宇宙暦797年 帝国暦488年十月、自由惑星同盟に亡命したオフレッサーは中将待遇で迎えられ、現在ユリアン・ミンツ軍曹に同盟の歴史や言語のレクチャーを受けていた。
「……これで間違っていないか、軍曹?」
オフレッサーはユリアンから出された同盟語の例文の解答を渡した。
「……はい、問題ありません。それにしても中将閣下は帝国訛りですが同盟語を話せますね?」
ユリアンは感嘆の声でオフレッサーに聞いた。
「何、儂も伊達に何年も装甲擲弾兵をしとらん。互いの言語が聞こえる距離で互いに罵る言葉を聞きながらトマホークを振り回せば嫌でも覚える物だ。儂からすれば軍曹の流暢な帝国語には驚いたぞ。その年で大した物だが、何処で習ったんだ?」
「僕……小官の場合だとハイスクールの授業で日常会話程度ですが習いました」
オフレッサーはその言葉に驚いた。
「……士官学校では無く一般の学校でか?」
「はい、カリキュラムに組み込まれてます。勿論個人差もありますし、小官の場合は帝国語を身近に教えてくれる人が沢山いますから」
「ふむ……ローゼンリッターか、確かにあ奴らならネイティブな帝国語の教材にうってつけだな」
「閣下も最近よく連隊の訓練に付き合ってますが、閣下が連隊の隊員達の屍の山を築いているともっぱらの噂ですよ」
ユリアンは苦笑した。
「フン、儂からすればあ奴らはまだまだ鍛錬が足りんのだ。見込みがあるのは連隊長のシェーンコップ少将以外ならリンツ、ブルームハルト……それと軍曹、貴様もだな」
「小官も……ですか?」
ユリアンはその言葉に驚いた。
「あぁ、荒削りだが動きが良い、軍曹が帝国軍人だったなら儂自ら装甲擲弾兵に誘っていただろうな」
オフレッサーは獰猛な顔で笑った。
「それは光栄ですが……小官はヤン提督のお役に立ちたいので……」
「ふむ……ヤン提督か、帝国軍にいた頃は余り注目していなかったが……」
「帝国軍ではヤン提督はどう評価されていたんですか?」
「評価か……」
ユリアンの質問にオフレッサーは顎を撫でてどう答えるか迷っていたが正直に答えた。
「儂の主観だが……最初はアスターテ会戦の後で当時の宇宙艦隊司令長官のミュッケンベルガー元帥から初めて名前を聞いたな、あの時は金髪の小僧の完勝を阻み、エルラッハ提督を戦死に追い込んだ将としか見ていなかったが……まさかこのイゼルローン要塞を陥落させるとは思いもしなかった。しかも半個艦隊で味方の損失ゼロ、統帥本部は大混乱で情報部は慌ててヤン提督の情報を洗い直していたぞ」
「そうですか……」
「……正直なところ、最初は軍人らしからぬとは思ってはいたが……艦隊司令官特有の陸戦隊軽視は無く寧ろ重要視しているのは好ましく思う」
「閣下……」
「さて……休憩は終わりだ。次の課題を出してくれ軍曹」