無個性だけど愛の力があるんで   作:音速のノッブ

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2人の誓い

それから月日は流れて俺と葉隠は小学4年生になった。小学校も同じところで4年連続同じクラスと言う運を使い果たしたレベルでの幸運。そして行き帰りも一緒。はっきり言って最高っス。

 

俺と透はあれからあっという間に仲良くなり、幼馴染兼親友の関係となっていた。お互いシンクロ率が高かったのだろう。今でもどんどん仲良しメーターはグングン上昇中だ。それに比例してラブパワーは益々力を増大させている。制御は出来てるよ、プロ(?)ですから。

 

「それでこの前一緒にスイーツ食べに行ったんすよ。もうね、透の幸せそうな顔でお腹一杯になったで~」

 

『はいはい、良かったねー(適当)』

 

神様の反応が適当に聞こえるのは気のせいだろう(ポジティブ思考)

 

『…………てか、もう付き合っちゃえば?結婚したいとか散々聞いたんだけど』

 

「いや、あれは少なくとも今はガチじゃないというか……………葉隠の事は大好きだよ、勿論。けど、これが恋愛感情から来るものなのか友愛感情から来るものなのかがよく分からん」

 

『なるほど。……………でも、理由はそれだけかな?』

 

「……………笑うなよ」

 

そう一言断って最大の理由を告げる。

 

「……………この5年で透とめっちゃ仲良くなれた。だから、もし告白して今の関係性が壊れたら……………って考えると怖くなった……………かも」

 

『……………………』

 

正直、今の関係性でも満足できてしまっている自分がいる事が否めない。けど、ずっとこのままの関係でいたいと思っていない自分も確かにいる。でも、今の関係が壊れるかもしれないと考えると─────怖い。

 

『……………ふふっ。いいねぇ、青春って感じで』

 

「笑うなって言ったのによぉ……………」

 

『悪い悪い。……………しかし、前世を知っている身としては君がそういう事に悩めるのは嬉しく思うよ。まさに『幸せ』ってやつなんじゃない?』

 

「……………そうだな。そうかもしれない」

 

……………まぁ結論を急ぎすぎるのも良くないだろうし、自分のペースで向き合っていくとしよう。もっといろんな経験をすれば自ずと答えが出てくるかもしれないしな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな訳で気持ちを新たに今日も透と下校中。皆は知らない透の素顔。どんどん可愛くなっていき、それを独り占め出来る愉悦。ああ~~たまらねえぜ(HKO)

 

「朔久ってさ将来はヒーロー科志望だったりするの?」

 

「へ?」

 

いきなり透にそんな事を聞かれて思わず間の抜けた声を出してしまう。

 

「いや、ワイは無個性なんですがそれは…………」

 

「それは知ってるけど、朔久って強いでしょ?前に学校とかで朔久をいじめてきた子を返り討ちにしてたし」

 

そう言えばそんな事もあったな。前に無個性だからっていじめてきた奴とその取り巻きがいた。透に心配させたくも無いし、何よりふつーにうざったかったので『カスが効かねんだよ(無敵)』とバレないようにラブパワーを少しだけ使ってドロップキックで沈めた。あれから奴とその取り巻きは一切関わってこない。ほい、天罰。

 

「まぁ、あれは相手が雑魚助だったし……………それに、俺は将来はホワイト企業でそこそこのお金を貰ってぐーたら過ごす予定だしね」

 

「何か朔久らしいな~」

 

それは褒めてるんだよな?褒めてるよね?(震え声)

 

「そ、そういう透はヒーローとかになりたいの?」

 

「うーん、どうだろう。何となくなりたいなー、って気もするけど私の個性は戦闘には向いていないし、身体能力もそこまで高くないし」

 

透の個性は原理的には体表面の光屈折率を変えることで周囲から透明に見せている。確かに戦闘には向いていないが──────。

 

「けど、偵察とかには向いているんとちゃうん?服とか全部脱げば完全にステルスに……………」

 

「あ、確かに!」

 

……………ちょっと待て。俺は今とんでもない事を言ってないか?!言ったな!(確信)

 

てか、透も確かにちゃうやろ。変態とか罵れや……………罵しられてぇ(ドM)

 

「あのぉ、すみません」

 

俺の新たな性癖が開花しよとしていた時に背後から声を掛けられる。振り返ると帽子を被ったおばあちゃんがいた。

 

「ちょっと行きたいところがあるんだけど、スマホを使っても分からなくてねぇ……………教えてもらっても良いかねぇ?」

 

「あー、良いっすよ(快諾)」

 

「どこに行きたいんですか?」

 

透がそう尋ねるとおばあちゃんはスマホの画面を俺達に見せてくる。……………あれ、おかしいな。何か意識が─────。

 

「…………掛かったな」

 

最後に聞こえたのはそんな声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シュワット!?」

 

跳び起きるとそこは知らない場所だった。何だここ?てか、手足が結束バンドで縛られていやがる……………これ誘拐やん(確信)

 

「朔久!大丈夫?ずっとうなされてたけど……………」

 

「透!…………良かった、一先ず何もされてないみたいで」

 

「安心しろ、まだ何もしてねぇよ。今は、な」

 

声のする方を見ると男が2人、それにトラみたいな奴とライオンみたいな奴が2人──────計3人のヴィランか。よく見ると机の上にさっきの帽子があった。

 

「……………なるほどね、老人に化けて油断させたところを個性で眠らせたって所か。手慣れてるね。スマホの映像を見せる事で発動する催眠とかか?」

 

「ほう、ガキの癖に頭が回るじゃねぇか。俺の個性は自作の画像を見せる事でどんな相手でも昏倒させるのさ」

 

「へー(無関心)………てか、こんな小学生を誘拐してどうするんですかね(困惑)うち金持ちじゃないですけど」

 

そう問いかけると男は余裕そうな表情で答える。自分が圧倒的に優位にいると思っての余裕か。

 

「別にお前らの親から身代金を取ろうってわけじゃねぇよ。俗に言う人身売買ってやつだ。そこの女、透明の個性だろ?そういう珍しいのはいい値が付くんだよ」

 

…………ああ。改めて確信する。こいつらは救いようがない屑だ。

 

「てかお前、そういうや個性は何だ?見たところ常時発動しているものではにみたいだが」

 

「残念ながらカテゴライズとしては無個性ってやつでね。ただの一般人だ」

 

「そ、そうだよ!だ、だから……………誘拐するなら私だけにして朔久は開放してよ!」

 

優しすぎんぜ透……………心に染みわたりますよ、くぉれは……………(感動)

 

「そうはいかねぇ。目撃者は生かしておけねってよく言うだろ?生かしていても時間の無駄だしさっさと殺るか」

 

だが、そんな願いが通じる訳もなく男は机の上にあった銃を手に取って近づいてくる。

 

「や、やめて!朔久に酷い事したら許さないよ!」

 

「ガキは黙ってろ。安心しろ、個性のないゴミくずは一瞬で終わらせてやるからよ」

 

「…………………………」

 

ゴミくず、か────ふと、唐突に俺は前世の事を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『てめぇまだ数字取れてねぇのかよ!!』

 

『…………すみません』

 

『使えねーゴミくずが!!もうやめちまえよ!!お前に存在価値なんてねーんだよ!』

 

親も亡くなって、奨学金と言う名の借金で大学は何とか卒業したものの就職先は日本屈指のブラック企業。

 

『あいつ、また怒られてやんのww』

 

『2年目にもなって数字ゼロとかやばww』

 

営業の才能がなかった俺は会社内では人権もなく、上司からは毎日罵詈雑言。同僚や先輩からは冷ややかに笑われる日々。オマケに安月給と来た。営業が出来ないからと事務作業を押し付けられて土日も会社に無給で来る始末。友達や恋人もおらず、親もいなくて誰にも相談できず。労基は介入してくれず、裁判を起こそうにも金が無く誰も助けてくれない。唯一、アニメや漫画が俺を生かしていただけの人生。

 

漢字三文字で表すと『理不尽(・・・)』ってやつだ。俺のかつての世界は理不尽で満ちていた。そんな世界から意図せずして開放され、第2の人生を歩むこととなった。この世界では親も元気でいてくれて、大切な友達も出来た。

 

だから忘れていた──────やはりどこの世界でも『理不尽』が満ち溢れている。今日までは運よく巻き込まれなかっただけで。

 

目の前のこいつらは前世で権力や才能で弱者を虐げていた会社の奴らと同じだ。『権力』や『才能』が『個性』に変わっただけで。一線を超えて道理を外れた行為を悪びれた様子もなく非道な行為を行う。

 

前の世界と今の世界。個性の有無やベクトルば違えど、『理不尽』で満ち溢れているという点では変わらないのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(────────けれど)」

 

前世の俺と現世の俺の中で1点違う点がある。それは簡単な事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今の俺には理不尽に反逆する()がある

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────大丈夫だよ、透」

 

「……朔久………?」

 

「すぐ片づける」

 

涙を浮かべる透にそう声を掛けると俺は全身にラブパワーを纏い、手足を縛っていた結束バンドを引きちぎって立ち上がる。

 

「なっ、拘束を………!?」

 

「意外と脆いな。出力1%以下で引きちぎれるとは。さてはダ〇ソーで買ったな。今度はAm〇zonでいい値のものを買うんだな。まぁ、次は無いが」

 

そう言うと俺は銃を持っていた男の目を見る。いつからか銃を持つ男の手が震えていた。

 

「な、何だ…………………まさか、怯えているっていうのかこの俺が!?」

 

三流の悪党がいう台詞だな。まぁ良い。

 

「どうした?相手は小学生だぞ。それとも気づいたか?撃って良いのは──────」

 

次の瞬間、一瞬で距離を詰めた俺の拳が顔面にめり込み、男は奥の方まで吹き飛んでいた。銃も床に転がる。用心棒のトラやライオンを思わせる風貌をした奴らも気絶している男を見て呆然としている。

 

「──────撃たれる覚悟のある奴だけだ」

 

うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!言っちゃったよ、名台詞!かっけぇ!俺かっけぇ!(自画自賛)

 

…………っと、愉悦に浸るのは後回しだ。あともう2匹。

 

「どうした?早く来いよ」

 

「っ……………………グルァァァァァァ!!」

 

ライオン型のヴィランがかぎ爪で襲い掛かって来る。ノープランの勢いだけか。

 

「落ちろ、蚊トンボ」

 

「グホァ!?」

 

避けて顔を掴むと地面に叩きつける。それだけでピクリとも動かなくなった。さて、あと1匹。

 

「う、うっ…………………うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

トラ型のやつは恐れをなしてか逃げようとしていた。食物連鎖の上の方にいるトラに恥ずかしくないんか?世界中のトラの前で土下座させなきゃ(使命感)

 

「どこへ行くんだぁ……?」

 

「ひっ………………た、助けてくれ!俺は金で雇われただけで……………!」

 

「1人用のポットでかぁ?(ガン無視)」

 

回り込んで命乞いするトラ人間の尻尾を掴むと俺は富士ロッ〇フェスでタオルを振り回す観客の如く思いっきりぶん回す。

 

「WRYYYYYYYYYYYYYYYY!!」

 

そして勢いよくぶん投げる。トラ野郎は鉄骨に激突してノックアウト。へっ、汚ねぇケツだ。

 

「な、何だこの力は………本当は個性持ちだったのか…………」

 

「かぁん違いするな(パ〇ガス)………俺には個性がない。しかし、力はある」

 

そう、その力とは即ち。

 

「────『愛の力』だ」

 

「………………………」

 

「っておい、何気絶してんだ!!人の話は聞けってママに習わなかったのかアアン!?(股間ガン蹴り)」

 

「あのー、取り合えず私の拘束解いて……………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、戦闘の余波で通報があったのか警察がすぐやって来て奴らはお縄となった。警察にはラブパワーの事は伏せて俺が倒した事を話した。最初は信じてもらえなかったが透が証言してくれたり、不意を突いたり股間を狙うというゲスの極み戦法を取った事を話す等(まぁ嘘ではない)、弱いなりに工夫した風に思わせて何とか信じてもらった。どうやら俺達は横浜の方まで連れてこられていたらしく、今は親の迎え待ちだ。

 

「……………なぁ、透」

 

「なーに?」

 

「………あの力の事、何で警察に話さなかった」

 

透に口止めする時間もなく警察が来たので、まぁバレてもしゃーないかと思っていたが透はラブパワーについては一切話さなかった。警察は現場検証で忙しく周りには誰もいないので訊いてみる事にした。

 

「言って欲しかったの?」

 

「いや全然(即答)」

 

「だよね。私にも言わなかったって事はそうだと思ったから」

 

……………流石は幼馴染と言ったところか。よく分かってる。

 

「……………透。俺は」

 

「待って。言いたくないなら言わなくても良いよ」

 

「……………いや、話すよ。透なら警察よりも信頼できる」

 

俺は周りに誰もいないことを確認して手短に話す。『ラブパワー』の事を。今まで黙っていた訳も。透は黙って聞いていたが、話し終えると『そうなんだね』と一言だけ呟いた。ラブパワーについての感想はそれだけだった。

 

「……………ねぇ、朔久。私決めたよ」

 

「?」

 

「私、雄英高校のヒーロー科目指す」

 

ファッ!?(驚愕)

 

「今日さ、すっごく怖かった。私もそうだけど………朔久が死んじゃうと思ったから」

 

「…………………………」

 

「でも、朔久がその力を使ってあの人達を倒してくれて。私を守ってくれたその後ろ姿が……………すっごくかっこよかった!」

 

「……………!」

 

「朔久は私のヒーロー。今日も………ううん、ずっと前から!だから、私も朔久みたいに誰かを守れるヒーローになる!」

 

そう言って『むん!』と気合を入れた様子を見せる透。君はマチタンかな、なんて感想を抱いてしまう。

 

「……………じゃあ一緒になるか。ヒーローに」

 

「うん!……………うん!?」

 

驚く透の反応に『可愛い!』と思いつつ、俺も口を開く。

 

「今日の1件で実感したよ……………やはり世界には『理不尽』が溢れているんだって」

 

「………………………」

 

「今も世界のどこかで力を持つ者が一方的に私利私欲や悪意、身勝手な思想で『理不尽』をばら撒いている。それは決して他人事のものじゃなくて…………………身近にあるものなんだ。今までが運が良かっただけで、今日みたいに突然降りかかってくる」

 

「………うん」

 

「……………俺は透みたいに見知らぬ誰かを守りたいと思える程の人格者じゃない。でも、身近な存在────俺の家族や透の家族………………そして、透が『理不尽』によって傷つくなんてのは………………冗談じゃない

 

俺の強い感情に応えてか一瞬体が発光する。慌てて落ち着かせて周囲を見るが透以外は誰も気づいていないようで一安心。

 

昔の(・・)俺は『理不尽』に抵抗する力がなくて耐える事しかできなかった。でも、今は違う。『理不尽』に抵抗─────『反逆』する力がある。なのに、何もしなかったらきっと後悔する。だから」

 

─────ホワイト企業でワークライフバランス?そんな生活はもういらない。もう、そんな生活ではきっと満足できなくなった。でも、確信した。

 

この道を往く事こそがこの世界に産まれた意味なのだ。

 

「俺は……………君のヒーローになるよ。そして、一緒に戦おう」

 

「!……………うん!」

 

差し出した拳に透も過去最高の笑顔で拳をぶつける。この2人の誓いを、俺は一生忘れない。

 

この日、俺の進路はホワイト企業への就職から最強のヒーローになる事へと変わった────────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから月日は経ち。

 

「あの日の誓いからもうここ(入試)まで来たか────やるぞ、透」

 

「うん!2人でやったろー!」

 

俺達は雄英高校の前に立っていた────────。

 

to be continued……………




もうちっとだけ続くんじゃ(原作すら入ってない)
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