夜の深まってきた頃、大和の国の宴会場で、
「多いな、あんまり好きじゃないんだよな、神様とかいうの。」
妖怪が現れる。
その場にあったにぎやかな空気は一瞬で静まり返る。
静かになったと思えば、部屋の奥の方から斬撃が放たれる。
当然の反応だ。最小限の動きで避ける。
底しれぬ強さで被害を与えてきた妖怪が突然やって来たともなれば、襲いかかってくることくらい予測できる。
「天叢雲剣、神器か、それもかなり強力な…。」
「正解だ。今度は何の用だ、妖。」
斬撃を放った神が最大限警戒しながら言う。戦いに来たのならわざわざ妖力を放ったりするわけがない。
「そう警戒するなよ。スサノオノミコト。」
スサノオノミコトと呼ばれ、目の前に妖怪が自分の名前を知っている事実に驚きで一瞬目を丸くする。圧倒的な強さを持つ妖怪、それが自分の名前と刀の名前、両方を当ててみせた。
「どうやって知った?」
「まあそう構えるな、今日はただの宣戦布告だ。」
宣戦布告と聞いて周囲の神達がざわつく。圧倒的強さを持つ相手との戦いともなると、それはそれは恐ろしく思うだろう。
「今から1週間後、お前達が諏訪の国と戦争をするらしいな。その戦争だが、この纏幻閻羅が乱入させていただくことにする。」
衝撃的な発言に一瞬あたりが静まり、すぐにまた沸き上がってくる。
「て、纏幻閻羅っていったら、あの?」「ら、乱入だと!…」「生ける大災、変幻自在を操る大妖…」
数人を除いて動揺が見て取れる。
纏幻閻羅…変幻自在を操る者として知名度が高く、数々の逸話を持つ伝説といってもいいほどの大妖怪だと自ら明けたのだ。
「そうだな…」
閻羅は一通り品定めをするような目を向けて呟いては、青い髪色の神に向けて指を差した。
「お前にしよう。八坂」
「私の名まで知っているか、なんの用だ。」
八坂と呼ばれた神、八坂神奈子は驚きや動揺を堪え、堂々と座ったまま鋭く睨みつける。
「おまえには、諏訪の国の神である、洩矢諏訪子と大将戦をしてもらおう。」
「なに?」
大将戦という意味のわからない発言に、どういう意味なのかと聞きただすように睨みつける。
「ただの余興だ。楽しみは多いほうがいい、大将戦に関してはおれも手を出さん。俺には勝てなくても、大将戦で八坂神奈子が洩矢諏訪子に勝てば、引き分けという形にしてやっても良い。」
「自分が勝つ前提で話をするとはな、そう簡単に負けはせんぞ!」
スサノオが横から刃を突き立て割り込んでくる。閻羅にそのつもりがなくてもスサノオは軽い侮辱として受け取ったのだ。
「俺に勝つと?笑わせるなよ。」
その場を制す程強い殺気を込め、スサノオを睨みつける閻羅。
「妖怪がぁ!!」
ツァナトスの座標を変化させ手元に呼び出し、スサノオの持つ剣、天叢雲剣と打ち合う。幾千の斬撃が放たれ、あっという間に宴の会場は破壊される。
「酷いもんだ、一人くらい死んでるんじゃないか?」
「舐めるな!」
互いに上空へと飛び、また斬り合う。数回繰り返すと、
鍔迫り合いになりながら話す。スサノオは苦い顔をしつつも、殺気を放つ。対して閻羅は決してふざけてはいないが余裕を見せている。
「ここは良い景観をしているな。」
暗い夜の闇の下で弱い明かりが薄く輝いている。
「余所見してる場合か!」
スサノオが鍔迫り合いの中、更に距離を詰めながら、閻羅の刀を横に弾き、連撃を仕掛ける。
だが閻羅はそれすらも下からくぐり抜けるようにして避け、振り向きざまに極太のレーザーを放つ。避けることもかなわずに、刀で受けたスサノオは、そのままレーザーに押され、地表付近まで飛ばされる。
「この天叢雲剣をもってしても、同じ土俵にすら立てんか…。」
「一万年早い。」
いつの間にか目の前にまで迫ってきていた妖怪が話しかけてくる。
「だが、まあいいだろう、それなりに楽しめた。そろそろ帰らせてもらおう。次に戦うのを楽しみにしておく。」
そう言うと目の前に捉えていたはずが、忽然と姿を消し、後には、壊れた宴会場と静かになびく風だけが残された。
そうして、勝手に始まった前夜祭は、
勝手に終わった。
お読みいただきありがとうございました。
前回との間の話については思いつかなかったし、あまり書けないだろうからやめました。想像で補ってください。
そういえば天叢雲剣って八岐の大蛇の中に入っていた刀らしいんですよね。そこのところの設定は変えないので、天叢雲剣が出できたということは憐れにもまともに戦うこともでこずに負けてしまっています。…R.I.P.八岐の大蛇
それはそうと、もしかしたら閻羅のキャラにブレが生じているかもしれないということに震えています。あれれ?こんな感じだったっけ?
次回、諏訪大戦