そのあひる、狂暴につき   作:グゥワバス

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あひるの皮を被ったふれんず18

12月も中旬。あっという間である。

つい最近アメリカに行ったと思ったらすぐ戻り。

 

それだけ時間の経過が早かったんだと思う。

キャップでさえ「もう戻るのか」と言ってたくらいだから。それくらい熱中してたんだと思う。

 

日本で温い空気に触れてるとたまに発散したくなるのだ。

今後は定期的に行ければなー、と思う。

 

まあアメリカに行く労力とクズ校の環境下を天秤に掛けたらいろんな要素を鑑みて僅差で日本に傾くから、アメリカは気が向いたらで良いと思う。高校生でもあるし頻繁に行くと卒業も怪しくなるしね。

 

 

相変わらず五月先生にお土産を渡してからの学校生活の再開。

 

流石にクラスメイトからは「どしたん?」と心配の声を掛けられたから「ちょっとイジメられて、、、」ってちゃらけて言ったら「「「それはない」」」って一斉にツッコまれた。

 

どうやら僕のバスケ部での噂は運動部連中を通して広まっているらしい。

 

「えーん、えーん」と泣いた振りをしてたらやって来た担任に「車谷ー、後で指導室なー」と言われた。何でぇ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぼちぼち合宿が始まるらしい。

支部予選終わった直後に五月先生から話を聞いたけど(部員にとっては)かつて無い程追い込むらしい。

 

いつも吐いてばっかの連中を果たしてどう追い込むのか正直楽しみではある。

 

さて、いつもの通常練後の1on1教室だが、トビ君が面白いことをしてくれるらしい。明らかに自信満々の様相で僕に突っ掛かって来る。未だかつてこんな自信に満ちたトビ君を見たことがあるだろうか(反語)

 

 

 

「今日は絶対に抜いたる」

「時間は」

「ワシが納得行くまで」

「フンス(OK)」

 

 

もはや言語は不要。先手はトビ君。

く、く、くる、きたぁぁぁ、、、⤵️開幕スリーかよ。しかも入れたし。解散解散。

 

確かに今までよか速いスリーだけどさぁ。抜きに来るって行ってこれが成果です、何て言わないよねぇ?

 

、、、いや、考えようによっては裏掛かれて先制された時点で僕の負けか。気を張ってれば抑えられたわけだし。

うん、認めよう。アメリカ行く前から『抜き』に拘りを見せられた僕が謀られたって訳だし。

 

認めよう、一矢報われたと。

 

 

「、、、何も勝手に終わった顔しとんのじゃ。わしゃまだまだ納得いっとらんけぇ」

「はい?不意打ちスリーかまして勝ち逃げ上等ワシの勝ちー、じゃないの」

「違う。こんなんじゃ終わりにはせん。勝った気しないしの。続行じゃ」

「、、、じゃ遠慮しないよ。時間制限はトビ君の裁量だし。あーあー、気持ち良く終われる機会を不意にしちゃったねー」

「アメリカに行って能書きうまぁなったの」

「fu○k!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スピード、切れ、シュート精度、フィジカル、判断力。

どれを取ってもアメリカに行く前より一回り成長を見せている。

けれど残念ながら僕を抜くには至らない。

 

挑発してあわよくば、を狙ったのかもだけど残念ながらもう偶然はない。いつも通り遠くから上手く逃げて打つしか手段は無いよ。

 

 

 

「何も抜くことに拘る必要はないよ。得点が正義であって過程は二の次なんだから。ここまで徹底してきたのに今更じゃん」

「挑戦せん理由にはならん」

「ふーん、ま、いんじゃね。じゃ後はいつも通り試してご覧よ」

 

 

 

ガチ1on1からサンドバッグモードに思考を切り替えた直後だった。不意にボールがゴールに放たれた。

 

シュート、にしてはモーションが速過ぎる。

ただ投げた?何故。と思う間もなくトビ君が僕の脇から強引に抜け出す。

 

意図に気付く。

こぼれ球拾う魂胆だと。ストリートでも良く見るやつ。

 

なら落下地点を予測しちょい強引にトビ君をフィジカルアウトするまで。

 

リバウンドを拾われても拾ったタイミングでボールを弾けば対処可能。

半身、身体が抜け出されていたが、十分リカバリー可能だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こぼれ球をそのままリングに叩きつけられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たまに百春君が試合中に見せるやつ。

僕以外の味方が弾いたボールをそのままダンクするあれ。

 

シュートの形はどうあれ意図的にトビ君は引き起こした。

 

いや。ただのシュートじゃ僕にチェックされるしその次への動き出しが鈍くなるから、敢えて狙って放ったな。次の動き出しを見据えて。

 

開幕スリーも。

進歩を見せつけて僕が飽き飽きしてくる展開も。

何よりダンクの引き出しを今に至るまで見せなかった伏線も。

全てトビ君に誘導された形か。

 

、、、なら最後の答え合わせかな。

 

 

 

「ダンクはいつできるように?」

「お前が二度目のアメリカ行った後に形にした」

 

 

 

新見さんの熱視線の意味も納得だ。

僕に見立てて相当やり混んだな、これは。

 

ダンクもずーっと温めてきた訳でもない。

必要に応じて急ピッチで仕上げてきた。

 

うん。開幕スリー以上にスパッとやられた。

確かにこれは一本。変則的ながら綺麗に抜かれた。

 

 

 

 

「一本お見事!今度は言い訳のしようがないです!」

「ーーッシ!!!」

 

 

 

アメリカで1セット取られて以降。

当分敗北感を味わうことは無いだろうと思った矢先にこれだ。

 

油断や慢心はあったかもだけど、それでも抜かれるなんてことは先ず無いだろうと思ったし、それなりに気を張っていたつもりだった。

 

成る程、想像の斜め上をいく発想か。

そこまでメタは張れなかった。

 

可能性への対策、、、うん、無理!

僕だけじゃなく、チーム単位で取り組むことだね。

 

 

 

 

「これ以上は蛇足になるし今日は止めにしない?、、、いや、主導権はトビ君だから、僕が言うべきはこうか。

 ーー参った。今日は勘弁してください」

「ーーおう!」

 

 

僕は綺麗にお辞儀して、トビ君は照れ臭そうに鼻を擦っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな一幕も終え、いよいよ冬合宿を迎える。

合宿期間はクリスマスも飲み込んだ大晦日までのおおよそ10日間。

正月三が日を休養日に当て、その後は県大会まで調整しながらの練習となる。

 

学校はギリギリまだ冬休み前なので、大荷物を持って来てるバスケ部に一般生徒は驚いた様子で声を掛けている。一体何が始まるのかと。

 

仄暗い笑顔をまといながらバスケ部は「合宿」と答えたそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラントレーニング、2ー1、2ー2、2ー3、3ー2、3ー3面、プレス対応、スクリーン対応、ドライブ、ミート、ストップ&ジャンプ、etcetc、、、、

 

連携もファンダメンタルも両方身に付けちゃえと言う感じらしい。欲張りさんだね。夏はラントレがメインだったのに、もはや付け合わせでしかない。

 

冬休み前は朝夕にこれをこなして〆に男女各コートに別れてゲーム&個人練。

 

冬休みに入ったら朝昼はみっちり走り込んで夕方にゲーム、夜に個人練という構成。常人を○しにきてますね。

 

 

これを男子は僕含みで9名。女子14名の20名ちょいでこなすんだから人を人と思ってない。バックアップのマネージャーの皆さん(女子)にはマジで感謝です。

 

この人数で上を目指そうってんだから。

女子でさえギリだし男子に至っては狂気の沙汰だろう。

僕がいるから成り立つけどさぁ。

 

 

 

で、始まった訳なんだけど皆息絶え絶えで練習に臨んでる。僕も流石に汗は掻く。息苦しくはならないけど。

 

学校?睡眠学習を取る時間らしい(バスケ部ー僕)

 

で夕方から夜の練習だけど、僕たち男子は9名しかいないため5-5でゲームが成立しない問題がある。

 

これを解決させる冴えた方法が実はある。

 

 

 

「ねぇ!流石におかしいですよね!(切実)」

 

 

 

新見さん召還である。

いや、円さんとかでも良かったかもだけど、フィジカル面と何よりスタミナの面で比較的余裕がありそうな彼女に目をつけた。

 

見た目の割にタフなため僕たち男子のゲームに交ざっても違和感にならない。

 

ギリトビ君の当たりには耐えうるフィジカル持ってるし。

 

なお、トビ君のフィジカルは部でワースト2である(ワースト1は僅差で茂吉君)

 

 

お、安原さんを振り切ってシュー、、迫田キャップのえげつねぇブロックが炸裂。

 

しっかり悔しがってる当たり新見さんも染まってきてるなぁと思う今日この頃である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬休みに入り更に練習は過酷さが増す。

気合いと根性でどうにか持ってた部員も自身の意志に反して体の動きが鈍り出す。

 

気持ちは切れてないのに、身体が動かない。

ダメな兆候である。

 

この症状を出した部員は僕が強制的に退場させる。

 

 

引き際だ。

ここを間違えると壊れちゃうから。

ま、経験者は語るというやつである。

 

マネージャーにお願いしてゆっくり話を聞いてもらい、泣き止んだら監督の出番。

 

もう一度言おう。

経験者は語る、と言うやつだ。

 

僕はそれで戻ってこれたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸いと言うかなんと言うか。

女子数名の途中休憩はあったが離脱者0で大晦日を迎えることができた。

 

流石の僕もちと疲れた。

つまり他の皆は言うまでもないだろう。

七尾さんでさえグロッキー状態だ。

 

 

「お疲れだな」

「五月先生こそ。赤ちゃん小さいのに申し訳ありません」

 

 

職員室の来賓室にてぐったり眠っている七尾さんを尻目に、僕と五月先生続ける。

 

 

 

「さっき解散したわけだが、車谷はどうしてここに」

「そりゃあ敬愛する五月先生に感謝を伝えるためですよ」

「、、、全く、お前という奴は。もっともそれだけじゃ無いと思うが、いや、最近はうるさいから止めておこう」

「?」

「こっちの話だ。しかしあっという間だな。もう一年が終わる」

「ですねー」

「こんなことになるとは、1年前の俺に言っても信じてくれないだろうよ」

「ささやかにバスケができれば良かったんですけどねー。ムカついたからマジになっちゃいました」

「いいじゃないか。お陰で迫田と夏目が救われた」

「代わりに百春君達の時間を奪いましたけどね」

「敢えて俺から指摘することはないさ。それに、あいつらにとってもいい方向に転んでるんだ」

「と言うと」

「迫田と花園兄には大学からオファーが来てるんだ。推薦枠で受験はどうだってな」

「絶対城南大ですよね」

「まあ分かるか。でも以外と世間は見てくれてるんだぞ。モンスターバッシュのエキシビションマッチあったろ。あれで他の大学もお前らには興味を示し始めたんだから」

「記事にもなったみたいですしね。インタビューしか自分答えてないからその後は知らないですけど」

「他人事だなぁ」

「他人事ですよ」

「実力然り、オファー然り、車谷におんぶに抱っこという側面が明らかに強いが、世間様からはチームとして評価を頂いてる。何か思うところがあれば言ってくれたっていいんだぞ。今は俺しか聞いていないし」

「世間の評価なんて、他人の足さえ引っ張らなければ自分はどうでもいいと思ってるんで。弁えはしますよ」

「それだとお前の良さが少し消えちゃうんだよなぁ」

「え、自重0でも良いと?」

「個人的にはそれでもいいと思うぞ。見ていて気持ちいいからな。俺の立場上大っぴらには言えないけど」

「、、、やっぱ自重します」

「ありがとな」

 

 

 

五月先生には迷惑を掛けたいとは思わないしね。

いつか僕が大っぴらには活躍し出したら絶対に「顧問の先生のおかげで今の自分があります(キリッ)」って言うんだ。

そう思わせてくれる人なので。

 

ついでに「あ、女子高生監督もチームの一員として頑張ってました(棒読み)」も義理で。じゃないと拗ねそうだし。

 

しかし良く寝れるな。

多分この後先生と年明けの方針とか詰める予定だったのだろう。

 

、、、初詣の誘いはまだいっか。

今日くらい家でゆっくりするべ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー年が明ける。

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