そのあひる、狂暴につき   作:グゥワバス

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あひるの皮を被ったふれんず13

あれから僕は無理矢理乗せられたタクシーで婆ちゃん家に戻って、母の亡骸と対面して、婆ちゃんと父と長く母さんのことについて語らい合った。

 

案外涙は出ないものだと思ったけど、葬儀を終え、いざ火葬となった時に今までの思い出がフラッシュバックして涙が溢れ出した。

 

参列者も皆泣いていた。

婆ちゃんも、父も。

あれだけ顔を歪めた父の姿を僕は忘れないだろう。

 

 

骨になった母を見て、僕は空っぽになって。

 

 

火葬場から帰った頃は、父も魂が抜けたような表情をしていた。

それでも時は刻々と刻まれる。

 

脱け殻となった男二人に檄を飛ばしたのは婆ちゃんだった。

 

 

『いつまでも辛気臭い顔してんじゃないよ。由夏だって死んでも死に切れないよ』

 

 

当たり障り無い言葉だが、実の娘が亡くなって辛いはずの婆ちゃんから放たれた言葉はとても強烈だった。

 

 

『爺さん亡くなった時も悲しかったけど、実の娘となると相当に堪えるわさ。けどね、歩みを止める理由にはならないのさ。何せまだあんた達がいるからね』

 

 

母の面影を感じた。

母さんがしわくちゃになるくらい長生きしたら、きっと婆ちゃんみたいになったんだろうな、と。

 

 

また、歩き出そう。

そうだな、とりあえず今は身体を動かしたい。

 

嫌なことから逃避する位熱中するのではなく、徐々に熱量を上げていく。

そんな感じで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その節はお世話になりました」

 

久々に学校に登校して真っ先に僕は職員室の五月先生に挨拶に伺った。

 

何人かの先生は緊張感を走らせていたが、そんな細事に構ってなんかいられない。

五月先生の判断に僕は助けられたのだから。

 

 

「そうか。故人を偲び、別れは済ませられたか」

「はい。お陰で色々気持ちの整理も着きました」

「ならよし。放課後部活でな」

「ありがとうございました!」

 

 

この時間があったからこそ僕は今穏やかな気持ちでいられる。

多分休んでなかったら相当に狂っていたと思う。

 

 

クラスの連中とも久々に駄弁り、いつもの日常に帰ってきたと実感する。

授業は(簡単過ぎて)退屈ではあるけど、それすらも心地よい。

 

ああ、部活もなんか楽しみになってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、迫田先輩がキャプテン」

「まあな。車谷がやりたきゃ譲るが」

 

 

部室に来て早々告げられたキャプテン宣言。

どうやら僕が休んでいる間に相当な進展があったらしい。

 

先ず西条戦は負けた。

そうだろうとは思ったけど、存外にうちは粘ったらしい。やるじゃん。

 

次いで目標を設定したらしい。

とりあえずでかめの大会で上を目指すとのことだ。

むっちゃフワッとしとるがな。

 

で、最大目標は総体のリベンジ。

具体的にはずっと勝ち続けることだとか。なお、僕の力も最大限にフル活用して欲しいとのこと。

うーん、バカ目標過ぎワロタ。でもその話乗った。

 

ちなみに迫田をキャプテンの件は了承した。

あくまで僕はスキルの向上を目的としてバスケ部を再開させただけだし。

部として強くなりたいと言う意思はそこまで強くない。

それこそ試合に飢えている迫田先輩が適任だろう。

 

とすると練習の主導権は、、、あ、それは今まで通りでいいんだ。

僕との個人レッスンはかなーりいい機会にと捉えてるらしい。正解。

 

 

「目下の目標は地区大会とモンスターバッシュだ」

「モンスターバッシュ?」

 

 

地区大会は分かるけどモンスターバッシュとは何ぞや。

聞くと社会人チームも参加する大会かつ優勝チームはエキシビジョンマッチでプロチームとも戦えるらしい。

 

 

「いいじゃないですか。で、どこまで行く予定ですか」

「話聞いてたか。負けるまでだよ」

「うーん、バカ目標」

 

 

でも嫌いじゃない。

いいね、気持ちが上がってく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヤバい、絶好調すぎる」

 

 

久々の練習であったが、どうやら僕は更に進化をしてしまったらしい。

休む前より大分身体が軽く力も入る。

休養(心と身体)を取ったおかげで本来のパフォーマンスができるようになったとか?

うん、もう深く考えることは止めよう。

成長期かなんかだろう。

 

そのことを七尾さんに伝えたらいよいよ僕を人外として扱いだした。

あ、バナナはもらっときます。

 

で、その実験台となった百春君だが、彼もまたそれなりに身体能力が上がっていた。

僕の成長期に目を奪われガチだが存外にこの人も伸び代がヤバイ。

 

リバウンドをそのままダンクで沈めるなんて、ブランク明けの経験者がやれることじゃないから。

 

 

「で、トビ君今日はやけに粘るじゃん」

「ちょっと横浜のクソガキに因縁付けられての。3:7でやられたわ」

 

 

片手間に相手しているトビ君に熱が入ってると思ったらそんなことか。

と言うかいつも僕を相手にしてその体たらくはよろしくないね。

 

 

「課題は?」

「攻めじゃ。守りはおんし相手にしとるからいくらか粘れたが、攻めはダメダメじゃ。抜けんかった」

「シンプルに考えなよ。点とればいいんだから。ノーゴールってわけでは無いでしょ」

「何ぼか入れたが相手には負けた」

「じゃあ今後の方針は分かってるね。シュート精度と身体作らなきゃだね。抜くなんてのは身体作りの副産物にしかすぎないよ」

 

 

最近ちょっとがっしりしてきたとはいえ僕から言わせればまだまだフィジカルが弱過ぎる。

根本的に身体ができないとシュートも安定しないし。

DFにちょっと煽られただけで安定しない点取り屋なんてクソみたいなものだ。

 

 

「後トビ君が負けると僕まで弱く見られちゃうからね。

 今日はクソみそにサンドバックにするから。どっちが凄いか上書き修正しないと」

「(あ、今日ワシ終わった)」

 

 

いつもよりちょっと本気出してトビ君の脳内での格付けを終わらせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、母さんの技術を伝授して欲しい?」

 

 

いつも通り男バス面子をボコボコにした後。

僕は円か先輩に母さんのバスケ技術の伝授をお願いされていた。

 

うーむ、要望が抽象過ぎて掴みきれない。

 

 

「スリーのコツとか1on1必勝法とかですか?」

「全部」

 

 

わーお。強欲。でも面白かったから採用。

正直断ろうとも思ったけど、女子も最近は力入ってきてるし。円先輩には母もお世話になったみたいだし。

何より覚悟ガン決まりっぽいし。

 

とは言え僕の手だけじゃ正直足りないので各方面に助っ人を頼まないと。

 

 

「普段男バスでやってる個人練に参加してください。そこで実践を経験して貰います。メニューは七尾さんと五月先生と編集をお願いしお渡しします」

「分かった。今からお願いできる?」

「いいですね。とりあえず現状を知りたいのでやりましょうか」

 

 

ああ、てんでダメだ。

初歩的なハンドリング技術から改善のレベルだ。

 

でもまあ教え甲斐はある。

母も生きてたら凄い喜んだだろうな。

 

、、、そういう意味では凄い適任がもう1人いたな。

 

 

「円先輩、てんでダメ過ぎて超ウケます。

 ウケ過ぎて凄い助っ人がもう一人思い浮かんだので連絡取ります」

「ハァ,ハァ、、うん、お願い」

「ーーあ、もしもし、父さん。

 唐突だけど母さんのバスケを教えて欲しい人がいてね。

 生前母さんが凄いお世話になったのと、多分母さんが生きてたら物凄く喜んだであろう逸材だから、何とか、、、いや、絶対に時間を工面して教えて上げて欲しい」

 

 

父ならこの逸材を目の当たりにしたら、間違いなく世話を焼くだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、本日の〆は唐沢さんとこのOBの対戦である。

大分遅くじゃないと時間が工面できなかったらしい。日程も今日を外すと無理だったとか。

 

 

「こっちが先輩で、、、隣の人は」

「生意気なチビガキがいるって聞いてな」

 

 

唐沢さんの先輩は言ってしまえばその道の人である。

つまりはプロ級。僕もプロ級とは久々の対戦である。

 

で、その先輩と一緒に来た金髪の人。

同じチームでエースを張ってる人らしい。

つまりはプロの上積みだ。

 

 

「うっす、生意気なガキです」

「俺はあくまで見学だけどな。こいつに勝ったら相手してやるよ」

「戦えるように頑張ります」

「お、生意気言うねー。先ずは俺とやって貰おうか」

「(こいつ、猫被ってやがる)」

 

 

ちなみに今日は大学のフィジカル担当のトレーナー?も来てるっぽい。

 

曰く、大人の女性。

曰く、Sっ気がある。

曰く、独身?

 

等々唐沢さんも大分お世話になった方らしく、僕にのされた話を聞いて俄に信じ難いと実際に見ることにしたんだとか。

 

まあ僕のやることは変わりないし。

とりあえずやろっか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやー、唐沢さんの先輩も金髪の人もここ最近では1、2位を争う強敵でしたね。

 

プロとなるとやはり引き出しが多い多い。

特に跳ばれたらどうしようもないっすよ、ほんと。

 

けどそこまで持ってかないようにすれば、このレベルでもそれなりに戦えることはよく分かった。

 

ディフェンスの方針はこのままで問題無いことが分かって御の字だ。

 

オフェンスで分かったことは、、、このレベルでも最早得るものは無いってことかな。

 

 

 

「ふぅ、、、お前、マジか」

「曲がりなりにもチームでエース張ってるんだがな」

「つまりは僕の方が凄いってだけですね」

 

 

やることは変わらなかった。

隙間があればドライブ。

距離取られてたらシュート。

それを徹底しただけ。

 

決定的に違うのは距離感。

相手にとって対処しきれる距離というのは僕にとって超安全マージンなだけ。

僕シュート打つの無茶速だし。

 

詰めてくれればドライブで無理繰り振り切れるし。

力で止めに来るなら逆に弾くし。

 

この上で、打つ手のスイッチやらロングシュート、最近はスコープショット等々フィニッシュの引き出しも大分増やしてるんだけど、如何せんそこまで使う機会がない。

この人らのレベルでもそれ使わんかったし。

 

ハーフコートも使わんレベルじゃお披露目の機会は無いってことなんだろう。

 

とにかく格付けは済んだわけで

 

 

「お二方より凄い人紹介してください」

 

 

これが重要である。

無茶苦茶難色示していたけど、NBAに挑戦予定のある日本人選手に話を付けてくれることで僕は満足した。

 

 

 

「どうすればこんなワケわからない成長をするのよ、、、」

「運命変える覚悟でバスケに捧げただけです」

「世界の命運でも握ってんのか」

「まあ人の生き死には背負ってるつもりでしたね」

(((どういう状況だよ)))

「けど色々あって、、、気持ちに整理が付いたと言うか、落ち着いたと言うか。

 今は多少は真摯にバスケに向き合えそうです」

 

 

 

今はとにかく自分の限界を知りたい。

 

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