ーーside 錦戸
ふざけた坊主だと思ったが個人の能力だけでいったら過去に例が無い位の化物である。
この前やった朋誠のでかいのも規格外やったが、この坊主はずっと上をいく。言うだけのことはあるっちゅうことや。認めた無いが。
朋誠も粘っとったが最後は4ピリで崩れてた。
金髪のマークも尋常やなかった。あれで消耗を強いられた。金髪もようフルタイムでマンマークできた。ファウルも重ねんかったのは偉いわ。
結果的に20点差ちょい付けられとったが健闘した方やろ。
うちはあの坊主に固執しすぎた。同じ高校生として見たことがホンマ悔やまれる。
今日の昭学戦にしたってそうや。
昭学も最初っからあの坊主とはやりおうとらん。
上手く連携繋げとるが周りの連中も鍛えられとるから攻めあぐねている。
オーソドックスなマンツーもハイレベルや。
点稼ぐのもしんどいし、あっさり返されてしまうからメンタルも参る。苦労して得点しても坊主が無慈悲に3点重ねるからな。
「錦戸さん、ご無沙汰しております」
「安藤監督、お久しぶりです。先日は惜しかったですな」
「選手のメンタル不調が祟りました」
「理由が分かってるならと言いたいですが、メンタルは難しい」
「本人の資質は十分ですので信じております。しかしやはりクズ校ですか」
「ええ、面白くないことに」
「聞きましたよ。こっぴどく言われたって」
「あん坊主言いふらしよって、、、ええ、驕りがありました。そこは言い訳できんです」
「この業界にいると当たり前と思っても、世間一般じゃ通用しませんから。私も見極めが悪かったので一時干されましたし」
「顧問の先生の言うことはすんなり聞くもんだから、やはり独自の感性があるんやと思います。ただ口がおもくそ悪いですなあれは」
「菖蒲の千歳監督も同じことを仰ってましたよ。うちの選手がこっぴどく言われたって。ただ目には目を、で返してるみたいです。千歳監督が尋ねたようです」
精神性も頗る未熟と言うわけではなく、自分の価値観で物の善悪を判断する。いよいよ以て上に行く奴の思考や。
高校生の範疇やないで。
「そういう奴はとっとと上に行ってほしいわ」
「行くんじゃないでしょうか。少なくともこの試合は通過点でしょうね」
「面白くないで」
ほんま可愛げ無いわ。
ーーside 茂吉
流石、と言うべきか。これが全国水準のディフェンス。相当にレベルが高い。但し既知のものである。
大栄の練習試合を経験してなければずるずるいかれただろう。
加えて先日のメガネさんと比べれば、サイズも可愛げがある。
フィジカル→弱め
スピード→遅め
最近色々やってはいるけどまだまだこの身長の標準としては程遠い。
だから1歩目。ここを間違わない。
ストライドと腕のスパンは僕の持ち味だ。
また、多少の接触はゴール下では当たり前。
ゴールから遠ざかればその分接触は少なくなる。
僕により有利に働く。
故に、正しい姿勢で放つストップ&ジャンプはそれだけで驚異だと彼は言ってくれた。そうすれば必然、もう一つの武器も輝きを増すとも。
背が2mあるだけで上澄みなのだ。それが並みの選手以上に動けたら、それはもう恐怖でしかない。ほら、君はすでに選ばれた存在なんだ。
、、、大袈裟だと思ったけど、彼ほどの存在にそう言われると悪い気はしない。
「いいね、茂吉君。どこぞの下手くそより精度高くてパスのしがいがあるよ」
「兄さんパスを少しは見習え」
「鋪装されたシュート決められてうれちいでちゅか~、、、手前で決めれられないならスコアラー気取んな」
「車谷君、試合中です。それとパスの精度は相手がいてこそです。夏目君の言ってることは間違ってません。その上で車谷君の言ってることも間違いではありません」
前半終わってのハーフタイム。
相変わらずお互い我が強い(夏目君がいつも黙らされるけど)
七尾さんも珍しくお互いを窘めている。
車谷君のパスはただただ速く、そして強い。
特に全力投球はナベ先輩以外誰も受けられない。
、、、どうしてあの先輩は反応できて受けられるのか。
故に匙加減を間違えるとファンブルしてしまう。
夏目君みたいに。
「後半は夏目君はチャッキー先輩と交代。茂吉君と百春先輩交代。チャッキー先輩はゲームメイクに集中してください。千秋先輩は両方、迫田先輩、車谷君、百春先輩で点を重ねてください」
懲罰の意図もあるだろう。
後僕の交代はスタミナ面の懸念から。
自信もスタミナも着いてはきた。けど信頼と実績が足りない。
迫田先輩は凄い。
元々地の体力があったとはいえ、このクオリティーで1試合通すなんて。
そしてチャッキー先輩を入れるということは車谷君をより攻撃に特化させ点を重ねるいうこと。
ボール運び、スクリーナー、繋ぎ。オフボールの献身的な動きはこの人の特徴。
曰く、自分以外の奴が並み以上に取ってくれるから自分はこの動きを極める、と。
常に七尾さんや五月先生と戦略の理解を深めようと談義している姿を僕達は知っています。車谷君始め、皆と直接コミュニケーションを取りながら動き出しの研究を重ねていることも知っています。
僕や夏目君は点を取ることについて一定の信頼を得ているけど、チャッキーさんは長くゲームで献身的な動きをしてくれるという点で絶対的な信頼があります。
チームとして必要とされていると言うことです。
個の能力はそれ程でもないけどいれば周囲が躍動する。
部内でのポジション争いというのも存外に苛烈である、と改めて思った。
ーーside 茶木
運動能力といった面ではまだまだ物足りねぇけど、自分起点に得点まで持ってく分にはそれ程苦でもない。
1にどうあがいても空坊に渡れば得点で完結するから。
2に空坊以外にも迫田、千秋で点を稼げるから。
3に迫田、千秋が外しても百春が高確率でリバウンドを拾うから。
必然、俺の役目はこいつらを立たせることだと理解する。
なら、俺の選択肢は非常に重要なものとなる。
理想は切り込んでシュートを狙い、自身を驚異だと認識させること。だがこれは無理。ならボールを回すことで確定。
前半に相手の動きを観察。パターンを把握。
出番になったら展開。空坊にマークが徹底しているなら、、、まあパスしても決めてくれるだろうが、セオリーは手薄になった奴に供給。
百春に渡しリターンパスを要求、、、今回はリターン無しなのでそのまま俺は切れゴール正面に戻る
その間百春はゴールを狙い、得点。
堅実に。加えてあそこは百春が得意な位置だったから尚更。
「チャッキーさん、僕でもいけましたよね」と小言を貰うが「空坊はここぞで使いたい。百春のイージーゾーンだったなら使える内はそっちを使う」と言って納得して貰った。
相手に択を絞らせない。
千秋であればレンジがもっと広いから供給しやすいし、迫田ならドライブも積極的だからディフェンダー剥がすのに俺もスクリーナーとして動くことも考えられる。
バリエーションは多い方が次に繋がる。前提は決めてくれることではあるが、そこは俺の取捨選択の責任でもある。
これが千秋なら、俺より多いシチュエーションを想定できるはずだ。視野も広いし、トリッキーにパスも出せるから。
俺だと選択の幅が狭まるが、だから間違わないようにしなければいけない。
堅実に、いけるところを選び続けるだけだ。
ーーside 安原
3ピリ終えて82-64
俺の出番は4ピリからだった。
ゲームを作ったチャッキーと交代。
曰く、リードを守りきるための布陣だと奈緒ちゃんから指示を受ける。
百春と俺が残るというのはディフェンス重視でいくということ。千秋と迫田も理解する。空坊はどうせ相手が攻撃に参加しないとみてやる気0。いや、隙だらけを装ってるなあれは。
ここから空坊への回転が速くなる。
さっきまでチャッキーがじっくり全員で得点してたのを空坊主体へと移り変わる。オフェンスの回転が速まる。
相手の攻め方も速くなるがこの面子はディフェンスもそれなりにできる。故に今まで以上に相手が攻めあぐねる。
相手は連携で崩そうとするが、練習試合を通して散々場数を踏んだ俺達にとってはそちらも対策済みである。
粘り強く引っ付いた挙げ句最後は迫田がシュートブロック。
弾けたルーズボールを俺が確保し、前線の空坊に繋げる。スリーラインより大分後方からノーマークでシュートを放ちリングを通過する。ボールを奪取してから僅か数秒の出来事であった。
「安原さん、いい反応でした。次もお願いします」
「おう」
この後幾らか追い上げられもするが、最効率で空坊が得点重ね一度もリードをは許さず。
結局102-78で昭学を撃破。
県ベスト4へと駒を進めた。
ーーside 兵藤新
ベスト4を賭けたクズ校との大一番。
前半を終えて36-34とうちの2点リード。しかしそれも薄氷ものだった。
「関谷大丈夫かい?」
「ハーフタイム明け早々ならまだいけますが、残り後半を13番マークで通しとなるときついです」
「あいつ全然疲れがみられねぇぞ」
とも子消耗が著しくかつ、私は現在2つファウルを貰っている。5番の藪内からとは情けねぇ。
まだ尻込みはしねぇけど、如何せん勝ってる気は全然しない。
相手は4番を欠いていると言うのに。
「13番は関谷。引き続き頼む。それができないと勝てない。周りはヘルプに積極的に入んな。関谷が折れた瞬間に負けると思いな。関谷、悪いがきばんな」
「はい、、って言うしかないですね。ま、私も負けたくないので」
「4番不在だからこその結果かね。チームカラーが全然違う。周りも全然んへたってこない」
「私、あの子と接触したけど、逆に吹っ飛ばされたわ」
「一番でかいあんたでそれだ。他もヘルプの際は気を付けな。とも子、あんたよく張り付いてられるな」
「何度もやられてるわ。ヘルプ入って貰うときはフィジカル負けしてる時だよ」
懸念が多すぎる。
それでも勝ててるのは一重に自分達が攻め切れているから。何とか走り切ってることが大きい。
ただ後半はそうもいかないだろう。13番は脅威だが、藪内も不気味だ。前みたいに抜いてるようには見えないが、何か企んで見える。
そしてその懸念は当たることになる。
「あたし相手にアイソレーションかよ」
「負けず嫌いなの」
強気過ぎんだろ、燃えるぜ。
乗ってやる。
左右に振り惑わす、乗らない。
一閃、強引にかかる。弾く勢いだったが着いてくる。弾けない。
つーかこいつも力あんのかよ。
けどあめぇ。
シュートは、、、ちぃ、ちょい触れらてる。
「落ちるぞ!」
リバウン、、はぁ!?
うちの室伏がスクリーンアウトされてる、、、13番に。
ちょい流石に想定外だぞそりゃ。
そのせいで向こうの15番(ハナっつったか)にリバウンド拾われちまった。
そのまま藪内に渡って単独速攻、、絶対ぇやられねぇ。
全速力で戻りマンマーク。私のミスショットからの速攻何てやられてたまっか。
「舐めんな!」
「パース」
分かる13番だ。
でも大丈夫。とも子が付いている。
必死で食らいつく。フィジカルで押されようが必死で。
途中、室伏もヘルプに入り勝ったと思った。
「おいおい、うそだろ」
強引に中を突破された。
とも子は勿論室伏が完全に力負けしてる姿が信じられなかった。
分かっちゃいたけど13番がやばい。
前半はとも子が外を許さないよう抑えていたけど、後半は積極的に中に切り込んで来てる。
夏と比べて異常なまでにフィジカルが強くなっていた。
本当にどんな試練を越えてきたんだ。
ババアの言葉が今一度思い返される。
『関谷が折れた瞬間に負けると思いな』
室伏でも抑えられない奴をヘルプありきとはいえとも子単独なんて、とも子からしたらほぼ無理ゲーじゃねぇかよ。
「勝手に負けたことにしないでくれる?」
「とも子、お前」
「監督も言ってたでしょ。私が折れたら負けだって。現状私のとこは収支計算はできる負債ってとこね。なら他で上回らないと」
何も成長したのはあの子以外と言わんばかりにとも子が仕掛ける。13番の反応もいいがとも子のシュートが触られることはなくリングを通過する。
「同じ2点」ととも子は呟いていた。
そうだよな、後輩に負けてられないわな。
フィジカルじゃ負けてっけど、最後は得点になるかどうかだ。これまで磨き上げてきたストップ&ジャンプお前の武器だもんな。
あれはうちの男子も止められてなかったから。
「隙だらけ」
「フリだ」
人の心配なんてしてる場合じゃねぇ。こっちもしっかりしないとだ。
こいつのことだから来ると思った。
少しとも子から意識外して貰わないとだし。
とはいってもこいつも上手ぇからな。認めたくないけど。
柔らかいタッチからいきなり来る。
夏よかタイミングが取りづらくなってる。身体も鍛えてきており、私にフィジカル負けしない。
柔軟性と力が融合してる。それでいて負けず嫌い。
畜生、とことんこいつのプレースタイルは私と被りやがる。
それでいてこいつは引く時はあっさり引く。
これがあるから読みづらい。
今回は7番(裏エース)かよ。
コートの脅威として存在するべく、私は引くことを善しとしなかったが、あいつみたいに柔軟にいくべきか。今すぐに。じゃなきゃ勝てない。
返しの攻撃で一発お見舞いと思ったがそれよかあれだ。こっちのが確実か。
とも子にパス→藪内を振り切りリターンを要求。
当たり前だが連携なんざババアの下で散々練習してきてる。藪内にできて私にできない理由はない。
「ふーん」
「同じ2点」
ここからは総力戦だ。
あの手この手で得点を稼げたチームの勝ちだ。
ーーside 藪内
前半の様子からニカは中でも戦えると判断し、後半は積極的に切り込んで貰っている多分ニカ自身もそう思ってたのだろう。と言うかあっちの大きいのも振り切れるとは私も思わなんだ。
5番がマンツーで対応してるけど大分消耗してるっぽいし、その影響から崩すのがターニングポイントの一つになりそう。
それでも4番の存在が大きい。。
多分この人にチームは絶対的な信頼を置いているのだろう。
そして私はこの人に仕事をさせ過ぎている。
それがよろしくない。
煽っても、アイソレーション仕掛けても、この人はチームに最善をもたらして対抗してくる。
夏にやった時以上にやり難くなっている。
もう少し卸しやすい性格していると思っていたのに。
「円先輩!」
それ以上に後輩の進化が凄い件。
特に後半は積極的に中に切り込む。
多分相手も相当に警戒してたはずだとは思うけど。
だからこそうちも前半は様子を見ていた節もある。ヨーコ欠いてたし。
けど、前半終わり際にニカが仕掛けた。
本人も後半の指針のため様子見と言うこともあったのだろう。
結果、ガンガン攻めることを善しとしたわけだが、まあディフェンダーもかなりやる。
結果としてフィジカルでは遠く及ばないが、それでも食らいつく。弾けはするが抜かせはしない。
その上でニカはゴールを沈めてくれる。
安定感の化物だ。
「リターン貰いにきてくれても良かったんですよ?」
「や、ニカを脅威と認識させるのを優先」
リターンはまだまだ取っておく。
4番相手に手の内晒す方が向こうの進化を助長する気がする。勝てるとこで取っておくが吉。
そして多分5番は途中でガス欠を起こす。
なんせ私らが総掛かりでニカを抑え込もうとしても、こっちの方が先にガス欠になるのだから。
冬の過酷さを経験した私達以上に5番は走れるのか。
多分無理。無理だよね?私の読みだともたないと見てるんだけど。
逆にできたとしたら、もうそれはニカと同程度の化物と言うことだ。もう県内で留まる器じゃないと思う。
ニカもそう。空君の存在が彼女のポテンシャルを引き出したのか、元々の本人の資質だったのか。
両方か。
本人も頑張り家さんだし、上がるべくして上がったとも言うか。
さて。そんな彼女も本領を発揮する頃合いだろう。
前半はミドルレンジを軸。後半開始から今まではドライブ軸。
けれどもそれらはあくまでオプション。
彼女の本領はドライブでもフィジカルでもない。
圧倒的な精度を誇るアウトサイド。
スリーである。
「とも子ぉお!」
「ーークッ!」
あれだけ中を意識させられたのだ。
スリーチェックまで追い付けたら最早特化型ディフェンダーだろう。
それでも反応出来る分5番も並の選手じゃない。
ただそれを上回る程にニカのスリーは速く、そして正確だ。
それこそどこぞの男子を思い起こさせる程に。
「カウンター!」
4番の単独突破、、、は私が許さない。
それでも凄い。抑えが全然効かない。
私を伴いハーフラインを越える。
本当にこの人は!
さやかがフォローに入るもロールで避わしシュートエリアまで侵入を許す。
「とも子、仕事だ」
シュートフェイクからのビハインドバックで5番にパスが繋がる。
ニカが驚異的な反応で5番のチェックに当たったが、ここの駆け引きは相手の方が上手だったようだ。
ニカを思わせるモーション速度でスリーを沈められた。
「ーー同じ3点♪」
呟きが聞こえた。
ーーside 関谷
ディフェンスは苦手だ。
だけどあの夏の敗戦を受け一念発起し、ディフェンス力の向上と、今ある武器に磨きをかけた。
それだけ新見ちゃんの存在は、私にとって強烈だった。
『バスケ始めたのは中学入ってからですね。友達に誘われて流されて。でもその友達はすぐ止めちゃって、私はそのまま引退まで。と言ってもずーっとベンチだったんですけどね。
高校も流されて近場で妥協してです。校則緩くて制服も可愛いし。部活入ったのも中学からの延長で諾々と。でもそこに凄い同級生がいたので、熱が入っちゃいました。
本格的に打ち込み始めたのは、その同級生に声を掛けた夏前です。相談してメニュー聞いて唖然としましたけど、どうせやるなら本気でやってみようって。流されっぱなしの私ですけど、同じくらいちっちゃい彼がとんでもないプレーしてるのみてたら、やっぱり勇気貰って。まあ、後悔もしましたけど(遠い目)』
なるほど、分からない。
いくらあの彼の指導を仰いだからと言って劇的に成長するものなのか。
いや、なってるけどさぁ。
とにかく成長曲線がとんでもなさ過ぎる。
新でも彼女は厳しいだろう。
けれどやるしかない。
フィジカルじゃ最早勝負にならないけど。それ以外、特に得点力では負けないし、負けるわけにはいかない。
新見ちゃんは幾度も中に外にと、大忙しで立ち回って得点をする。私も負けじとお返しをする。易々シュートまで止められてなるものか。
それでも彼女の凄いところは、徐々に私の動きを捕捉しつつあるところ。
いや、多分私の動きが鈍ってきてるのもある。
4ピリも終盤。
60-60と拮抗した状態。
向こうの5番もうちの新もファウルが3つだけど、最早気にする時間でもない。
チーム全体として見ても互いに疲労はどっこい。
私と新見ちゃんの得点力も均衡を保っているけど、私の体力は割りと限界。相手の5番は異様なまでにそういう機微を見逃す人じゃ無かったから、幾度と無く私は狙われてる。
だからこれは私の意地。
全体的な実力で及ばないまでも、チームが勝てばいい。
私が折れない限り勝ちの目はあるのだから。
何度目かの新のドライブ。
さしもの5番も最終盤の新に、、、ヘルプの新見ちゃんが激しくぶつかる。ごめん新、流石に簡単に隙与えて。
流石新見ちゃんのファウルであったが、盛大に新が吹っ飛ぶのは未だかつて見たことがない。
それでいて向こうはピンピンしてるのだから理不尽だろう。但し新にもそんな余裕が無いようで、かなり限界が近い。
「決めなよ」
「うっせ」
2本とも沈め62-60
助かる。
それでも理不尽は待ってくれない。
来ると分かっていた。
返しで絶対彼女が来ると。
必だから必死で猛追した。
新と二人がかりなら。
「円先輩」
「ナイリ」
5番→新見ちゃんドライブ→5番リターンのスリー
62-63
ああ、そうか。
こもぞと言うところで沈めてくるから彼女がエースなんだ。
タイムアウト。
これも助かる。
「なんて様だい。あんたら、走り負けとるよ。けどね、あたしの目が節穴じゃ無ければ全体ではまだ競り勝ってる。いいかい、気合いだなんだ言う前に考えることを止めるんじゃないよ。常に勝ち筋をコートで見出だしな。私が言える筋は新か関谷、あんた達二人が光明だよ」
「ハァ、ハァ、、、ババア、時間は」
「1分さね。次のオフェンスを15秒以内、もっかいそれを成立させること。これが可能性高い勝ち筋とみてるさね」
「しんどい、ですね」
「ディフェンスはあっさり終わらせな。但しスリーは許すんじゃない。次のオフェンスがしんどくなるよ。延長なんて考えるんじゃないよ」
やるしかない。
ここにきて新見ちゃんがいの一番の動きを見せる。私に絶対スリーを許さない、そんな感じ。
けどね、そんな余裕もうないの。
始めから囮。
本命はもう新って決めてるんだ。
それでも私から離れないのは、新からのパスが怖いからだよね。少しでも5番を新とのマッチアップに集中させようって私に引っ付いてる。
私も同じだよ。
「新ぁあ!」
ディフェンスブロックを振り切れない。けど決めきる。
64-63
ディフェンス。
少し、ほんの少しだけ、次の攻めに向けて抜く。
致命傷だった。
スリーラインより更に後方。
躊躇い無く放たれた放物線は迷い無くリングを通過した。
ロングスリー。それでいて普段と変わらないモーション速度で。
64-66
時間はまだ20秒近くある。
大丈夫、攻め抜けばいい。
でもスリーは無理そう。
もう一度新。
いや、5番がすでに捉えている。
私は言わずもがな。
詰んだ?
「引いてダメなら、押してみる」
いの一番、私のドライブは新見ちゃんを置き去りにした。
66-66
延長戦突入。
そこで私達は力尽きた。
ーーside 新見
試合には勝てたけど一歩間違えたら私達は負けていただろう。特に4ピリで見せた関谷さんのドライブは完全に虚を突かれた。ここまでフィジカルで圧倒したのに、最後の最後でスリーではなくドライブを仕掛けるとは。
下手にチャージしなくて本当に良かった。
あのタイムアウトで「延長も視野に入れろ」と監督から言われなければ危なかったと思う。円先輩は端から延長狙いだったらしいけど。
「総合的に走り勝ったと言うのが総評だ。加えてニカと言う劇物で走らせたのも大きかった」
私は最早デバフかなんかなのだろうか、、、ともかく、先ずは勝てて良かった。いよいよ関東まで後1勝、というとこまでこまを進められた。
県ベスト4か。あんまり実感無いかも。
監督の話も終え、撤収をして外に向かおうとすると、何か周りから妙に視線を感じる。
「小さいけど、力やばかった」「小柄だけどゴリラ」「可愛いけどゴリラ」私が何をした。
理不尽な評価に顔を真っ赤にさせてると、同じくらい小柄な女の子が私に話掛けてきた。と言うか関谷さんだった。
「やっほー新見ちゃん。今日も完敗」
「関谷先輩!さっきぶりです」
夏の練習試合の後、実は交流を持ってたり。と言っても連絡先を交換してたまに電話で近況を報告しあう関係位だけど。
「よくもやってくれたな~」
「きゃあああああ」
ちょ、先輩そこはぁあああ
「おい」
「ヒエッ」
じゃれあってたら4番の怖い人相の人が来た。
咄嗟に関谷先輩を(強制的に)前に差し出した。
私の恐がり様を見てか毒気を抜かれながら話掛けてきた。
「あー、まー、恐がらせる意図はねぇ。やるじゃん、って言いたかっただけだし」
「ありがとうございます?」
「うちの室伏ぶっ飛ばし時も思ったけど、やっぱ力エグいな。私もあそこまできれいにぶっ飛んだのはあんまり記憶ねぇ」
「私はしょっちゅうですよ。同級生の背丈同じくらいの男の子に」
「なるほど、道理で」
試合が終わればノーサイド。
次もやる時があると思うから戦略的なことは言えないけど。
それと車谷君の名前を出したらすぐに納得してくれた。
やはり分かる人には分かってしまうらしい。
いよいよ彼の名前も広く知れ渡るんだろうなー。
的なことを話してたら鏡を見せられた。
え、私も?
曰く『あそこまで活躍されたらお前も注目されるだろう』とのこと。確かにさっきまでゴリラゴリラと噂されてたし。
、、、なんかやかも。
「負け惜しみになるがまだ新人戦だ。この後春の関大と夏のインハイが残ってる」
「はい」
「、、、(邪気のねぇ表情。あいつと違って調子狂うな)」
「要は新は首洗って待っとけ、って言いたいの。あ、これ私もそう思ってるからね」
「はい!どんと来いです」
「私はお前らの感覚が分からねぇよ」
「新と円ちゃんみたいなものだよ」
「そんな和やかじゃねぇ」
そうかな。
案外仲良さげな気がするけど。
先輩達は案外呆気らかんとしてたけど、やはり本番は全国に繋がるインハイなのだろう。
夏から続いている縁だけど、果たして後何回戦うことになるのか。
今度は油断しないようにしないとです。