そのあひる、狂暴につき   作:グゥワバス

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閑話・あひるの皮に騙されたふれんず6

ーーside 五十嵐

あのチビが高橋先輩達に引導を渡した奴。

初対面じゃ分からねぇよ。小さ過ぎてタメかと思っちまった。

 

ただそれが良くなかったのか。

周りのでかい奴を押し退けて俺にメンチ切りやがった。

 

ちょいびびったけど、大した身長じゃねぇし鼻で笑ってやった。

 

 

その事について高橋先輩から小言を貰った。

珍しいのは児島先輩も俺に注意したこと。

 

この人の性格上『もっと煽れww』とか言ってきそうだったけど、神妙な面持ちで「御愁傷様だぞ、、、気を張れ」なんて締め括ったから正直俺は良く分かってなかった。

 

 

「コータ、合わせろよ」

「分かってるよ」

 

 

俺のマッチアップはでかいアフロのおっさん。

あのチビスタメンじゃねぇのかよ。

期待外れだぜ。

 

軽い気持ちで試合に臨んだ。

高橋先輩の集めたこのチームならいいとこ行けんだろ。

そんなノリ。

 

気の緩みを見抜いたのか、アフロのおっさんに軽く抜かれる。

 

つーかあの巨体で動き機敏過ぎだろ。

そのままアウトレンジでシュートを沈める。

ヘルプが来る間もない。

 

数秒の出来事。

 

 

「コータ、簡単にやられてんなよ!」

「わりぃカズ。分かってるよ」

 

 

お返しだ。

左右振って揺さぶれば余ゆ、、あれ、このおっさんきっちり付いてくる。

嫌な予感がしたため手詰まりになる前に高橋先輩にパスを供給。

 

ノッポのディフェンスは、、並み。

高橋先輩なら余裕だ。

 

金髪がフォローに入ったけど先輩は冷静に児島先輩に繋ぎそのまま得点。

 

高橋先輩ならそのままゴールまで持ってくと思ったけど。

 

 

 

「五十嵐よぉ。高橋が児島にパス繋いだ意図は分かるか?」

「何すかね。盛り上げるよか確実に得点することを優先したんですかね」

「、、、分かってんじゃねーか。なら気ぃ抜くなよ」

 

 

味方のおっさんは怖ぇからとりあえず敬語。

ってか気ぃ抜いてるつもりは無ぇんだけどな!

 

 

「コータ!」

「あん、なんだよ」

 

アフロのおっさんが抜きにかかってきたけどその程度のスピードなら何とか。

と思ったけどカズのマッチアップ相手のアームガードの奴にパスを通してしまった。

 

まあ抜かれなかったし、カズが何とかしてくれんだろ。

 

 

 

が、目論みが甘かった。

アームガードはカズを一瞬で置き去りにして一人で持ってきやがった。

ドリブルの切れとシュートの安定感がヤバい。

ワンプレーで分かった。全てがカズの上位互換だ。

 

あれも高校生ってマジか。

あんな上手ぇのもいんのかよ。

 

 

「パスも簡単に通すなよ。あのアフロはパスが激ウマだからな」

「あの図体でマジっすか」

「得点力も磨いてきてるっぽいし。お前よかスピード無い分他は上だと思えよ」

「け、高いだけっすよ」

「任せたぞ」

 

アフロのおっさんにアームガードの奴。

金髪のディフェンスもいい反応してたし。

伊達に高橋先輩らを負かしてるわけじゃないんだな。

 

 

うちのおっさんとマッチアップしてるパンチパーマの奴も悪くない動きしてるし。

何だかんだでうちのおっさんも県ベスト4の高校のキャプテンだぜ。逆に何で自分とこの高校で参加しなかったのか。

そも冬のウィンター予選だって出場資格あんだろうに引退とか意味分からん。

 

 

「カントリーボーイ。試合中に考え事かね」

「なんだよ」

「今日のうちの目標は圧倒だったんだが、思った以上に競ってるため、うちの暴君がお怒りなんだ」

「はぁ?意味分からねぇよ」

「つまりだ」

「花園!」

 

 

やべ、パンチパーマからのパスはないものと思ってた。

あいつ、うちのおっさんに固執してると思ってたし。

 

誰にパスを、、、はぁ?

 

自分でジャンプショットを沈めた。

この高さは俺には無理だ。

 

 

「高さと言うのは残酷だということだ」

「ーー!!」

 

 

野郎、ぜってー許さねぇ。

けど高ぇのはどうしようもねぇ。

、、、背に腹は変えられねぇか。

 

 

「高橋先輩、ちばのおっさん」

「あん?」

「どうした」

「お願いが。申し訳ないすけどアフロのヘルプお願いあいていいっすか?」

「、、、どういう風の吹き回しだ?」

「パスもシュートも高さは俺にはどうにもできない。けど、ここから絶対抜かしはしない」

「ふん、高橋も俺も始めから言ってんだよ。児島とお前の相棒に声を掛けないのは何故だ」

「二人は特にマッチ相手に掛かりきりだから。特にカズはそんな余裕ねぇ」

「妥当だな。分かった、その言葉忘れるなよ」

 

 

 

そこから無我夢中だった。

アフロのおっさんの一挙手一投足を見逃さない。

高橋先輩が言ってた通りパスが上手いお陰か視野が広い。スピードは無ぇが切れはある。が、何とかなった。

 

懸念は力押しだったがそん時はフォローに入って貰った。

 

俺個人としては抑え切れなかったと言っていい。

それでもやれることはやった。

 

ちばのおっさんも高橋先輩も「ギリ及第点」と見てくれた。

 

22ー18でまだ負けてるけどまだまだ終わらせない。

 

この時はまだ『いける』と思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「○す」

 

後半僅か数秒の出来事だった。

俺のマッチアップがあのチビに代わっていた。

 

高橋先輩や児島先輩からそうなることは予め言われていたからマッチアップ自体は驚いていなかった。

 

けどその実力は予想外であった。

 

早過ぎるドライブは一瞬で俺を置き去りにして、高橋先輩のヘルプが追い付く前に打ち切られたシュートは当然のようにリングを抜けていった。

 

馬鹿速いドライブとシュート。

身長は俺と変わらないのに、何なんだこいつは。

 

 

「何もさせない」

 

 

ボールを受けた瞬間から付かれた。俺だけにオールで当たってきてる。

抜くか、回すか一瞬悩む。

 

瞬間、詰められる。

反応が化物染みてる。

 

なす術無くボールを奪われ、ゴールに向かう。

幸いにしてちばのおっさんがまだゴール下にいてくれたから、ヘルプに入ってくれた。

 

ちばのおっさんが吹っ飛ばされた。

訳が分からなかった。

 

そもそもあの身長で、ちばのおっさん相手にインサイドプレーが成立してしまっていることに驚きだし、それを一蹴してる様子にも驚きだった。

 

僅か十数秒の間にあのチビは5点を稼いだのだ。

 

 

もう一度ボールが俺に回ってくる。

絶対取り返す!

 

今度は始めから攻めっ気全開で掛かる。

振り切るどころか簡単に正面に入られ前に運べない。

 

左右に揺さぶっても反応が無い。

抜こうとしたら、、、ボールを奪われた。

 

ゴール下はちばのおっさんと高橋先輩。

高橋先輩をドライブで振り切る。

 

けど位置はゴール真下。

ちばのおっさんが受け止めようとするも、さっきと同様交通事故にあったかのようにぶっ飛ばされる。

 

もう一度高橋先輩がブロックヘルプにきたけど例の馬鹿速いシュートをすでに打ち切られており更に加点。

 

 

1分もしない内に7点。

タイムアウトを取らざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、俺は。

俺達はあいつに対して為す術を持っていなかった。

 

あいつが俺に宣言した通り俺は何もさせて貰えず。

 

パスを何とか通せても、ドライブ、はたまたシュートまで悉く封じ込まれた。

 

挙げ句オフェンスはあいつの独壇場。

ドライブは止められない。

シュートは落とさない。

 

何度かとんでもないスピードの縦パスも供給された。

決まってその時はカズがひげのおっさんにオフボールで千切られた時供給されていたので、カズも厳しく付こうとしていたが、前半にアームガードの奴に振り回されていたため、体力的にそれも厳しかった。

 

 

結果が62ー30。

後半10分で40点稼がれた。

 

言い訳になるが、高橋先輩、児島先輩、ちばのおっさんまでもが、あいつだけじゃなく、各々のマークマンに抑えられていたのが印象的だった。

 

 

 

「この即席チームでお前に悪く言う奴はいないよ。俺らだって後半は抑えられているからな」

「同意にゃん」

「とは言っても納得できる性格じゃ無ぇだろ、お前。唯一良かった点と言やぁ、、、」

「まああれだけ僕にボロカスやられてはいたけど、最後まで立ち向かってきた気概は買いますよ」

「だとよ」

「ーーーーッ!!」

「交代要員が無いって状況下で最後まで気持ちを切らさず戦った点だけは評価するよ、

 そもそも年下だし、少し熱くなったってのもあるしね。まあそんな情け掛けられても悔しいだけだと思うけど、僕の溜飲は下げてやるよ」

 

 

何も言い返せない自分が悔しかった。

それでも聞いておかないといけない事がもう一つある。

 

 

「お前、名前は」

「敬語使えクソ雑魚。

 、、けどまあ今日だけはその奮闘に免じて許す。

 車谷空。次顔合わせた時舐めた口調だったら物理的にぶっ飛ばす。いいね?」

 

 

この日最後に覚えたのは天敵の名前と、、、人間は顔面を片手で掴まれても浮かされることがあると言うことだった。

 

、、、そりゃちばのおっさんも吹っ飛ばされるわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーside 千葉

インターハイの県予選で負けて、燃えかすになっているところを高橋と児島に声をかけられた。

 

とりあえず錆び落としに大会に出るから付き合えと。

 

就活に向けて動き出していた俺はにべもなく断ったのだが、結局押しに負け無理矢理連れられた練習試合の光景を見て驚愕した。

 

対戦カードはクズ校対横浜大栄。

曰く、俺らに勝った高校同士の対戦だと。

そう言えばこいつらはクズ校に負けたらしい。

 

共に俺らに勝ったとは言えクズ校は無名校。

高さはあるが県予選に名前を連ねていないということは地区でずっこけた口だろう。

 

確かにクズ校がヤバいという噂は流れていたが結果が全て。

俺らはクズ校に勝った西条を破って神奈川の4位まで上り詰めた。で、横浜大栄に負けた。

 

高橋や児島も何を期待してんだか。

 

 

クズ校の顧問に挨拶を済ませアップの様子を眺めていたが、大栄は今日は1、2年主体らしい。それでもオレンジ髪や常盤の同級らしいエースもいたからそれなりの面子で臨んでることは分かったが。

 

そんな中でも異彩を放っていたのはクズ校のチビ。

あの身長でプレーすんのかと。

クズ校のヤバさの要因であり、児島と高橋が苦渋を飲まされたのがあいつらしいから世の中分からねぇ。

 

シューティングだけ見ても確かに全然外さねぇ。

あれでフィジカルも強いらしいが、正直信じられん。

 

ただまあ俺も昔はチビだったんだ。正直気にはなる。

どれ、その実力の程を見せて貰おうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とんでもなかった。

ドライブもシュートモーションも馬鹿速ぇわ、八熊を軽く吹っ飛ばすわ、ディフェンスの反応も化物染みてるわ。

 

それでいてシュートは全く外さねぇ。

 

あいつ一人で勝てたとは言わねぇが、あいつ一人で得点を上げていたといっても過言ではなかった。

 

西条はあんな化物を良く抑えられたな。

 

 

「同じ地区にあんな化物がいるんだ。加えて今度のモンスターバッシュに参加するらしい。顧問の人が教えてくれた」

「あんな化物とやれる機会を逃すのは惜しいだろ」

 

 

目と鼻の先に今まで以上がそこにある。

面白ぇ。ラスボスすっ飛ばして裏ボスに挑戦できるようなもんか。

 

高校バスケは終わったがまだまだバスケ漬けの日々は悪くねぇ。

 

 

それからモンスターバッシュに向けて俺達は再始動した。

幸いにして高橋の高校に混ざって練習はできたため環境に問題はなかった。

 

丸校で練習しようとも思ったがちぃとまだ恥ずかしい。

せめて大会後当たりに顔を出せたらいいと思う。

あいつらもモンスターバッシュに出るみたいだし機会に恵まれりゃあいつらともやれるだろう。

 

懸念と言えばあれか。他の面子か。

高橋の後輩が二人ほど。

 

一人はスコアラー、もう一人はポイントガード。

中三ながらも高橋らが目を掛けるだけあってか良いものを持ってる。

 

しかし果たして社会人まで出る大会だと言うことを考えると線が細い。ポイントガードの方は特に顕著だ。

 

おまけに跳ねっ返りだ(舐めた口調噛ましてきたからすぐ分からせたが)

 

但しパスセンスは抜群にいい。

常盤のとまた毛並みは違うが熱くなるやつを供給してくれる。

 

特に相棒とのコンビプレーは中々に目を見張るものがある。

 

 

ハーフゲームだし5人でもなんとかなる。

できればクズ校とやってみたいものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近の俺の運勢は良い方に向いてるようだ。

1回勝ちゃクズ校だ。しかも1回戦は年配のサークルチーム。

 

サクッと降してクズ校戦を迎える。

試合前にクズ校のチ、、、車谷との初顔合わせたが、成る程、無茶苦茶小せぇ。

 

チビと言う言葉を飲み込んだのは大栄のオレンジ髪の惨状を思い出せたから。変に目を付けられるのも嫌だしな。

 

案の定うちの跳ねっ返りがNGワードをぱなし、柄の悪ぃメンチを切られてた。

 

小さい身体のくせして放ってる厚が半端無い。

でかい連中を押し退けて来るもんだから成る程、力は本当に強いようだ。

 

この力が試合にどう影響を及ぼすのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「県予選は惜しかったっすね」

 

 

俺のマッチ相手であるクズ校のパンチパーマ。4番のビブス。こいつがキャプテンか。

 

大栄戦でもキャプテンマークを付けてたからな。

そこそこに上手かった。

 

フィジカルもそれなりだしシュート範囲も広い。

フックやらスリーやら出きることは大栄の八熊張りに広い。嫌なことを思い出した。

 

ただぎこちなさがある。

周囲を使うことに慣れてない。

 

これあれだな。

固定チームでバスケをした経験が無いとみた。

チームを点々としてる奴に見られるスキルと最低限のコミュニケーションだけでやり過ごそうって類の考え。

 

社会人チームのちょい上手い奴に見られる特徴だが、高校で4番背負ってる奴に見られるなんて珍しい。

 

 

「お前そこそこやるな。外から狙えるなんて生意気だぞ」

「おっかない1年坊がいるんでね。色々扱かれてますよ」

 

 

本当なのだろう。

ディフェンスも悪かねぇ。付かず離さず入れさせずをきっちりしてる。

 

特に力の入れ具合は妙に上手ぇ。

普段から当たり強い奴とやってる証左だ。

けどまだまだ譲らねぇ。

 

押し込んで勝負と見せて、小器用に回ってフェイダウェイ。

これをブロックショット。

 

力押しは拮抗すると見て下がったのだろう。俺なら真っ向勝負だがな(シュートレンジ広くねぇし)

 

だから読めた。

経験の差って奴だ。

 

 

 

「で、今度は真っ向勝負か」

「いや、ちげぇよ」

 

 

来ると思って身構えたが、夏目へパスを通され沈められる。

あそこも明確な穴だし。良い目をしてらぁ。

稼げるところで稼がれる。

 

うちも高橋、児島、俺で稼ごうって腹積もりだったが俺と児島が思ったより稼げてねぇ。

と言うか児島に至っては花園弟に封じ込まれちまってる。

あいつ、バスケ続けてたのか?ディフェンス無茶苦茶上手くなってやがる。

 

 

「4番張ってんのにいいのかよ」

「他で稼げればいいんだよ。スラムダ○クで魚住もそう言ってたぜ」

「違いない。が」

 

 

 

そんなたまじゃねぇだろ。

案の定ハイポストでもう一度仕掛けてきやがった。

叩き落としてやる。

 

 

「花園ぉ、合わせろ!」

 

 

んだよ、また騙しかよ。

しゃーねー。児島じゃ荷が重いからフォロ、、、んだと、アフロだぁ?

 

しまったな。

花園って言われて金髪の方に反応しちまった。凡ミス噛ましちまった。

 

 

「言ってみるもんすね」

「小賢しい真似を」

 

 

おら五十嵐、寄越せ。本物を見せてやる。

お返しとばかりに俺とパンチパーマの再戦。戦場はハイポスト。

 

高橋や児島程俺は器用じゃない。

丸校時代からそれ程変わっちゃいねぇ。

 

だからこそインサイドを徹底的に磨いた。アウトサイドは生意気な後輩に任せられたから。

 

力の入れ具合で分かる。

見た目どおりコイツはパワーもある。

 

ならそれ以上のパワーと技術でねじ伏せる。

一瞬、力を緩め押し込まれる。ポイントは押し込まれる方向の誘導を同時にこなすこと。

 

回転する力の推進力として活かし、軸足を意識しリングに近付くように回転。相手より半身有利になる。

 

途中花園弟がブロックに飛んできた。

想定の範疇。ゴール下は戦場だからな。

 

何度も言うが俺は器用じゃねぇ。

気心知れた連中じゃねぇ以上味方がどこに動くかなんて、短い練習じゃ理解が及ばねぇ。

 

だからこそブロック何て構わずリングにボールを叩き込む。

花園弟の当たりは冗談抜きでやばかったが、最後は歳上の威厳で二つ足から着地した。

周囲も沸いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさかあれ以上があるとは思わなんだ。

開始早々五十嵐が千切られて俺が出張る羽目となった。

 

あっちのちっこいのも頭に血が上ってたのか、体格差お構いなしに突っ込んで来た。

 

どのタイミングでシュートを放つか。

待っていたら身体ごと俺にぶつかり、、、次に見上げたら悠々と奴はシュートを沈めていた。

 

張り合う暇すらなかった。

物理的に一蹴されたんだと分かったのは尻を着いた後。

 

こりゃ八熊の野郎も簡単にこかされる訳だ。

連中のフィジカルが妙に強いのもコイツの相手をしてるからだと併せて納得した。

 

 

「○す。あのチビぜってー○す」

 

 

あの力を体験した上でコイツのやる気に合間見えると成る程。怖ぇ。

 

五十嵐よぉ、とんでもねぇぞコイツは。

クズ校の連中が妙に腫れ物を扱う感じだったのは本性を知ってるからってわけか。

 

はぁ。こりゃ尻拭いどころの話じゃねぇな。

 

案の定五十嵐がもっぺんやられて俺と高橋でフォローに入ったが、同じように吹っ飛ばされちまった。

 

お手上げだ。

読み誤ったのは他の連中の練度だな。

こいつが稼ぐ分を他で補おうとしたわけだが、他の連中も進歩の速度が早ぇ。

、、、試合中にんなこと思うとは。これが熱量の違いって奴か。高橋の講釈にも妙に納得だ。

 

 

「千葉さんよぉ。あんたでも無理か」

「きちぃな、ありゃ。加えてお前まで手を回さないかん」

「ならしゃあねぇ。有り難く隙を付かせて貰うぜ」

「上等だ」

 

 

急ごしらえとはいえこっちも戦意は衰えちゃいねぇ。

中坊どもも気合い十分だ。

 

最後まで戦うには上等過ぎる戦力だ。

 

 

 

「やってやらぁ」

 

 

惜しむべくは現役中にこいつらと出会えなかったことか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーside 二ノ宮

あかんなぁ。

奴さんだけじゃなく、チーム全体で見ても水準が高いわ。

 

うちが対抗するなら点の取り合いしかない。

そう思ったんだけどなぁ、やはりきつい。

 

空のワンマンチームかと思っとたが半分正解で半分外れだったわ。

 

確かに点は取る。

わいもすでに何回やられたか。

 

でもそれだけやない。

アフロのおっさんにしろメガネの兄ちゃんにしろ、他の面子も個性をよう押し付けてくる。その時空は自然とフォローに入っとる。

しかも悪どいことに毎回やない。不規則にだ。

 

そのお陰か、相手のミスに漬け込めるし、余計な頭まで使わせられてる意識もある。

 

周りの連中のレベルアップも図っとるのもあるし、全てをフォローせんでも自分で点稼げばそれまでやからな。

 

舐めプ噛まされとるわほんま。

 

 

「ニノってもしかしてちょっと上手い?」

「これでも全中でMVP取ったんやで。お情けやけど」

「だろうね」

 

 

そう言い残してワイを置き去りにするんやからどうにもならんで。それが心底悔しい。

 

せめて一矢報いたいわ。

 

他に隙を見出だそうも空以外もきっちり手は抜かんでマンツーしてるさかい、統制もしっかりしとる。

「はーい手は抜かないでくださいねー」と空が呑気な声で鼓舞する度に連中もビクゥ!なるから、敵より味方の恐いんとちゃうかと思う。

ワイも練習中は激飛ばしまくるが、空はワイより容赦無いんやろなぁ。結果伴っとるから何も言えんが。

 

 

「梶さんあかんで。このチームとタメ張るなら相当な覚悟積まんと」

「ああ、改めて思い知らされた」

「ごちゃごちゃうるせぇ!速く寄越せ!!」

「ったく、竜二はあほやなぁ」

 

 

けど、こんなアホだからこそ今は便りになる。

向こうの金髪に何度も叩き落とされるも、折れとらん。

フィジカルだけならギリ勝負になっとる。

 

、、、190近くあってフィジカルも強いんや。

これでダンクできんのは甘えやな。

 

今後の成長に期待か。

ほな、残りは竜二で心中するか。

 

いずれにしても精神的支柱のセンターは必須や。

ここに来てようやっと己れらの適正が見えてきたわ。

 

 

「この点差や、梶さん。勝ち筋は見えん。なら未来に全投資や。残りは竜二と心中するで」

「竜二と中心と言うのは採用。ただ試合を投げる心意気だけは看過できない」

「お堅いなぁ。けどせやな。諦めたら試合終了やもんな」

「おい!時間が勿体無ぇから速くしろ!!」

 

 

 

ったくせっかちやな。

だがその能天気さはええな。

 

ならほなご所望通りいきますか。

 

竜二にパスを通し果敢にマッチアップ相手である金髪にたち向かう。

ワイはと言うと空を振り切るの諦め、梶さんのマークであるコーンロウヘアの兄さんにスクリーンを仕掛ける。

 

あかんなぁ、この兄さんも力強いでぇ。

まともにスクリーンも掛けられんわ。

せやけど梶さんの手助けはできたな。

 

竜二も割と周りは見えてるから、、よし、梶さんに渡って一瞬金髪のディフェンスが緩む。

 

梶さんからのリターンパスを竜二が受けとれば後は、、、あちゃー、のっぽとパンチパーマの兄さんまでヘルプか。万事休、、マジか。

 

土壇場で竜二がダンク決めおった。

(後に竜二は語っておったが「練習では3回1回しか成功してなかったからその1回が試合で出た」とのこと)

 

持っとるなぁ。

これで最低限の素材は揃ったか。

後は磨き上げて川崎地区をどう勝ち抜くかか。

 

梶さんが言うに魔境と化してるさかい、難儀な地区やで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーside 常磐

今年のモンスターバッシュの決勝は高校生同士の試合。

大会史上初の事態らしい。

 

相手はこれまたうちの近所であるクズ校。

うちと同じくらい評判が悪い高校だった。

 

だった、と言うのは今年に入って評判を下げてた連中がバスケ部にシめられ大人しくなったことが要因らしい。柄の悪い連中がそう言ってた。

 

吹っ掛けようにもそもそも遭遇しないっぽいから、うちの連中も自然とどうでもいいや的な雰囲気で絡みにすら行かないんだとか。平和だ。

 

疑問はクズ校って男バスは無かったはずなのに不良連中をシめたのはバスケ部だと言うこと。

 

地区大会では『クズ校のチビがヤバい』って情報が出回ったけど、結局西条に負けたわけだし。

 

負けたチームのヤバい奴より次の試合の情報の方が重要だったから、正直実感が沸いていなかったんだけど、今日の試合で身を持って体感した。

 

 

「シンジ!」

「ちょろ」

 

 

モーションが速すぎてブロックが追い付かない。

信ニに限った話ではなく、ヘルプに入る面子も同様にだ。

自分もそうだ。

 

逆付いて当たりに行ったら当たり返されて強引に抜かれた。文字通り衝撃を受けた。

 

千葉さんも彼とマッチアップして「こてんぱんに伸された」と言ってたが、技術だけじゃなくフィジカルのことも言ってたのかと理解が及んだ。

 

 

点を取るだけではなく、気紛れにパスも回すから質が悪い。

自分だけでも十分だと思ってる節もあるけど、敢えてパスを回してこちらの出方を見てるのも性格が悪い。

 

 

「落ち着かせんよ」

 

 

マッチアップのアフロも更に頭を悩ませる。

視野が広く、パスがバカ上手い。

スリーこそ無いけどミドルレンジはある。

スピードも無いけど動きがトリッキーで択を絞らせてくれない。

 

長治のところもパンチパーマに苦戦している。

藪瀬のところもでかいのにミスマッチ付かれて稼がれている。

沢も抑えるのに相当苦労している。

あれで一年だと言うから恐ろしい。

沢に当たり負けしていないのだから。

 

こりゃ近所にとんでもない高校が出てきちゃったね。

 

 

アフロを抜きにかかるけど、このアフロディフェンスも上手いから手に終えない。

 

それでも彼だけならやりようがある。

沢のスクリーンで、コーンロウヘアの一年にスイッチ。

 

想定外は一年の粋が良すぎたこと。

空かさず沢にリターン。

 

からのローポストの藪瀬へのパス供給。

藪瀬なら抜きに行けると思ったけど、あのノッポがしぶとくディフェンスをしている。

 

粘り強く藪瀬がシュートを沈めたけど、次が分からない位にここも拮抗している。

 

 

 

うちシュートは落とせない。相手メンバーは総じてレベルが高い。

何よりNGなのは車谷をディフェンスに絡ませないこと。これはマストだ。

 

高さを付く分にはいいけど色気付いて抜こうとしたら間違いなく処される。

近距離でのシュートも厳禁だ。モーションを読んでるのかって位に反応がいい。打つ前にボールを叩かれたのいつ以来だろう。

 

こんな綱渡り状態で漸く勝負になる。

 

最も、今はまだ車谷以外の連中も隙があるから何とかなってるけど、周りの連中の隙がなくなったら、、、、

 

 

 

恐ろしい想像をしたけど、現状だって驚異なのだ。

と言うか押されている。

 

どこかでブレイクスルーがあればいいのだけど、流石にハーフゲームじゃ短すぎた。

 

 

32ー28で折り返し、58ー55で敗戦。

 

 

最後までリードは奪え無かったのはよろしく無かった。

それと他の連中のパフォーマンスが下がるにつれて車谷のパフォーマンスが相対的に上がっていったのは恐怖すら覚えた。

 

来年の川崎はとんでもないことになりそうだ。

 




モンスターバッシュ
 優勝 九頭竜高校


エキシビションマッチ
九頭竜高校 ○57ー56


地方紙掲載(要旨のみ)
・前代未聞、高校生がプロチームを破る
・身長149cmの超級高校生の躍動
・本人コメント「推定日本一のプレーヤーかと」


ネット掲示板(反応一部抜粋)
・小学生か中学生かと思ったら高校生だった
・言ってることは超大型www
・この身長バスケは無理っしょwww


バスケ関係者各位
・情報を集めろ!

川崎地区の関係者+横浜大栄
「「「知ってた」」」
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