キドカワイレブン!木戸川清修のヴィクトリーロード!   作:工帝 アザレア

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スプリングカップ編
第6話 開幕 スプリングカップ


 春。

 

 関東地区スプリングカップ予選。

 

 フットボールフロンティアに向けた前哨戦大会であると同時に、今後世界大会で世界と渡り合うための若き才能を発掘するための登竜門である。

 

 抽選会当日。

 

 大勢の選手と監督が集まる会場は、試合会場とはまた違う熱気に包まれていた。

 

「おお……人多いな……」

 

 悠真が周囲を見回す。

 

「関東中の強豪が集まってるんだから当然ですよ」

 

 玲奈が呆れたように言う。

 

 木戸川清修。

 

 海王中。

 

 帝国学園。

 

 そして⸻。

 

「雷門中……」

 

 湊の視線が一つの集団へ向く。

 

 会場の中心。

 

 自然と人が集まっているチームがあった。

 

 絶対王者。

 

 雷門中。

 

 選手たちはどこか余裕すら感じさせる雰囲気を纏っている。

 

「やっぱオーラ違うな」

 

 悠真が呟く。

 

「まだ試合もしてないのに優勝候補扱いだ」

 

「実際優勝候補だからな」

 

 西垣が肩を竦める。

 

「だがビビる必要はねぇ」

「今の木戸川は昔より強くなる可能性がある」

 

 その言葉に部員たちが少しだけ背筋を伸ばした。

 

 やがて大型スクリーンにトーナメント表が映し出される。

 

 会場が静まり返った。

 

 スプリングカップ関東予選はAブロックとBブロックに分かれている。

 それぞれの代表を決める戦い。

 

 そして。

 

「木戸川清修中は前大会ベスト8のためAブロックのシード校となります」

 

 アナウンスが響く。

 

 ざわめく会場。

 

「よし」

 

 悠真が拳を握る。

 

「一回戦サボれる」

 

「そういう言い方するな」

 

 湊が即座にツッコむ。

 

 大型スクリーンにトーナメント表が映し出される。

 

 会場が静まり返った。

 

 そして。

 木戸川のいるAブロック。

 

 木戸川清修。

 

 天河原中。

 

 万能坂中。

 

 尾刈斗中。

 

 それからもどんどん様々な学校が表示されていく。

 

 そして。

 

 雷門中。

 

 その名前が映し出された瞬間。

 会場の空気が少しだけ変わった。

 

「っ……」

 

 悠真が短く声を漏らす。

 

「同じブロックですか…」

 

 玲奈も顔をしかめる。

 

 湊は無言だった。

 

 Aブロックを勝ち抜くなら。

 どこかで必ず当たる。

 

 絶対王者 雷門中。

 

 そんな中。

 西垣だけが鼻で笑った。

 

「いいじゃねぇか」

 

 全員が振り返る。

 

「どうせ全国を獲るなら避けて通れねぇ相手だ」

 

 スクリーンに次々と対戦カードが表示されていく。

 

 そして。

 

『万能坂中 対 天河原中』

 

 木戸川のブロックに表示されたカードを見て、西垣が小さく頷いた。

 

「俺たちの初戦は天河原か万能坂か」

 

 西垣が腕を組む。

 

「知ってるんですか?」

 

 湊が尋ねる。

 

「ああ」

 

 西垣は頷いた。

 

「どちらも強豪じゃない。だが弱くもない」

「爆発力のある天河原と堅実な万能坂、どちらも厄介なタイプの学校だ」

 

 その言葉に部員たちの表情が引き締まる。

 

 抽選会終了後。

 

 木戸川一行は帰るかと思われた。

 

 しかし。

 

「よし」

 

 西垣が立ち上がる。

 

「偵察行くぞ」

 

「は?」

 

 悠真が素っ頓狂な声を上げた。

 

「どこにです?」

 

 玲奈が聞く。

 

「一回戦」

 

 西垣は当然のように答える。

 

「シード校の特権だ。自分たちは試合しなくていい」

「なら相手を見に行け」

 

 

 数日後。

 

 スプリングカップ関東予選一回戦。

 木戸川一行は観客席へ来ていた。

 

 目的はもちろん偵察。

 次戦の相手候補である天河原中と万能坂中を見るためだった。

 

「どっちが勝つと思う?」

 

 悠真が聞く。

 

「万能坂」

 

 玲奈が即答する。

 

「総合力的にはあっちの方が上じゃないですか?」

 

「そうだな」

 

 湊も頷く。

 

 だが西垣だけは何も言わなかった。

 

 試合開始。

 

 前半。

 予想通り万能坂が押していた。

 

 ボール支配率。

 シュート数。

 どちらも万能坂が上。

 

 先制点も万能坂だった。

 

「まあ順当か」

 

 烈刃も興味なさそうに呟いた。

 

 だが。

 後半になって流れが変わる。

 

「まだ終わってねぇだろ!!」

 

 天河原のキャプテン、荒川が叫んだ。

 

 その一言だった。

 

 走る。

 

 奪う。

 

 追う。

 

 諦めない。

 

 技術は万能坂の方が上だった。

 

 それでも天河原は食らいついた。

 

 そして。

 

 後半終了間際。

 

 逆転。

 

 会場が沸いた。

 

 試合終了。

 

 2-1。

 

 勝者、天河原中。

 

 歓喜する選手たち。

 

 泣きながら抱き合う者もいる。

 

 その光景を木戸川の面々は黙って見ていた。

 

「……意外だったな」

 

 湊が呟く。

 

「うん」

 

 玲奈も頷く。

 

「正直、途中まで負けると思ってた」

 

 烈刃が鼻を鳴らす。

 

「でも弱くはねぇな」

 

「だろ?」

 

 西垣が言う。

 

 全員が振り向く。

 

「こういうチームが一番厄介なんだ」

 

 静かな声だった。

 

「技術は後から伸ばせる」

 

「体格も鍛えられる」

 

「だが」

 

 西垣はグラウンドを見る。

 

 勝利に泣く天河原の選手たち。

 

「勝ちたい理由だけは後から作れねぇ」

 

 その言葉は妙に重かった。

 

 誰も口を開かない。

 

 それぞれが自分なりの理由を持ってここにいるからだ。

 

 全国へ行きたい。

 

 証明したい。

 

 見返したい。

 

 勝ちたい。

 

 その理由だけは誰にも奪えない。

 

 西垣は立ち上がる。

 

「帰るぞ」

 

 部員たちも腰を上げる。

 

 そして最後に。

 湊はもう一度だけグラウンドを見た。

 

 天河原中。次の相手。決して強豪ではない。

 だが。絶対に侮ってはいけない相手だった。

 

 スプリングカップ関東予選二回戦。

 木戸川清修中 対 天河原中

 

 新生木戸川清修の初陣は、もうすぐそこまで迫っていた。

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