キドカワイレブン!木戸川清修のヴィクトリーロード! 作:工帝 アザレア
スプリングカップ関東予選決勝。
木戸川清修中 VS 雷門中。
観客席は満員だった。
全国最強の絶対王者。
雷門中。
そして今大会最大のダークホース。
木戸川清修中。
誰もが注目していた。
試合開始のホイッスルが鳴る。
先に動いたのは木戸川だった。
「行くぞォ!!」
烈刃が飛び出す。
開始早々、強引な突破を仕掛けてどんどんボールを前線へと押し上げていき、そのままシュート体勢に入ろうとした。
だが。
「遅い…!」
雷門DF、紫雨雄介が割り込む。
「コイルアッパー…!」
強大な電磁力を注ぎ込むことでドリブラーごと高速回転に巻き込む必殺技でボールを奪われる。
「なっ!?」
烈刃が目を見開く。
今のタイミングなら抜けたはずだった。
次の瞬間。
雷門のカウンターが始まる。
ボールは三本。
たった三本のパスで木戸川陣内へ到達する。
「戻れ!!」
湊が叫ぶ。
しかし、既に遅い。
雷門FW、嵐大佑はシュート体制に入っていた。
「バハムートクラッシュ!!」
轟音。
咄嗟に剣崎が飛ぶ。
だが弾き切れない。
ボールはポストへ直撃し、辛うじて外れる。
「今ので入ってねぇのかよ……」
栄塚が青ざめる。
「いや」
玲奈が首を振る。
「今のは向こうのミス」
「次は決めてくる」
嫌な汗が流れる。
◇
十分経過。
木戸川も決して押されている訳ではなかった。
湊が組み立てる。
玲奈が崩す。
烈刃が仕掛ける。
何度もゴールへ迫る。
だが。
「ゴッドハンドタイガー!!」
どんなに強力なシュートであろうと、雷門中のGK、暖冬屋が止める。
「チッ……!これでも入らねぇのか…!」
烈刃が舌打ちする。
今ので入ったと思った。
だが止められた。
◇
さらに五分後。
今度は玲奈が仕掛ける。
「ディバインアロー!!」
シュートの矢が飛ぶ。
だが。
「ゴッドハンドタイガー!!」
また止まる。
雷門は焦らない。
無理に攻めない。
無理に奪わない。
ただ。
確実に試合を支配していた。
パス一本。
トラップ一つ。
ポジション取り。
その全てが洗練されている。
王者のサッカー。
それがそこにあった。
◇
二十五分。
ついに均衡が崩れる。
雷門MF、星村ナオが突破をしかける。
木戸川DFを一人かわす。
二人かわす。
三人目。
湊が止めようとした。
だが。
「っ!」
一歩遅い。
攻め上がっていた雷門キャプテン、月影蓮にパスが通る。
「来るぞ!!」
誰かが叫ぶ。
しかし。
遅かった。
「バハムートクラッシュ!!」
黒き龍が咆哮し、雷光が炸裂する。
剣崎が飛び、シュートを正面から受け止める。
だが。
「ぐっ……!!」
押し切られる。
ゴール。
1-0。
歓声。
雷門ベンチは騒がない。
当然のように戻っていく。
まるで。
点を取ることが当たり前であるかのように。
◇
「これが……」
「絶対王者、雷門中……」
だが。
木戸川は折れなかった。
「まだだ」
木戸川清修のキャプテン、湊が立ち上がる。
「まだ終わってない…!!」
「やるぞ…!サッカー…!」
「は?」
「
烈刃が笑う。
「ようやく面白くなってきた」
西垣も腕を組んだまま言う。
「見せてみろ」
「お前らがここまで積み上げてきたもんをな」
中盤でボールを奪ったのは湊だった。
「スパイラルドロー!!」
フィールドに巻き起こる螺旋。
雷門MFが吹き飛ばされる。
ボール奪取。
「繋ぐぞ!!」
湊が叫ぶ。
玲奈が反応した。
「任せろ!!」
飛び出す。
「スピニングアッパー!!」
玲奈の放ったボールは超強力なバックスピンで猛烈な勢いで相手を吹き飛ばす。
スタンドがざわつく。
「速い!」
「止まらねぇ!」
玲奈は迷わず前へ送る。
「烈刃!!」
「あぁ!!」
牙道烈刃。
木戸川最強のストライカー。
ボールを受けた瞬間。
剣のオーラが噴き上がる。
「オーガブレード!!」
漆黒の刃が一直線に雷門ゴールへ突き刺さる。
だが。
「ゴッドハンドタイガー!!」
防がれる。
しかし。
初めてだった。
暖冬屋の手の中に収まらない。
ボールが大きく弾かれる。
「セカンドボール!!!」
誰が叫んだか分からない。
だが全員が走った。
栄塚。
「アサルトショット!!」
弾かれる。
闇野。
「ダークトルネード!!」
弾かれる。
風藍。
「ディメンションストーム!!」
止まらない。
岸眞。
「ガンマストライク!!」
さらに威力が上がる。
暖冬屋の腕が震える。
「ぐっ……!!」
そして。
誰よりも早く飛び込んだ一年生。
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
亜風炉天音。
「ゴッドウインド!!!」
チェインは五連。
だがまだ終わらない。
「玲奈ァ!!」
湊が叫ぶ。
「任せなさい!!」
紅星玲奈が跳ぶ。
2つに分裂させたボールを両足で蹴り出し、再び1つに融合させて威力を増幅させる必要シュート。
「ダブルショット!!!」
遥か未来。
化身を操る少女の代名詞。
六連。
暖冬屋の足が後退する。
芝が削れる。
「まだだァァァァ!!」
牙道烈刃。
「バイシクルソード!!!」
デスソードを応用した破壊の一撃。
七連。
観客席が総立ちになる。
「押してる……!?」
「雷門を押してるぞ!!」
そして。最後。
ボールはキャプテンへ渡った。
誰よりも走り
誰よりも繋ぎ。
誰よりも仲間を信じた男。
一ノ瀬湊。
「嵐・竜巻・ハリケーン!!!」
それは。
彼の師匠が得意とした必殺技。
そして。
木戸川清修の想いを乗せた、八連続のチェインシュートだった。
爆風。轟音。
一直線。
そして。
パキッ。
虎の腕が砕ける。
「なっ……!?」
暖冬屋が目を見開く。
「ゴッドハンドタイガーが……!」
次の瞬間。
ゴール。
1-1。
スタジアムが揺れた。
◇
「入ったぁぁぁぁぁぁ!!」
「雷門から点取ったぞ!!」
「嘘だろ!!」
「公式戦無失点の暖冬屋から!?」
観客席が大混乱になる。
◇
だが。
雷門ベンチ。
監督が静かに言った。
「ハル」
その一言。
一人の少年が顔を上げた。
今までベンチに座っていただけの選手。
円堂ハル。
怪物は静かに立ち上がる。
ユニフォームを掴む。
その瞬間。
雷門の空気が変わった。
木戸川はまだ知らない。
自分たちが今。
本当の怪物を呼び起こしてしまったことを。