英雄王、ダンジョンへ   作:Castella

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書きたくて衝動的に書いてしまいました。
よろしくお願いします。


白い兎と英雄王

 

剣の荒野が消失する。

宙より駆けた夫婦剣により、黄金の王は切り裂かれた。

その心にあったのは、先ほどまでの侮蔑も嘲りも嘲笑も押し殺したもの。

 

 

「……魔力切れとはくだらん末路だ」

 

 

そう言いながら、片腕を失い肩口から斜めに切り裂かれた王はその贋作者──衛宮士郎を見据える。

魔力の供給が切れ、地に膝をつける自身が偽物だと侮った男を。

そして、認めがたかった現実を自身の口から発する。

 

 

「お前の勝ちだ……満足して死ね、贋作者(フェイカー)

 

 

そう言葉にした王は、黄金の波から剣を露わにし、衛宮士郎へ向けた。

暫しの沈黙が場を支配する。

 

しかし、斬り飛ばされた腕、その黒く陰った場所からある〝穴〟が出現する。

王は驚愕する。その穴に潜む出来損ないの短慮に。

 

 

「なにっ!?………この俺を、取り込んだところで!」

 

 

穴は依然として広がり、王を取り込もうとしている。

 

 

「待て!?」

 

 

それを見ていた衛宮士郎は、呆然としつつもある言葉を呟く。

先ほどからずっと空にあったものの名前、名称を。

 

 

「聖杯の……穴!?」

 

 

そして、言葉を発してすぐに鎖が彼の腕に巻き付く。

唐突に引力に引っ張られ、強制的に立ち上がらされた士郎は、繋がった鎖の先にあるものを見た。

 

 

「あの出来損ないめ!!同じ英霊(サーヴァント)では、核にならんとさえ分からぬのか!!」

 

 

王は生きていた。

天の鎖を士郎の手に巻きつけ、穴から離脱しようと試みていた。

それを見た士郎は言う。

 

 

「くそっ!?道連れにする気か!?」

 

 

しかし、王はその言葉が我慢ならなかったのか、それともただ否定したかったのか、声を荒げて言った。

 

 

「戯け!!死ぬつもりなど毛頭ないわ!!踏みとどまれ下郎!俺がその場に戻るまでな!!!」

 

 

その言葉に、士郎は選択した。

 

 

「ふざけるな……!こうなったら、腕をちぎってでも──!!」

 

 

しかし、それを実行する前にある声が聞こえてきた。

 

 

「ふん……お前の勝手だが、その前に右に避けろ」

 

 

その声は、消滅したはずの────

赤い軌跡が宙を駆けて。

 

 

「貴様!?」

 

 

王の脳天を貫いた。

意識が失われそうになりながら、黄金の王は呆然と呟いた。

 

 

「アー……チャー……」

 

 

そうして、彼は穴に落ちる。

第四次聖杯戦争に召喚され、この世に試練を与えようとした最古の英雄王────ギルガメッシュは消滅した。

 

 

─────────────────────────

 

 

はず、だった。

 

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

 

ある少年が、その人物を見つけた。

裏路地を背にし、立ったまま眠っているような人を見つけた優しいウサギは声を掛けた。

その声で目を覚ましたようで、その人物───ギルガメッシュは目を開けた。

 

 

「……なに?ここは……」

 

 

少しの間、周囲を見渡し状況を把握しようとする。

そして、わかったことがある。

 

 

(……柳洞寺では……ない?)

 

 

先ほどまで居た場所とは似ても似つかない町並み、往来を歩く人々の容貌。

その全てが、まるで〝異世界〟のようだった。

そう考えていると、隣から先ほど声を掛けてきたウサギ──のような少年がもう一度声を掛けた。

 

 

「あ、あの」

 

 

「喧しいわ」

 

 

「ええ!?ご、ごめんなさい!!」

 

 

咄嗟にその場から飛び退いて尻餅を付き、謝罪する少年。

すこし状況把握に手間取っていたが、その言葉で現実に引き戻される。

そして、ようやく隣の少年を認識した。

 

 

「なんだ貴様は?」

 

 

「はっはい!ぼ、僕はベル・クラネルです!」

 

 

謎の威圧感と共に、何かを感じとったのか少年──ベル・クラネルは自らの名前を名乗った。

直後にその威圧感はなんだったのかと考えようとするが、ギルガメッシュが動いたことでその思考は打ち切られた。

ギルガメッシュが寄りかかっていた壁から背を離し、ベルの元へ歩を進める。

なぜかベルには、その姿が自身の憧れているものと重なっているような気がした。

 

 

「そこな雑種よ」

 

 

「は、はい」

 

 

ギルガメッシュはただ立っているだけなのに、ベルはまるで魅了されているような感覚に陥っていた。

全身から震えるような、一瞬でこの人物が只者ではないと思ってしまうようなものだった。

 

 

「貴様に(オレ)の案内をする栄誉を与えてやろう、謹んで拝命するがいい」

 

 

「え、えっと……その、僕の名前はベル・クラネ───」

 

 

「雑種は雑種に過ぎん、貴様程度がこの(オレ)に名を呼べとでも言うのか?」

 

 

威圧感が凄まじい。

ダンジョンのモンスターなど比べ物にならないその圧倒的な覇気。

覇者にのみ許される立ち姿、雰囲気、その傲慢さ。

そしてベル自身の幸運により感じ取ったのかもしれない。

その全てがベルに確信させる、これ────

 

 

(多分対応間違えたらとんでもないことになる……!?)

 

 

「アッハイワカリマシタ……」

 

 

それからベルは必死だった。

自身が知る限りの全ての情報、この世界の知識を出し惜しむことなく吐き出す。

なぜかその内心は、決戦に赴くような決心に満ちていた。

裏路地から出て行くギルガメッシュの後を、必死になってベルは追った。

 

それから、さまざまな場所を案内した。

 

 

「不味いな」

「なっ!?なんだとテメェ!!」

「すみません!!すみません!!」

「雑種の小僧、貴様も食べてみろ」

「いやありがたいんですけど今は待ってください!?」

 

 

露店の案内をして飯がまずいと言って店主をキレさせたギルガメッシュを宥めたり。

 

 

「くだらんな」

「え………」

(オレ)に語った者どもよりも数段劣る、何より話がつまらん」

 

 

語り部の語る物語をくだらんと言ってスルーするギルガメッシュに少し残念に思ったり。

 

 

「なんだあれは………?いや、まさか」

「あ、神様は知っていたんですね───」

「…………」

「ちょっ!?何やってるんですか!?と言うかその金色のやつなんですか!?」

 

 

神様がいることを知ったギルガメッシュが不機嫌になったのでご機嫌取りをしたり。

 

 

ダンジョンに案内した時に「ほう………」と意味深に呟いていたギルガメッシュを見て、不思議に思ったり。

よくも悪くも、退屈など無縁な一日だった。

 

 

「これで全てか………(オレ)を満足させるには程遠い杜撰な案内だったが、雑種に期待するだけ無駄だったか」

 

 

あんまりな言い方だったが、それを気にする余裕はベルにはなく、ようやく終わったと言う感覚の方が大きかった。

緊張のあまり案内の内容をほとんど覚えていないベルだったが、言いたい事があったのか突然ギルガメッシュに向き直った。

その行動にギルガメッシュは全く興味を示さず、ダンジョンの方向を見ていた。

そして、ベルは言った。

 

 

「あの………ありがとうございました」

 

 

「なに?」

 

 

そのあまりの頓珍漢な発言に、ギルガメッシュはようやくベルの方を見た。

ベルの顔は、疲れを多分に含んでいるものの、どこか嬉しそうだった。

さすがのギルガメッシュも怪訝に思ったのだろう、少し聞き返してしまっていた。

何せ側から見れば、青年が少年をこき使い案内をさせている構図だ。これのどこに感謝する要素があると言うのか。

しかし、その答えはベルによってすぐに判明した。

 

 

「こんなに長く誰かと一緒に街を回れるなんて思ってなくて………なんだか、おじいちゃんと街に行った時を思い出したって言うか、いつか神様ともこんなふうに街を歩いていみたいって思えたことが嬉しかったので」

 

 

「ありがとうございました」

 

 

それを聞いたギルガメッシュは、本当に彼にしては珍しくキョトンとした顔をした。

そして返答がなかったため、怒らせてしまったのかと不安になったベルが急いで謝ろうとした時。

ギルガメッシュが唐突に笑い出す。

 

 

「フハハハハハハハハハ!!貴様、正気か!?この(オレ)に感謝だと?!まさか貴様は道化か!!」

 

 

何が面白かったのかわからないが、笑い出すギルガメッシュにベルは怒っていなかったと胸を撫で下ろした。

それはそれとして困惑は晴れなかったが。

実際、ベルの疑問は正しかった。誰だって感謝して笑い出されたら困惑するだろう。

それと同時にギルガメッシュは、この底抜けのお人好しに興味を持った。

その魂の性質もそうだが、〝その目〟で見て初めてわかったその特殊な素養にも。

 

故に、人類最古の王は選定に出る。

 

 

「貴様、名は何という?」

 

 

「え、えっと………ベル・クラネルです」

 

 

「さっき名乗った気がするけど………」と小声で口にするが、それを聴こえているのか聞こえていないのかギルガメッシュは全スルーした。

そしてこれから、少年にとっての試練が始まる。

少年の夢が本物になるかどうか、その試練が。

 

 

「ベル・クラネル、貴様の素養と道化に免じて今回のことは不問とする。そして───」

 

 

「貴様に興味が湧いた。その性根をどこまで貫けるか、見せてみるがいい」

 

 

そう言うとギルガメッシュは、ベルの向く方向とは反対側へ向け歩き出す。

ベルは言葉の意味がわからず少し呆然としていたが、すぐに復活しギルガメッシュに言葉を発する。

 

 

「ど、どこに行くんですか?」

 

 

「決まっているだろう、貴様の根城だ」

 

 

「ええ!?」

 

 

ベルが困惑するのも無理はない。

突然何かの琴線に触れたのかと思ったら、家に案内しろと迫ってきたのだ。

当然である。

むしろなんだこいつといまだにならないベルの方がどうかしている。

そして今思い浮かんだ疑問を、ギルガメッシュにぶつける。

 

 

「あの〜、ちなみに行く宛とかは………?」

 

 

「なにをしている、早く案内をしろ」

 

 

(多分ないですよね〜〜、だんだんこの人の事がわかるようになってきた気がする………)

 

 

そんなこんなで、ベルは流されるままにホームへ案内することになった。

思えばこれが、ベル・クラネルの物語の始まりだったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

これは、ただの物語にあらず。

 

これは、ただの英雄譚にあらず。

 

これは、人類最古の英雄王と最速の英雄候補が織りなす、異界が交わる英雄譚である。

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとう御座います。
駄文でしたが気に入っていただけたら嬉しいです。
「こんなのギルガメッシュじゃない!!」と言う方もいらっしゃると思いますが、所詮は二次創作と思っていただければ幸いです。
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