東方万化録 〜変幻自在なこの世界を〜   作:人間の端

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第二十五話 諏訪子と加奈子

 

「あんたが八坂神奈子。」

 

堂々とした態度で腕を組み凄まじい圧力と共にこちらも睨見つけてくる青髪の神につぶやくように言う。

 

「お前が諏訪子とやらか。」

 

互いに構えることはしていない。片や最高峰の技術で鍛え抜かれた鉄器、片や武器を持たぬものの圧倒的な覇気を見せつける。

 

「信仰を、いただくとしよう。」

 

自分がいま握っているものを改めて見る。輝きを放つ鉄で出来たリング状の武器。明らかに強い相手。それでも立ち向かえる勇気がわいてくる。みんなが作ってくれた鉄の輪があるのだから。

 

「行くよ!」「来い!」

 

雨が降り始める中、諏訪子が先に動く。諏訪の鉄の輪を握りしめ、佇む軍神に挑む。

 

ミシャグジ様と共に光弾を飛ばし、物量で攻める。

だが頭上から八坂神奈子の御柱が現れせき止めてしまう。

 

「それずるい!」

 

攻撃自体は御柱で防がれてしまったが、八坂神奈子の視界を封じることができた。その間に加奈子の裏へと回り、視界の外から突撃していく。

 

「それだけかい?」

 

急に加奈子の味方をするように風が凄まじい勢いで、諏訪子の方へと吹き、体が押し返されてしまう。辺りはいつの間にか雷が降るようになっており、自分が攻めているはずなのに追い詰められている気がして、思わず顔をしかめてしまう。

 

「次は、こちらから行くぞ。」

 

加奈子の周囲に御柱が浮かび上がり、次の瞬間には、レーザー状の弾幕と共に一斉にこちらへと向かって撃ち込まれる。

 

いきなり襲いかかってくる御柱たち少し驚いた表情をしながらも、まさに紙一重で、避け続ける。

 

神の力は、信仰によって増減する。位の低いものであれば、信仰が生死に関係してくることもある。諏訪子からすれば、最低限の技術はルーミアに教えてもらったが、未熟であり、加奈子に迫るには至らない。

 

対する加奈子もまた、少し驚いていた。技術は未熟、経験も軍神として長く戦ってきた自分と比べれば、圧倒的に少ない存在が、自分が放った攻撃を避けたのだから。

 

というのも、加奈子は闇雲に弾幕を張っているのではない。あえて逃げ道を作り、誘導しているつもりなのだが、見切られているのか逃げ道も見つけられないようなのか、誘導しきれない。

 

そんな状況が膠着したのも一瞬であった。雨風が吹き荒れる中、それは当然に落ちてくる。音より早く、あらゆる者をたたき落とさんとして、轟音を轟かせる。落雷。

 

「んぐぬぁぁぁ!」

 

寸でのところで神力で防御し、直撃は免れたが大きく吹き飛ばされ、壁に叩きつけられてしまう。

 

「いてて………「隙だらけだぞ!」…うわぁ!」

 

雷を落としたばかりだというのに容赦なく追撃してくる。加奈子の攻撃が諏訪子に掠めるようになってきていた。

 

攻防の中で、新たに雷を落としてくることが頭に浮かんでしまい、諏訪子は、加奈子が何かをするまでもなく、精神をすり減らしていた。

 

「そこ。」

 

狙いすました攻撃で、翻弄して最後の仕留めにかかる加奈子。最後の一発のつもりで御柱を的確に飛ばす。

 

だが、諏訪子という神は、そう簡単には終わらない。終わるわけにはいかないのだ。

 

──ここだ!ここしかない!

 

それに対して諏訪子は、迫ってくるオンバシラをまるで意に介していないかのごとく突っ込んだ。

 

オンバシラとぶつかってしまいそうになったギリギリのところで体の下から弾丸のように、土を放つことでオンバシラを抑えつける。

 

「もらったぁー!!」

 

八坂神奈子の眼前にまで迫り、鉄の輪で攻撃を行う。土着神であり、祟り神としての側面も持つ。神の中でも強い力を持っている諏訪子の一撃が、風雷の神たる八坂神奈子に放たれる。

だが、止められた。

 

「残念だったな、朽ちた輪で我が身を傷つけられるなどと思うなよ。」

 

止められた、それも素手でだ。

加奈子の言葉を耳にして、諏訪子は驚きを隠せない中、自らの鉄の輪を見やる。

 

「…うそ。」

 

朽ちていたのだ。諏訪の鉄の輪は朽ちていた。

先程から八坂神奈子はずっと能力の行使を行っていた。最後に逆転の一手を打ってくると確信していたから、その一手を潰すために『天候を操る能力』だと誤認させ、自らの持つ『乾を創造する能力』で、諏訪子の鉄の輪を侵し続けていたのだ。

 

「勝負あったな。」

 

勝敗はついた。武器を失った諏訪子では、加奈子に致命傷と言えるダメージを与えることはもはや叶わない。

逆に加奈子はいつでも諏訪子に致命傷を与えることができる。

 

「っまだ……」

 

諦めるわけにはいかない。

諦めていいわけがないんだ。

民のために、師のために、友のためにも

諦めるわけには…

 

その場に突如、居るはずのない者の声が放たれる。

 

「もう終わりだ諏訪子、上出来だった。と言っておこう。」

 

そこに突如として現れたのは、

 

 

最古にして最強の妖怪だった。

 





ミシャグジ様
 諏訪子の『坤を創造する程度の能力』で生成された土や砂などの地面がヘビの形をとったもの。として扱っています。

書くのをサボっていたわけではないんですよ
ルーミアが色々教えた上での戦いになりましたが、諏訪子が加奈子に勝つのは、相性的に思い浮かばず、このようになりました。

次回には、スサノオ君が頑張ってくれると思います。
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