秋。冬に近づく準備期間。
日々の練習に打ち込む最中、、、ではなく今日は珍しく練習は休養日である。
しかも一週間。
そうテスト期間だ。
何を隠そうバスケ部はバカの集まり。
吐くまでと言うか、吐いても練習を続ける異常集団である(男女問わず)
強制的に部活を休めると、部員は歓喜の涙流している。
「いや、普通に勉強しろし。赤点取った奴は部全体にペナル可能性あるんだから死んでも回避してください」
「、、、取ってしまったら」
「百春君言ったじゃないですか。死んでも回避してくだださいって」
全員目が据わった。
と言うかトビ君、茂吉君、千秋君当たりは余裕だろうにノリいいな。
他の連中は七尾さん僕で面倒を見ることとなった。
僕?二度目の高校生ですよ。70点は固いね。
はい、僕も面倒見られる側です。ちかたないね。
始めに挙げた3名以外は体育館で青空勉強会である。
期限はテスト前までに赤点回避にまで進捗を持っていくこと。
そんな状況下で、意外な人物が余裕を見せていた。
「お、ヤスお前余裕そうだな」
「まあな。隙あればちょっと勉強してたからな」
教科書開く仕草が手慣れており、覗くと分りやすい解説がちょろちょろっと書き綴られている、、、安原さんが書かなさそうな書体で、、、見なかったことにしよう。
「おい」「見ろ!」「絶対ヤスが書かない字だ、、、」
あーあ、気付いちゃった。
チャッキーさん、ナベさんが指摘し、百春君が冷静に現状把握に努める。
で、核心を着く。
「ヤスおめぇ、里実西の女子と連るんでるな?」
「な、何のことだかさっぱりだぜ」
「しらばっくれんな!『後で電話しません?』なんてどう見ても交換日記感覚だろうが!」
追求が徐々に厳しくなってくる。
確かにここで部活に打ち込んでる以上は余程の幸運に見舞われない限り出会い等無いだろう。
どういう因果か安原さんにその幸運が訪れたようだが。
まあいいや。勉強の妨げどころか助力になってるみたいだし。
何だったらテスト期間にカマかけて勉強会でも開催すれば、、、いや、してるな。
こんな絶好の機会逃しはしないだろうしね、
さて、そろそろ七尾さんの目も怖くなってきたし一発絞めておくか。
とりあえずこいつら。
さっき僕が言ったこと忘れてないのかね。
「で、○ぬ奴は決まりましたか?」
静寂が訪れた。
いやー、定期テストは難関でしたね。
この僕を以てしても平均70点が限界。うん、かつての僕ってそんな勉強してなかったし。
茂吉君と千秋君がおかし過ぎるんだ。
あいつら絶対先生と寝てるね(意味深)
他の連中も赤点回避。平均45点だからまあ頑張ったよ。
安原さんに至っては平均50点だったし。
恋の力は偉大だ。
秋空が気持ちいいし、珍しく昼飯を屋上で食べようと階段を登ってる最中だった。
「おい。お前車谷か」
「あん、、、何ですか?」
っべー、一瞬柄悪い方の口調になっちゃった。
先生相手に流石に不味いと思って切り返したけど。
古めかいしいメガネの初老の先生は確か、、、オザー先生だったっけか。
、、、なんかしたっけ?
いいや、適当に流すか。
「ちょっと時間いいか」
「すみません、腹減ってあれがそれでヤバイんで屋上に失礼します」
「分かった、屋上だな。茶でも買ってこよう」
「あー、、、ああー。ありがとうございます」
絶対上に来るやつだこれ。
しゃあない。じゃあ聞こう。
なんてこと無かった。この前の社会貢献だ鶴金との試合だ、いちゃもんを付けてたのは私だって話。
ただ自身の私怨も入ってのことだったので謝罪に来たと言うことらしい。
態度やら都合の付け方やら「何だコイツ」と思うところもあったけど、正直嫌がらせ、、、嫌がらせかこれ?と思うところでもあったので特に深く言及せず「さいですか」と受け入れることに。
「、、、、」
「、、、、」
何も話題無ぇ件。
と思って昼飯をひょいぱくする。
「、、、お前、その量平らげるのか」
「ええ。身体が資本なので」
「それでその体つきか、、、」
ほっとけ!
「でもその食事量なら花園らを沈める腕力ってのは納得だ」
「あれ、責めないんですか」
「基本俺は不良が嫌いだ」
「それは同意」
「不良擬きもだ。部室で意気って飲酒喫煙する輩なぞ虫酸が走る」
「やけに具体的ですね。全面的に同意ですけど」
「バスケ部なぞ元は不良の巣窟だ。何かしでかす前に対応をと思っとった」
「僕が来る前に精算しておいて欲しかった」
「それはすまなんだが、結果お前さんが好き勝手できてるだろ」
「まあ。停学もらっちゃいましたが」
「軽いものだろう」
「おい」
あ、あれ。
妙に会話が弾むぞ。
「先日の社会貢献にしろ鶴金工業にしろ、特に問題は無いと聞いている。
実際に私も見てた。問題無いとは言い難いが、お前さんがしっかり統制を取ってるのは見ていたつもりだ」
「キャプテンじゃないですけどね」
「名目じゃない。実態を重視している。回る口と圧倒的な腕力で捩じ伏せていたんだな」
「見たまんまです」
「お前の基準は何だ」
「僕から見てカッコ悪いかどうか」
「不良はどうだ」
「クソダセェ」
「、、、ふん、全く以て同意だ。もう少し付き合え」
この後色々話してたけど、印象的だったのは自身が柔道部で全国大会が決まっていたけど部員の不祥事でおじゃんとなってしまった話。本当に反吐が出るね。
そのトドめが「昔やんちゃしてました」だとしたら僕ならばれないようにお礼参りに行く。
いや、その前に仕掛けるか。
どうせ大会出られないって言うなら無敵の人状態で徹底的に原因者を詰めるかな。
真面目にそんな話をしてたら「親へ迷惑かかるだろ」と呆れられた。
「うちは親があれなんで、関係無しに行きますよきっと」って続けたら将来、進学、風評被害はと返された。
「僕が気にする質だと思います?何時一人になっても生きていけますよ」ってニコニコして返したら、少し黙ってから切り出した。
「お前が同じ部の同級生だったら、さぞ刺激的だったろうよ」
「そもそも問題行動を起こさせないですよ」
「はん。違いない」
こうしてオザー先生問答が終わった。
不良に類した愚か者を憎んでるんだろうなぁ。でもそれが彼なりの行動指針となってるわけで。その感覚は世間の感覚からしたら間違ってもいないわけで。
ある程度理解できちゃうんだよなぁ
、、、これ僕がいなかったらもっと拗れてたなきっと。
ちなみにオザー先生から見て僕は不良の枠組みに入るか念のため聞いてみたら、入らないらしい。但し「お前は暴君だ。不良以上に厄介だ」と言われた。
うーん、残当!
テスト明け以降も練習試合は未だに負け無し。
特に最近は県外の強豪と偶々日程が合い小遠征に出ていったこともあったけど貫禄の圧勝。
県ベスト8とか言ってたけど、北住の方が強かったよ。
やっぱり地元でやった方がためになる。
とは言え代わり映えない相手とやっても得られるものはあまりないので、様々シチュエーションを想定して試合経験を積もうというのがここ最近のうちのトレンド。
ホームでばっかやってもそこでしか実力を発揮できないんじゃ意味ないしね。
そして何も相手は高校生ばかりではない。
モンスターバッシュの活躍が地味に目立ったのか、大学生や社会人チームからもオファーがちょろっときており、その一環で今日は城南大学に顔を出している。
あ、唐沢さーん、、、露骨に顔をしかめられたんですけど。
僕達一年生連中は何かと縁があったのだが、チームとして乗り込むのはこれが初めてである。
「わー、お兄さん達大きいですねー」
「お前ら騙されんなよ。コイツが一番狂暴だからな」
大学生だけあり皆でかい。
うちもでかいからどっこいぐらいか。
それと太い。
うちも太い奴は太いからどっこいぐらいか。
ん、千秋君どしたん?
大丈夫。
未来じゃちょいぽちゃでスピードもあまりないセンターが無双する時代が来るから。
だからさっさとアップするべ。
身体を解してる最中に音楽流れるとかやっぱ大学だわ。
うちもやろうぜ。バリロックか萌えきゅん電波ソングで。
新たな環境下での刺激を満喫していると、気になった話が一つ。
アメリカ帰りの高校生が神奈川県のどこそこの高校に編入したんだとか。で、むちゃ凄なんだとか。
最近アメリカから帰ってきた僕と勘違いしてるのでは、と詳しく唐沢さんに伺ったら身長が2m声のキングサイズなんだとか。よし敵だ。○そう。
どうせ僕より非力だろ。
いつか目にもの見せてくれるわ。
と言うことでティップオフ。
スタートは千秋君、僕、トビ君、百春君、迫田キャップ
力編成である。
迫田キャップ、千秋君、百春君は大学生にも力負けはしない。フィジカルで勝負できる。
特に迫田キャップと千秋君は真っ当な勝負が可能。
百春君はピーキー過ぎる。
ちからぁあ!って感じで他は相変わらず。
だけど行けないことはない。三人の中でも頭一つ抜けたフィジカルだし。僕?百春君を4人揃えればタメはれるよ(にっこり)
トビ君はまだまだだけど、身体の上積みはできてきた感じ。ここから更に倍プッシュで積み上げようねー。同時にそろそろ技術についても身に付けていこうかなってとこ。まきちゃん先生も同じ指導するよきっと。
元々バスケセンスには定評があるのだから、積み上げた身体と言うマシンにすぐアジャストしてくるだろう。でなきゃ唐沢さんから三本も取れないよ。
案の定と言うか、皆それなりに頑張る。
フィジカルはどっこい。
所々各個の得意分野で相手を上回る。
百春君のフィジカル、千秋君のキラーパス→トビ君の決定力。
迫田キャップは堂々と相手のセンターとタメ張ってる。
その上で僕を上手く活用してくれる。
今日僕、キャップから受け身なパスを一度も受けていない。全て彼の設計上でパスを受けている。
アドリブとかじゃなく、仕組まれたやつ。
事実キャップは相手センターを凌駕し始めている。
大学生を相手なのにだ。
周囲に大人が常にいた環境のせいかおかげか。
それとも彼元来の性格なのか。
相手が大学生だろうが彼はお構い無し。一切物怖じしていない。
チバさんとやった後から彼の成長は顕著だった。
「夏目ぇ!」
「よく見とぉお!」
今度は僕に出すと見せて僕の影から飛び出したトビ君にパスを通す。45度から外に膨らみ切り込むと見せて最後はコーナースリー。
身体が出来てないままだったら流れてたと思うけど、今の状態ならきっちり真上に跳べるね。
もうちょい鍛えられればフェイダウェイもいけるよ。
その前に利き手のスイッチを先に覚えないとだけど。
「プロ越えは伊達じゃねぇな」
「僕がいたからですね」
流れを変えようとアイソレーション状態から1on1を唐沢さんが仕掛ける。
前回と比べて簡単にはやられるつもりはないのだろ。
けどダメ。ボール持ちすぎ。まだまだ物差しが一般的過ぎる。
ベンチの学生も「反応がやべぇ」「唐沢さんに隙なんて無かったぞ」と言ってるからまだまだ常識的過ぎ。
五感使えマジで。
デモンストレーションにゴール下まで強引にいく。
ヘルプに来たセンターと一合。
あっさりぶっ飛ばし、もう一枚来たヘルプもフィジカルアウトして悠々と得点。
敗北を知りたい。
この後僕がアウトして茂吉君を投入。
190のトリプルに2mを追加投入。
こいつら高校生なんだぜこれで。
茂吉君も身体がそこそこ矯正されてきたし。
珍しく強引なポストプレイ。
狭いエリアで器用にボールをバックチェンジして後ろに重心をずらし、そのまま打点高めのジャンプシュート。
所作はまだまだ遅いけど、まあ初見じゃ反応出来ないよ。
あの身長で細かくボール刻まれたらね。
次から狙われると思うけど。
案の定と言うか、あれだけ目立つプレーされたら大学生だって火が着く。
強引に茂吉君の突破にかかる。
だけどこの手の動きに一番反応と身体が恵まれている奴ががうちにはいる。
「隙ありぃい!」
GJ百春君。
僕だって茂吉君に行くって容易に想像できた。
他の連中も同様だろう。
その上で生き生きするとしたらこの男だよね。
完全に味をしめたな、百春ホイホイ。
まあ各々いい動きは見せてくれるんですけど、結局は押し負けちゃう。
でも、僕抜きでも思った以上にやれてる。
後2、3戦ガチって対策も巡らせれば、僕抜きでもたまに相手を苦しめることはできるかも。
「最近の高校生は怖いな」
「あれ、あっちのベンチいなくていいんですか」
「お前らくらい俺抜きで十分だ」
「僕がいたら?」
「指揮とっても無駄だ」
わーお、ドライ。
ボサ髪の監督さんはそれから七尾さんとおしゃべりタイムに入った。
多分誰か大学に引っこ抜こうと画策してるんだろうなー。完成されてないとか誰のこと言ってんだか。
、、、、キャップ当たりかな。いや、未完なら千秋君?僕なら茂吉君一択だけどね。
まきちゃん先生はトビ君に大分ご執心らしく『再来年争奪戦』とか言ってるけど、その彼の潜在領域は僕の知る前世でもすでに過去の通過点だったからなー。だから僕が嵩増しして身体のポテンシャルを上げるよう進言した。いずれ感謝するだろうよ。
さて、ここ最近の連勝ムードも消えたし、いい感じで新人戦に臨めそうだ。
できれば僕抜きで支部予選くらい勝ち抜いてくれたっていいんだけど。
--景色が変わっていく。
夏の暑さとは何だったのか、と言うくらい急激に気温が下がっていく。
夏から秋、秋から冬に入りかける。
四十九日も当の昔。
母の遺影を眺めつつ、今日僕は二度目の公式戦に臨むことになる。