そのあひる、狂暴につき   作:グゥワバス

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閑話・あひるの皮に騙されたフレンズ9

--side 二ノ宮

圧勝、とはいかんけどそれなりに内容は伴った上で完勝やった。

 

ワイ、梶さん、竜二が主軸。

特に竜二は攻防の要でもあり非常にタフな役割を任せていたが、見事完遂してもらった。

 

 

「まだまだ粗いとこはあるが上々や。県でも暴れるで」

 

 

竜二の伸びが凄い。

少なくともコイツが力負けする相手はクズ高を除いて川崎地区にはおらんだろう。

 

手元の技術はまだまだ粗いがゴールへの嗅覚はワイからパス供給されてんや。大分鋭くなったわ。これは他の部員にも言えるがな。

 

だが満足はしないしできん。

この後控えている県予選もそうだが、同じ地区に化け物染みた高校があるんや。

 

今回の支部予選以前から『クズ校がやばい』と言う声は上がっとったが、やはり前評判は伊達や無かったらしい。

 

圧倒的な制圧力で他校を悉く蹴散らし、悠々と県大行きを行きを決めたようだ。

 

 

できれば競合しとう無いと言うのが本音や。

せやけど泣き言は言ってられん

 

 

あいつらは強い。

仮にあいつらが負けてもその勝った高校はもっと強い。強さのハードルがたただだ上がっていくだけや。

 

 

すでにクズ高の実態を掴めとる学校は対抗手段を準備しとるだろう。

特に川崎地区の勝ち抜きそうな高校は尚更。

 

 

上に行けば確実に奴らが待っとる。

連中は絶対上がってくると確信して。

 

せやからどの高校もシュート精度を限界まで上げてくる。

それしか手の打ち用は無いから。

 

空を止める方向で行く方針は、あいつを知ってれば先ず取らんやろう。時間の無駄となるのが目に見えてるさかい。

 

 

それでも空のオフェンスに真っ当に付き合うんやとしたら、そいつは突き抜けた馬鹿やろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーside 太郎

川崎地区ではやはりあいつらが猛威を振るったか。

俺らは予選免除でシードでいけるから、激突するなら県大からだけどな。

 

新丸子といいあいつらといい。

最近では菊川に全国クラスのガードが編入したとかと言う話もあったな。

 

新城だってでかいのを揃えているし、西条だっている。

俺達も含めればいよいよ川崎は魔境と言っていいだろう。

 

まあ実績さえ残せばそんな魔境から這い上がる必要は、、、いや、敢えて地区から戦い抜くのもありか!?

 

 

 

「古賀じぃ!新人戦地区予選はエントリーできないのか!」

「、、、ふむ。つまりもっときつい試合を組めと言うことかの」

「う、、、まあ結果としてそうだな。クズ校クラスとやりてぇ」

 

 

 

あんな高校早々あって溜まるかとKATOは言うが、結局あれが今後は県大に上がってくるんだ。

なら対策は必須だろうが。

 

 

「興味深いことに夏に大栄がクズ校とやったらしく、その感想をどんどん練習試合を組んだ高校に伝授しとるらしい」

「何!なら大栄とだ!」

「県大控えてんのに受けてくれるわけないじゃん」

 

 

 

正直ウィンターカップの予選で負け帰ってきてフラストレーション溜まりまくりなのだ。

 

クズ校はもちろん、奴らにもリベンジ果たさねばならねぇ。

まあ手の内晒すわけもねぇし、うちもそれは同じか。

 

シット!

奴らがまだまだ無名の時にゲーム数重ねておくべきだったぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーside 藪内

男女共に支部予選を勝ち抜いた。

男子と比べ女子の方は圧勝ではなかったけど、それなりに貫禄を見せつけたような勝利だったと思う。

 

 

女子は皆走れるようになってきた。

但し、今より更に1.5倍走れて県代表をかけて戦えるクラスだと監督は言ってる。

 

藪内算によって導きだした答えは「ニカ位走れればOK?」だったけど、監督は「なら全国で戦える」とのことだった。

彼女はどこまで飛んでったのか。新たなクエスチョンである。

 

 

男子と会場は異なるため温度差は分からないけど、向こうの会場もかなり盛り上がってるっぽい。

 

男女共にうちの勝ち抜きはかなり大事件なようである。

 

思えば一回勝った当たりで「クズ校やばない?」と言う反応が見られ、次勝って「クズ校ヤバイヤバイ、来てるよ!」ってなって、最後に勝って「クズ校ヤバイ!」ってなった。

 

つまり私達はヤバイ。

 

 

「ヨーコ、私達ヤバイね」

「(円が最近馬鹿になって来てる件)はいはいやばいやばい」

 

 

でも一夏をかけた甲斐はあったと思う。

同時にリミットも見えているけど。

 

時間が惜しい。

結果を残すための時間が。

 

 

関東への切符は2校。

ぽっと出だろうが何だろうが今の私達は、私は本気で上を目指している。火が着いているんだ。今を逃したらきっともう燃えない。

 

 

「次は神奈川を飛び出そうか」

「(お馬鹿度に比例してスケールも大きくなってる)だね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーside トビ

何と言うか、呆気ないもんじゃの。

4月から駆け足、、、いや、鞭で全力で打たれながら必死こいて駆け抜けた結果、県大会への出場を決めることが出来た。

 

あのチビ(口には出せん)を何度○してやろうと思ったか。

結果は出ているがやはり憎いものは憎い。

いつかタマ取ったる。

 

来る日も来る日も煽られ続け始めは怒りも爆発させたが、それ以上の実力と暴言で心までズタズタにされた結果、皮肉にもメンタル面も強くなってしまった。大抵のことじゃ怒りも沸かんようになったのは喜ぶべきなのかどうか判断に悩むがの。

 

 

肉体面でも入学当初と比べて大分肉が着いた。

最近目をかけてくれるようになった大学の顧問の人も「鍛えられてるわね」と言ってくれてたしの。「もっと鍛えろと元凶には言われとる」と返したらちょっと眉を寄せていたが概ね理解を示した反応を見せていた。

 

曰く、「フィジカルに傾倒気味ね」とのこと。

上限を引き上げるため、と伝えたら「志が高いわね。リスクよ」と教えられた。

 

正直そこはあのチビからも言われとる。

だが上限の底上げは今だからこそ可能だ、と言われたら行くしかないじゃろ。

 

 

 

「トビ、身体に不調は?」

「無い」

 

 

兄さんが身体を触診しながら反応を聞いてくる。

親父さんの受け売りらしい。

 

ホンにこの人は多才じゃの。

あのチビの次くらいにこの人もぶっ飛んどる。

 

 

「何だかんだで人数が少ないからな。一人でも欠けたらこの先は本当にしんどくなる」

「大丈夫ですよ。それならそれで僕が尻を吹きますから。だから自分で納得が行く程度には全力でプレーしてください」

「そうならんようにしとくわ。末代までの恥になるしの」

「正解。ねちねちなじってやるから」

 

 

ホンに性格が悪いわこのボケ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーside 茂吉

支部予選を危なげなく抜けた。

それ事態はあっさりしていたけど、控え目に行ってその道中は僕にとって地獄だった。特に夏。

 

 

「姿勢の矯正、身体作り、ハンドリング、ドリブル、シュートフォーム、ディフェンススタイル。全部手に入れよっか」

「何が、したいの」

「それは僕の台詞。どこまで強くなりたいの」

「誰よりも」

「、、、、ふーん。どこまで本気?」

「君に勝ちにいく」

「じゃあ人生賭けないとだね」

「望むところ」

 

 

 

早まったと思った。

文字通り生活の全てがバスケに還元される日々。姿勢、歩き方食べ物、睡眠、etc、、、、

 

 

「流石に専門じゃないから。まだまだやる気なら今度来るまきちゃん先生に詰めた方針を教えて貰いなよ。僕が言ったって言えば教えてくれると思うから」

 

 

躊躇なくまきちゃん先生さんに話したら「狂ってるわね」と言われた。僕はいったいどういう存在に啖呵を切ってしまったのだろうか。

 

基本方針に間違いはないため、心身の変化を捉えるべく、大分項目数の多いチェックリストを手渡され、記録を取るように言われた。

 

 

「データで、貰えますか。PC経由で送ります」と言ったらアドレスを交換するよう言われ「後で送るわ」と返された。どうせなら他の部員もと提案してみたが「それは業務の範疇外」と断られた。

 

多分車谷君が直接言ったら引き受けてくれるとは思うけど、彼も無理強いはしないだろうとも思った。何となくだけど。

 

 

 

色々思うところもあるけれど、やれるとこまでやってみようとは思う。

 

『小さい僕が可能性だと言うなら、でっかい君は宝の持ち腐れだね。可能性を秘めているのは君の方だよ』

 

あんなにストレートな賛辞は、初めてだったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーside 鍋島

手応えと言えば大栄戦のハーフゲームだった。

空坊から『パスを受けろ』と言われたのがきっかけ。

 

敢えてゲーム前に言ってた理由をゲーム内漸く理解した。

 

あいつのパスはパスじゃねぇ。ミサイルかなんかだ。バチくそに速く、そして重い。

 

当初は全く受けれる気がしなかったが、慣れとは恐ろしいものである。今では予兆を感じ取り受けると言う域まで来てしまった。

 

元々反応できたのが俺だけと言うのもあり「じゃ、練習しましょうか」と空坊から何本もボールを投げられて、漸く形になってきた。

 

野球でノック練をやることがあったけど、あれの何十倍もきつかった。

 

 

「どんな体勢であってもパスかシュートかドリブルの選択を選べるような練習をしましょうか」

 

 

あのパスを受けれるようになったら今度はそう言われた。

これも当初は身体がぶれぶれだったが、数をこなす打ちに形となっていった。空坊曰く『まだまだ並以下』らしいが。

 

 

ある日の練習時にトビから全力空坊のパスをなぜ受けられるか理由を問い質されたが、俺も分からない。

ただ、起こりと言うのか。

野球の守備練をこなしていた時みたいに、どこにボールが飛ぶか、何となく分かる時があるのだが、それを空坊から感じ取れるようになったのは大きいかもしれない、と言ったら「ニュータイプじゃな」と言われた。

 

仮に俺がニュータイプだとしても、お前ら経験者はどこか別の生き物に見えるけどな(空坊は食物連鎖の頂点)

 

空坊から「なんちゃってスコアラーを目指しましょうか」と言われたけど、うちには何人もいるじゃんって返したら「僕のパスを受けられるのは現状ナベさんだけなので」って言われた。消去法、、、、消去法じゃん!

 

 

相変わらずの傍若無人っぷりであるけど、最近は稔の件での蟠りは少し薄れてきたかもしれない。

 

ふとした拍子にあの空坊の憤怒の表情を思い出す。

未だに俺らは縛られてると思うし、それを当然だとも思う。

 

きっとこれは卒業後も続くのだろう。

今は練習のせいかお陰か今みたいにあまり考える余裕があまり無いからまだましだけど。

 

 

 

「後悔などしとらんで速く技術をものにしろ」

 

 

、、、多分本当のニュータイプは千秋だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーside 五月

支部予選を勝ち抜いた後校長から横断幕を用意しますか?と問われたが、「どうせ関東行くのでその時おなしゃす」と車谷が言ったため「ではそうしましょうか。予算を抑えられて嬉しいです」と言うほのぼのしたやり取りがあった。

 

校長は関東大会への出場を既に視野に入れているようだ。車谷も割と機嫌がいい。

 

ちなみに女子も勝ち抜けたらしく、男女ともに県大会出場も決まっている。

 

 

「年明け早々は県予選が待ってます。それまでに更にパワーアップしましょう」

 

 

七尾の号令に皆が気持ちを引き締める。

 

 

 

「あ、ごめんなさい。来週から僕と迫田キャップは所用のためアメリカに旅立ちます。多分パワーアップして帰ってくるので皆さんも能力の底上げをおなしゃす」

 

 

同時に2名の一時離脱。

夏は車谷1名だったが11月に入り今度は部の要である迫田まで離脱。

 

皆も元々事前に説明を受けていたため特に驚きはない。

私としては正直不安であるが、七尾達はこれを好機と捉えており練習試合の日程を既に組み上げている。

 

特に今まで出番が限られていた素人組み3名の運用をここで試したいと言うのが七尾の

リクエストでもある。

 

 

「わりぃがお前らに託すぞ」

「羽伸ばして待ってるけぇ、、、戻ってきたら車谷、お前を抜く」

 

 

 

ゾワリ、と空気が一変する。

車谷だ。あいつの放つ空気が変わった。

これは、、、楽しんでるな。

 

 

 

「トビ君、マジで言ってる?機運あげるとかやる気出すとか温い意味じゃなくて」

「大マジじゃ。抜く」

「は、、、、ははは。いいね、テンション上がってきたよ。君達と交流を持って久々に高揚してるよ」

「その上から目線が気に食わんの」

「今までの実績が裏付けてるじゃん。でも今は気分がいいから。分かった、帰ったら楽しみにしてるよ、、、あ、でも気分害すようなレベルだったら、、、うん、完膚なきまでに心折るから。今までの比じゃない位に」

「上等じゃあ」

 

 

 

うちの部は正直どこか歪んでる。

決定的な歪みではないから私としても口出しはしないが、一線を越えるようであれば躊躇なく口を出すだろう。

 

今回のやり取りはまだ大丈夫だ。

戯れの範疇で収まってる。

 

但し本人達の間では。

外から見たらまあまあ苛烈だ。

 

幸いにして会場内が騒がしいから問題にはならないが、一応な。

 

 

「とりあえず今後のスケジュールについてだ。迫田、車谷の件はすでに話を貰ってるし、バスケ部の今後の日程についても七尾から話があった通りだ。

 また、予め伝えておくが、12月の終業式から学校泊まり込みで練習の許可をすでに貰っている。所謂合宿って奴だ。練習スケジュールはこの後通達するが追い込むとのことだ。心しとけ、、、って感じでいいか、七尾」

「はい。諸々の調整ありがとうございます。ついてはーー」

 

 

バスケの専門性はまだまだ触りが分かる程度。

始めは七尾と同じ水準まで知識レベルを上げようとしたが、自分が最大限この部に益となることを考えた結果、七尾の手が届かないことに尽力することが最善と判断し分業体制を取っている。

 

とは言えある程度コート内外のルールを理解しないと方々と調整を行う際に俺が話も出来ない。

 

要するに俺も俺で生徒の熱意に水を差さないよう必死だと言う話だ。

 

 

前に車谷から言われたことがある。

『バスケ部の実績は、五月先生の業績に繋がりますか』と。

『幾ばくにはなるんだろうとは思う。ただそんなことより、お前らの進化の軌跡を間近で見れると言うの幸運に私は感謝すべきなんだと思うよ』

 

偽らざる本音だ。

 

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