軍貫使いはZEXALで寿司を握る   作:Dの軍貫 シンキハヨ・チョーダイナ

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棋譜を書くと書くほど、ルールがまどっころしい件。
例によってミスがあったら遠慮なく感想にて報告してくださいな。


楽園の粉砕者は踏切を守る夢を見る

シャークがどこか毒気を抜かれたような顔で店を出て行った後、嵐が去ったような静寂が訪れるかと思ったが、現実はそう甘くなかった。

 

「赤司! お前、マジですげーな! あのシャークが素直に帰るなんてよ!」 「……遊馬、声がデカい。それに、店の中ではしゃぐなと言ってるだろ」

 

俺はカウンターの隅で、本日何度目か分からない溜息を吐いた。 遊馬の背後、何もないはずの空間から刺すような冷気を感じる。やはり「何か」に注目されている気がしてならない。この得体の知れない寒気を振り払うには、いち早くこの場を解散させるのが最善だ。

 

「いいか、今の俺はただの寿司屋の息子だ。学校でも余計なことは言うなよ」 「分かってるって! 秘密だろ、秘密!」

 

そう言って鼻の下をこする遊馬の言葉ほど、信用できないものはない。

 

案の定、翌日の学校は最悪だった。

 

「おい、転校生! お前、あの神代凌牙を倒したってマジか!?」 「……いや、うちはただの寿司屋だ。何かの勘違いなんじゃないのか?」

 

何度説明しても、遊馬が昨夜の様子を脚色を加えて触れ回ったせいで、俺の平穏なモブ人生計画は二日にして瓦解した。

やれ「デュエルしろ」だの、「なにかイカサマしているんじゃないか」だの。挙句の果てには「シャークを穴子漬けにした男」なんていう、わけの分からない噂まで飛び出す始末だ。

 

はーっ、と深く息を吐き出す。

遊馬と関わってからろくなことがねぇ。 なんであんなにテンション高めに接触してしまったのか。当時の俺の首を絞めてやりたい気分だ。

 

 

 

####

 

 

 

放課後。俺は海藻類の仕入れのため、商店街の鮮魚店へと向かっていた。 手に持っているのは、先日遊馬とぶつかった時に中身をぶちまけそうになった銀色の保冷ケースだ。

 

「……遊馬のせいで、変に視線を感じるな」

 

商店街を歩いているだけで、どこかから見られているような気がしてならない。いや、これは視線というより、あの遊馬の隣にいる時に感じる不気味な「寒気」に近い。

 

その時だった。

 

「ひゃははは! 出ろ、俺の幸運の象徴! 《No.67 パラダイスマッシャー》!」

 

路地裏から響く、狂気に満ちた叫び声。 本来なら見過ごして帰ればいい。俺はただの仕入れ担当だ。だが、その声が聞こえてきた場所は、明日使う予定の「コハダ」を予約している鮮魚店のすぐ裏だった。

 

「……おいおい。あそこの電源を落とされたら、俺の仕込みが台無しじゃねえか」

 

俺は舌打ちを一つつくと、壁際に保冷ケースをそっと置いた。 路地を覗き込めば、そこにはサイコロの柄をしたハンマーを振り回して暴れ、看板や街灯を破壊して回る男がいた。その瞳はどす黒く濁り、明らかにナンバーズの毒に当てられている。

 

「おい、そこ。暴れるなら他所でやれ。もし魚屋の電源が落ちたら大変困る。」 「あぁん? なんだてめえ、その格好は……寿司屋か? どうでもいいか、ギャハハ! 運のねえ野郎だ、つっかかってきたってことは、それなりの覚悟があるんだよな! わざわざ俺のナンバーズの生贄になりに来たか!」

 

男がデュエルディスクを起動する。……やはりか。 今はまだストーリー序盤。

既に数枚は遊馬が回収しているであろうが、目の前のこいつはナンバーズに憑りつかれたままだ。関わりたくはなかったが、明日のコハダと今日の俺の脳天の安全には代えられない。

 

「……やれやれ。サクッと終わらせて、店に戻らせてもらうぞ」

 

「Dゲイザー、セット!」

 

「ARビジョン、スタンバイ!」 「「デュエル!!」」

 

男 LP4000 / 寿 LP4000

 

「先行は俺だ!ドロー!俺は《創造の代行者 ヴィーナス》を召喚!さらに500LPを支払い、デッキから《神聖なる球体》を特殊召喚ッ!」

 

男 LP4000 → 3500

 

「この効果は何度でも使える!出てこい、《神聖なる球体》!さらに……《神聖なる球体》!」

 

男 LP3500 → 2500

 

(ヴィーナスはターン1制限が無い。ライフを代償に一気に四体並べたか。だが、レベルは2と3。それではエクシーズ召喚できないはずだが?)

 

「魔法発動、《タンホイザー・ゲート》!《創造の代行者 ヴィーナス》と《神聖なる球体》を選択! それぞれのレベルの合計……つまり、こいつらはレベル5になる!」 「さらに《下降潮流》で残りの玉のレベルを3に変化させ、もう一度《タンホイザー・ゲート》!これで俺の場にはレベル5が四体だぁッ!」

 

男がカードを叩きつけるたびに、ナンバーズ特有の圧が路地裏に満ちていく。

 

「レベル5のモンスター四体でオーバーレイ・ネットワークを構築ッ!現れろ、楽園の粉砕者!《No.67 パラダイスマッシャー》ッ!」

 

突如として現れた、巨大なサイコロの化け物。

 

「……げっ、禁止カードじゃねえか」

 

前世の記憶が、こいつの凶悪さを瞬時に思い出させる。

 

「パラダイスマッシャーの効果発動! ダブル・ダイス・ロール! お前の運命を固定してやる! 出目の合計が大きい方は、ターンが終わるまでモンスターの効果も、攻撃もできねぇ!」

 

禁止カードだのどうだ言っても仕方ねぇ!

 

「「ダイスロール!」」

 

空から降ってきた巨大なダイスが、石畳の上を不規則に跳ねる。

 

男 1 + 1 = 2

寿 3 + 2 = 5

 

「ケケケ!ピンゾロだぁ!見事に決まったぜっ!このターン、お前はモンスターの効果を発動できず、攻撃もできない!俺のダイスは最強なんだよ!」

 

……運か。俺はあんまり運がいい方ではないんでね。

俺はデッキから引き抜いたカードを、冷めた目で見つめた。 不快な寒気が、背筋をじりじりと焼く。

 

「だがな、寿司屋に運は必要ない。必要なのは、客が求めるネタを確実に提供する『仕込み』だけだ。フィールド魔法、《軍貫処『海せん』》を設置だ。」

 

「無駄だと言ってるだろ!効果は使えねえんだよ!ガハハハ!」

 

「これは魔法の発動だ。……俺はモンスターだけに頼るようなタチじゃないんでな。さらに魔法カード《二重召喚》を発動。これにより、通常召喚を二回行う」

 

手札事故防止に入れていたカードが、ここで役に立つとは。人生、何が幸いするか分かったもんじゃない。

 

「俺は《いくらの軍貫》と《ゴブリンドバーグ》を召喚。そしてレベル4の二体で、オーバーレイ・ネットワークを構築」

 

真っ赤な粒を輝かせる軍艦巻きと、無骨な飛行兵が現れ、そして渦の中へと変換される。

 

「現れろ、《弩級軍貫-いくら型一番艦》!」

 

紅い輝きを放つ戦艦が、狭い路地裏を制圧するように浮上する。

ARビジョンが描き出す重厚な駆動音が、男の卑屈な笑い声をかき消した。

 

「チッ、出したところで無駄だ!効果は使えねえ、攻撃もできねえデカブツが何になる!」

 

「召喚時の効果は発動できないが……これで十分だ。俺はカードを二枚伏せてターンエンド」

 

「舐めやがって!俺のターンだ、ドローッ!《パラダイスマッシャー》の効果発動!ダブル・ダイス・ロール!」

 

男が狂ったように叫び、巨大なハンマーが振り上げられる。だが、その動作が完遂されることはなかった。

 

「いいや、それは発動させない。罠発動、《赤酢の踏切》!」 「なにぃ!?」

 

「その効果が発動される前に、同じ縦列にある《パラダイスマッシャー》を強制的に手札に戻す。……さよならだ、禁止カード」

 

「く、くそっ……俺は手札から《闇の量産工場》を使い、《神聖なる球体》2体を手札に加える!さらに俺は《死者蘇生》を使い、《ヴィーナス》を特殊召喚。さらにLPを払って《神聖なる球体》1体を呼び出し、守備表示でターンエンドだッ!」

 

男 LP2500 → 2000

 

(……やはり、守備で固めてきたか。やれやれ、往生際が悪い)

 

「俺のターン。……リバースカードオープン、《カード・フリッパー》。手札を一枚捨て、相手フィールドの全モンスターを表示形式を変更する」

 

俺はカードを捨てると、突風が路地を駆け抜け、怯える天使たちの体を無理やり引き起こした。

強制的に攻撃表示へと晒された、無防備な球体と女神。

 

「バトル。《いくら型一番艦》で、《神聖なる球体》を攻撃」 「ぐわああああっ!?」

 

戦艦の側面から放たれた無数の弾頭が、光の球体を粉砕する。

 

《弩級軍貫-いくら型一番艦》ATK2200 vs 《神聖なる球体》ATK500

 

男 LP2000 → 300

 

「……さらにもう一撃。《しゃりの軍貫》で、《ヴィーナス》を攻撃。お代はライフで払ってもらうぞ」

 

《しゃりの軍貫》ATK2000 vs 《創造の代行者 ヴィーナス》ATK1600

 

巨大なシャリの塊が、呆然と立ち尽くす女神を容赦なく押し潰す。

 

「ひ、ひぃぃぃっ!?」

 

男 LP300 → 0

 

轟音と共に、砂埃が立つ。 男が吹き飛び、背後のナンバーズが光の粒子となって霧散していくのを、俺は冷めた目で見届けた。

 

「お前の敗因は妨害することだけで、盤面の突破方法を考えてなかったことだな。さぁ、とっととどっか行け!」

「ひ、ひぇぇぇぇえーっ!」

 

やはり暴れていた最中の記憶はないのか、男は急ぎ足でどこかへ消えていった。

 

「……ふぅ。これで冷蔵庫は無事か」

 

俺はDゲイザーを外し、壁側に置いていた保冷ケースを回収した。

足元には、先ほどまでの輝きを失った《No.67 パラダイスマッシャー》のカードが落ちている。

 

(……これがアストラルの好物、ナンバーズか? 拾ってもいいが、どうせ憑りつかれるし面倒なことになる。いらねえな、こんなもん)

 

俺はそれから目を離し、何事もなかったかのように鮮魚店へ向かった。

 

「お、来たぞー? 赤司の坊ちゃんが遅刻でお出ましだぞー?」

「……その呼び方、止めてくれって言ってるだろ。あと、遅刻じゃなくて寄り道だ」

 

相変わらずおどけた店主の息子に返答しつつ、俺はただの寿司屋の息子の顔を作り、店主に声をかけた。

 

「ども、軍艦処・赤司です。予約してたやつ、受け取りに来ました」

「あいよー、あそこの箱に入ってるぜ。」

 

保冷ケースの中に収まる海藻類を確かめ、俺は満足げに鼻を鳴らす。 背後の路地裏で遊馬たちが騒ぎ出す前に、俺は夕暮れの街へと足早に消えていった。

 

 

 

####

 

 

 

「アストラル、こいつがナンバーズか!?」

 

遊馬が見たその足元には、《No.67 パラダイスマッシャー》が、持ち主を失い静かに光を放っていた。

 

「……ああ。このエネルギー反応、間違いなくナンバーズだ。回収する」

 

アストラルは淡々と指示を出しながらも、その視線は地面に転がるカードではなく、路地の出口……つい数十秒前まで、白い調理白衣の少年が歩いていた方向へと向けられていた。

 

「でも、なんでナンバーズが道に落ちてるんだ?変なこともあるもんだなー?」

 

アストラルにとって、この数日の出来事は不可解の連続だった。 第一にも第二にも、あの少年――赤司寿だ。

 

(……不可解だ。あの少年からは、九十九遊馬が持つような、いわゆる『デュエリストの闘志』がほとんど感じられない。思い返せばそれは私の確認した限り常にそうだ。たとえば遊馬と対戦した時、彼は嬉しそうではあったが、熱くはなっていなかった。この世界に存在すること自体を拒んでいるような、希薄な気配さえする)

 

アストラルは宙に浮いたまま、薄く目を開く。

 

(だが、先ほどのデュエルの残光はどうだ。このナンバーズ……パラダイスマッシャーは、確率を操作し、相手の行動を完全に封殺する力を持っていたはず。それを……力ずくではなく、極めて論理的、かつ事務的に処理してのけている)

 

アストラルの脳内には、寿がデュエル中に放ったあの言葉がリフレインしていた。

 

『寿司屋に運は必要ない。必要なのは、客が求めるネタを確実に提供する仕込みだけだ』

 

(仕込み……。彼はデュエルを、運命の交錯ではなく、あらかじめ定められた工程の遂行であると定義しているのか? だとしたら、彼は我々が知るデュエリストとは根本的に異なる理で動いていることになる)

 

さらにアストラルを困惑させているのは、寿が自分に向ける反応だ。 彼は確かに自分を見てはいない。だが、自分が近づくたびに露骨に嫌そうな顔をし、背筋を震わせる。

 

(彼は私の存在を視覚ではなく、別の……より本能的な感覚で捉えている可能性が高い。そして、それを不吉な寒気として処理し、あえて深く関わろうとしない。……極めて高い観察眼と、それ以上に高い生存本能を感じる)

 

「おーい、アストラル! ボーっとしてどうしたんだよ? 早くどうすればいいか教えてくれよ!」

 

遊馬の呑気な声に、アストラルは思考の海から引き揚げられた。

 

「……遊馬。あの少年、赤司寿には注意深く接する必要がある。彼は、君が考えるようなただの寿司屋の息子ではない」

 

「あ? そりゃそうだろ、あいつの親父さんの寿司、マジで美味いんだからな! 赤司もきっと寿司もデュエルも修行してんだよ!」

 

「……そういう意味ではないのだがな。……まあいい、観察を継続しよう。ナンバーズ、回収完了だ」

 

アストラルは最後に一度だけ、寿が消えた曲がり角を見つめた。 赤司寿。 彼が握っているのは、果たしてシャリだけなのか。それとも、この世界の運命の糸なのか。

 

(……寒気、か。私の存在をそのように反応し、表現した人間は、彼が初めてだ。……興味深い)

 

アストラルの微かな呟きは、遊馬の「寿にも負けらんねぇー!かっとビングだぜ、俺!」という叫びにかき消され、空へ消えていった。




もう2025年も終わりますね。あまりにも終わるのが早い、早すぎる。
45の2乗が2025だとか言ってたのが昨日のように思い返せます。

よいお年を。
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