キドカワイレブン!木戸川清修のヴィクトリーロード!   作:工帝 アザレア

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第9話 絶対王者の壁

 

 スプリングカップ関東予選決勝。

 木戸川清修中 VS 雷門中。

 観客席は満員だった。

 

 全国最強の絶対王者。

 雷門中。

 

 そして今大会最大のダークホース。

 木戸川清修中。

 

 誰もが注目していた。

 

 試合開始のホイッスルが鳴る。

 先に動いたのは木戸川だった。

 

「行くぞォ!!」

 

 烈刃が飛び出す。

 

 開始早々、強引な突破を仕掛けてどんどんボールを前線へと押し上げていき、そのままシュート体勢に入ろうとした。

 

 だが。

 

「遅い…!」

 

 雷門DF、紫雨雄介が割り込む。

 

「コイルアッパー…!」

 

 強大な電磁力を注ぎ込むことでドリブラーごと高速回転に巻き込む必殺技でボールを奪われる。

 

「なっ!?」

 

 烈刃が目を見開く。

 今のタイミングなら抜けたはずだった。

 

 次の瞬間。

 雷門のカウンターが始まる。

 

 ボールは三本。

 たった三本のパスで木戸川陣内へ到達する。

 

「戻れ!!」

 

 湊が叫ぶ。

 

 しかし、既に遅い。

 雷門FW、嵐大佑はシュート体制に入っていた。

 

「バハムートクラッシュ!!」

 

 轟音。

 咄嗟に剣崎が飛ぶ。

 

 だが弾き切れない。

 ボールはポストへ直撃し、辛うじて外れる。

 

「今ので入ってねぇのかよ……」

 

 栄塚が青ざめる。

 

「いや」

 

 玲奈が首を振る。

 

「今のは向こうのミス」

 

「次は決めてくる」

 

 嫌な汗が流れる。

 

 

 十分経過。

 木戸川も決して押されている訳ではなかった。

 

 湊が組み立てる。

 玲奈が崩す。

 烈刃が仕掛ける。

 

 何度もゴールへ迫る。

 だが。

 

「ゴッドハンドタイガー!!」

 

 どんなに強力なシュートであろうと、雷門中のGK、暖冬屋が止める。

 

「チッ……!これでも入らねぇのか…!」

 

 烈刃が舌打ちする。

 今ので入ったと思った。

 

 だが止められた。

 

 

 さらに五分後。

 今度は玲奈が仕掛ける。

 

「ディバインアロー!!」

 

 シュートの矢が飛ぶ。

 だが。

 

「ゴッドハンドタイガー!!」

 

 また止まる。

 

 雷門は焦らない。

 無理に攻めない。

 無理に奪わない。

 

 ただ。

 確実に試合を支配していた。

 

 パス一本。

 トラップ一つ。

 ポジション取り。

 

 その全てが洗練されている。

 

 王者のサッカー。

 それがそこにあった。

 

 

 二十五分。

 ついに均衡が崩れる。

 

 雷門MF、星村ナオが突破をしかける。

 

 木戸川DFを一人かわす。

 

 二人かわす。

 

 三人目。

 

 湊が止めようとした。

 だが。

 

「っ!」

 

 一歩遅い。

 攻め上がっていた雷門キャプテン、月影蓮にパスが通る。

 

「来るぞ!!」

 

 誰かが叫ぶ。

 

 しかし。

 遅かった。

 

「バハムートクラッシュ!!」

 

 黒き龍が咆哮し、雷光が炸裂する。

 

 剣崎が飛び、シュートを正面から受け止める。

 だが。

 

「ぐっ……!!」

 

 押し切られる。

 

 ゴール。

 1-0。

 

 歓声。

 

 雷門ベンチは騒がない。

 当然のように戻っていく。

 

 まるで。

 点を取ることが当たり前であるかのように。

 

 

「これが……」

 

「絶対王者、雷門中……」

 

 だが。

 木戸川は折れなかった。

 

「まだだ」

 

 木戸川清修のキャプテン、湊が立ち上がる。

 

「まだ終わってない…!!」

 

「やるぞ…!サッカー…!」

 

「は?」

 

俺たち(きどかわ)にしかできない、木戸川(おれたち)らしいサッカーを!!」

 

 烈刃が笑う。

 

「ようやく面白くなってきた」

 

 西垣も腕を組んだまま言う。

 

「見せてみろ」

 

「お前らがここまで積み上げてきたもんをな」

 

 中盤でボールを奪ったのは湊だった。

 

「スパイラルドロー!!」

 

 フィールドに巻き起こる螺旋。

 

 雷門MFが吹き飛ばされる。

 

 ボール奪取。

 

「繋ぐぞ!!」

 

 湊が叫ぶ。

 

 玲奈が反応した。

 

「任せろ!!」

 

 飛び出す。

 

「スピニングアッパー!!」

 

 玲奈の放ったボールは超強力なバックスピンで猛烈な勢いで相手を吹き飛ばす。

 

 スタンドがざわつく。

 

「速い!」

 

「止まらねぇ!」

 

 玲奈は迷わず前へ送る。

 

「烈刃!!」

 

「あぁ!!」

 

 牙道烈刃。

 

 木戸川最強のストライカー。

 

 ボールを受けた瞬間。

 

 剣のオーラが噴き上がる。

 

「オーガブレード!!」

 

 漆黒の刃が一直線に雷門ゴールへ突き刺さる。

 だが。

 

「ゴッドハンドタイガー!!」

 

 防がれる。

 

 しかし。

 初めてだった。

 

 暖冬屋の手の中に収まらない。

 ボールが大きく弾かれる。

 

「セカンドボール!!!」

 

 誰が叫んだか分からない。

 だが全員が走った。

 

 栄塚。

 

「アサルトショット!!」

 

 弾かれる。

 

 闇野。

 

「ダークトルネード!!」

 

 弾かれる。

 

 風藍。

 

「ディメンションストーム!!」

 

 止まらない。

 

 岸眞。

 

「ガンマストライク!!」

 

 さらに威力が上がる。

 暖冬屋の腕が震える。

 

「ぐっ……!!」

 

 そして。

 

 誰よりも早く飛び込んだ一年生。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 亜風炉天音。

 

「ゴッドウインド!!!」

 

 チェインは五連。

 だがまだ終わらない。

 

「玲奈ァ!!」

 

 湊が叫ぶ。

 

「任せなさい!!」

 

 紅星玲奈が跳ぶ。

 

 2つに分裂させたボールを両足で蹴り出し、再び1つに融合させて威力を増幅させる必要シュート。

 

「ダブルショット!!!」

 

 遥か未来。

 化身を操る少女の代名詞。

 

 六連。

 

 暖冬屋の足が後退する。

 芝が削れる。

 

「まだだァァァァ!!」

 

 牙道烈刃。

 

「バイシクルソード!!!」

 

 デスソードを応用した破壊の一撃。

 

 七連。

 

 観客席が総立ちになる。

 

「押してる……!?」

 

「雷門を押してるぞ!!」

 

 そして。最後。

 

 ボールはキャプテンへ渡った。

 

 誰よりも走り

 誰よりも繋ぎ。

 誰よりも仲間を信じた男。

 

 一ノ瀬湊。

 

「嵐・竜巻・ハリケーン!!!」

 

 それは。

 彼の師匠が得意とした必殺技。

 

 そして。

 木戸川清修の想いを乗せた、八連続のチェインシュートだった。

 

 爆風。轟音。

 一直線。

 

 そして。

 

 パキッ。

 

 虎の腕が砕ける。

 

「なっ……!?」

 

 暖冬屋が目を見開く。

 

「ゴッドハンドタイガーが……!」

 

 次の瞬間。

 

 ゴール。

 

 1-1。

 

 スタジアムが揺れた。

 

 

「入ったぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「雷門から点取ったぞ!!」

 

「嘘だろ!!」

 

「公式戦無失点の暖冬屋から!?」

 

 観客席が大混乱になる。

 

 

 だが。

 

 雷門ベンチ。

 監督が静かに言った。

 

「ハル」

 

 その一言。

 一人の少年が顔を上げた。

 

 今までベンチに座っていただけの選手。

 円堂ハル。

 

 怪物は静かに立ち上がる。

 ユニフォームを掴む。

 

 その瞬間。

 雷門の空気が変わった。

 

 木戸川はまだ知らない。

 

 自分たちが今。

 本当の怪物を呼び起こしてしまったことを。

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