つきましては更新速度維持の為に感想返信が疎らかか止まりますが、それでも皆さんのありがたいお言葉にやる気を貰ってますので、引続き多くの感想の程をお待ちしております。
皆様にはご理解の程、宜しくお願い致します。
ミネルバの食堂。
任務の合間の休息時間、そこには既にこの艦の「新しい風景」が馴染んでいた。
「少佐! さっきのシミュレーションの、あの宙返りからの背面撃ち! どうやったらあんなスムーズに移行できるんですか?」
「おーおー、ルナマリアちゃん。飯の時くらいは勘弁してくれよ。あれはMA乗りの癖みたいなもんでな、MSのAMBACだけに頼ると動きが単調になるんだよ」
「なるほど……! スラスター吹かしながら、あえてバランスを崩すんですね!」
キラキラした目で食いついてくるルナマリア・ホーク。
ムウ・ラ・フラガは苦笑しながらパスタをフォークに巻き付けていた。
彼女は素直だ。そして熱心だ。
かつての
その少し離れた席で、一人静かに栄養ドリンクを飲んでいるレイ・ザ・バレル。
「……レイ。お前のザク、反応速度の設定を少し弄ったろ? 左旋回の追従性がコンマ数秒遅れてるぞ。右が得意なのは分かるが、癖を読まれる」
ムウが声をかけると、レイは一瞬だけピクリと眉を動かし、無表情のまま振り返った。
「……はい。ご指摘の通りです。修正します」
「素直でよろしい。……ま、あんま根詰めんなよ」
「……失礼します」
レイは短く一礼して去っていく。
(……やりにくいねぇ、あいつは)
ムウは心の中でぼやく。
レイからは、あのラウ・ル・クルーゼと同じ気配がする。本人もそれを感じ取っているのか、ムウに対して明らかに壁を作っている。
だが、MSの操縦技術や戦術論に関しては、正しいことは正しいと認める柔軟さがある。
可愛げのない優等生だが、そこが逆に可愛くもある。
そして──問題児が一人。
「……チッ」
食堂の端で、端末を睨みつけているシン・アスカ。
画面に映っているのは、先ほどのムウが出したインパルスのシミュレーションデータだ。
自分よりも遥かに高いスコア。
それを超えようと、必死にデータを解析しているのだ。
ムウは食べ終わったトレーを持って、シンの席の向かいにドカッと座った。
「眉間に皺寄せてると、いい男が台無しだぜ? シン」
「……放っておいてください。アンタに言われたくありません」
シンは画面から目を離さずに吐き捨てる。
噛み付くような態度。まるで狂犬だ。
だが、その瞳の奥には焦りと、そして深い悲しみが見える。
「戦争を無くしたい、か」
ムウの呟きに、シンが顔を上げた。
「……悪いことですか」
「いいや。立派な動機だ。……だがな、それ『だけ』じゃ死ぬぜ」
「なっ……!?」
「お前さんの操縦は、怒りに任せて突っ走りすぎだ。『敵を倒せば戦争が終わる』って、それしか見てない。……だが戦争ってのはもっとドロドロしてて、甘くないんだよ」
ムウの言葉は、戦場を長く生き抜いてきた者だけの重みを持っていた。
シンは反論しようとして、言葉に詰まる。
(……脆いな)
ムウは内心で評価を下す。
シンは強い。だが、その強さは「憎しみ」という一本の柱で支えられている。それが折れた時、この少年は崩れ落ちてしまうだろう。
かつて面倒を見たキラ・ヤマトとは違う。
キラは民間人だった。戦いたくなくて、泣きながらストライクに乗っていた。
だからムウは、無理やり戦わせていることに負い目を感じていた。
だが、こいつらは違う。
シンも、レイも、ルナマリアも。
自分の意志で軍服を着て、銃を取ることを選んだ「兵士」だ。
だからこそ、甘やかす必要はない。軍人としての理屈で、叩き上げることができる。
「ま、俺のスコアを抜くつもりなら、まずはその肩の力を抜けよ。……視野が狭くなってんぞ、ボウズ」
「ボウズじゃありません!!」
「ハハッ、元気で結構!」
ムウは席を立ち、シンの頭をクシャクシャと撫でた。
シンの「やめろよ!」という抗議の声が響く。
世話の焼ける連中だ。
だが、悪くない。
この「エンデュミオンの鷹」が、もう一度空を飛ぶための巣としては、十分に騒がしくて温かい場所だ。
「……さて、鍛えてやりますかね」
ムウはニヤリと笑い、食堂を後にした。
その背中は、頼れる「兄貴」のそれだった。
◇◇◇
ミネルバは、あのウィンダム部隊がやって来たのは地上基地ではないかと言うアスランの提言と、ネオ・ロアノーク──ムウからもたらされた情報をもとに、インド洋近海で建設途中だった地球軍の秘密陸上基地を制圧・解放していた。
原作の歴史では、ここで強制労働させられていた人々の惨状を目の当たりにしたシン・アスカが激昂し、基地を跡形もなく破壊してしまう。
しかし、この世界では違った。冷静なアスランの指揮と、何より「ラクス・クライン」として人々の希望を一身に背負うミーアの存在が、シンを「破壊」ではなく「守護」へと繋ぎ止めた。
結果としてザフトは、スエズとカーペンタリアを結ぶ絶好の中継拠点として、この基地を無傷に近い状態で手に入れることに成功した。
それは、地上の補給線を維持する上で、棚からぼた餅以上の戦略的勝利であった。
そして、占領部隊の到着と共に、プラント本国から驚くべき「贈り物」がミネルバへ届けられた。
「……あれが、私の頼んだ新しい力ですわね」
MSデッキのタラップに立ち、ミーアは眼下に運び込まれる二機の機体を見つめていた。
一機は、プロヴィデンスの意匠を色濃く継承した重装甲機、プロヴィデンスザク。
そしてもう一機は、翼から溢れんばかりの光の粒子を予感させる異形のインパルス──デスティニーインパルスである。
「信じられん……。核動力だと? 条約違反どころの話じゃないぞ」
隣で絶句しているアスランに、ミーアは静かに微笑んだ。
本来、デスティニーインパルスはバッテリー駆動によるエネルギー不足と、多機能ゆえの機体構造の脆弱さから、わずか数分の稼働限界と空中分解のリスクを抱えた欠陥機に終わるはずの機体だった。
「……これが、デスティニーインパルス」
シンが呆然と見上げる先には、インパルスの面影を残しつつも、より巨大な翼と重武装を備えた機体が鎮座していた。
だが、今ここにあるのは「再設計」された別物だ。
FAITHの権限と未来知識を持つミーアが、議長に直接掛け合って最優先で開発させた「改良型」。
ハイパーデュートリオンエンジンを搭載してエネルギー問題を解決し、さらには空中分解を防ぐために分離・合体機構をあえて廃止し、限界まで強化されたフレームが使われている。
「シン、貴方のための機体ですわ。分離できなくなった代わりに、どんな機動にも耐えられる強靭な骨組みを与えました。……これなら、貴方の力を受け止めきれるはずです」
ミーアの言葉に、シンは震える手でその装甲に触れた。
そして隣には、もう一機の「核」を宿した機体。
『プロヴィデンスザク』。
外見こそザクウォーリアの意匠を継承しているが、その中身はハイパーデュートリオンによって駆動する怪物だ。
「レイ、貴方にはこのプロヴィデンスザクを。貴方の空間認識能力があれば、この機体は最強の盾となるでしょう」
「……はっ。議長の……いえ、ラクス様の御心のままに」
レイは淡々と応じたが、その視線はプロヴィデンスの意匠に吸い寄せられていた。かつてのクルーゼの力を、ザクという枠組みで制御し、昇華させた機体。
「そしてルナマリアさん。貴方は、シンの使っていたインパルスを引き継いでくださいな。貴方なら、インパルスの性能を最大限に引き出せるはずです」
「はい! ラクス様、ありがとうございます!」
ルナマリアは弾むような声で応えた。
これにより、ミネルバ隊の戦力は一変した。
アスランのセイバー。
シンのデスティニーインパルス。
レイのプロヴィデンスザク。
ルナマリアのインパルス。
そして、ミーア自身のプロヴィデンス。
かつての大戦の最終決戦時ですらあり得なかった、核動力機3機を中核に据えた史上最強の独立小隊。
「ヒュー……。嬢ちゃん、本気で世界をひっくり返すつもりだな」
後ろで見ていたムウが、呆れたように肩をすくめた。
ミーアは、羽織の裾を風になびかせながら、満足げに頷いた。
「当然ですわ。……死にたくありませんもの。大切な人たちを、死なせたくもありません」
彼女の瞳は、はるか先の空、やがて激突することになるであろう巨大な「運命」を見据えていた。
最強の剣と盾を手に入れたミーア・キャンベルの「生存戦略」。
物語は、もはや「Destiny」という名のレールを完全に踏み外し、未知の領域へと全速力で加速し始めた。
◇◇◇
マハムール基地。乾燥した熱風が吹き抜けるこの地は、地上のザフトにとってスエズ攻略の最前線拠点である。
重厚な装甲シャッターが開き、タラップを降りるミネルバの面々。出迎えた基地司令は、どこか緊張した面持ちで、タリア、アスラン、そして「ラクス・クライン」であるミーアに対して深々と敬礼した。
「よくぞおいでくださった、ミネルバ。本国の本気度は、こちらのリストからも重々承知しております。……なにしろ、一つの作戦に4人もの『FAITH』を投入するなど、前代未聞ですからな」
「4人……?」
タリアが眉をひそめる。
ここにいるのは、タリア自身、アスラン、そしてラクスの3人だ。もう一人は誰か──。
互いに視線を交わしたその時、格納庫の喧騒を割って、聞き慣れない、けれど陽気で自信に満ちた声が響いた。
「おいおい、そんなに堅苦しくしなさんな、司令官。俺たちも好きで威張ってるわけじゃないんだからさ」
そこに立っていたのは、かつて大戦を生き抜き、ハイネ隊を率いるエースパイロット、ハイネ・ヴェステンフルスだった。
「ハイネ・ヴェステンフルスだ。今回のスエズ攻略に合わせ、ミネルバへの編入を命じられた。……よろしく頼むぜ、艦長さん」
ハイネは軽く手を挙げてタリアに挨拶すると、最後にその視線をミーアへと向けた。
一瞬だけ、その鋭い瞳が値踏みするように彼女を射抜く。だが、すぐに彼は相好を崩し、完璧な礼節を持って頭を下げた。
「これはこれは、ラクス・クライン様。……まさか戦場でお会いできるとは。貴女のような方がおられるなら、俺たちの士気も天井知らずだ」
「……ご丁寧に、ありがとうございます。ハイネさん」
ミーアはラクスとして優雅に微笑みながら、内心で冷や汗を流していた。
(……来たわね、ハイネ。西川ボイスのイケメンエース!)
原作知識が警報を鳴らす。
ハイネ・ヴェステンフルス。腕は超一流、性格も良し、アスランの良き理解者となるはずの男。
けれど彼は、この後の戦いでステラのガイアガンダムに機体を真っ二つにされ、あっけなく戦死する運命を背負っている。
(ダメよ、死なせないわ。これだけの戦力を揃えたんだもの……ステラを助けて、ハイネも守る。それが、バグである私の仕事よ!)
ミーアは自分の襟元に光るFAITHのバッジをそっと指でなぞった。
「さて……これで役者は揃いましたわね。グラディス艦長、作戦会議を始めましょうか。時間は、あまり残されておりませんわ」
ミーアの凛とした言葉に、ハイネは面白そうに眉を上げた。
「ははっ、頼もしいね。……これなら、スエズどころか地球全部ひっくり返せそうだ」
アスラン、タリア、ハイネ。そしてミーア。
4人の「FAITH」という、本来の歴史ではあり得ない過剰なまでの戦力が集結したミネルバ。
運命の歯車が、マハムールの砂塵と共に、激しく、力強く回り始めた。
◇◇◇
マハムール基地のブリーフィング・ルーム。巨大なホログラム・テーブルには、難攻不落の要塞と化したガルナハン基地の立体マップが映し出されていた。
「……確認されている大型MAは、あのゲルズゲー1機だけでしょうか?」
ミーアは、凛とした「ラクス・クライン」の声で、基地司令に問いかけた。
「はい、ラクス様。護衛MSの部隊はそれなりの規模ですが、陽電子リフレクターを展開できるMAは現時点で一機のみです。……ですが、あの鉄壁の守りを突破できず、我々の部隊は煮え湯を飲まされ続けております」
司令の言葉を聞きながら、ミーアは脳内で勝利への計算式を組み上げる。
本来なら苦戦するはずのこの作戦も、今のミネルバの布陣──4人のFAITHと、一人の「不可能を可能にする男」が揃ったこの状況なら、もはやお釣りが来るほどの手堅い盤面だった。
「では、作戦を説明しますわ」
ミーアはホログラムの駒を動かしながら、優雅に、かつ的確に指示を飛ばしていく。
「まず、ミネルバが主砲タンホイザーを放ち、ゲルズゲーを誘い出します。敵は間違いなく陽電子リフレクターを展開して防ぐでしょう。……その瞬間がチャンスです。リフレクター作動時、凄まじいエネルギーの余波を嫌って、護衛MSはMAの傍を離れざるを得ません。孤立したMAを、アスランとシンの超高機動で撹乱します」
ミーアの指が、デスティニーインパルスとセイバーのアイコンを強調する。
「リフレクターは正面からのビームは防ぎますが、隙がないわけではありません。ハイネのグフ、あるいはデスティニーインパルスなら、リフレクターの懐に飛び込んで仕留めることが可能です。……最悪、強行突破が必要なら、私のプロヴィデンスかレイのザクが、ドラグーンのビームスパイクでリフレクターを突き破りますわ」
その圧倒的な攻撃能力の羅列に、基地の士官たちが息を呑む。
さらにミーアは、マップの端に隠された「古い坑道」を指し示した。
「そして、この坑道。ローエングリン砲台の裏側、丘の真下に通じているこのルートですが……ここを通る隠密作戦には、分離状態のインパルスが最適です。狭い通路をパーツ状態で通り抜け、裏側で合体・急襲する。……これをやり遂げられるのは、少佐。貴方しかいませんわ」
視線を向けられたムウ・ラ・フラガは、肩をすくめてニカッと笑った。
「へっ、とんだ大役だな。だが、バラバラになって穴蔵を這いずり回るなんて、いかにも『不可能を可能にする男』の出番ってわけだ。任せとけよ、お嬢ちゃん」
原作ではシンが担当したこの危険な任務を、ミーアはあえてムウに託した。歴戦のMA乗りであり、ストライクの換装思想を知り尽くした彼ならば、シミュレーター以上の精度でこのミッションを完遂できるという確信があったからだ。
「正面から盾を粉砕し、裏側から矛を叩き潰す二重作戦……。これなら、負ける要素はありませんわ」
ミーアが自信に満ちた笑みを浮かべると、部屋の空気は一気に高揚感に包まれた。
「シン、貴方はデスティニーインパルスの力、思う存分振るいなさい。レイ、貴方はドラグーンで敵を寄せ付けないで。アスラン、ハイネさん、全体を支えてください。……ルナマリアさんは、ミネルバの防空を。いいですわね?」
「「「了解!!」」」
4人のFAITHと、復活したエースが一つに束ねられる。
それは、ギルバート・デュランダルですら予測していなかった、歴史の強制力を捻じ曲げるほどの巨大な「暴力」だった。
「さあ、始めましょう。……悲劇の種は、今のうちに摘み取っておかなくてはなりませんもの」
ミーアは、薄紫の和服の裾を翻し、格納庫へと向かった。
陽電子砲の光が空を裂く。その後に待つのは、一方的なまでの「解放」の始まりだった。
◇◇◇
ミネルバのMSデッキは、マハムール基地から搬入された新たな「力」によって、異様な熱気に包まれていた。
「へぇ……こいつが噂の『グフイグナイテッド』か。随分と派手な色をぶっ込んできたな」
シミュレーターポッドから降り、汗を拭いながらムウ・ラ・フラガが顔を上げた。
彼の視線の先では、巨大なクレーンに吊るされたオレンジ色の最新鋭機が、堂々たる威容を誇ってハンガーに鎮座しようとしていた。
「ハハッ、目立ってナンボなのが俺の信条でね。……あんたが今回の作戦の『切り札』か?」
タラップを軽快に飛び降り、ムウに向かって歩いてきたのはハイネ・ヴェステンフルスだった。
燃えるようなオレンジの髪に、不敵で、けれど嫌味のない爽やかな笑み。彼の胸元には、ミーアやアスランと同じ「FAITH」の証が誇らしげに光っている。
「切り札、ねぇ。おっさんを捕まえて、買いかぶりすぎだぜ、お兄さん」
「謙遜しなさんな。さっきのシミュレーターのログ、横目で見させてもらったよ。……バラバラになったMSのパーツを、あの狭い坑道の中で、目視も困難な速度で通り抜けた。……ありゃあ、ただの軍人にできる芸当じゃない」
ハイネはムウの前に立つと、親しげに手を差し出した。
「ハイネ・ヴェステンフルスだ。よろしくな、不可能を可能にする少佐殿」
「ムウ・ラ・フラガだ。……俺の二つ名まで知ってるとは、ザフトの情報網も大したもんだ」
ムウがその手を握り返す。
掌から伝わるのは、互いに幾多の死線を潜り抜けてきた男だけが持つ、独特の「重み」だった。
「ラクス様……いや、あのお嬢ちゃんが言ってたぜ。この無茶な作戦を成功させられるのは、世界中でアンタ一人しかいないってな。……最初は何を夢見がちなことを言ってるんだと思ったが、今の動きを見せられちゃ納得だ」
ハイネが顎で指し示したのは、調整中のコアスプレンダー。
ムウは苦笑しながら、その最新鋭機のコアを見上げた。
「あのお嬢ちゃんには、どうにも逆らえない何かがあるんだよ。……俺みたいな連合の落ち武者に、いきなり最新鋭機を預けて『世界を救ってこい』なんて、本物のラクス嬢ちゃんでも言わねぇよ」
「ははっ、同感だ。俺もアスランのサポートだと思って来てみれば、あのラクス様が軍師さながらに戦術を説いてる。……面白いぜ、今回のミネルバは」
ハイネは自身の愛機、オレンジ色のグフを愛おしそうに見つめ、それからムウに視線を戻した。
「俺は外で暴れて、敵の目を引きつけておく。アンタは暗い穴倉を抜けて、あの忌々しい砲台をぶっ潰してくれ。……役割分担は完璧だ」
「ああ。……不慣れな機体だが、穴掘りくらいは完遂してみせるさ。不可能を可能にするのが、俺の唯一の特技だからな」
二人のベテランの視線がぶつかり、火花を散らす。
それは、これから始まる死闘を前にした、戦士たちの無言の誓いだった。
「……死ぬなよ、ムウ。アンタには聞きたい面白い話が山ほどありそうだ」
「そいつはこっちの台詞だ、ハイネ。……その派手な機体、流れ弾に当たりやすいんだから気をつけろよ」
軽口を叩き合い、二人のエースはそれぞれの機体へと向かって歩き出した。
連合の「鷹」と、プラントの「英雄」。
本来なら決して交わることのなかった二つの運命が、ミーアという「バグ」によって引き寄せられ、最強の盾と矛となって重なり合おうとしていた。
ミネルバの格納庫に、エンジンの始動音が共鳴し始める。
ガルナハン、陽電子砲ローエングリン。
その「終わり」を告げるための準備は、今、完全に整った。