞳に宿る光はどこまでも真っ直ぐで、一片の曇りすらなかった。
「シャーク、先程のⅣのデュエル……見事だった。Ⅳは完全にあんたを殺しにかかってた。文字通りな」
寿の口から漏れたその名前を聞いた瞬間、凌牙の眉間がわずかにピクリと動く。先ほどまでの激戦の記憶が蘇り、血を吐くような戦いの残滓が凌牙に重苦しい沈黙をもたらす。
「だが、シャークはそれに反発するようにやってのけたじゃねぇか。凄かったぜ、《シャーク・ドレイク・バイス》を呼び寄せた時のシャークの威圧感と言ったら。正直、半端じゃなかった」
寿は心からの賞賛の念を込めながら、あの瞬間に凌牙が放った圧倒的なまでの気迫の密度を言葉にして表現する。その称える声には偽りのない真実味があった。
「誉めても俺は奴のように甘く無い。お前が立ち塞がるというのなら、容赦はしないと言ったはずだ」
「それはトロンを倒すためか?」
「何を今さらッ!!当然だ、ふざけているのか!?」
凌牙の怒気が爆発し、激しい威圧感が周囲の空間を大きく歪ませる。その瞳には血走ったような強い憎悪と使命感が熱を帯びていた。
「いいや、真剣さ。あんたは間違っちゃいない。俺も何が正解なんて分からない。だけれど……」
寿は彼の怒号を真正面から受け止める。その声は穏やかでありながらも、確かな重みを持っていた。
「……」
凌牙はそれ以上言葉を発せず、ただ鋭い眼光で寿の真意を探ろうと凝視する。彼の胸中では怒りと困惑、そして相手の言葉に対する奇妙な共鳴が激しくぶつかり合っていた。
「いいや、何でもねぇさ。この続きはデュエルが進んでからだ」
寿は不敵な笑みを浮かべつつ言葉を途中で切り上げ、再び手札へと意識を集中させる。その謎めいた態度が、凌牙の苛立ちをさらに煽る結果となっていた。
「チッ。人を平気で弄びやがる」
「満足してもらうのが、寿司屋の最終目標さ!俺のターン、ドローッ……よし!俺は、魔法カード《予想GUY》発動!デッキから《しゃりの軍貫》を特殊召喚だ」
寿は勢いよくデッキからカードを引き抜き、鮮やかな手際でフィールドへと叩きつける。彼の宣言とともに、真っ白なシャリのモンスターが浮上するようにして姿を現す。
「さらに!フィールドに《しゃりの軍貫》が存在するので手札から、《いくらの軍貫》を特殊召喚できる……《しゃりの軍貫》と《いくらの軍貫》のレベル4の二体で、オーバーレイ!」
寿により次々とモンスターが呼び出され、再び空間にオーバーレイ・ネットワークの幾何学的な光の輪が描き出される。
「現れろ、《弩級軍貫-いくら型一番艦》!!」
「来やがったか」
「《いくら型一番艦》のモンスター効果発動、《しゃりの軍貫》を素材にしているため1ドロー、そして《いくらの軍貫》を素材にしているため2回攻撃が可能となる!」
寿は次の一手を実行に移し、カードを一枚ドローする。その手札の補充がさらなる連撃の布石となり、凌牙に対するプレッシャーが何倍にも膨れ上がっていく。
「さらに俺は、《火炎木人18》を召喚!バトル!!」
新たな戦力が次々とフィールドに揃い踏みし、寿の攻撃態勢が完全に整う。
「《いくら型一番艦》で、《エアロ・シャーク》を攻撃ッ!!」
寿の号令と同時に、軍艦が凄まじい勢いで砲撃を開始する。衝突寸前の強烈な風圧が凌牙の髪を激しく揺らし、真っ直ぐに狙いを定める。
《弩級軍貫-いくら型一番艦》ATK 2200 vs 《潜航母艦エアロ・シャーク》ATK 1900
「よっしゃ!これで攻撃が通ったら、伏せカードを割れるッ!」
アンナの表情に有利への確信の色が浮かび、この攻防を制し試合の主導権を完全に握るための次の展開へと意識が飛ぶ。
「甘い!《キラー・ラブカ》の墓地効果発動!!相手モンスターの攻撃宣言時、その攻撃を無効にし、さらに攻撃モンスターの攻撃力を500下げる」
だが凌牙は全く動じることなく、墓地に眠っていたカードの力を冷徹に発揮させる。閃光のようなカウンターの波動が広がり、砲撃の勢いを完全に停止させる。
《弩級軍貫-いくら型一番艦》ATK 2200 → 1700
「いつの間に墓地に……あ、《エアロ・シャーク》のオーバーレイ・ユニット!そういうことか」
アンナは墓地の状況と先ほどの展開を瞬時に結びつけ、凌牙の巧妙な罠に気づいて思わず感嘆の声を漏らす。
「バトルは中断だ」
行き場を失ったいくらの砲弾が、海中に無残にも落ちる。
(《火炎木人18》の攻撃力は1850……ギリギリ攻撃力1900の《エアロ・シャーク》は倒せねぇ。だが、これでいい)
寿の脳裏で冷静な計算が巡り、この状況を逆手にとった次の戦略へと思考がシフトする。計算通りの微調整に、彼の口元には不敵な笑みが再び戻ってきた。
「《火炎木人18》で《フィッシュ・スポーントークン》を攻撃だ」
寿の指示に従い、炎を纏った木人の戦士が残されたトークンへと突撃を仕掛ける。
《火炎木人18》ATK 1850 vs 《フィッシュ・スポーントークン》DEF 0
衝撃によってトークンが粉々に砕け散る。しかし、その破壊の裏には寿の更なる深い意図が隠されているのは明白だった。
「どうした、これで終わりか!?」
シャークは相手の攻撃の意図を測りかねながらも、不敵なトーンでさらなる攻勢を要求する。その声には一切の隙がなく、いつでも次の反撃に出られる準備が整っていることが示されていた。
「いや、狙い通りさ。俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド!」
「エンドフェイズ、伏せカード発動……速攻魔法《サイクロン》!お前の伏せカードを1枚破壊する!!」
凌牙は相手のターンが終了するその瞬間を逃さず、素早くカードを翻して速攻魔法を発動させる。鋭い竜巻が寿のフィールドへと吹き荒れ、セットされたカードの一枚を強襲する。
「エンドサイクか。伏せカードは《きまぐれ軍貫握り》だ」
寿は自らのカードが破壊されるのを冷静に見届けながら、淡々とその正体を明かす。その動じない態度は凌牙の予測をわずかに外し、奇妙なリズムを生み出していた。
「ハズレと言ったところか?」
「さて、どうだろうな?」
寿は意味深な笑みを崩さず、凌牙の問いをふわりと受け流す。
「俺のターン……ドローッ!寿……俺はこんなところで足を止める訳にはいかない、俺は俺の復讐を果たす義務がある!俺は魔法カード、《エクシーズ・ギフト》発動!フィールド上にエクシーズモンスターが2体以上存在するため、2ドロー!」
凌牙は怒涛の気迫と共にデッキから二枚のカードを引き抜き、己の宿命と復讐への執念を再び前面に押し出す。
「《トライポット・フィッシュ》を召喚し、さらに魚族モンスターが召喚されたため《シャーク・サッカー》を手札から特殊召喚……レベル3の《トライポット・フィッシュ》と《シャーク・サッカー》の二体でオーバーレイ……エクシーズ召喚!!」
暗闇を切り裂くような鋭い槍の輝きとともに、漆黒の装甲を纏った戦士が戦場へ舞い降りる。
「現れろ、《ブラック・レイ・ランサー》……バトルだ!俺は《いくら型一番艦》を攻撃、食らい尽くせッ《エアロ・シャーク》!」
鋭い命令と共に、凌牙の闘気が最高潮に達する。彼の指揮に従い、鮫の巨艦が猛々しい咆哮をあげながら敵陣へと突進を開始する。
《潜航母艦エアロ・シャーク》ATK 1900 vs 《弩級軍貫-いくら型一番艦》ATK 1700
「罠発動、《赤酢の踏切》!同じ楯列に存在する《エアロ・シャーク》をEXデッキに戻す!」
寿は慌てることなく、しかし確かな手際でフィールドの罠カードを翻す。彼の表情にはどこか余裕の色が浮かび、この不意の攻防をあらかじめ読み切っていたかのような冷静さが漂っていた。阻まれた一撃に凌牙は小さく舌打ちするが、その足が止まることはない。残された漆黒の槍士が主人の怒号に呼応するかのように、凄まじいスピードで再び軍艦へと肉薄していく。
「チッ、そんな簡単にいかねぇか……だが、《ブラック・レイ・ランサー》の攻撃はまだ残っている!!行け、《ブラック・レイ・ランサー》!《いくら型一番艦》を攻撃!!」
《ブラック・レイ・ランサー》ATK 2100 vs《弩級軍貫-いくら型一番艦》ATK 1700
寿 LP 2800 → 2400
「グっ……!」
凌牙は寿に冷徹な視線を飛ばしながら手札から一枚のカードを裏向きに置き、自らのターンを締めくくる。その一動作に込められた気迫は、相手を逃がさないという揺るぎない意思そのものだった。
「俺はカードを一枚伏せてターンエンド!」
「俺のターン、ドロー!どうしたシャーク、ナンバーズを出さないのか?」
寿はどこか探るような目を凌牙に向ける。その余裕を崩さない態度が、凌牙の胸中の焦りを微かに刺激する。
「恨みも無いお前に何故出す必要がある?俺の胸にある感情は、トロンに対する憎しみだけ……断じてお前ではない。しかし、立ち塞がるなら容赦はしない。寧ろ恩をここで返すまである。だから、デュエルする。それだけが俺がお前に持っている感情だ」
凌牙の言葉には、復讐に生きる男の冷酷さと、奇妙なまでの誠実さが同居していた。それは他者に対する拒絶でありながら、同時にかつての仲間への最低限のけじめをつけるための不器用な優しさでもあった。
「……なるほどな。だから、か」
「どういう意味だ」
寿は不敵な笑みを深く刻み込み、一歩も引かない強い意志をその瞳に宿す。
「なんでもねぇさ。なら、そうさせてやるよ!あんたがナンバーズを出さざるを得ない状況をな!!」
「……テメェ!今、何を言ったのか分かってんのか!!」
凌牙の逆鱗に触れたかのように、場の空気が一瞬で凍りつく。彼の纏うオーラが激しく波打ち、怒涛の殺気が寿の身体を容赦なく襲う。
「当然!俺は手札から《ゴブリンドバーグ》を召喚し、効果発動!手札からレベル4の《いくらの軍貫》を特殊召喚し、《ゴブリンドバーグ》は守備表示となる……」
「俺はレベル4の《ゴブリンドバーグ》、《いくらの軍貫》、《火炎木人18》の三体でオーバーレイ・ネットワークを構築!」
三つの異なる光が一点に集まり、空間を大きく歪ませながら巨大な渦を作り上げる。次元の裂け目から異質な光が溢れ出し、すべての気配を飲み込むような強烈なプレッシャーが戦場全体を覆い尽くす。
「エクシーズ召喚!現れろ、《No.27──」
シャークは眼前に展開された数字の光景に目を剥き、驚愕のあまり言葉を失う。想定外のカードの登場に、彼の冷静な計算が音を立てて崩れていく。
「ナンバーズ!?寿、お前!!」
寿は誇らしげに胸を張り、驚愕するシャークの表情を真っ直ぐに見据える。
「──弩級戦艦-ドレッドノイド》!!ああ、そうさ!あんたは知らなかったかもしれねぇが、俺はあんたの想像以上にナンバーズを持っている……その数、現在6枚!!」
凌牙の脳裏に信じられないという思いが駆け巡り、復讐の道程とこの男の意外な底知れなさが胸中で交錯する。
「6枚だと!?」
寿の鋭い号令とともに、戦艦が圧倒的な質量を持って敵陣へと突進を開始する。その重厚な足音はコンクリートの床を激しく震わせ、逃げ場のない圧力を生み出していた。
「バトル!《ドレッドノイド》で《ブラック・レイ・ランサー》を攻撃!!」
「チッ。罠発動、《エスケープ・ルアー》!効果で《ドレッドノイド》の攻撃対象を《ブラック・レイ・ランサー》から《フィッシュ・スポーントークン》に変更する」
突撃の的が、漆黒の騎士からトークンへと移り変わる。
「バトルは続行。モンスタートークンは破壊させてもらう……バトルフェイズ終了だ」
寿は軌道修正を冷静に受け入れ、トークンを粉砕する一撃を見届ける。彼の表情には、次なる一手へ向けた確かな手応えが浮かんでいた。
「残念だったな、寿。お前はⅣとは違う、効果による破壊とバーンダメージを狙わねぇタイプの殴り合いで勝つタイプのデッキ。ナンバーズがいようと、その戦術は変わらねぇようだな!」
凌牙は相手のデッキの本質を冷徹に見定め、どこか安心したような、あるいは侮蔑のようなトーンで分析を口にする。
「いいや、違うな!」
だが寿は静かに、しかし力強くその否定の言葉を叩きつける。その瞳の奥には、シャークの予測を根底から覆すための秘策が鮮やかに燃え上がっていた。
「何?」
「今だ、師匠!!」
見守っていたアンナがハッとした表情で寿へと叫ぶ。その瞬間、戦場の空気が決定的な変化を迎えた。
「ああ!《ドレッドノイド》のバトルフェイズ終了時効果発動!モンスターを戦闘で破壊したため、EXデッキからレベル10以上のエクシーズモンスターを重ねてエクシーズ召喚できる!!」
凌牙は想定外の展開に息を呑み、わずかに身体を硬直させる。
「何だと!?」
光の輪が幾重にも重なり合い、空間の裂け目から桁違いの巨大なエネルギーが解き放たれる。その圧倒的なスケール感に、誰もが言葉を失って立ち尽くす。
「俺は、《No.27 弩級戦艦-ドレッドノイド》1体でオーバーレイ・ネットワークを再構築……エクシーズ召喚!!」
戦艦から姿を変えるようにして現れたのは、鉄の塊と火薬の匂いを纏った巨大な要塞列車だった。
「現れろ、《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》!!」
「カオス・エクシーズ・チェンジとは違う、もう一つのエクシーズモンスターからのエクシーズ召喚だと!?」
「そうだ!これが一つ、俺が弟子から貸してもらった力だ!《グスタフ・マックス》の効果発動!オーバーレイ・ユニットを一つ使い、相手に2000ダメージを与える!!」
寿は弟子の想いを背負ったその拳を力強く突き出し、勝利への決定打となる砲撃の合図を鳴り響かせる。
「師匠、やっちまえぇーーっ!!」
アンナの熱のこった声援が全体に響き渡り、二人の間の熱量が最高潮へと達する。要塞列車の巨大な砲口が一斉に凌牙を捉え、致命的な砲弾が凄まじい爆音とともに放たれる。
「ブチかませ、《グスタフ・マックス》!ビッグ・キャノン!!」
シャーク LP 3000 → 1000
「ぐ……ぐはぁぁぁぁぁああああーーーっ!!!」
直撃を受けた凌牙の身体が激しく吹き飛び、凄まじい衝撃波が彼の全身の骨を軋ませる。苦痛の絶叫が冷たい空気を切り裂き、彼のライフが一気に底へと落ちていく。
「よっしゃあっ!師匠、やったな!!」
アンナは勝利を確信したように飛び跳ね、喜びのあまり歓声をあげる。その無邪気な笑顔が場の緊張を少しだけ和らげる。しかし寿の表情には晴れやかな勝利の感触はなく、どこか慎重な影が落ちていた。
「ああ……そうであれば、良いんだけどな」
「?」
アンナは師匠のその意外な反応に首を傾げ、不思議そうな視線を向ける。目の前の男が持つ底知れぬ執念を、寿は理解していたからだ。
「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!さぁ、来いよシャーク!!」
這い上がってきた凌牙の眼光は、先ほどまでの痛みを忘れさせるほどの凄まじい殺意を帯びていた。
「……それほどにお望みか?」
その低い声に、アンナは戦慄を覚えた。寿は一切の妥協を排したまっすぐな瞳で凌牙を見返し、互いの信念を正面からぶつけ合う覚悟を示す。
「俺は俺の信じる道を貫くだけ。あんたがどうするかはあんたが決めろ、シャーク!」
「チッ……ああ分かったさ、乗せられてやるよ!俺のターン……ドローッ!!」
シャークは怒りに満ちた咆哮とともに渾身の力でデッキからカードを引き抜き、己の持てるすべての闇をその右手に集約させる。
「俺は、自分フィールドのオーバーレイ・ユニットを全て墓地に送り、手札から《エクシーズ・リモーラ》を特殊召喚!このモンスターは、この効果で特殊召喚した場合、美地に送ったオーバーレイ・ユニットの数だけ自身をエクシーズ素材の数として扱える!」
フィールドに現れた魚が奇妙な光を放ち、散らばったエネルギーの残滓を次々と自身の身体へと吸収していく。
「俺が今墓地に送ったオーバーレイ・ユニットの数は《ブラック・レイ・ランサー》と《エアロ・シャーク》の持っていた合計三つ!俺は、自身の効果で三体分のエクシーズ素材として扱える《エクシーズ・リモーラ》の一体でオーバーレイ!!」
フィールドに現れた魚が光を放ち、散らばったエネルギーの残滓を次々と自身の身体へと吸収していく。シャークの緻密な計算が、反撃のための布石を完璧に組み上げていく。
「現れろ、《No.32 海咬龍シャーク・ドレイク》!!!」
空間を突き破るように、禍々しくも美しい深海の龍が凄まじい咆哮とともに降臨する。その圧倒的な存在感が戦場を完全に支配し、すべての光を呑み込んでいく。
「ナンバーズ……!」
寿はその龍の姿を目の当たりにし、息を呑みながらも、覚悟していたとはいえその威圧感に身震いする。凌牙の手から放たれた青い水の奔流が龍の身体を包み込み、その戦闘力を爆発的に跳ね上げていく。
「さらに魔法発動、《アクア・ジェット》!効果で《シャーク・ドレイク》の攻撃力1000アップ!」
《No.32 海咬龍シャーク・ドレイク》ATK 2800 → 3800
凌牙の冷徹な指令に従い、巨大な海咬龍が牙を剥き出しにして要塞列車へと突進していく。その一撃に込められた怨念と力は、すべてを粉砕するほどの破壊力を秘めていた。
「バトル!《シャーク・ドレイク》で《グスタフマックス》を攻撃!!」
《No.32 海咬龍シャーク・ドレイク》ATK 3800 vs 《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》ATK 3000
寿 LP 2400 → 1600
強烈な衝撃波が寿の肉体を直撃し、彼の口から苦悶の声が漏れる。ライフの数値が急激に削り取られ、彼の足元が大きく崩れかける。
「ぐはっ……!!」
凌牙の容赦ない追撃の手が緩むことはなく、冷徹な効果の連鎖が相手の逃げ道を完全に塞いでいく。
「《シャーク・ドレイク》の効果発動!バトルで相手モンスターを破壊したとき、オーバーレイ・ユニットを一つ使うことで相手モンスターを攻撃力が1000下がった状態で墓地から蘇生できる!」
《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》ATK 3000 → 2000
ひしゃげた列車が無理やり浮上させられ、フィールドに降り立つ。凌牙の瞳にはかつての友に対する情けのかけらもなく、ただ勝利と復讐の完遂だけが冷たく光っていた。
「さらに!《シャーク・ドレイク》は、この効果で特殊召喚したモンスターを攻撃できる!!悪く思うな、寿!」
《No.32 海咬龍シャーク・ドレイク》ATK 3800 vs 《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》ATK 2000
海咬龍が放つ怒濤のエネルギーが視界のすべてを染め上げ、決着の瞬間が容赦なく二人に迫り来る。
「《シャーク・ドレイク》でトドメだぁぁぁ!!!」
極限の状況下で、寿は自らの全霊を懸けた起死回生のカードを強く握りしめる。
「罠発動、《エクシーズ・ソウル》!俺の墓地に存在する《弩級軍貫-いくら型一番艦》をEXデッキに戻し、そのランク×200……800ポイント、自分フィールドのモンスターの攻撃力がアップする!」
寿の宣言と共に、墓地から放たれた光の粒子が巨大な要塞列車のシルエットを包み込む。
《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》ATK 2000 → 2800
「バトルは続行ッ!」
《No.32 海咬龍シャーク・ドレイク》ATK 3800 vs 《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》ATK 2800
ぶつかり合う二つの巨体が放つ衝撃波が周囲の空気を引き裂き、轟音とともに強烈な閃光が視界を白く染め上げる。
寿 LP 1600 → 600
残りわずかとなったライフの数値を表すARビジョンの光が点滅し、寿の息遣いが急速に荒くなっていく。
「即死は免れたか。だが、俺にはまだ《ブラック・レイ・ランサー》の攻撃が残っている!」
凌牙は冷酷なまでの闘志を漲らせ、残された漆黒の戦士へと次なる指令を与えようとする。その背後に渦巻く暗黒の海原の幻影が、敗北を許さない彼の執念を雄弁に物語っていた。
「いいや、残ってねぇよ!《赤酢の踏切》発動!《ブラック・レイ・ランサー》はEXデッキに戻ってもらおうか!」
寿の巧みな罠が再び発動し、漆黒の戦士の進路を踏切の遮断機が容赦なく塞ぎ、どこからか現れた列車に跳ね飛ばされる。
「チッ!ターンエンド!この瞬間、《シャーク・ドレイク》の攻撃力は元に戻る」
《No.32 海咬龍シャーク・ドレイク》ATK 3800 → 2800
龍の攻撃力が元の数値へと収束していく中、静まり返ったフィールドの空気が次の嵐の到来を予感させる。
「俺のターン、ドロー!俺は、手札から《いくらの軍貫》を召喚し、効果発動!デッキから3枚捲り、その中に《しゃりの軍貫》があれば特殊召喚できる!」
寿は深く息を吸い込み、自らの運命を切り開くためのドローへと右手を伸ばした。寿の指先から放たれたカードが光を放ち、鮮やかな手際でデッキの上から三枚のカードがめくり上げられていく。
《二重召喚》、《うにの軍貫》、《しゃりの軍貫》。
求めていたそのカードが視界に飛び込んできた瞬間、寿の表情に笑みが浮かび上がる。
「来たっ!俺は《しゃりの軍貫》を特殊召喚!」
しゃりの軍貫が光の中から堂々たる姿を現す。その軽妙でありながらも確実な展開力が、凌牙の張り詰めた神経をさらに刺激する。
「俺は、《しゃりの軍貫》と《いくらの軍貫》のレベル4の2体でオーバーレイ……エクシーズ召喚!!現れろ、《No.41 泥睡魔獣バグースカ》!!」
睡魔に満ちた奇妙な異形の魔獣が、気だるげな巨体を横たえながら戦場に出現する。
「またナンバーズ?何がしたい」
凌牙は目の前に現れた怠惰な怪物を冷ややかな視線で見据え、相手の真意を測りかねるように眉間を微かにひそめる。その声音には明らかな警戒心と不審の色が混じっていた。
「守備表示で特殊召喚、俺はこれでターンエンド!」
寿は不敵な笑みを崩さぬまま淡々とターンを終了させ、魔獣の放つ絶対的な防御の気配を盾にして次の展開への布石を完了させる。その態度はシャークの苛立ちを煽るのに十分だった。
「俺のターン、ドロー……《バグースカ》の守備力は2000……足掻こうが無駄だ、バトル!」
凌牙は怒気を孕んだ声とともに一歩踏み出し、圧倒的な破壊力を持つ龍を前進させる。彼の胸中には、こんな小細工など一蹴してすべての障壁を粉砕するという激しい衝動が渦巻いていた。
「《シャーク・ドレイク》、《バグースカ》を……何!?何故守備表示になっている!?」
だが、突如として凌牙の指令に逆らうかのように、海咬龍の巨体が守備の姿勢へと変わっていたことに凌牙は気づいた。想定外の現象に、彼の瞳にわずかな動揺の色が走る。
「《バグースカ》の効果。このモンスターが守備表示である限り、フィールドのモンスターは守備表示になり、さらに発動した効果も無効化される!」
「厄介な効果を!俺はこのままターンエンド!!」
寿の説明に凌牙は歯噛みしながらもその停滞の呪縛に屈せざるを得ず、悔しさを押し殺しながらターンを終わらせる。
「俺のターン、ドロー……スタンバイフェイズ、俺は《バグースカ》のエクシーズ素材を一つ取り除く。俺は、このままターンエンド」
寿は時間を味方につけるかのように静かにカードを一枚伏せ、場を膠着状態へと導いていく。その落ち着き払った駆け引きが、焦りを募らせる凌牙の精神をじわじわと追い詰めていく。
「時間稼ぎか。俺のターン、ドロー……カードを一枚伏せ、ターンエンド!」
凌牙は無言のままカードを一枚追加してターンを返し、この硬直した泥仕合のような展開にいら立ちを隠せない。冷たい空気が、二人の間の息詰まる攻防をさらに重く包み込んでいた。
「俺のターン、ドロー。スタンバイフェイズ、俺は《バグースカ》のエクシーズ素材を一つ取り除く。俺は《バグースカ》を攻撃表示に変更!」
寿の指先が鮮やかに動き、これまで場を支配していた魔獣がゆっくりと立ち上がり、攻撃の構えへとその姿を変える。
「何?もう解除するのか?」
凌牙は不意を突かれた表情のまま相手の意図を探ろうとし、その静かな瞳の奥に隠された罠の匂いを敏感に察知する。
「魔法発動、《強制転移》!」
「何だと!?」
寿がデュエルディスクにカードを宣言とともに叩きつけると、凌牙の表情に驚きが走る。
「シャーク、あんたにはこのカードのことがよく分かるはずだ!行くぞ……俺は、《No.41 泥睡魔獣バグースカ》を選択!!」
寿の力強い指し示す先に、先ほどまで自分たちを縛り付けていた魔獣の姿が青白い光に包まれて浮かび上がる。その戦術の影に、凌牙の記憶の断片が激しく刺激された。
「……カイトの奴にやった戦術か。俺は《No.32 海咬龍シャーク・ドレイク》を選択!」
凌牙はかつての苦い記憶を呼び起こすように呟きながらも、自身の場に君臨する龍をその対象として冷静に指定する。
「暴れないでくれよ、《バグースカ》……それらのモンスターのコントロールを、入れ替える!!」
二体のモンスターの所有権が鮮やかに入れ替わり、凌牙のフィールドに泥睡の魔獣が、寿のフィールドに海咬龍がそれぞれ滑り込んでいく。
「チっ……まんまとハメられた訳だ……グッ!!見た目は完全にアレだがこいつもナンバーズ……!テメェ、俺のナンバーズを奪いやがって、あまつさえとんだモノを押し付けやがったな?」
不気味な魔獣の重圧を間近で受け止めながら、凌牙は怒気を孕んだ声で寿を鋭く睨みつける。
「だがスグ終わるさ!行くぜ、シャーク!俺は、《シャーク・ドレイク》で《バグースカ》を攻撃!!」
寿の号令に従い、本来は凌牙のものであったはずの海咬龍が牙を剥き出しにし、凄まじい勢いで突進していく。
《No.32 海咬龍シャーク・ドレイク》ATK 2800 vs 《No.41 泥睡魔獣バグースカ》ATK 2100
激しい衝突音と共に魔獣が粉々に粉砕され、その衝撃の余波が凌牙の肉体を容赦なく襲う。
シャーク LP 1000 → 300
「俺はカードを一枚伏せ、これでターンエンド!」
寿は確実に勝利が近づいていることを確信し、最後の一手を配置してすべてを出し切った充実感のなかで相手の出方を静かに待ち構える。その眼差しには確かな決意が宿っていた。
「……気に食わねぇ」
凌牙の低い呟きが冷たい空気を切り裂き、その声音には抑えきれない怒りが混じり合っていた。
「何?」
寿は凌牙の予想外の反応にわずかに眉をひそめ、目の前の男の纏う異様なプレッシャーに身体をこわばらせる。
「気に食わねぇッ!テメェのその態度、俺を甘く見ているその舐めた感じ、イラっと来るぜ!!」
凌牙の感情が完全に決壊し、荒々しい息を吐き出しながら全身の筋肉を緊張させる。その怒号は、かつての友人に対する情の残滓を完全に焼き尽くすほどの、熱量を帯びていた。
「テメェがWDCでナンバーズを集めたのはお前の勝手さ、それで強くなったのは認めよう、認めてやるよ!!だが、俺のナンバーズを軽々と奪いやがって……俺のターン、ドロー!!」
凌牙は凄まじい勢いでデッキから一枚のカードを引き抜き、その表面を一瞥するやいなや、怒涛の反撃へと移行する準備を整える。彼の背後に広がる暗黒の海が激しく荒れ狂い始めた。
「寿、恩とか関係ねぇ!お前は俺に倒されろ、それだけだ!!」
冷酷な宣告とともに、凌牙は伏せカードを激しく表に翻す。
「俺は罠発動、《サンダー・ブレイク》!俺は手札を1枚捨て、効果で《No.32 海咬龍シャーク・ドレイク》を破壊する!!」
凌牙の宣言と同時に凄まじい落雷がフィールドを直撃すると、寿のフィールドにいたはずの海咬龍が粉々に砕け散り、自らの墓地へと帰った。
「なっ」
寿はその予想外の戦術に息を呑み、凌牙の執念に言葉を失う。
「そして、魔法発動!《浮上》!!俺の墓地から、《No.32 海咬龍シャーク・ドレイク》は甦る……!!情けはしねぇ。このくだらねぇ茶番をさっさと終わらせて、俺はトロンに復讐を果たす!」
蘇った海咬龍が再び禍々しい咆哮をあげて闇の中から這い上がり、凌牙の足元で凄まじい威圧感を放ち始める。その冷徹な瞳には、もはや慈悲の欠片も残されていなかった。
「俺は、《No.32 海咬龍シャーク・ドレイク》1体でオーバーレイ・ネットワークを再構築……」
凌牙の周囲の空間が歪み、禍々しいオーラが現れると同時に、漆黒の宇宙空間を思わせる異界の門が開かれる。
「カオス・エクシーズ・チェンジ!うおおおおおおおぉぉぉぉぉおおお!!」
叫び声とともに、凌牙の全身から放たれた怒りと憎悪の闘気が龍の身体へと注ぎ込まれ、その姿をより凶悪で圧倒的な形態へと変貌させていく。
「現れろ、《CNo.32 海咬龍シャーク・ドレイク・バイス》!!」
暗黒の底から這い上がってきたカオス・ナンバーズが、凄まじい咆哮をあげて戦場に君臨する。
「出やがったか!カオス・ナンバーズッ!」
寿は冷や汗を流しながらも、目の前にそびえ立つ巨体を必死に見据え、持てるすべての知恵を絞って迎撃の準備を整える。
「テメェの盤面にモンスターは居ねぇ……バトルだ!《シャーク・ドレイク・バイス》!」
凌牙の冷酷な指令に従い、シャーク・ドレイク・バイスががら空きの寿のフィールドへと突撃していく。
「デプス・カオス・バイトォォォ!!!」
その圧倒的な殺気が寿の喉元へと鋭く突きつけられた瞬間。
「罠発動!《一族の掟》!!俺の宣言した種族と同じ種族を持つモンスターは攻撃できない!当然、俺の宣言は海竜族だ!!」
寿の宣言と同時に、龍の全身が強力な拘束の鎖が縛り上げられた。凌牙の必殺の一撃が、完璧なタイミングで完全に封じられた。
「……ターン、エンドだ!!」
凌牙は悔しさに奥歯を噛み締めながら、これ以上の追撃を断念して冷たくターンを終了させる。その表情には怒りと焦燥が入り交じり、張り詰めた空気が最高潮に達していた。
「俺のターン、ドロー!《一族の掟》は破壊される……俺は墓地の《きまぐれ軍貫握り》の効果発動!墓地から、《いくらの軍貫》と《しゃりの軍貫》2体をデッキに戻し、1ドロー……来たか」
寿は手札に加わったカードをしっかりと握りしめ、冷や汗を拭いながらも戦況を立て直すための鮮やかな布石を次々と打ち立てていく。
「俺は、《予想GUY》発動。《しゃりの軍貫》をデッキから特殊召喚だ!」
寿の宣言に応じるように、再びしゃりの軍貫が光の中から堂々とした姿を現し、心強い味方としてフィールドの最前線に陣取る。
「さらに、フィールドに《しゃりの軍貫》が存在するので……」
寿の巧みなコンボの継続に、凌牙は鋭い警戒の視線を向けながら、次に何が飛び出すのかを静かに見極めようとする。
「また《いくら》か?」
凌牙の低い問いかけに対し、寿は自信に満ちた不敵な笑みを浮かべながら首を横に振る。
「いいや、違うな!俺は、手札から《しらうおの軍貫》を特殊召喚!!」
白身の魚が何層にも重なって海苔の装甲の上に乗り、その頂点に生姜がチョコンと座る軍貫が、姿を現す。
「師匠!?なんだそいつは?!」
全く新しい軍貫の登場に、観戦していたアンナが驚きのあまり声を弾ませた。アンナの驚愕の声を聞き流しながら、寿は最高傑作の調理を始めるかのような鮮やかな手際でモンスターたちを導いていく。
「新ネタ到着だ、そのまま《しゃりの軍貫》と《しらうおの軍貫》でオーバーレイ・ネットワークを構築……」
二つの異なる光が幾何学的な軌跡を描いて銀河へと吸い込まれ、極上のエネルギーの奔流が盛大に吹き荒れる。
「大海を駆け抜け、特上の注文を届けよ!エクシーズ召喚!!」
魂の込められた掛け声に呼応するように、壮麗かつ洗練された新たな軍貫の巨体が優雅に、そして力強く戦場の海原へと降臨する。
「現れろ、《空母軍貫-しらうお型特務艦》!!」
華やかな登場の余韻を残したまま、特務艦はその巨体を優雅に傾けて防御の姿勢をとる。
「守備表示で特殊召喚……効果発動!《しゃりの軍貫》を素材にしているため1ドロー、そして《しらうおの軍貫》を素材にしているためデッキから軍貫と名のついた魔法・罠カードを1枚手札に加える!俺は、《きまぐれ軍貫握り》を手札に加える!」
寿の手札が補充され、戦術の選択肢がさらに広がりを見せる。
「俺はカードを2枚伏せてターンエンド!」
寿は冷静に裏向きのカードを二枚配置し、全ての備えを万全にした状態で相手の猛攻を受け止める構えを見せる。その表情には確かな手応えが宿っていた。
「……これで次のターンを凌いで、なんて考えてねぇだろうな?守備力250……なるほど、《シャーク・ドレイク・バイス》の攻撃力ダウン効果を嫌ったか……俺のターン、ドロー!」
凌牙は低く冷ややかなトーンで相手の意図を正確に見抜き、自らの手札に握られた一枚のカードへと視線を落とす。その瞬間、彼の表情に一瞬の戸惑いが走った。
(《ディープ・シー・アタック》……くそ、完全に腐った)
運の尽きか。凌牙は今、そのカードしか手札に無い。
(伏せカードを考えろ……一枚は《しらうお型特務艦》で手札に加えた《きまぐれ軍貫握り》。もう一枚が、仮にモンスターの攻撃を止める罠だったら、止めを刺すのには二体モンスターが必要だ……だが、俺のフィールドには《CNo.32 海咬龍シャーク・ドレイク・バイス》だけ。こいつには攻撃力を下げる効果しかない、守備表示には戦闘破壊しか……『本当にそうか?』)
突如として脳裏に直接叩きつけられたその異質な声の響きに、凌牙は激しく身を震わせる。
「ッ!?」
次に視界に入っていたのは、シャーク・ドレイク・バイスの純白の姿が、深海で浮かんでいた姿だった。
「シャーク・ドレイク・バイス!?馬鹿な!」
目の前にそびえ立つカオス・ナンバーズの巨体を目前にして、凌牙は困惑の色を瞳に浮かべる。
『俺の力を受け入れろ』
(馬鹿な、俺は受け入れたはず。それが、《シャーク・ドレイク・バイス》じゃ無いのか?)
おかしい。復讐を遂げるために、全てを受け入れた。その結果が、カオス・ナンバーズであり《シャーク・ドレイク・バイス》のはず。
『凌牙……俺の真の力を、受け入れろ……!』
だが、それが目の前の龍は違うと断言する。これほどおかしい話はなかった。
(真の力!?何言ってやがる、それがカオス・ナンバーズであり《シャーク・ドレイク・バイス》のはず!)
凌牙は困惑に満ちた表情で、深海を浮遊する海咬龍に問いかける。
『カオスを極めろ、俺の眠れる力を、お前が呼び覚ますのだ……誰の手でも無い、お前の手で……!!』
(カオスを極めるだと?どういうことだ、だからそれが《シャーク・ドレイク・バイス》では……!)
あくまでも否定し理解できない凌牙に、海咬龍は決定的な一言を突き付ける。
『カオスは、一つに非ず』
(何!?)
《シャーク・ドレイク・バイス》だけではない、もう一つの可能性。
『極めろ、凌牙……己の、カオス……欲望を!!!』
その言葉を言い放つと、純白の巨躯からオーラが放たれ、凌牙の身体を強く打ち付ける。
「欲望が……カオス……!」
視界が現実のものへと戻ると、凌牙の呼吸が乱れ、胸の奥底で燻っていた衝動が制御不能の炎となって全身の血管を駆け巡る。
「シャーク?」
彼が纏う禍々しいオーラの異様な変貌を察知した寿が、警戒と不安の色を滲ませた声で目の前の男の動向をじっと見つめる。
「カオスを、極める……!俺は、俺は……!!トロンを倒すことが、俺の欲望……!……なのに、何故だ!?何故俺は、これほどに……!!」
自らの内側から湧き上がる衝動の正体が掴めず、凌牙は頭を抱えるようにして苦悶の表情を歪ませる。その矛盾に満ちた闇の深さに、彼の心が激しく揺さぶられていた。
「……そういうことか。簡単、それは、あんたがあんたの為にデュエルしてないからさ。シャーク!」
寿の投げかけたその言葉は、まるで鋭い刃のように凌牙の混乱した思考の核心を正確に突き刺す。冷徹な戦場の空気が一瞬にして凍りつき、すべての音が彼の言葉の重みの前に消え去った。
「俺が、俺の為に?」
問い返す凌牙の声音には、いつもの冷酷さが綺麗に削ぎ落とされ、ただ剥き出しの困惑だけが残されていた。その瞳に映る寿の姿が、揺らぐ光の中で不気味に大きく歪んで見える。
「妹を傷つけた奴を許さない。妹の恨みを晴らす。妹のため、復讐する……それがあんたの本当の欲望か?最初から、あんたはそんな激情に駆られた鮫だったのか?」
寿は続ける。
「Ⅳを倒した。トロンが真犯人だと知った。だから、次はトロンを倒す……だけど、Ⅳは言っていたはずだぜ?父トロンを許してやってほしい、それがⅣの言葉だった。同時に、恨むなら俺だけを恨め、とな。これって自己犠牲の精神か?」
寿は自問自答するようにして、凌牙に言い放つ。
「いいや違うね、ⅣはⅣのプライドってものがある!トロンから渡されたカードであんたの妹を傷つけたのはⅣ自身だ、例えトロンに謀られたとしてもその事実に揺るぎはない……Ⅳの責任だ、トロンのじゃない……本人はそう感じているんだ、そして、シャークは妹の恨みを晴らすためにデュエルをしている……けど、もう良いんじゃねぇか?」
寿は、自ら特大の地雷を踏みぬくようにして、決定的な言葉を言い放つ。
「Ⅳを倒して、満足する。それで、もう復讐は終わりで良いんじゃねぇのかよ?」
凌牙は一瞬、寿の言った言葉の意味が分からなかった。
「……良くねぇよ」
直後に凌牙の口から絞り出されたその低い声には、すべてを拒絶するような凄まじいまでの拒絶反応が込められていた。彼の纏うオーラが周囲の空気を切り裂くように激しく逆巻き始める。
「……良くねぇよ!!こんなところで、あいつの恨みが晴れる訳ねぇだろうが!!!」
張り詰めた怒号が壁面に幾重にも反射し、耳をつんざくような轟音となって空間を震わせる。
「ふざけやがって、舐めやがって、お前に俺とあいつの苦しみの何が分かる!」
その絶叫には、あまりにも深い悲しみと、決して癒えることのない兄としての呪縛がこびりついていた。だが、寿は全く動じない。
「だったら、ここから俺を倒してみな」
「あぁ?」
「あんたがこのターン、俺を倒すことができたら俺は復讐を続けることを認めてやる。だが、できなければ認めねぇ」
寿の瞳に宿る光はどこまでもまっすぐで、一切の迷いや冗談の色すらも存在しない、命を削る覚悟に満ちた本物の輝きを放っていた。その気迫が凌牙の荒ぶる魂を強烈に引き戻す。
「何故俺の復讐する権利を、お前が奪おうとする?俺の復讐だ、お前のじゃねぇ!!」
理解不能、意味不明。何故これほどに、目の前の男が己の目的を妨げようとするのか。凌牙は全く理解できなかった。
「あんたの妹にかける、覚悟を知るためさ!!そのためなら、あんたは何だってして見せろよ、俺くらい超えて見せろよ、兄貴だって言うんならな!!!」
圧倒的なまでの挑発だった。その言葉を聞いた瞬間、凌牙の胸の奥底で長年くすぶり続けていたすべての迷いが音を立てて砕け散り、圧倒的な覚悟の炎へと生まれ変わった。彼の全身の血が沸騰し、瞳の奥に宿る復讐の光が漆黒の闇を焼き尽くすほどの輝きを放ち始める。
「……どうやら死にてぇようだな、おい、《シャーク・ドレイク・バイス》!」
次の瞬間凌牙は、フィールドに立つ海咬龍に叫ぶ。本来ならば通じることの無いはずの会話。
『凌牙』
だが、海咬龍はフィールドから後ろに立つ凌牙を首だけ振り返るようにして見据え、直接脳裏に聞こえるようにして答える。
「目の前に今どうしようもなくぶっ潰してぇ奴がいてな。お前のカオスは俺が受け止めてやる。フルパワーだ、本気で来やがれ」
その言葉を聞くと、海咬龍は身を震わせて肯定した。
『そうだ、その言葉を待っていた……!行くぞ、凌牙!!』
「来い、《シャーク・ドレイク・バイス》!!!」
凌牙のペンダントから放たれた強烈な闘気が、彼の前に立つ巨大な深海の竜の幻影と重なり合う。
「俺は、超える……全てを咬み砕く、最強の牙で!!!」
その圧倒的な一体感が、戦場のすべてを圧倒的な緊張感で満たしていった。
「うぉぉおおおおおおぉぉぉぉおおおおーーーーーーっ!!!」
大地を揺るがすような咆哮とともに、凌牙の右手が虚空を掴み取り、世界そのものを書き換えるような漆黒のエネルギーの奔流を解き放つ。
「俺は、手札から魔法カードを1枚捨て、《CNo.32 海咬龍シャーク・ドレイク・バイス》1体でオーバーレイ・ネットワークを再構築!」
天井がぐにゃりと歪み現れた幾重もの禍々しい光の銀河が回転しながら、さらなる深淵への扉をこじ開けていく。その圧倒的な質量を持つエネルギーに、金属床が悲鳴を上げて軋んだ。
「再誕せよ、《CNo.32──
その数字を宣言した瞬間、深淵から鋭い赤い閃光が放たれた。
「全ての光を噛み砕く深淵の牙よ!!」
凌牙はすべての力を振り絞るようにして、叫ぶ。
──海咬龍シャーク・ドレイク・リバイス》!!!」
裂け目を突き破り、全身を純白の装甲に包んだ究極の海咬龍が、世界を飲み込むかのような凄まじい威容を誇って戦場に降臨する。その圧倒的な存在感が、その場にいるすべての者の呼吸を完全に奪い去った。
「《海咬龍シャーク・ドレイク・リバイス》の効果発動……オーバーレイ・ユニットを一つ使い、《しらうお型特務艦》の攻撃力、防御力を0にする!アビス・サイレンス!!」
《空母軍貫-しらうお型特務艦》ATK 2200 → 0 DEF 250 → 0
特務艦の光が、冷徹な深海の波動によって一瞬にして剥ぎ取られ、その無防備となった巨体が完全に闇の中へと放り出される。
「バトル!!《シャーク・ドレイク・リバイス》で、《しらうお型特務艦》を攻撃!!」
《CNo.32 海咬龍シャーク・ドレイク・リバイス》ATK 3100 vs《空母軍貫-しらうお型特務艦》DEF 0
龍が凄まじい咆哮をあげながら巨大な牙を剥き出しにし、すべてを飲み込む一撃へと向かって一直線に突進していく。
「見事……だが、守備表示だからダメージは入らない!」
寿は極限のプレッシャーに脂汗を流しながらも、最後の防壁にしがみつくようにして精一杯の声を張り上げ、その衝突の衝撃を受け止める準備を固める。
「いいや、《シャーク・ドレイク・リバイス》は守備力を攻撃力が超えた分だけ、ダメージを与える効果も持っている!!」
容易く寿の最後の防壁をも粉砕する、凌牙の想い。
「往生しろ寿……これが、妹……璃緒にかける俺の覚悟だ!デプス・バイス……ストリーム!!!」
凌牙の全身全霊から放たれた怒濤の闘気が龍の口元へと一点集中し、世界を貫くような圧倒的な貫通の閃光が放たれる。
「ぐ……ぐはあぁぁああーーーッ!!」
寿 LP 600 → 0
寿の身体が激しく吹き飛び、冷たい床面を激しく転がる。その顔には一切の悔いなく、ただ清々しいまでの充実感が浮かんでいた。凌牙はそれだけを見ると、勝利を得たことを握りしめ、魂の底から叫んだ。
「璃緒ォォォォオオオ!!!」
叫び声が彼方へと吸い込まれ、決着の静寂がすべてを包み込んでいった。