宇宙暦797年8月 自由惑星同盟史上において初めての内乱はヤン・ウェンリー大将率いる第十三艦隊の活躍により救国軍事会議を自称する叛乱勢力は唯一の宇宙戦力を喪い、ヤン艦隊はバーラト星系に到達し内乱の終結が目前に迫った頃イゼルローン回廊帝国方面宙域において哨戒艦が一隻の長距離小型艇を捕捉した。
「帝国軍の小型艇です!数は一隻のみです!」
同盟軍駆逐艦ヴォーグのスクリーンに帝国軍が使用する長距離小型艇が映し出された
「主砲開け!何時でも撃てる用意しろ!通信士、小型艇に停船を命じろ!」
「ハッ!帝国軍小型艇に告ぐ!!こちらは同盟軍駆逐艦ヴォーグである。動力を停止し、停船せよ!!しからざれば攻撃す!繰り返す………」
「また使者ですかね?」
副長が怪訝そうな顔で呟いた。
「さあな、敵の考える事など判らんよ。取り敢えず駐留艦隊がいない今敵が大挙して押し寄せて来ない事を祈るよ」
艦長はベレー帽を被り直した。
「小型艇より返信が来ました!読みます。『我に交戦の意思無し、貴国に亡命を申し入れる者なり!』」
「亡命者だと!?」
「帝国も内乱が佳境だとフェザーン経由で伝わってますが……貴族ですかね?」
「そうかも知れんが……何れにしても追い返す訳にもいかん、亡命者にも人権はあるからな……向こうに機関を停止して通信スクリーンを開くよう伝えろ!それと副長、臨検隊も編成しろ!」
「ハッ!」
――― イゼルローン要塞司令部 ―――
「……ッ!?キャゼルヌ少将!帝国方面を哨戒中の駆逐艦ヴォーグより緊急通信です!!」
「どうした!?帝国軍の艦隊が攻めてきたのか!?」
「いえ!どうやら帝国からの亡命者と接触した模様です!至急イゼルローンに帰還するとの事です!」
「亡命!?確かにブラウンシュヴァイク公等の敗色は濃厚だとは聞いてるが……ヴォーグの艦長を呼び出せるか!?」
「ハッ!……通信を繋げます」
要塞司令部の通信スクリーンにヴォーグの艦長が映し出された
『ヴォーグ艦長のゴードン少佐であります』
「要塞司令官代理のキャゼルヌだ。ゴードン少佐、件の亡命者は今どうしている?」
『ハッ!本艦に移乗し、個室で休んでおります。お会いになりますか?』
「そうだな……少佐、悪いが連れてきてくれないか?帝国の情報も知りたい」
『承知しました……あの、閣下。驚かないで下さいよ?』
「何だ?大貴族の大物でも亡命したのか?安心しろ、俺は今回の内乱騒ぎのせいで驚き疲れたんだ。今更どんな相手だろうが驚かんよ」
『はぁ……そうだと良いのですか…』
ゴードン少佐は少し席を外してから少ししてから件の亡命者を連れてきた
『お待たせしました。こちらの方です』
ゴードン少佐が脇に寄り変わりに帝国軍の軍服を着た大男が敬礼し名乗った
『お初にお目にかかる。小官は銀河帝国軍、装甲擲弾兵総監オフレッサー上級大将である』
この時要塞司令部に詰めていた兵士達の証言では珍しくキャゼルヌがコーヒーを零し、書類を駄目にしたと云う……