キドカワイレブン!木戸川清修のヴィクトリーロード! 作:工帝 アザレア
あとスプリングカップ君も活躍させたい学校が沢山あるので独自設定てんこ盛りにします。
第一話 バラバラの木戸川
関東地区⸻。
荒波がごとしフィジカルを誇る海王中。
徹底的に管理され尽くした戦術で勝利を積み重ねる帝国学園。
そして絶対王者、雷門中。
全国でも屈指の強豪校が群雄割拠するこの地では、毎年のように才能が生まれ、そして潰えていく。
その陰で、かつて全国を制した名門校が静かに沈みかけていた。
木戸川清修中学校。
16年前のホーリーロードを制した古豪。
全国ベスト4の常連校。
だが今、その栄光は遠い過去のものとなっていた。
関東ベスト8。悪くはない。
だが全国を目指すには足りない。
中途半端な強さだけが残り続けた結果、チームは少しずつ歪み始めていた。
「だからそこは俺に出せって言ってんだろ!!」
「黙れ! お前に渡すくらいなら自分で撃った方がマシだ!」
「はぁ!? 今の絶対私のボールなんですけどぉ!」
「GKが上がってくんなバカ!!」
「決まれば問題ないだろうがァッ!!」
怒号が飛び交う。
グラウンドの空気は最悪だった。
そしてその中心にいるのが。
「見ろ!! これが木戸川式カウンターだァ!!」
敵陣まで駆け上がったゴールキーパーGK ⸻
長身。
高い身体能力。
そして常識の欠如。
木戸川清修が誇る問題児の一人である。
「エクス⸻」
「撃つなアホォォォォ!!」
「カリバァァァァァ!!」
轟音。
超長距離から放たれた必殺シュートはクロスバーへ直撃し、そのまま空の彼方へ消えていった。
一瞬の静寂。
「……フッ」
「何が“フッ”なんだよ剣崎……」
最悪の空気の中、キャプテンマークを巻いた少年⸻
「惜しかったな!」
「惜しいで済むか!!」
反射的にツッコミを入れる。
もう何度目かも分からない。
「GKがいなくなった瞬間にカウンター食らったらどうするんだよ!!」
「その時はお前らが死ぬ気で止めろ!」
「無茶苦茶なんだよ!」
再び始まる口論。
誰も譲らない。
誰も合わせない。
誰もが自分こそ点を取るべきだと思っている。
それが今の木戸川清修だった。
弱くはない。
むしろ個人能力だけなら関東でも上位だろう。
だが致命的に足りないものがあった。
連携。
いや。
連携しようという意思そのものだ。
「こんなんじゃ帝国にも海王にも勝てないだろ」
誰かが漏らした言葉に、湊の肩が僅かに揺れた。
帝国。海王。
そして雷門。
関東には怪物が多すぎる。
木戸川は毎年あと一歩届かない。
全国へ。
頂点へ。
その現実が、少しずつ選手たちの心を蝕んでいた。
「どうせ今年も雷門だろ」
空気が変わった。
誰も反論しない、反論できない。
雷門中。
才能が集まり。
注目が集まり。
勝利が集まる。
今や中学サッカー界の象徴とも言える学校だった。
湊は黙ったままボールを拾う。
本当は分かっていた。
みんな悔しいのだ。
だから焦る。
だから自分だけでも輝こうとする。
誰かのために走る余裕など残っていない。
その時だった。
「お前らが今の木戸川清修サッカー部か?」
聞き慣れない声が響く。
全員が振り向いた。
グラウンド入口。
一人の男が立っていた。
青いバンダナ。
日に焼けた肌。
鋭い目。
妙に落ち着いた雰囲気。
だが湊だけは、その顔に見覚えがあった。
(西垣守……?)
父から何度か聞いたことがある。
円堂守。
豪炎寺修也。
鬼道有人。
伝説と呼ばれた世代で戦った木戸川清修の選手。
日本代表候補にも選ばれた実力者。
だが、世界への切符には届かなかった男。
「今日から木戸川清修サッカー部の監督になった
静かな挨拶だった。
しかし部員たちの反応は薄い。
「誰だ?」
「木戸川のOBらしいぞ」
「へぇ」
そんな中。
一人だけ目を輝かせている男がいた。
「おぉ!!」
剣崎悠真だった。
「ダークエンペラーズの人じゃねぇか!!」
「は?なんだそれ?」
周囲が振り向く。
お日様園育ちの彼にとって、エイリア学園事件は決して他人事ではない。
だからこそ知っていた。
一度挫折し、闇へ堕ちた男の名前を。
「闇堕ち経験者だ!!」
「言い方ァ!!」
湊のツッコミが飛ぶ。
だが西垣は気にしない。
ただ木戸川の選手たちを見回していた。
荒れた空気。
噛み合わない才能。
まとまらないチーム。
その全てを見た上で。
西垣は小さく笑った。
「面白ぇチームじゃねぇか」
そして。
「全国に行きたいか?」
誰も答えない。
そんなの当たり前だからだ。
だが西垣は鼻で笑った。
「その顔じゃ無理だな」
空気が険しくなる。
「お前ら、自分しか見えてないだろ」
「チームが勝つより、自分が活躍したいって顔してる」
図星だった。
誰も言い返せない。
沈黙の中。
一人の三年生が吐き捨てる。
「どうせあんたも雷門の脇役だったんだろ」
空気が張り詰めた。
だが西垣は怒らなかった。
「ああ」
あっさりと認める。
「ああ、そうだ」
「俺は円堂でも豪炎寺でも鬼道でもない」
「世界大会にも行ってない」
「伝説にもなれなかった」
誰も言葉を失う。
否定できない。
それは事実だった。
「俺は主人公じゃなかった」
夕陽が差し込む。
西垣は少しだけ笑った。
懐かしむように。
そして。
「でもな」
その目だけは真っ直ぐだった。
「主人公になれなかった奴らが、どんな顔で負けるのかは知ってる」
湊の呼吸が止まる。
「今のお前らが何を焦ってるのかも」
「何に怯えてるのかも」
「何を諦めかけてるのかもな」
風が吹く。
夕陽がグラウンドを赤く染めていた。
「だから分かる」
西垣は不敵に笑った。
「だから俺は、お前たちを脇役にはしない」
その瞬間。
止まりかけていた木戸川清修の時間が、再び動き始めた。
西垣はそこで一度言葉を切る。
そして。
「今日から練習内容を変える」
部員たちが顔を上げた。
「フォーメーション練習はしない」
「基礎パス練習もやらない」
「……は?」
「これからお前らには4vs4をひたすらやってもらう」
数秒の沈黙。
そして。
「はぁぁぁぁぁ!?」
絶叫が響く。
だが西垣は笑っていた。
「安心しろ」
かつて主人公になれなかった男は。
誰よりも楽しそうに笑っていた。
「死ぬほど強くしてやる」
夕陽の中。
木戸川清修サッカー部に、新しい風が吹き始めていた。
【
木戸川清修中キャプテンのMF。二年生。
誰の息子なんだろなぁ…(すっとぼけ)
【
GKなのにことあるごとにエクスカリバーしてくるヤベーやつ。アホの子。二年生。お日様園出身。
【
木戸川清修中OBの新監督。ぶっちゃけ口調とか性格これで合ってるかの自信が無い…違和感あったら遠慮なくご指摘下さい。