キドカワイレブン!木戸川清修のヴィクトリーロード!   作:工帝 アザレア

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第8話 名もなき強者たち

 シード権からの雷門中の初戦は圧倒的な結果となった。

 

「5-0……」

 

 玲奈が絶句する。

 

「野生中相手にか?」

 

 湊も表情が硬い。

 

 野生中は弱小校ではない。

 関東予選を勝ち上がってきた実力校だ。

 

 その相手を。

 雷門はまるで練習試合のように圧倒し一足先に予選決勝へと駒を進めていた。

 

「いいじゃねぇか」

 

 烈刃だけが笑う。

 

「ぶっ倒し甲斐がある」

 

 だが。

 

 西垣は笑わなかった。

 

「勘違いするな」

 

 その一言で空気が変わる。

 

「今のお前らじゃ勝負にもならねぇ」

 

 誰も反論できない。

 

 帝国二軍相手にようやく一点。

 天河原相手にも苦戦した。

 

 対して雷門は強豪を5-0で沈めている。

 差は明白だった。

 

「王者を見て燃えるのは結構だ」

 

 西垣は映像を止める。

 

「だがな」

 

「王者ってのは見上げるもんじゃねぇ」

 

 全員が顔を上げる。

 

「ぶっ倒すためにいるんだよ」

 

 西垣は不敵に笑った。

 

「まずは尾刈斗だ」

「予選決勝に辿り着けなきゃ挑戦権すら貰えねぇ」

 

 

 翌日。

 スプリングカップ関東予選準決勝。

 

 木戸川清修中 VS 尾刈斗中。

 

 観客席には偵察のチームも集まっていた。

 

「木戸川か」

 

「帝国二軍から一点取ったらしいな」

 

「でも結局は数人の主力選手の個人的が強いだけのチームだろ」

 

 そんな声が聞こえる。

 

 

 

 

 一方、尾刈斗ベンチでは尾刈斗の監督が選手へ指示を出していた。

 

「警戒対象は四人」

 

 ボードを叩く。

 

 一ノ瀬湊。

 

 剣崎悠真。

 

 紅星玲奈。

 

 牙道烈刃。

 

「この四人さえ止めれば木戸川は機能停止する」

 

 選手達が頷く。

 監督は続けた。

 

「特に剣崎悠真だ」

 

 ボードに大きく丸を描く。

 

「GKでありながら前線に上がる異常な選手」

「エクスカリバー」

 

 その名前に尾刈斗イレブンが息を呑む。

 

「あの威力は脅威だ」

 

「だが」

 

 監督は笑った。

 

「強力すぎる技には必ず反動がある」

 

「打てても二回、良くて三回」

 

 選手たちが頷く。

 

「走らせろ」

 

「攻めさせろ」

 

「削れ」

 

「そして後半で仕留めろ」

 

 

 試合開始。

 

 そして。

 

「なっ……!」

 

 開始十分。

 木戸川は苦戦していた。

 

 烈刃がボールを持つ。

 三人に囲まれる。

 

「またかよ!!」

 

 突破できない。

 

 玲奈がボールを受ける。

 パスコースを消される。

 

 湊が動く。

 常にマンマーク。

 

 尾刈斗は徹底していた。

 そして。

 

「エクスカリバー!!」

 

 剣崎の超長距離シュート。

 轟音。

 

 だが。

 

「読んでいた!」

 

 尾刈斗GKが弾く。

 

 

 十分後。

 

「もう一発だァ!!」

 

 二本目。

 

 今度はポスト。

 剣崎が舌打ちする。

 

「チッ……!」

 

 

 尾刈斗の狙い通り試合は進む。

 

 烈刃は三人がかりで潰される。

 玲奈は自由を奪われる。

 湊にはマンマーク。

 剣崎は前線とゴールを往復させられる。

 

 観客席がざわつく。

 

「木戸川押されてるぞ」

 

「どうした?」

 

 焦りが広がる。

 

 そして。

 前半二十五分。

 

 尾刈斗のカウンター。

 剣崎は戻り切れない。

 

 ゴール。

 0-1。

 

 スタンドが沸く。

 

「よっしゃあ!」

 

「いけるぞ!」

 

 尾刈斗ベンチが盛り上がる。

 

 一方。

 

 木戸川清修は重い空気だった。

 

 

 ハーフタイム。

 

 誰も口を開かない。

 

 烈刃が壁を蹴る。

 

「クソッ……!」

 

 湊も唇を噛む。

 

 だが。

 

 西垣だけは笑っていた。

 

「何してんだお前ら」

 

 全員が顔を上げる。

 

「は?」

 

 烈刃が睨む。

 

「なんでアイツらだけ戦わせてる」

 

 西垣は烈刃達を指差す。

 

「お前ら四人が止められたら終わりか?」

 

 沈黙。

 

「違うだろ」

 

 西垣は木戸川全員を見る。

 

「木戸川はいつからエース一人のチームになった?」

 

「そーそー、たまには僕らにも活躍させてよね!」

 

中性的な見た目をしたDF、白羽圭(しらは けい)が軽口を叩く。

 

 そして。

 西垣は不敵に笑った。

 

「行ってこい」

 

「そろそろ名前を覚えてもらえ」

 

「「「はい!」」」

 

 

 後半開始。

 

 尾刈斗は余裕だった。

 

「もう勝ったな」

 

 誰もがそう思った。

 

 だがそれは、致命的な油断だった。

 

「サイクロン」

 

 鋭いキックで相手の周りに竜巻を起こし、ボールごと上空に吹き飛ばす。

 

 白羽圭がボールを奪う。

 

「奪われた!?」

 

「さ、反撃開始と行こうじゃん?」

 

 

 そしてボールは無警戒の女子FWに渡る。その刹那。

 

「ダークトルネード!!」

 

 黒い竜巻。

 

 スタンドがどよめいた。

 

 湊の目が見開かれる。

 

(今の技……!)

 

 西垣も一瞬だけ表情を変えた。

 

 かつて見たことがある。

 闇の力に呑まれた選手達の技。

 

 轟音が響いてボールがゴールに突き刺さる。

 

 同点。

 

 1-1。

 

 湊が目を見開く。

 

「なんだその技…」

 

 闇野凪(やみの なぎ)は肩を竦めた。

 

「相手が油断してただけだよ」

 

 試合は尾刈斗ボールで再開される。

 だが、強烈なタックルで奪われる。

 

「アグレッシブビート!!」

 

 続いてに飛び出したDFを見て驚いた。

 

 雷鳴迅悟(らいめい じんご)

 

 今まで目立たなかった三年生。

 

 音の衝撃波のようなドリブルで二人を吹き飛ばす。

 

「なっ!?」

 

「誰だアイツ!?」

 

 スタンドがざわつく。

 

 

「決めろ!」

 

「あぁ!!」

 

雷鳴迅悟のパスを受け取った栄塚磐(えづか ばん)が攻め込む。

 

「スプリントワープ!!」

 

「からの!」

 

「アサルトショット!!」

 

 逆転。

 

 2-1。

 

 スタンドがどよめく。

 

「栄塚お前……」

 

 烈刃が呆然と呟く。

 

「そんなシュート撃てたのか」

 

「別に隠してた訳じゃない」

 

「使う機会がなかっただけだ」

 

不敵に栄塚が笑う。

 

 

「ディメンションカット」

 

 空間が裂けたような軌道。

 

 MFの少女、風藍澪(ふうらん みお)がまた尾刈斗スタートのボールを奪う。

 

 これまで誰も注目していなかった選手たちは、今確かに尾刈斗を翻弄していた。

 

 尾刈斗ベンチ。

 

「馬鹿な……」

 

 監督が呟く。

 

 資料にない。

 

 分析にもない。

 

 こんな選手達。

 

 聞いていない。

 

 

 そして。

 

「オールデリート!!」

 

すべてを無に帰す混沌のオーラを広げ、相手を異空間に消し去り華麗に突破する。

 

 最後。

 

「ふっ!トドメは貰うよ!!」

 

 FWの岸眞秀治(がんま しゅうじ)が叫ぶ。

 

「ガンマストライク!!」

 

 轟音。

 

 3-1。

 

「当然さ」

 

 

 試合終了。

 

 木戸川清修中。

 

 三回戦突破。

 

 だが。

 

 誰も特定の選手だけを見ていなかった。

 

 観客席で偵察していたチームの監督が呟く。

 

「なんだあの学校は……」

 

 烈刃がいる。

 

 剣崎がいる。

 

 紅星がいる。

 

 一ノ瀬がいる。

 

 それだけではない。

 

 木戸川清修は、誰か一人のチームではなかった。

 

 牙は一本ではない。

 

 名もなき怪物たちが、今ようやく牙を剥き始めたのだ。

 

 試合後。

 勝利の余韻に浸る木戸川イレブン。

 

 そんな中。

 

「そういえば僕今日何もしてなくないか……?」

 

 一人のMFからぽつりと声が上がった。

 全員が振り向く。

 

「……まぁそうだな

…このチーム唯一の一年生だし仕方ない部分もあるんじゃないか?」

 

 全員を代表して湊が答える。

 

「酷くない?」

 

「事実だろ」

 

「事実だけどさ!」

 

 珍しく食い下がる。

 

「…まだ準決勝だし、決勝で活躍させてもらうよ」

 

「おう」

 

 烈刃が頷く。

 

「頼むぞ、()()()

 

「待て」

 

 即座に返事が飛んだ。

 

「僕が苗字コンプレックス抱いてるって言っただろう?」

 

「いや知らねぇよ」

 

「何回も言ったよ!?」

 

「覚えてねぇ」

 

 烈刃は真顔だった。

 

「ユニークでいいじゃねぇか」

 

「だから嫌なんだよ!!」

 

 木戸川イレブンから笑いが漏れる。

 

 先ほどまでの緊張が嘘のようだった。

 だが。

 

「……次だな」

 

 誰かが呟いた。

 

 空気が変わる。

 笑い声が止まる。

 

 全員の脳裏に浮かんだ相手は同じだった。

 雷門中。

 中学サッカー界の絶対王者。

 野生中を5-0で下した怪物たち。

 

 その名を思い浮かべた瞬間。

 烈刃が不敵に笑う。

 

「やっとだ」

 

 湊も静かに拳を握る。

 

 玲奈は映像で見た雷門のプレーを思い返す。

 

 そして西垣は。

 そんな選手たちを見て、小さく口元を吊り上げた。

 

 古豪復活まで、あと一歩。

 

 次の相手は⸻絶対王者。




白羽圭(しらは けい)
尾刈斗に舐められてて割と内心キレてた八重歯が特徴の中性的DF。
〈習得技〉
・サイクロン
・エアーバレット
・???

闇野凪(やみの なぎ)
女子FW。ある人物の娘らしい。
〈習得技〉
・ダークトルネード
・???

雷鳴迅悟(らいめい じんご)
声が雷鳴のように大きいDF。アグレッシブビートやディフューズコードみたいな音に関するドリブル技を多用する。

栄塚磐(えづか ばん)
いつか言ってみたかった台詞が言えてご満悦なFW。
〈習得技〉
・アサルトショット
・スプリントワープ

風藍澪(ふうらん みお)
MFの少女。流石にオーバーキルな気は薄々感じているがとりあえず全力で尾刈斗からボールをぶん獲った。
〈習得技〉
・ディメンションストーム
・ディメンションカット

岸眞秀治(がんま しゅうじ)
ナルシストなFW。自分がこの試合のMVPで決まりだと思っている。
〈習得技〉
・オールデリート
・ガンマストライク

亜風炉天音(あふろ あまね)
木戸川清修中唯一の一年生MF。
本人は「アフロ」と呼ばれることを嫌がっているが、チームメイトは誰一人としてやめる気がない。
当初は父親と同じ世宇子中への進学を考えていたが、体験入学の際に「アフロディ帝」と名乗る父親の狂信者に遭遇。
その日のうちに木戸川受験を決意した。
〈習得技〉
・?????
・?????
・?????
・?????
・?????
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