今日は入学してから2日目。昨日はカラオケに行ったあと、コンビニで夜食を買って帰った。
寮に着いた時は、来る場所間違えた?って思っちゃった
だって────想像していた斜め上で、ほぼマンションみたいな見た目だったからね?
全員に個室が与えられるって。なにこれ、天国か?
ドアを開けた瞬間、さらに混乱した。
玄関ちゃんとしてるし、ユニットバスじゃなくて風呂トイレ別。収納もある
……ほんとに寮? 一人暮らし体験版とかじゃなくて?
国はこの学校にこんなに予算かけてて「国民の税金を無駄にするな!」とか言われないのかな?
まあ一旦この話は置いといて。昨日の僕 、高校デビュー大成功、といってもいいんじゃない?
初日にクラスメイトとカラオケって。だいぶぶっ飛んでるよね。Bクラスは協調性高そうだったし、一度仲良くなってしまえば、ぼっち飯なんてことにはならなそうだ
「…よっと」
サイコキネシスで制服を棚から持ってくる。
個室で監視カメラがないことも確認済みだから、超能力が使えるのもいいよねー。生活で何かと便利だし
今は種族が聖人じゃないし、前世と肉体自体は完全に変わってると思うんだけど超能力が今も使えるってことは、精神に結び付けられた力ってことなのかな
「……便利だから、いっか」
それに、この能力は使いどころを間違えなければ最高に生活向きだ。
物は取れるし、電気は消せるし、ベッドから出ずにカーテンも閉められる。
まさに人類の夢、自ら動かずに自分で身の回りの事ができるシステム。
制服に着替えて荷物も持ったので廊下へ出ると、同じく部屋から出てきた隣室の神崎隆二と目が合った
「おはよう、坂柳」 「おはよ、隆二。朝から相変わらずキリッとしてるね」 「お前は緩すぎだと思うがな……」
二人は並んで校舎へと向かう。道中、他クラスの生徒たちもチラホラ見かけたが、明らかに雰囲気が違う一団があった。
「……あれは、Dクラスか」「そうみたいだね」
優樹の視線の先には、HRまであまり時間がないというのにコンビニの袋を下げ、大声で笑いながら歩く生徒たち。中にはガムを噛んでいたり、スマホの画面に夢中になっている者もいる。
一方、Aクラスの生徒たちは、もう既に教室へ行っているのか見られなかった。
「……差が顕著だね」
「だが、あれでも入試を突破したんだろう? 学力はあるはずだ」
「もしかしたら学力だけ、じゃないんじゃない?この学校の基準は。あの赤髪の生徒なんて明らかに運動得意そうだし、そういう所が評価されてるのかもね」
「なるほど……有り得そうだな」
校舎へと続く石畳の道を歩きながら、優樹は軽く伸びをする。
Bクラスの雰囲気は良好。
隆二のような例外もいるにはいるが、友好的で、素直で、そして扱いやすい。
ただしそれは、裏を返せば誰かが主導権を握らなきゃ、簡単に崩れるクラスでもあるということ
昨日の自己紹介で中心に立っていたのは一之瀬帆波。
彼女は明らかにクラスの軸になる存在だ。
だが――
彼女はリーダーシップは十分だが、その性格があまりにも指導者に向いていない。昨日、観察した様子だと周りのために自らを犠牲にするようなタイプだ。指導者として冷酷でなければいけない場面でも優しさが前に出てくるだろう。
まあ、そこのところは隆二とかがサポートしてくれるとは思うけどね
◇◆◇
午前の授業が終わって今は昼休み。僕は柴田と一緒に購買に来て昼食をどれにしようかと悩んでいる
今日は授業初回なので、ほとんどの授業が自己紹介や今後の授業についての説明で終わった。多分午後の授業も同じ感じかな
棚を物色していると、隅の方に「ご自由にお持ちください」と書かれたところに古びたノートや、賞味期限の近いパンが置かれているのを見つける。
これは…ポイントを使い切った人用かな?
それを見つめる僕の背後に、気配を感じた。
「……あなた、こんなところで何をしているの?」
聞き覚えのある、冷ややかな声。 振り向くと、そこには昨日と同じ、氷のような視線を向ける黒髪美人が立っていた。
「やあ、昨日の黒髪美人さん。奇遇だね、僕も今来たところだよ」
「……馴れ馴れしくしないで。それに、その呼び方は不愉快よ。私には堀北鈴音という名前があるわ」
「おっと、失礼。僕はBクラスの坂柳優樹。よろしくね、堀北さん」
堀北は眉をひそめ、優樹を値踏みするように見つめる。
「それよりも、なぜわざわざこんな無料品コーナーを物色しているの? ポイントなら潤沢にあるはずでしょう」
「慎重派なんだよ、僕は。……ところで堀北さん、君のクラスの風景、さっき廊下からチラッと見えたけど……」
優樹はあえて言葉を切り、彼女の反応を待った。
「……ええ。最悪だわ。あんな低俗な連中と同じクラスだなんて、間違いとしか思えない」
低俗な連中、って仮にも同じクラスの人達に酷い言いようだ
「間違い、か。……もし、それが『学校側の正当な評価』だとしたら、どうする?」
その言葉に、堀北の目に鋭い光が宿る。
「……どういう意味?」
「さあね。ただの独り言だよ。……またね、堀北さん。今、友達を待たせちゃってて。次会うときは、もう少しツン要素を抑えてくれると嬉しいな」
優樹はひらひらと手を振りながら、彼女の横を通り過ぎた。 背中に刺さるような視線を感じながらも、飄々として去っていった。