「ボクは認めないぞ〜〜!!!」
そんな声がオラリオの夜空に響く。
近所迷惑になるほどの大声だが、それを向けられた者は意に介さない。
それどころか全く興味すらないと言わんばかりに無視してコロッケ───のようなものであるじゃが丸くんをオンボロと言っていいソファに座って食べていた。
その行為にますます不満を募らせていく声の主である少女。
それに対して白髪赤目の少年が言う。
「か、
「キミがお節介で連れてきちゃった以外の何があるんだい!!ベル君!?」
そう言われてすごすごと引き下がった少年───ベル・クラネルの瞳は不安に揺れている。
その目線の先は神様と呼ばれた少女と自分が連れてきた人物だ。
ここまでのやり取りを経てようやくその人物が口を開く。
「………喧しい女神だな、これが貴様の主神か?ベル・クラネル」
もろに嫌そうな顔をしながらその人物───ギルガメッシュは言った。
彼の元来の神嫌いのせいか、それとも単純にうるさいのが嫌なのかわからないが辛辣である。
いずれにせよ、その女神───ヘスティアからの印象は良くないであろうことは確かだ。
言われっぱなしが気に食わなかったのか、炉の女神は声を上げる。
「これとはなんだこれとは!!本当に失礼な子だな〜!!」
「それが居候しようとする奴の態度か〜!!」と怒るがあまり迫力はない。
対してギルガメッシュは傲慢な態度を崩さず、今度はこうも言ってきた。
「ベル・クラネル、酒を持ってくるがいい。とびきりの物をだ」
「え“………そんなのありましたっけ」
後半小声でそう聞くベルに、ヘスティアはそろそろ我慢の限界だと言うようにワナワナと震えていた。
ベルを駒使いしようとしているのが一つ。自分を粗雑に扱う事が一つ。当然の権利のように酒を要求した事が一つ。
そして空気を読むなんて言葉、類似語すら辞書にないこの王が言った言葉がトドメとなった。
「足を運んで来てみれば、このようなボロ小屋に案内されるとは思わなかったな」
プッチン。
「だああああああああ!!もうわかった戦争だー!!!」
「神様落ち着いて〜!?」
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「はあ……はあ……はあ……わかったかい?キミは居候、つまり僕たちの方が立場が上ってことさ!」
「くだらんな、この
「まだ言うか!」
言い合いは白熱───と言うよりヘスティアが一方的に言っていただけだったが───し、両者一歩も譲らない戦いとなっていた。
しかしそろそろヘスティアの体力が限界に近くなってきた。
故にヘスティアは切り札を切ろうとする。
「そんなに言うなら出ていってもらっても────」
「待ってください神様!」
突如割って入った声があった。
ギルガメッシュもその声には反応を示し、そちらを向く。
割って入ってきたのはベルだった。
ヘスティアは驚きながら耳を傾けた。
「確かにこの人は態度が良くないかもしれませんけど、ここで追い出しちゃったら行く宛がないみたいなんです」
「………それで?」
聞くだけ聞こうと思ったのか、ヘスティアは続きを促した。
まあこの態度は追い出されて当然だと思うのも仕方ないが。
「もしここで追い出しちゃったらきっと………僕は後悔すると思うんです。だからお願いします!どうかこの人を置いてあげてくれませんか?」
「…………」
その言葉に、ヘスティアは長考する。
確かにこのまま放り出せば、最悪餓死してしまうかもしれない。
しかしこの態度の青年を置いておくのは精神的な意味でもよくない。
何よりつけ上がってくるかもしれない。
「………はあ、仕方ない」
しかし、ヘスティアは神々の中でも屈指の善神である。
飢え死にするかもしれないと言う可能性がある中で、放り出すことはできなかった。
「!!神様!」
「ただし!!」
だが、タダで終わるほど神は甘くはない。
こちらも条件を提示することにした。
「キミにもファミリアに貢献してもらうよ」
「ほう」
そうヘスティアが言うと、ギルガメッシュは雰囲気を変え起き上がった。
その雰囲気に少し怯みそうになるヘスティアだが、ここだけは譲れないと言わんばかりに奮起させる。
しかしその前に、ギルガメッシュの口からある言葉が紡がれる。
「神がこの
その言葉にヘスティアは少し驚く。
ギルガメッシュが聞く気になったからではない。
神への敬いが全くなかったからだ。
いや、正確に言えばそれは先ほどからわかっていた。しかし神を〝明らかに下に見ている〟ことは今初めて知った。
その事実に対応を誤れば不味いという意識が何故か湧き上がってきた。
「………いや、やっぱりいいや」
しかし、ヘスティアは質問そのものを変えた。
何かこのまま進めては不味いと思ったのか、それともただの気分か。
恐らくは前者だろうが、それは今は置いておく。
「聞くのは一つだけだよ」
「いいだろう、口にするがよい」
そしてヘスティアは、自分が殺されそうになっても譲れない一点を言い出した。
「あの子の………ベル君の味方でいてくれるかい?」
その質問にギルガメッシュは──────
愉快そうに笑みを深めた。
「
ギルガメッシュの紅い瞳とヘスティアの蒼眼が重なる。
そう言ったギルガメッシュは、初めてヘスティアを見た気がした。
その感覚に、ヘスティアはある結論を見出す。
(もしかして、さっきまでの態度はボクを試していた?)
恐らくはベルの主神に相応しいかどうか、それを確かめていたのだろう。
わざわざ喧嘩を売るような姿勢だったのもそのためなのか。
いや多分あれは素もあるのだろうなと思い直した。
「貴様はどうやら他の神とは違うらしい、故に協力してやろう」
「ベル・クラネルという喜劇のために………な」
それを聞き、ヘスティアは言う。
「あの子に何を見出したのか知らないけど、無理させるのは許さないからね」
そう釘を刺した。
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日が昇る。
暗く塗りつぶされた空に、輝く赤色が加わる。
その色はドンドンと広がり暗い空を塗りつぶして行く。
そして、この時間帯に廃教会から出て行く影があった。
「王様は今日も散歩ですか?」
ベルとギルガメッシュだ。
実のところ先ほどのやり取りから数日が経過しており、ギルガメッシュがいる生活にも慣れてきた頃だ。
この数日間で変わったことと言えば。
『うう〜、やっぱりお金が貯まらないな〜』
『貴様、何をしている』
『キミかい?ボクは今貯金を確認しているんだ。わかったらあっちに行っててくれ』
『………やはり見窄らしいな』
『なんだと〜!?この一ヶ月の努力をよくも!!』
『少し待っているがいい』
と、こんなやり取りをした後大金を持ち帰ってきたギルガメッシュにヘスティアは頭が上がらなくなってしまったようで。
土下座で使わせてくださいと懇願していた。
『なんでもするから使わしてくれ〜!!』
『ええい!鬱陶しいわ貴様!!それでも神か!!』
『神ってだけじゃお腹は膨れないんだよ〜!!』
と言うようなやり取りがあったとかなかったとか。
そのやり取りを終え、共同で使うようになった金で生活を繋いでいた。
それは置いておいて、ベルがギルガメッシュに声をかけた場面へ戻る。
「そうさな、少しの物見遊山だ。しばし留守にするぞ」
「どのぐらいで帰ってくるんですか?」
「一日あれば事足りる」
それを聞き、ベルは「わかりました」と言いダンジョンへ向かって行った。
それと同時にギルガメッシュも歩き出した。
オラリオの散策という名の観察だ。
今回は中途半端な場所で終わってしまいすみません、次は形にしておきます。