遊戯王ARC-V 最初から揺れていた振り子   作:名もなきWater

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凍てつく光波

 ◆

 

「「決闘(デュエル)――!!」」

 

 レジスタンスの決闘者達に見守られる中、デュエルの幕が開けた。

 寝ぼけ眼を擦りながら呆けている者。

 食事の御供として観戦する者。

 そして……真剣な目で見つめる、ユートとアレン。

 

 程よい緊張と脱力。これぞデュエルのあるべき姿。

 ――軽く咳払いして、喉の調子を整える。

 そして、手札から一枚のカードを選んだ。

 

「まずはこちらから参りましょう!

 私は手札から、《EM(エンタメイト)ユニ》を召喚!」

 

 星屑のような光の中から、少女が軽やかに現れる。

 宙でくるりと身を翻し、金のポニーテールと尾を揺らしながら、いたずらめいた笑みを浮かべた。

 

「さらに、ユニの効果発動!

 手札からレベル3以下の《EM(エンタメイト)》を、攻撃表示で特殊召喚します!

 来てくれ! 《EM(エンタメイト)コン》!」

 

 淡い光を散らしなから、もう一人の影が滑り込む。

 水色のツインテールと尾をなびかせ、軽やかに宙へと身を預ける。

 

「二人そろって可愛さ二倍!

 Unicorn――!!」

 

 天真爛漫、弾ける笑顔。

 まるで示し合わせたかのように、二人は同じタイミングでポーズを決めた。

 

「…………」

 

 ――空気が、止まった。

 あまりにも場違いなその一幕に、誰も反応を返せない。

 取り残されたのは、ただの静寂だけだった。

 

「貴様……舐めた真似も大概にしろ。

 そんなカードでこの俺を倒せると、本気で思っているのか……!

 ここは戦場だ! お遊戯会が望みなら、さっさとスタンダード次元へ帰るがいい!」

「さて、それはどうでしょう!

 物事にも順序があるもの! こう見えてこの二人は、優秀なアシスタントなのさ!

 私は《EM(エンタメイト)コン》の効果発動!

 ユニとコンを守備表示にした後、デッキから《オッドアイズ》モンスターを手札に加える!」

 

 コンが指を鳴らした瞬間、デッキから一枚のカードがせり上がる。

 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》。

 俺はそれを引き抜き、もう一枚のカードと共に掲げる。

 

「私はスケール1の《EM(エンタメイト)モンキーボード》と、

 スケール4の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》で、ペンデュラムスケールをセッティング!」

 

 二枚のカードに応じて、地面から光の柱が二本立ち上る。

 片側の柱の中央には、歯が鍵盤のように並んだ猿。

 対となる柱には、異なる色の瞳を持つ紅の竜。

 二つの柱に数値が灯り、ペンデュラムスケールが形成された。

 

「モンキーボードのペンデュラム効果により、私はデッキから新たな仲間を手札に!

 さらに、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》のペンデュラム効果!

 ターン終了時に舞台裏へ戻り、代役の演者をデッキから手札に加えます!」

 

 モンキーボードが歯の鍵盤を軽快に鳴らすと、デッキから新たなカードが飛び出す。

 続いてオッドアイズが粒子となって霧散し、別のカードへと姿を変えた。

 二枚。

 それらを見せるように掲げた後、手札へと収めた。

 

「お楽しみは次のターン! 私はこれにて、ターンエンド!」

「次のターン、だと?

 ――温い。貴様に次のターンなどない!

 俺のターン!」

 

 カイトは手札から一枚のカードを選び、発動した。

 

「魔法カード《フォトン・リード》を発動!

 手札からレベル4以下の光属性モンスターを一体、攻撃表示で特殊召喚する!

 現れろ、《光波翼機(サイファー・ウィング)》!」

 

 光が収束し、クリアグリーンの機影が射出される。

 立方体のコアと六枚の翼が、無機質に光を放った。

 

「さらに速攻魔法、《地獄の暴走召喚》を発動!

 相手の場にモンスターが存在する状態で、攻撃力1500以下のモンスターを特殊召喚した時、同名モンスターを手札・デッキ・墓地から、可能な限り特殊召喚する!

 俺はデッキから、二体の《光波翼機(サイファー・ウィング)》を特殊召喚!」

 

 機影が複製されるように増殖し、三体が並ぶ。

 同一の光が、寸分違わず場に展開された。

 

「《光波翼機(サイファー・ウィング)》の効果発動!

 このモンスターをリリースすることで、《サイファー》モンスターのレベルを4上げる!」

 

 三体のうちの一体が、ノイズのように崩れて消える。

 それをトリガーに、残された二体のレベルが上昇した。

 

「レベル8のモンスターが、二体……」

 

 ……条件が、揃った。

 次に来るであろう衝撃に、思わず喉を鳴らす。

 

「俺は、レベル8となった《光波翼機(サイファー・ウィング)》二体でオーバーレイ!」

 

 カイトの足元に、漆黒の空間が出現する。

 二つの機影は引きずり込まれるように、その中心へ沈む。

 

「闇に輝く銀河よ! 復讐の鬼神に宿りて、我がしもべとなれ!

 ――エクシーズ召喚!

 降臨せよ、ランク8! 《銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)》!」

 

 闇を切り裂き、光の竜が降臨する。

 展開された翼は四分円を描き、回路めいた光が脈打つ。

 水色に発光する体表の上を、鎧のような鱗が覆い――その光る双眸が、場を静かに支配した。

 

「っ……いきなり高ランクのエクシーズモンスターを召喚するなんて」

「言ったはずだ、貴様に次のターンはないと!

 魔法カード、《一騎加勢》を発動!

 これにより、《銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)》の攻撃力を、ターン終了時まで1500アップする!」

 

 攻撃力が上昇する。

 数値は――4500。

 一撃でライフを消し飛ばせる数値――。

 

「そして、《銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)》の効果発動!

 オーバーレイユニットを一つ使い、ターン終了時まで相手モンスターのコントロールを得る!

 ――“サイファー・プロジェクション”!」

 

 光翼が、目を覆うほどの光を放つ。

 直後、ユニの姿が粒子となって散って行き、カイトの場に集う。

 粒子は一か所に収束し、別の形を組み上げる。

 しかし。

 そこに現れたのは、全く別のモンスターだった。

 

「なっ……ユニの姿が……!?」

 

 ――《銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)》。

 幻獣の少女は、光の竜へと変貌していた。

 

「この効果を使用したターン、俺はオリジナルの《銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)》以外でダイレクトアタックができない。

 だが奪ったモンスターは、《銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)》へと書き換えられる!」

 

 デュエルディスクを確認する。

 効果がない、攻撃力3000のモンスター。

 竜を見上げる。

 ユニだったものは、迷いなく俺達に敵意を向けていた。

 

「バトルだ! まずは二体目の銀河眼(ギャラクシーアイズ)で、壁モンスターを攻撃!

 ――“殲滅のサイファー・ストリーム”!」

 

 光の奔流が、《EM(エンタメイト)コン》を呑み込む。

 仲良くポーズを決めていた二人の姿は、最早見る影もない。

 

「これで貴様を守るモンスターはいない。

 終わりだ! やれ、《銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)》!」

 

 銀河の眼が光り輝く。

 全てを焼き払う破滅の光が、解き放たれた。

 

「……やるな。これがカイトのデュエルか」

 

 攻撃力4500でのワンショットキル。確かに最強っていうのも頷ける。

 

「だけど――この一撃、俺が貰う!

 手札から《EM(エンタメイト)クリボーダー》の効果発動! 来てくれ、クリボーダー!」

 

 ふわり、と。

 暴力的な光の前に、小さな影が出現した。

 紅白のボーダーの帽子を被った、毛むくじゃらの悪魔。

 光は悪魔によって遮られ、こちらには届かない。

 役目を終えたクリボーダーは、光の雨となって傷を癒す。

 

遊矢

LP:4000 → 8200

 

「ライフが、回復しただと……」

「《EM(エンタメイト)クリボーダー》は、ダイレクトアタックを受けた時、手札から特殊召喚してバトルを行う。そして発生するダメージ分だけ、ライフを回復する。

 惜しかったな。でも、油断大敵だぞ、カイト」

「っ……俺はカードを二枚伏せて、ターンエンド!」

 

 カイトは忌々し気に歯噛みしながら、場にカードをセットした。

 ――そう。

 今の防御は、読まれていた。

 読まれていたはずだった。

 一ターン目。

 《EM(エンタメイト)モンキーボード》の効果で手札に加えたカード。

 それを、よく確認してさえいれば。

 

「……このターンが終わったことで、銀河眼(ギャラクシーアイズ)の効果は終了し、コントロールは元に戻る」

 

 ぽん、と。

 軽快な効果音と共に、光の竜は少女の姿に戻った。

 

「おっと。お帰り、ユニ」

 

 少女は慌てながらこちらへ戻り、カイトを睨みつける。

 カイトはというと、既に興味を失っていた。

 

「奇跡は一度だ。二度目はない」

「俺のライフは8200。これだけの差をつけても、まだ心は折れてないのか」

「些細なことだ。

 俺のライフが1ポイントでも残っているならば、次のターンで貴様のライフを刈り取ってやる。

 たとえそれが8000――いや、10000だろうとな!」

「……流石の気迫。だけど、一つ忘れてるぞ。

 さっき言ったよな? お楽しみは次のターンってさ」

 

 手札のカードを、もう一度確認する。

 ……準備は整っている。

 ここは、意趣返しとさせてもらおう。

 

「――カイト。お前に、次のターンはない」

「っ……!」

 

 その瞬間。

 ほんの少しではあったものの――カイトは、初めて動揺を見せた。

 内心でほくそ笑む。

 ようやく、怒り以外の反応が見れた。

 

「俺のターン!

 俺は、セッティング済みのスケール1の《EM(エンタメイト)モンキーボード》と、

 スケール8の《EM(エンタメイト)ジェントルード》で、ペンデュラムスケールをセッティング!」

 

 悪魔の翼を持つ、ルードファッションの男。

 空白となっているペンデュラムスケールの柱に、もう一体が浮上した。

 

「これでレベル2から7のモンスターが召喚可能!

 揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け、光のアーク!」

 

 張り詰めた戦場に、光が差し込む。

 スケールが輝き、巨大な振り子が空間を横切った。

 描かれた軌跡は円となり、光のゲートが開く。

 

「――ペンデュラム召喚!

 EX(エクストラ)デッキから現れろ! 雄々しく美しくも輝く二色の眼!」

 

 掲げた手の先、ゲートの奥から光が落ちた。

 

「《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」

 

 異色の眼を持つ紅の竜が、大地へと降り立った。

 装甲のような鱗に光が走り、胸部の宝珠が淡く輝く。

 異なる色の双眸が細められ、獲物を見定めるように戦場を射抜く。

 

「さらに魔法カード《ミニマム・ガッツ》を発動!

 さあ、ユニ! 銀河眼(ギャラクシーアイズ)にリベンジと行こうか!」

 

 少女の瞳に決意が灯る。

 ユニは全身からオーラを発しながら、光の竜へと突貫した。

 ――直撃。

 同時に、ユニが消滅する。

 そして。

 竜の全身には、亀裂が入っていた。

 

「これは――」

「《ミニマム・ガッツ》は、俺のモンスターを一体リリースすることで、相手モンスターの攻撃力をターン終了時まで0にする! そしてそのモンスターがバトルで破壊された場合、元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!

 さらにオッドアイズは、モンスターとのバトルで与えるダメージを二倍にする!」

「ッ……!」

 

 カイトが息を呑む。

 そう、これぞ正しく意趣返し。

 この攻撃が通れば、ワンショットキルが成立する……!

 

「バトルだ!

 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》で、《銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)》を攻撃!

 ――“螺旋のストライクバースト”!」

 

 低く構えた巨体が、ばねのようにしなる。

 次の瞬間、地を砕く踏み込みと共に、竜は大きく顎を開いた。

 胸奥で収束した光が喉を駆け上がり、灼熱の息吹となって解き放たれる。

 

「罠発動! 《光波防輪(サイファー・ビット)》!

 これにより銀河眼(ギャラクシーアイズ)は一度だけ、戦闘及び効果では破壊されない! そして発動後、このカードは銀河眼(ギャラクシーアイズ)のオーバーレイユニットとしてチャージされる!」

 

 カイトの罠が起動した瞬間、幾何学模様の盾が出現した。

 盾は光を放ちながら、迫る龍炎を真正面から受け止める。

 炎と光がぶつかり合い、拮抗する。

 

「だが戦闘ダメージは発生する!

 行け、オッドアイズ!

 ――“リアクション・フォース”!」

 

 胸の宝珠が鋭く光る。

 それに呼応するように、竜の喉奥で新たな火球が生まれた。

 吐き出されたそれは、先行する息吹の流れに乗り、螺旋を辿って加速する。

 火球はそのまま光の盾へと叩き込まれ――内側から砕き散らした。

 

「ダブルトラップ、オープン! 《アームズ・コール》!

 デッキから装備魔法を一枚選び、自分のモンスターに装備する!

 俺が選ぶのは――《エクシーズ・ユニット》!

 このカードを装備したエクシーズモンスターは、自分のランクの200倍、攻撃力をアップする!」

 

 銀河の竜が、光の鎧を身に纏う。

 ランクは8。よって上昇値は1600。

 螺旋の炎が、光の竜ごとカイトを呑み込んだ。

 

カイト

LP:4000 → 2200

 

 しかし――竜は崩れない。

 ダメージ自体は与えたものの、ワンショットキルの圏外へと逃げられた。

 

「っ……やってくれる。まさか俺同様、ワンキルを狙ってくるとはな。

 だが――」

 

 カイトがニヤリと笑う。

 

「貴様はしくじった。俺のライフはまだ残っているぞ!」

「かもな。でも仕方ない。

 だって……それがデュエルなんだから」

 

 ――俺のライフが1ポイントでも残っているならば、

   次のターンで貴様のライフを削り切ってやる。

 

 さっきの言葉は、真実だ。

 ライフが残っている限り、ドローするカードがある限り、逆転の可能性はいくらでも残っている。

 

「……なんだ、この感覚は」

 

 カイトは、自分の手のひらを見つめながら、小さく呟いた。

 ゆっくりと指を開き、また握る。

 ほんの一瞬。

 その仕草に、どこかぎこちなさが混じった気がした。

 

「カイト? どうかしたのか?」

 

 声を掛ける。

 だが返事はない。

 まるでこちらの声が届いていないかのように、カイトは自分の手を見つめ続ける。

 

「……下らん。ただの錯覚だ」

 

 短く吐き捨てるように言って、カイトは手を握り込んだ。

 視線がぶつかる。

 鋭い。

 冷たい。

 ――いつも通りのはずの眼。

 なのに。

 その奥に、ほんの僅かだけ――

 熱が、残っているように見えた。

 

「行くぞ、榊遊矢。このターンで俺を倒しきれなかったこと、後悔させてやる」

「――ああ。望むところだ!」

 

 自然と、口元が緩みそうになる。

 慌ててそれを引き締めて、俺は言い切った。

 

「俺はこれで、ターンエンド!」

「俺のターン!

 貴様のターンが終了したことで《ミニマム・ガッツ》の効果は消え、銀河眼(ギャラクシーアイズ)の攻撃力は戻る!」

 

 光波の竜に、光が戻る。

 全身の亀裂は瞬く間に修復され、再度、光翼が展開された。

 ――それだけじゃない。

 今、《銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)》には《エクシーズ・ユニット》が装備されている。

 よって攻撃力は――4600。

 

「そして、《銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)》の効果発動!

 ――“サイファー・プロジェクション”!」

 

 巨大な翼から、目を潰すほどの光が放たれた。

 

「オッドアイズ……!」

 

 傍らから、紅の竜が消失する。

 オッドアイズだったものは、カイトのフィールドに集い、別の形へと組み変わる。

 現れたのは、二体目の《銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)》。

 

「っ……だけど、俺のライフは8200! 一回だけなら耐えられる!」

 

 このターン、俺にダイレクトアタックできるのは、オリジナルの《銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)》のみ。

 オッドアイズだった方は、俺を攻撃できないはずだ。

 

「そうだな……一回だけ、ならばな!

 魔法カード、発動! 《鬼神の連撃》!

 銀河眼(ギャラクシーアイズ)のオーバーレイユニットを全て使うことで、このターン、二回攻撃が可能となる!」

「なっ!?」

 

 ――その前提が覆される。

 銀河を映す瞳が、俺を捉えた。

 

「ライフがいくら残っていようと関係ない! 全て、跡形もなく殲滅するのみ!

 やれ、《銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)》!

 ――“撃滅のダブル・サイファー・ストリーム”!」

 

 光翼が再び展開され、同一の輝きが重なる。

 次の瞬間、二条の光が時間差なく解き放たれた。

 一撃目が空間を薙ぎ払い、その軌跡をなぞるように二撃目が追従する。

 回避の余地を残さない連続――同質の破壊が、二度襲いかかる。

 

「ぐっ――!!」

 

 奔流が直撃し、視界が白く焼き潰される。

 衝撃が全身を貫き、足元が大きく揺らいだ。

 

遊矢

LP:8200 → 3600

 

 間髪入れず、二発目が迫る。

 逃げ場はない。

 だが――忘れてはいけない。

 こちらには、優秀なアシスタントがいることを――!

 

「墓地から、《EM(エンタメイト)ユニ》の効果発動!

 墓地のユニと《EM(エンタメイト)》を除外することで、俺が受ける戦闘ダメージを一度だけ0にする!

 出番だ、Unicorn――!」

 

 きらり、と。

 小さな輝きが、進路に割り込んだ。

 金と水色。

 対になる残光が寄り添うように重なり、柔らかな膜となって広がる。

 直後、二発目の閃光がそれに衝突した。

 衝撃。

 だが――破れない。

 小さな輝きは、最後まで崩れなかった。

 奔流が過ぎ去る。

 その場に残った二つの輪郭は、ほんの一瞬だけ形を保ち――すぐに粒子へとほどけていった。

 

「……はあ。全く、ひやひやさせてくれるよ」

 

 小さく息を吐きながら、思わず口元が緩む。

 少しでも気を抜けば、その瞬間にライフを刈り取ろうとしてくる。

 それも、根こそぎだ。

 カイトにとってライフポイントとは、0かそれ以外でしかないんだろう。

 あの決闘者には、それだけの実力がある。

 

「チッ……しぶとい奴め。

 ……このターンのエンドフェイズ、《銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)》の効果は終了し、貴様のモンスターは元に戻る」

 

 二体目の《銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)が、弾けるように消滅した。

 その直後、傍らに相棒たる竜が復活する。

 

「ターンエンド。貴様のターンだ」

「俺のターン!」

 

 即座に、天空へと手をかざす。

 

「俺は、セッティング済みのスケールで、ペンデュラム召喚!

 現れろ! 《降竜の魔術師》!」

 

 光が一筋、戦場へと落ちる。

 群青と茶を纏った女魔術師。

 手にした杖は竜を象り、その先端が静かに脈を打つ。

 

「《魔術師》――いや。

 レベル7のモンスターが、二体……!」

「ご名答!

 俺は、レベル7の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と、《降竜の魔術師》でオーバーレイ!」

 

 漆黒の渦の中に、二体が誘われた。

 竜と魔術師。

 相反する二つが闇の中で重なり、光となって新生する。

 

「二色の眼の龍よ! 蒼き氷光をその身に宿し、希望の未来を守り抜け!

 ――エクシーズ召喚!

 現れろ、ランク7! 氷を統べし不屈の龍!

 《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》!」

 

 異なる色の双眸が静かに瞬いた。

 吐息が白く広がった瞬間、戦場の温度が一段階落ちる。

 足元から霜が走り、熱が音もなく奪われていった。

 ――氷を統べる絶対の龍が、そこに降り立つ。

 

「来たか……!

 だが、《銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)》の攻撃力は4600! 貴様のドラゴンに勝ち目はない!」

「いや、届かせる!」

 

 銀河眼(ギャラクシーアイズ)の攻撃力が高い理由は、あの光の鎧。

 ならば、まずはそれを破壊する!

 

「魔法カード、発動! 《ペンデュラム・ストーム》!

 互いのペンデュラムゾーンのカードを全て破壊した後、相手の魔法・罠カードを一枚破壊する!」

 

 モンキーボードとジェントルード、二体の《EM(エンタメイト)》が粒子に分解される。

 やがてそれらは一か所に集まり、竜巻となって標的を――《エクシーズ・ユニット》を貫いた。

 竜を守る鎧が、砕け散る。

 

「これで銀河眼(ギャラクシーアイズ)の攻撃力は3000に戻った!

 さらに、《降竜の魔術師》の効果発動!

 このモンスターを素材にしたエクシーズモンスターがドラゴン族とバトルする時、攻撃力は元々の数値の二倍となる!」

「何っ……!?」

 

 攻撃力上昇――5600。

 氷の竜が目覚める。

 吹き荒れる冷気はゼロを超えて、氷点下へ。

 されど、戦いの熱は消えず。

 竜の瞳は、燃えるような闘志を宿している。

 

「――バトル!

 《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》で、《銀河眼の光波竜(ギャラクシーアイズ・サイファー・ドラゴン)》を攻撃!

 ――“氷獄のゼロバースト”!」

 

 霧の奥で、異色の双眸が鋭く光る。

 吐き出されたのは、音すら凍てつかせる絶対零度の息吹。

 白き奔流は一直線に走り、光波の竜を呑み込む。

 

 触れた瞬間、光は凍り付いた。

 翼も、躯も、その輝きのまま氷へと変わっていき――

 ――次の瞬間、砕け散った。

 

カイト

LP:2200 → 0

 

 ◆

 

 氷漬けになった光の竜が、ガラス細工のように砕け散った。

 

「…………」

 

 光り輝く霰の中、カイトはデュエルの結果を噛みしめていた。

 敗北。

 それも、ただの敗北ではない。

 ――次へと繋がる敗北。

 奪われるものはなく、断ち切られるものもない。

 だからこそ、まだ続く。

 

「ああ――こういうものだったな」

 

 こぼれた声は、どこか遠くを見るように静かだった。

 それは、ここが戦場に成り果てる前。

 かつてのエクシーズ次元では、当たり前にあった光景。

 

 勝敗だけでは終わらない決闘(デュエル)

 勝っても終わらず、負けても終わらない。

 ただ、次へと繋がっていく――

 

 ◆

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