季節は7月。
トビ君の髪が漸く復帰してきた頃合い。
男子だけではなく最近は女子も気合いが入っており、夏の暑さも相まって乗算で練習にも熱が入る。
そして僕たちは来るべき試合に向けて練習に励んでいた。
公式戦と言う位置付けでは川崎地区大会が直近の試合である。
その後夏休みが始まって、夏のど真ん中にモンスターバッシュが行われる。
その前段に練習試合が挟まれた。
横浜大栄と。
言わずと知れたこの世界における全国区のチームである。トビ君がやられた当たりの話から思い出した。
で、なんで試合を、と言うことだが、単純に時期とタイミングが良かった、に尽きる。
実は総体予選の後、うちには結構な数の練習試合のお声がかかったらしい。
その中に全国区のチームが紛れてたから、五月先生がどうせならと、僕たちに確認を取らずに日程を押さえてくれた。
向こうもかなりタイトなスケジュールだったらしく、即断即決が求められたんだとか。
決断力がありすぎて僕の五月先生への信頼度はカンスト状態である。
ちなみに大栄は総体本戦に出場が決まっている。
ベスト4かけた試合で北住をギリギリ振り切り、決勝リーグでもギリギリ2位出場を決めるという中々ハードな展開だったらしいが。
兎にも角にも強豪との試合が決まり、チームとしての機運も最高潮といった具合で練習に臨んでるわけである。
ただそうなってくるとサポートの数が圧倒的に足りなくなってくるわけで。
五月先生と七尾さんの負担がエグいことになっている。
特に五月先生がやばい。
もともと女バスにも顧問(名ばかり)がいたのだが、3年が引退してからの熱量の上がり具合に「自分には監督しきれない」と申し出られてしまったため、五月先生が臨時で女バスの顧問も統括することになってしまったのだ。
当然七尾さんも駆り出される。
流石に五月先生も負担がエグいかつ、奥さんの予定日も近いため助っ人をお願いしたらしいのだが、どうも最近のバスケ部が『ガチ』だという話を受け、先生方も生半可な覚悟ではいられないと中々手が上がらない状況であった。
これはしゃーない。
と言うことでテコ入れである。
僕の父がバスケに明るい+高校教員の資格があり、神奈川への転属を望んでいる、と話したところ、早速父にアポをとっていた。上の人達が。
父も円先輩に恩を返したがってたし遅かれ早かれだっただろう。
1週間後には早速臨時教師枠でうちの高校に潜り込んでいた。
判断が早い(大人達の。先生不足は昔からの課題なんだろう)
そのまま女バス専属の監督ポジに落ち着いた。
ここで重要なのは女バスの専属だということ。
男バスはあくまで七尾さん、五月先生の体制下と言うのは崩さなかった。
一つは父がまだ臨時枠のため、強い監督責任リスクを負うには実績が弱かったこと。
もう一つは僕がそれを望まなかったこと。
と言うかそれが主だ。
あくまで男バスのブレインは五月先生、七尾さんであり、そこに父は組み込まない。
二人が助言等貰う分には構わないけど、それは五月・七尾体制下に取り入れるということであって、父の管轄下での師事は仰がない。
男バスの体制はすでに完成されているから余計なノイズはいらない、というのが僕の判断だ。
あとそっちの方が面白そうだから。
とは言え指導の経験者である父の手腕を買ってはいるので、話し合った結果全体練は女子と共同で行うことになった。
具体的にはサーキットトレーニングを。
正直僕には不要だと辞退させて貰おうと思ったんだけど、七尾さんが「将来所属するチームでも今の口実でサボるつもり?」と、グゥの音も出ない反論を返されきっちり参加することにした。
とは言えフィジカルが強すぎるため加減をどうするかなーって考えたら、結局男子諸君が順繰り僕の相手をしてくれることになった。
ウォーキング→軽いアップ程度には負荷がかかってそれなりの練習にはなったのが救いだった。
「あれは真似できないから参考にしないように」と父が言ってるのも聞こえた。
解せぬ。
まあ僕はともかく、他の面子がこなすのにこのメニュー自体は否定しない。
効率よく負荷をかけられるし、かつオールコートで戦うための基礎が詰まっているから。
夏場の練習だからこまめな水分補給は必須だけどね。
あ、女子のハナさんが座り込んじゃった。
体力に余裕がある僕が励ましに行かないと。
俯いているハナさんに父が何か言おうとしてるけどこうしちゃいられない。
父は正論で人をぶん殴るからハナさんが傷付きかねない。助けねば。
なんて息巻いて近づくとハナさんと目が合った。
ハナさんはこの世の終わりのような表情をした後、生まれたての小鹿を思わせる足取りで立ち上がり「すみません、まだいけます!!」と練習に戻った。
父は僕を見て複雑そうな表情をしながらも一喝して場を引き締めた。
あるぅえ~、僕またなんかやっちゃいましたぁ~?
さて、練習試合である。
厳密には練習会の意味合いが強いが。
向こうは試合後も練習をしたいということでうちもそれに乗っかることにした。
北住と同じく、このレベルの高校と試合だけではなく練習ができるというのは得難い経験である。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ。と言っても実績に差があり過ぎる気がしますが。本当に良かったんでしょうか?」
「もちろんです。うちは年間相当数こなして試合をしますが、どの試合も無駄な試合なんてありません。クズ校とやるには十分うちにもメリットがあります。何より今までの試合の実績が全てとは私は思っていませんし、先生もそうお思いでは」
「--ええ。そうですね。恥ずかしながら私自身チームとしての実力は計り損ねています。
ですので胸を借りさせていただきます」
「謙虚ですね」
本音だろうなぁ。
今までは経験を積ませるという意味で僕がゲームから離れることも多々あったけど、今日はフルで行くんだろうな。
、、、どうしよう、弱い者イジメにならないかな。
ちなみに大栄の監督さんと父は昔馴染みらしい。
五月先生が挨拶を終えた後なんか話し込んでた様子だったけど、今日の試合に父は関与しないし。
一応ベンチには入るけどあくまで助手とアドバイサー的な立ち位置である。
しかしよく声が出る。
やっぱその辺の雰囲気は強豪校特有のものである。
「スタートは車谷君、夏目君、千秋先輩、百春先輩、迫田先輩です。マンツーで真っ向勝負です。
皆さん4月から駆け足。いえ、大分無茶してここまで駆け上がってきましたが、いったんここで昇華させ、ステップを目指しましょう。その試金石として今日は車谷君をコートから外すことをしません」
「弱い者いじめになっちゃうと思うけど手加減するつもりは一切ないです。敵は勿論味方にも」
「これまでは皆さんの経験を積み上げることを前提に、車谷君も含め選手を回していましたが、今日は本当の意味で最善手である車谷君をフル起用します。
つまり皆さんは強過ぎる味方にフルで振り回されるということを意味しています」
僕以外の面子に緊張が走る。
最もその要因は強すぎる味方(僕)なんだけど。
「手懐けろとは言いません。チームのためにどう動けるか。これを意識してください。
これは車谷君にも言えることです」
「了解。ちなみに皆さんに合わせるために手を抜くなんてことは一切しないので。予め宣告しておきます」
皆も『当然だ』とばかりに返事を返す。
技術はまだまだ未熟だけど、その精神性だけは最近買っている。
うむ、これなら大丈夫だろう。
ということでゲーム開始だ。
僕のマッチアップは、、、ありゃ、オレンジ髪だ。
これがトビ君が言ってた横浜のクソガキか。
不破くんだっけ、確か。
なるほど、無茶苦茶イキイキしてら。
向こうの監督にでもなんか吹き込まれたかな。
「やあやあおチビちゃん。ヨロシクヨロシク」
「僕にチビって言った奴は総じて叩きのめすようにしてるんだ」
「はっはっはー、先にショート髪のヘアバンを摘まみ食いしちゃったんだけど、そこそこに楽しませて貰ったべ」
「じゃあ敵討ちだ」
開始早々にトラッシュトーク。
まあ自信あり気だし、そこそこやる、、、はえぇ、やるわ。
それこそ前にやったプロのお兄さんバリの突破力だわ。
これは高校生が平面じゃ止められんよ。
まあ、僕は止めるんですけど。
と言うかボール回さんからスティールまでいけちゃう。
ほら、面食らってないではよ取り返しこ。
でもこの距離だとシュート射程圏内なんですわー。
速打ちなんでヘルプのブロックも追いつけないよね。
ってことで開幕スティールからのスリー。
バカの一つ覚えみたいにカウンターで不破っちが攻めてきたけど、残念ながら各駅停車です(物理)
隙間こじ開ける感じで『にゅっ』て身体入れてきたけど残念、フィジカルブロック(相手は止まる)
僕に接触プレーは厳禁だよ。
完全に避わす動きじゃないと弾きます。
露骨にやるとファールだけどね。
で、カウンター余裕でした。
もっかいスリー(速打ち)で相手ブロック前にシュートを打ち切っちゃいました。
さて、どうするのかね。
、、、ですよねー。
今度は相手の16番が僕に着き出した。
で、不破っちはトビ君とマッチング。
これあれだ、僕をどうしようもないと、16番がスケープゴートにされたかな。
タイムアウトとってこないし、そういう判断をコートでしたんだろう。
すっげぇや、16番の人もよく生け贄になったな。
16番の尊い犠牲で不破っちも水を得た魚のようにオフェンスを、、、とはならない。トビ君が必死こいてディフェンスしてる。
反応はいいもの持ってるんだけど如何せんまだ線が細い。
フィジカルで不破っちに押しきられちゃうんだよなー。
後僕をディフェンスに参加させないよう16番もオフェンスに参加しない。
あれだ、新城戦でやられたやつ。
まさか超序盤でやってくるとは。
「僕のこと恐れすぎでは」
「、、、、」
ちっ、だんまりか。
とは言えそんな付け焼き刃に黙ってる僕ではない。
次のディフェンスマッチングではマークをトビ君とスイッチ。
「不破っちやい、もっと遊ぼうぜい」
どうする、どうする、、、、きちゃー!!
ビックリする程堪え症ないっすね(嘲笑)
正直黙ってオフェンスに参加しなければ、僕もディフェンスしないで大人しくしてたのに。
スティール(三度目)から速攻。
馬鹿の一つ覚えみたいにシュートに移行しようとしたら流石にチェックが入った。
反応して順応。フェイクにする。
要するにあんたらの動きが遅い。時間の感じ方が違うんだと思う。僕の反射神経と運動能力の賜物である。
ヘルプの10番をグッバイして11番の待つゴール下に単騎突入。相手の11番は僕のシュート速度を理解してかすぐに距離を詰めてくる。
おせぇ。けど僕はあえて相手の思惑に乗る。
選択肢を増やさせようと思う。
へい、キャプテン。
きっちり走り込んでた迫田先輩にアシストパス。
おお、迫田先輩ダンクかましてくれた。
いいね、上がるわ。
ここで大栄はタイムアウト。
まあ徹底して僕を締め出す方向でいくのであれば、僕にだって考えがある。それを部員に共有せねば。
不破っちは交代かー。
まあ僕が絡んだら何もできなかったしね。
大人しくできず返り討ちにされちゃったし残当である。
で、僕のディフェンスのマッチアップだが、先程から無茶苦茶ガン付けしてくる。長髪の11番が(愛称はやっくって聞こえた)
うん、試しに向こうのセンターに付いてみたんだ。
どんな反応するかなーって。
相手の身長は百春君と同じくらい。
僕は150cm位(四捨五入)
うん、完全にミスマッチである。
でもさ、僕と百春君は部内で一番1on1をしてるわけで、(百春君とのシュート力が壊滅的とは言え)圧倒的に僕が勝ち越してるわけである。
単独でも勝算は十分あるし、無策でこんなことをするわけもない。
案の定相手はローポスト目指して走ってきたがそこは僕がシールして粘着。僕に力押しとは片腹痛いわ。絶対に中に入れさせん。
力は0.9百春君とみた。なら余裕余裕。
「おま、マジか!」
「肉食え肉」
ローとハイポストに絶対入れさせないマンの完成である。
それでも長髪はミドルレンジでボールを受け取り、僕に向かってインサイドプレー。
言わずもがなのフィジカルブロックをするも、体勢を崩しながらもジャンプシュートに持ってく。
これ、百春君もよくやるんだ。全然入らないけど(迫田先輩とトビ君はたまに決める)
体勢無理繰り崩されて決められる奴って中々いないんだよね。
でも決める奴は決める。
この前の金髪のお兄さんはそうだった。だからもっと圧を強めたんだけどそれは割愛(高校生レベルだとケガ(相手の)
とファウルトラブルの懸念もあるし)
要するにこの長髪君のプレーは既知のプレーであり、予測可能なものなのである。
何が言いたいかと言うと、そんな大きな隙を当事者でもある百春君は見逃さない。
「まあうん、打つ気持ちはわかる」
複雑そうな表情をしながら百春君はヘルプのブロックショットを決めてくれた。
ちなみにはめ殺しの着想はチャッキーさんの西条戦でのアイデアから来てるらしい。さっきタイムアウトで百春君が教えてくれた。
流石に相手も唖然としてたっぽい。
次のディフェンスから僕に付かれたお相手は攻撃への参加が消極的となった。
それでも1ピリ終わって 24ー20 だから相手も中々やる。
うちが勝ってるとはいえ。
うちが勝ってるとはいえ(大切なことなので)
しかしマジでミスせん。
FTもきっちり全部決めてくる。
流石全国区。
僕もまだ味方へのパスを回して相手の脳内選択肢を散らし
てる段階とは言え、そこ以外の勝てる点でむこうは稼いでらっしゃる。
まあうん、僕以外全部穴だからね(身長という大きな穴に目を反らしながら)
と言うかミスマッチ煽りマンツーブロッキングはめ殺しは流石にすぐ対策された。
堂々と僕の前でシュートをバンバン打ってきた。
アウトレンジから。
当然ブロッカーである百春君らもヘルプを頑張ってくれたが、誤算は長髪君始めインサイドプレープレーヤーはアウトレンジにも決定力があることと、アウトナンバーを冷静に見定められたこと。
アウトレンジに2人(僕と百春君)で対応したら当然中のスペースが空くわけで、バンバン稼がれちゃいました。
、、、この作戦は相手の意表を付いたら止めにする方がいいみたいだ。故に2ピリは黙って相応の選手(但し身長差は十分に考慮する)にマンツーで当たることにした。
「、、、、」
「、、、、」
どうしよう、相手の10番何も喋ってくれない。
そのお陰か、周囲の声がよく聞こえる。
具体的には長髪君の『おら、そっちにゴールはねぇぞww』って野次が。
やべぇ、味方に野次入れてるぜあいつ。
イカれてやがる。
「あのー、攻めいかないんすか」
「、、、」
だんまりね。
じゃ僕も最低限シュートを打たせないようにしないと。
と言うかボール入れさせんようにしないと。
この人1ピリでシュート全然外さんかったし。
「お前、動けるね」
「ええ、そっちの動きが温いんで」
「言うね」
本音である。
北住の太郎君ばりに動くけど正直余裕。
最近思うんだけど逆にどのレベルなら僕は苦戦を覚えるのか。
困ったことに切実な悩みとなっている。
だから今度やるアメリカ行きの日本人選手との1on1は楽しみでもある。最も金髪の人のレベルを見るに残念な結果になるかもしれないが。
「あなたの現在地を教えてあげようか」
僕基準だけど。
「高校生という枠組みの上振れ。以上」
総評終わり。
同時に抜き去る。
反応できてるだけ大したもんだよ。
うちの連中もようやく反応示せるようになってきたぐらいだから。
やっぱ積み重ねてるものが違うかな。
でもあくまで高校生の枠組み。
いや、ちょっとその上の枠組みにも足入ってるかもだけど。
でも僕にとっては既知の範疇なわけでして云々。
更に相手の選択肢を散らすために面白そうなことをしそうな千秋君にパス。
千秋君もなー。
普通に視野広いし何だったら僕よりパス上手いんだよね。
そのせいか実質うちは2つの司令塔がゲームメイクしてるようなものでして。
千秋君からの熱いリターンパスを貰って悠々と僕はスリーを決めましたと。
インサイドまで行ったらそりゃ勝負と見るわな。
人を欺くのがお上手。
なんて、良い感じで勝ってる部分がポイントポイントではあるんだけどやはり全国区。満遍なくしっかり強い。
特にインサイド陣。
上背こそうちの方が高いが上手さがダンチだ。
ブロックを避わす技術、シュート範囲、壁役、スクリーンアウト。
むら無くきっちり押さえてる上、特にシュートを落とさない。ここで差がつく。逆言うとうちもここを押さえれば僕におんぶに抱っこじゃなくなるんだよなー。
北住、西条もそれなりに上手かったがここはそれ以上に個の力が一回り上。
そんな相手ばっかりだね君達。大切にしな。
で、2ピリ終わって52-53
リード奪われちっった(テヘペロ)
いや本当に上手いわ。
チーム全体でマジでシュートを落とさない。
僕も打つべきシュートは落とさないから負けてるつもりは無いけど。
七尾さんにも『車谷君の決定力で勝負は拮抗してる』と言われてるし、引き続き頑張りますか。
後はディフェンスを頑張ってくれればと言いたいとこだけど、トビ君と迫田先輩の交代で機動力とディフェンスの締まりも今以上に悪くなるだろう。
代わりに入る安原さんと茂吉君じゃタイプが全然違うし。
特に不安なのは茂吉君。
彼、インサイドの守備も並だし、フットワークの弱さとスタミナの無さから広い範囲で守らせるとすぐ消耗するし。
並の高校のインサイド陣となら勝負になるけど、大栄は皆アウトレンジも決めてくるから多分茂吉君にはきつい。
それでも疲れた迫田先輩使うよりかはって判断なのだろう。
スポット運用から実績を積み上げるしかないね。
「気張りな、茂吉君」
「分かってる」
ただまあ賢いからね、彼は。
この課題を解消しつつビックリするくらい伸びてくれそうでもある。
後でかいってのはそれだけで才能だ。
魚住育てた田岡さんもそう言ってたし。
でもでもまさか僕のパクりを大栄がするとは思わないじゃん。
安原さんじゃなくてまさか茂吉君のとこにペネト仕掛けて崩してくるなんて。
挑戦的過ぎてウケる。しかも嵌まっちゃったし。
相手の23番(てつおって言ってた)のドライブなんて潰しちゃえばいいのに、まあ茂吉君じゃ無理か。
安原さんならギリ対応できそうなのがもどかしい。
しゃーない、稼ぐか。
「来いよ」
「じゃ、遠慮無く」
この人もぶれんなぁ。
健気にディフェンスするけど悲しいことに、ドライブフェイクフェイクバックステップワンモーションシュートなんですわ。
要するにスリー、と。
「全国区って聞いたけど期待外れっすわ」
「言ってろ」
この人からぼこすか稼がせて貰ってるけど大栄はこの人を代えようとしないし、この人も全然折れる気配がない。
目指してるものでもあるのだろう。
僕の一挙手一投足を見逃さまいとしている当たりに意識の高さを感じる。
こいつはいずれ上がってくるのだろう。
最もその時に僕に届いているかは分からないが。
そう言う意味で言うと不破っちもいいもの持ってるだけに惜しいな。
ドライブに固執せず僕に挑めばいいのに。
ドライブ縛りなんてマゾゲーで僕と張ろうとするなんて舐めすぎ。
あ、また茂吉君が23番にやられてる。
けど流石に千秋君の介護が、、、わーお、見越したかのように長髪君にパス供給。
そのままダンクいこうとしてるけど、百春君が見過ごすわけもな、、、うわースコープショットで決めたわ。
で、接触した百春君もファウルと。
ん、百春君も3つ目じゃん。
あかん、交代でし、交代。
流石にこの後の指示出しのため七尾さんはタイムアウトを取ってくれた。
「夏目君が入ります。安原先輩はそのままで。展開を早くしましょう」
「皆が元気な内にって意図だね」
「奈緒ちゃん、相手を揺さぶれるとは思えませんが」
「チームとしての手数も増やさないといけません」
「ふむ。となるとトビにもっと働いて貰わんとな」
「あんさん痺れるパス頼むで。後そこののっぽ。追い付けんようならどつくぞ」
「言われ無くても。千秋先輩。僕も勘定に入れてください」
「生意気な1年坊達だな。気に入った」
「俺も、と言いたいが俺ぁまだまだ攻め入れるエリアが狭いからな。狙った時にパスを貰えりゃと思う」
「殊勝だな。ところで空坊。俺のパスはいらんか?」
「どうせ半分以上は僕が貰って決めると思うんで。確実に点を稼げるんであれば僕じゃなくたって構いません」
だから僕以外の連中。
絶対に外すなよ。
タイムアウト空け。
先陣を切るのはトビ君。相手は20番(横山パイセンってメンバー表に書いてあった)のシュートフォームが上品な人。
品が良すぎて眠たくなっちゃうね。
でもってトビ君のオフェンスのが上かな。
20番は捕捉しきれてないし。
ミドルレンジのシュートまで決めきる当たり成長したね。
さて、問題のディフェンスだが安原さんにチビ鉄君を徹底的にマークして貰い、千秋君と茂吉君に長髪君と地味顔君の相手をし
て貰うことにした。
平面の勝負なら茂吉君よかましだけど、それでも良いように崩されてしまう。
インサイド陣が崩壊気味だ。
最後は地味顔↔️長髪のコンビネーションで決めきられるのがパターン化してしまっている。
ま、やられるものはしゃーない。
お返しとばかりに僕とトビ君が両翼を駆け千秋君がボールを運ぶ。
この速攻は何度も練習した。
意外と視野が広い茂吉君にパスが供給され、流れるように安原さんにボールが渡る。
相手のディフェンスが付く間もなく千秋君にボールが戻り、僕ではなくトビ君にボールが渡る。
そのまま20番を振り切りミドルレンジからシュート態勢。
だがここでも長髪君がシュートブロックに入る。
でも、トビ君が一枚上手。
良く見ていた。
僕にパスを供給。
無難に打ってもいいけど勢いづけたい僕は敢えてドライブで切り込み、フィジカルで地味顔のヘルプを押し込み、ブロックの軌道を外した放物線でシュートを放った。
後は点取り合戦である。
何時まで経っても互いのシュートが外れないまま3ピリが終了。
ここまでで80ー80
3ピリでこれである。