ーーside 酒巻2
この試合の意図は2つ。
1つは高さに対する戦い方の学習。
もう1つはどうしようもない理不尽への対応について。
車谷空。
地区大会の様子を見ていたがとんでもない化物だった。
それも白石や不破が可愛く見えるくらいに、だ。
堀江のやつ、とんでもない置き土産を遺して逝きやがったな。
あいつのDNAをどんだけ弄ったらこれ程のモンスターが生まれるのだろうか。
「白石、このまま最後までいけ」
「、、、ここまで虚仮にされたのは生まれて始めてだぜ」
「だろうな。乗り越えろ。お前の望む世界はこんなの日常茶飯事だ。
そう言うことだ不破。このままプライドに殉ずるか、這いつくばってでもコートに出るか。お前の口から聞きたい」
今出てる連中には悪いがスペックでみればこいつは上の上。
チームとして戦えるのであれば勝率が上がる。
指導者として、こいつの分水嶺はここでの選択だと思っている。
チームとしては一択なのだが、俺の個人的主観で見るのならどちらを選択したって面白い成長を遂げると見てる。
いずれにしても本気で葛藤するのであればまだまだ成長の余地はある。
「、、、呼人。俺ぁバスケはスキルが全てだと思ってる。ぼこぼこにされた今だって変わらねぇ」
「ああ」
「全く通用しないなんてこと考えたこともなかった。
けど考えざるを得なくなった。
このままふて腐れても先がねぇ。今あるスキルを活かしてうやれることをやるしかねぇ」
「気づくのがおせぇ。白石がやってんだそんなこと」
「んだ。だからこそ力を貸しておくれ、、、ください」
「口の聞き方も髪色も気に入らねぇしお前使えねぇんだから、お前が俺に力を貸せ。『はい』って言え。じゃなきゃコートにくんな」
「はい」
「鉄男、交代だ」
「うっす」
白石がねじ伏せたか。
これでどこまで戦えるか。噛み合わせが良けりゃいいんだがな。
相手は、、、変わらない。
すげぇな。このまま真っ向勝負か。
あの金髪が戻らないのは助かった。
あいつもヤバい。反応速度も跳躍も並じゃない。
シュートこそ打ってこないがブロッカーとして見ると末恐ろしい。どう鍛えりゃあんな尖った成長をするのか。八熊がブロッカーに特化するとあんな感じになるのか。
さて、後は空君がどっちに着くかだが、、、不破に来たか。
まああっちから見たらまだ穴だと思ってるだろうな。
、、、よし、白石に回した。
夏目じゃまだ抑え切れ、、マジかよ。
ここに来て夏目も白石を捕捉しだしてる。
白石が決めきると思ったがインサイド陣に回して糸賀が決め切る。
ふむ、相手のインサイド陣がガタガタと言うのもあるが、うちのインサイド陣は小兵ながら今日はよく頑張ってくれてる。
ここの負けは試合の敗北に直結するから采配も気を付けないとだ。
しかしそれを嘲笑うかのように空君が悠々とスリーを決め返す。
これでもう何本目になるのか。もはや誰にも止められない。
「寄越せ!」
白石の声に反応して不破がボールを回す。
ドライブ仕掛けて自ら、と見せてフェイクを挟んで横山に供給。
リーゼントのディフェンスも悪くはないが横山の方が上手だ。バックステップで距離をとりスリー。よし、稼げるところで稼げ。
それでも空君が難なくスリーを返す。
チェックを厳しくしても避わして無理矢理スリーに持っていってしまう。
、、、スリーを弾くためだけに2枚付けられるか。
いや、夏目にもチェック厳しくしてか。
両者のスリーを弾くためだけに3枚と考えりゃギリギリ計算はできるか(うちが得点を落とさないことが大前提だが)
「横山!不破!」
この声で連中は俺の意図を汲む。
夏目、空君のスリーだけを阻むシフトを敷く。
流石の空君もスリーは厳しいとみて中に切り込む。
パスを出すかなと思ったが自身で決めてくる。
理想は空君から供給されたところでシュートを断つことなんだが、やはりそこまで乗ってくれはしないか。
だがうちの強みは、、、、
「やっく!」
「うっせぇ」
インサイド陣のアウトレンジ。
ここが明確に勝ってるポイントだ。
ーーside 八熊
まさか俺のアウトレンジが勝負を左右することになるたぁ思わなんだ。備えありゃ憂いなし。糸賀、お前もやれよな。
とは言っても向こうの得点原は一向に落とす気配がなけりゃ、止められる手立ても無い。
逆にこっちも落とせなんだ。
白石の馬鹿はやられっぱなしで、マジウケるぜ(俺もやられたが)
しかしあのチビやば過ぎる。
シュートは全く落とさねーしドライブは鋭すぎだしフィジカルにいたってはゴリラだ。俺を易々ぶっ飛ばすやつなんて全国見たっていねぇぞ。
それに比べたらこのひょろのっぽなんて相手じゃねぇ。
ボールタッチこそ繊細だがそれだけだ。後は身長任せで動きもとれぇ。明確な穴だ。
アフロだけじゃフォローしきれんだろうに、なんか意図でもあんのか?
パンチパーマか金髪入れた方が俺的にはきついんだけどな。
特に金髪はやべぇ。
早々にファウルトラブルで引っ込められて良かったぜ。ディフェンスあいつ固かったからな。リバウンドも跳ぶし。身体のバネがおかしいぜあいつ。
お、不破ぴょんからまたパスだ。
これでチビに突っ込んだら呼人がやる前に俺が○してた。
流石に警戒したアフロが寄ってきたから。横山に繋ごうと思ったがあいつのマークもリーゼントが鬼チェックしてるし、安牌で稼がせて貰うぜ。
「糸賀ぁあ!外したら○すぞ!」
「うるせぇよ」
流石と言うべきか。
あいつも外あるしな。のっぽのショボディフェンスじゃ対応できねぇよ。
白石に繋ごうにもマーク振り切れてなかったから無理だし。今日は1年に抑えられてクソだせぇわww
このチーム、全体の動きは素人くせぇとこもあるのに(リーゼンとか)妙にマンマークのディフェンスは上手ぇ。
ちぐはぐ過ぎだろ。
まあいいか。
俺らは俺らで仕事こなすだけだし。
外さなければいい。
あ、後白石はいい加減仕事しとけ。
ーーside 白石
俺のバスケ人生史上最も屈辱的な1日だった。
今日に至るまで明確に俺の敵になるような奴なんて、全国クラスでも早々いないと思ってた。思い上がりだった。
とんでもない化物が地元神奈川にいた。
マークは鬼キツいし、フィジカルはゴリラ過ぎて思ったポジに入れさせてくれねぇし。まともにシュートまで持っていかせてくれない。
打たされるシュートじゃ精度が落ちて勘定に上げられない。
そんなオフェンスを強いてくる奴があろうことかチビときた。
どんな奴にも負ける気がしないと思ってた俺が、こいつには全く歯が立たない。バスケ感を壊された気分だ。
「どけよ、1年」
この広島弁の1年だって並の選手じゃない。
不破にこそ劣るが俺のマークを十分にこなせている。
「あのチビにいつもどつかれてんじゃ。易々やられはせんで」
チームとして見りゃまだまだ三流だがあのチビ一人だけでうちとタメ張るなんて馬鹿げてやがる。
個々で見たってチビ以外にも光るもの持ってる奴はいる。
随分尖ったチームだ。
それでも俺のやることは変わらない。
試合を決めるシュートを沈め続けるだけ。
並ではないとは言えさっきのチビよか10倍ましだ。
「お前らの現在地を、、、」
なんて言いかけて止めた。
こんな競った状況で言っても何のマウントにもならねぇ。
結果として互角の勝負なのだから。
目の前の一年に揺さぶりをかけで、できた隙にシュート捩じ込む。
反応を示すだけで驚きだ。
身体が追い付けば俺や不破だって只じゃすまない。
普段どれだけあのチビに追い込まれてるのか。
こいつの所作だけで十分伺える。
次会った時の成長具合が恐ろしい。
素直にそう思った。
ーーside 不破
1ピリ早々に引っ込むことになってしまった。
それも実力と俺のスタンスに見切りを付けられる形で。
相手がでかかろうが、速かろうが。
今までは俺の実力でねじ伏せて結果を出してきた。アメリカだろうが日本だろうがそれは変わりない。
ましてや日本はバスケ後進国。
アメリカの連中より卸すのは容易だった。
風向きが変わったのは高校での初公式戦。
さら髪の人はヤバい位に上手かった。
特にディフェンスの反応が鬼速だった。
日本の。それも地区レベルにすげぇ奴がいると思ったが最終的には適応して試合内でリベンジは果たせた。
次会う時が楽しみだ、なんてことが考えられるくらいの余裕があった。
呼人が『麓すら、、、』なんて苦言?(意味は知らん)を呟いていたようだが、刺さりもしなかった。
けれど今日は違う。
開始3分で俺はおチビの皮を被った怪物に格付けを完了させられた。
圧倒的な反応と、身体不釣り合いな強靭過ぎるフィジカル。
ドライブ、シュートの異様過ぎるモーションスピード。
そして外れの無いシュート精度。
何度も勝負を挑んで全く歯が立たなかった。
次も挑もうとした矢先に交代を告げられた。
「バスケのスキルだけ見りゃお前は大栄では上澄みだ。ただ結果を残してるのはお前以外の連中だ。意味は分かるな」
無策に突っ込んだ挙げ句何度もおチビに止められている。
結果がこれじゃ代えられたってしょうがない。
それでも先輩らみたいにおチビにマークを付かれたら黙るなんて真似できなかった。
「結果を出せば文句は言わねぇ。ただしそれが通用しない理不尽に対しての最適解は少しでもゲームから遠ざけることだ。やっくのマークは露骨過ぎだが」
「、、、、」
「立場が変わっただけだろ。いつも蹂躙してたお前が、今日はその番になっただけだ。こんなのもっと上じゃ日常茶飯事だ。できるできねぇじゃねぇ。やるかやらねぇかだ。やらねぇってんなら今日の大栄にはお前の居場所はねぇ」
何も言い返せない。
結局おチビ相手に結果を残せていないから。
そしてあれを何とかする未来図を全く描けない。
くそ。
こんな経験向こうでも味わったことねぇよ。
白石先輩だって同じことをされているのにこの人はすんなり受け入れてやがる。プライドは無いのかよ。
、、、、fu○k!
やれることからやるしかねぇ!
そこから本音をぶちまけた。
周囲の力だって借りるしかねぇ。
静かにキレてた白石先輩の言うことだって聞いてやる。
俺より格下のメンバーにだってパスを供給してやる。
それでおチビと戦える土俵に立てるんならやってやるよ。
「いやー、一番楽そうなのが戻ってきたね」
「、、、、」
「何だよだんまりかよ。プライドも捨てたの?くっそつまんね。
うちの木っ端こかしておさるの大将気取ってたっぽいけど、あんなのただの尖兵だから。勘違いすんなよど雑魚」
「、、、、」
「それと僕をチビって呼んだ奴は徹底的にぶちのめすことにしてんだわ。
理由?まあ、DNAを侮辱されたから、かな。だから覚えときな。次会う機会があったら言動には気を付けろよ」
この後のことはあまり覚えていない。
機械的なプレーのみしか俺には許されなかった。
唯一分かったことはあいつとは隔絶した距離感の実力差があるということだけだった。
ーーside 上木
昔、先生に聞いたことがある。
「先生の子どもはバスケ上手いの?」と。
「うん、ばりうま。君とおんなじ位に」
聞くと身長も僕と同じくらいで、彼は付きっきりで先生から教バスケを教えて貰えていると聞き、子どもながらに嫉妬した。
いつか会って、ボコボコにしてやりたい。
それで先生が振り向いてくれるわけ無いのに、そんな醜いことを考えていた。
でも、そんなこと考えられなくなる位に、容赦なく時間は流れる。
繰り返す挫折、豹との出会い、呼人の檄、先生の死。
それなりに底辺に近いところから這い上がってきたと言う自負がある。後は機を伺、、、いや作り出す。
そんな野心を持っていたところに組み込まれた練習試合。
先生の忘れ形見を僕は目撃した。
「なんだよ、それ」
先生のバスケはスピードとスキルで全員をぶち抜きかつ外からも狙うスタイル。僕は全てを教わったつもりでいる。
そこから自分のスタイルに落とし込み現在に至るわけだが。
同じ教えを受けたあいつは明らかに違う。
何なら僕が見切りを付けたフィジカルという面に真っ向から取り組み、八熊先輩すら軽く吹っ飛ばす膂力を身に付けていた。
知らない。
あれは先生に教えて貰ったことがない。
と言うか先生でさえフィジカルは最低限足を引っ張らない程度、としか言わなかった。
それをどういう発想であそこまで鍛え上げるに至るのか。
意味不明である。
いずれにせよ言えることはあいつは誰よりもずーっと先の価値観と実力の域でバスケをしているということだ。
豹や白石先輩より圧倒的に上手い人は初めて見た。
試合に飛び込みたい気持ちもあったが、流石にここまでの接戦を演じてた両者の輪に入る程厚顔無恥ではなかった。せめて試合後にワンチャン話を聞ければとは思い今に至るわけである。
「いや、生前母さんが弟弟子のことについて話してたから」
と言うか向こうから来た。
曰く先生のアルバムとかに僕の写真があったとかで先生の旦那さんから話は聞いていたらしい。
「母さんからも色々言伝てを遺されていてね。君の境遇についてはすでに知っちゃっているよ。そのことについても『亡くなっちゃったから許して(テヘペロ)』ってメモが残ってたんだ」
「テヘペロって、、、」
「母さんらしいというか。そういうことだから何か相談事とかあれば、まあうん、乗るから。タメでもあるし」
「どうしてそこまで鍛えられたの?」
「どうしてときたか。うーん、まだ話すには距離感が、、、でも母さんもかなり気遣ってたし、、うん。
言える範囲で言えば必要だと盲信してたからかな。夢が叶う、的な。それこそ人の生き死にがかかってるつもりだったよ」
自分の境遇を知ってなおこんなことを言い切った。
きっと言葉を選んでる当たり本音なのだろう。
だとしたらハングリー精神何かじゃ生温い熱量。試合での結果がその証明だ。
「今日の試合は痺れた。うち相手に、君一人で決めたようなものだから」
「まあね。僕を何とかする以前に総合力で立ち向かって来た点は評価できるね。それが始めからできてたら結果は変わってたかもだし」
最後の最後まで競ったゲームだった。
それこそ4ピリはお互いのチームに攻めについてはミスが無かった。
それが最後まで続いただけ。
うちの攻めの最後は白石先輩が無理矢理スリーを決めた。
で、残り5秒あるかって状況で一人でスリーを返した。
それでゲームセット。
大栄は一人のプレーヤーに80点近く失点を重ねた。
止めることも、ブロックすることもできず。打ったシュートが全てリングに吸い込まれる。
理不尽な個に敗北したのだ。
「技術的なことは君に聞けることはないかな」
「多分ね。今更フィジカル練習を精力的に取り入れても、君の選手設計が大幅に狂うだけだと思うから。それでも良ければ助言はするよ」
「いや、いい。今ある武器を昇華させるから」
「その意気や良し。最も、僕には届かないと思うけどね」
「、、、自分の個の力では正直限界がある。だから他力を有効に使う。それで君を含めたチームに勝とうと思う。うちにはそのポテンシャルが十分にあるから」
「なら先ずはチームを掌握しなければだね。
取り敢えずこの後休憩挟んでハーフゲームやろうって提案したから。対戦楽しみにしてるよ」
「、、、お手柔らかに」
「はっはっはー。獅子の子落とし獅子の子落とし」
この後無茶苦茶ハーフゲームでボコボコにされた。
さらにその後の個人的1on1でもボッコボコにされた。
それでも有り難いことに、彼は全力で僕を叩きのめしてくれた。
この日僕は現在地を改めて知れたのだ。
ーーside 峯田
このまま大栄を去るのはダサいと思って。
なりふり構わず必死で練習に食らいついて。
恥も外聞も底辺な俺にとってこれ以上下は無い。
リスタートを切った俺の初練習試合(出場はできないけど)の場にあいつはいた。
「クズに校は高さがある。
それともう一つ、理不尽を体験してこい」
監督が言った理不尽は茂吉のことだと思っていた。
実際はあのチビのことだったんだけど、まあそれはいいや。
俺が驚いたのは後半から出た茂吉が殆ど何もできなかったこと。
この一年、あいつは何をしていたのか。
いや、先輩達が上手いと言うのもあるんだろう。
それでも一つの到達目標であったかつての俺の頂きを見ると、やるせない。
やるせないんだけど、あいつも必死にもがいている。それは分かった。
でかくても、そこに胡座をかくだけではダメ。先輩達が証明してる。
白石先輩みたいに俺が動ければ?
でもあの理不尽には抑えられる。
難しい。俺の目指すべき方向性はどこだ。
うーむ。
試合出れんかな?
練習試合の後にハーフゲームをクズ校さんが提案してくれた。
うちは練習きついから下っ端としてはゲーム形式の方がありがたい。
最もそれは向こうも同じことらしい(相手さんの試合に出て無い人も同じこと言ってた)
ただしあの理不尽君は出ずっぱらしい。
あの人1試合フルで出たと思うんだけど、え、全然余裕?
さいですか、、、
お互い控えメンバー中心の布陣で臨んだけど、やはりうちの完敗だった。理不尽君は本当に理不尽である。
救いはうちのちみっこの縦パスが思いの外刺さったことか。
最も、理不尽君がすぐ戻るようになってメタ張られるようになってしまったんだけど。
そんな中俺はと言うと、可もなく不可もなく。
こちらのおチビさんのパスのお陰で点には絡めたけど、理不尽君に全て持っていかれた。
流れでマッチアップできたが、馬鹿速く、馬鹿強い。
接触したら盛大に吹っ飛ばされた。八熊先輩とぶつかった時も驚いたけど、理不尽君はその上をいった。違いが分かるくらいには理不尽君の方が理不尽だった。
まともにディフェンスできない。
どの層のプレイヤーなら理不尽君とマッチアップできるのだろうか。
また、うちのちみっこの真似して理不尽君も縦パスし出した時は驚いた。速度がやばい。
クズ校の髭の人だけしか反応できてなかったけど。
向こうも色々試してたっぽいけど理不尽君は一度もコートの外に出ることは無かった。
結局ハーフゲームもクズ校に押し切られてうちの負け。笑うしかない。
今後県予選を勝ち抜くにはあれが立ち塞がるのか。マジやばい。
、、、まあ相手の強さ体感できただけでも御の字か。
ーーside 安原2
試合には勝てたがそれは空坊の実力。
俺に何ができたかと言うと、せいぜい相手に抜かれないようディフェンスしただけ。
奈緒ちゃんは「及第点です」と言ってくれたが俺の心には刺さらねぇ。
「ハーフゲームは車谷君と先輩達四人で臨んでください」
空坊にナベ、チャッキー、迫田、そして俺。
迫田や空坊以外は素人組み。
何ができる。今の俺に。
チャッキーは前の試合から何か自分の長所を掴みかけてるっぽい。
ナベもここ最近ボールへの反応が異常にいい(野球やってたおかげもあるのか)
俺は?
チャッキーやナベみたいにこれと言って自覚できる長所は思い当たらねぇ。
けど短い期間だが練習の大半はあの化物と1on1をやって来た。ディフェンスだ。これは自信がある。
さっきの試合だってパスこそ回されたが綺麗に抜かれるなんてへまは犯してねぇ。、、、だから及第点か。
抜かれないで及第点。
じゃあ次はどうすりゃいい?
「空坊。嫌なディフェンスって何だ」
「自分がやられて嫌なことです。シュート打ち辛くなるとか。
ああ、次の課題か。抜かせないは最前提として、ボール入をれさせない、シュートにいかせないを意識するといいですよ。さっき僕が大栄のオレンジ髪にやったことです」
確かに、さっきの試合は抜かせられないことに全集中だった。
じゃあ次は空坊がやってたことができればいいのか。
よし、+αを目指す。
考えてみたら空坊の水準は馬鹿高ぇんだ。
どれか一つでも空坊の水準に達したならそれは空坊に対抗し得る武器となる。
つまるところ空坊水準のディフェンスは不可能だった。
そもそも向こうは全国区の強豪。こっちは経験凡そ3ヶ月の素人。当然、やられる。
それでも幾らかシュートへの動きは阻止できたと思う。
元々武道を齧ってた身。千秋や百春程ではないが身体の当たりには自信があったし、空坊のぶつかり稽古で鍛えられた分の成長もあった。
相手のフィジカルともタメは張れてたと思う。
それでも決めてくる当たり経験の壁と言うのは厚かったが。
「中々嫌なディフェンスじゃねぇか」
「うるせぇ穣。お前もあのとんがり頭に簡単にやられてんなよ」
始めこそ先の試合と同じような点取り合戦だったが、向こうのチビととんがり頭が絡みだしてから妙にテンポが早まり出した。具体的にはパスが容易に通り出した。
空坊のマッチング相手起点だったからかなり驚いたが、空坊もディフェンスをよりきつくしてパスすらさせなくなった。やっぱりあいつは頭がおかしい。
相手を真似して空坊もすげぇ速いパスを出したけど反応できたのはナベだけ。
そのナベもボール弾いてたからあれだけど、あのパスが成立したらフリーだったのだ。故にナベもかなり悔しそうにしてた。
あの攻め方も一つの手段として確立できたらかなり面白いな。
「ナベさん、今度練習しましょう。と言うか攻めの手段として確立させます、、、イイナコレ」
「おう!」
案の定だった。