遊戯王ARC-V 最初から揺れていた振り子   作:名もなきWater

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時を刻むD-HERO

 ◆

 

「――なればこそ、俺はお前に負けられん。

 エクシーズ次元を守るため。

 不動のデュエルを貫くため。

 あいつの期待に応えるために……俺は、お前を倒す!」

「……やれやれ、暑苦しいヤツだ。だが、その心意気は評価してやろう。

 権現坂と言ったな。お前の実力、この僕自らが測ってやる」

「応とも! では行くぞ!」

「「決闘(デュエル)――!」」

 

 ◆

 

「先行はもらう!

 僕は魔法カード《デステニー・ドロー》を発動!

 手札から《D-HERO(デステニー・ヒーロー) ダッシュガイ》を墓地に捨て、カードを二枚ドロー!

 さらに、《D-HERO(デステニー・ヒーロー) ドリルガイ》を召喚!」

 

 現れたのは、右腕が巨大なドリルと化した男。

 鋼鉄の脚で大地を踏み締めると、轟音と共にドリルを回転させた。

 

「ドリルガイの効果(エフェクト)発動!

 手札からドリルガイの攻撃力以下の《D-HERO》を特殊召喚する!

 来い! 《D-HERO(デステニー・ヒーロー) ディバインガイ》!」

 

 ドリルガイが腕を掲げる。

 黒い光が弾け、漆黒のスーツを纏った戦士が姿を現した。

 背には黒と白の翼飾りが輝いている。

 

「そしてフィールド魔法、《幽獄の時計塔》を発動!」

 

 戦場が陰る。

 暗雲の中より現れた巨大な時計塔が、静かにその威容を晒した。

 

「カードを二枚伏せて、ターンエンド」

「俺のターン!」

 

 権現坂のターンが開始。

 しかしその直後――

 

「このスタンバイフェイズ、時計塔の針が時を刻む!」

 

 鈍い音を立てて、時計塔の針が動き出す。

 長針が一周する度、短針が一つずつ動く。

 やがて、時刻は三時を指し示した。

 

「暗雲の中に聳え立つ時計塔……か。

 なんとも不気味なカードよ。時計の針が一周した時、一体何が起きるのか」

「いずれ分かる。その時まで、お前が立っていられたらの話だが」

「なるほどな。

 ――だが! この漢権現坂、たとえ相手が何であろうと不動のデュエルを貫くのみ!

 手札より《超重武者ビッグワラ-G》を特殊召喚!」

 

 一体の巨人が空より降り立つ。

 黄色の機体と紐のような装飾は、巨大な草鞋を連想させた。

 

「このモンスターは自分の墓地に魔法・罠が存在しない時、手札から特殊召喚できる。

 そして《超重武者》をアドバンス召喚する場合、一体で二体分のリリースにできる!

 ビッグワラ-Gをリリース!」

 

 ビッグワラ-Gが粒子となって消滅する。

 次の瞬間、その光が一か所へ集束し、新たな武者の姿を形作った。

 

「動かざること山の如し! 不動の姿、今見せん!

 ――現れろ!

 《超重武者ビッグベン-K》!」

 

 橙色の重厚な鎧に身を包み、肩には巨大なさすまたを悠然と担ぐ。

 岩山のような体躯は微動だにせず、その威容は敵の進軍を阻む砦そのものだった。

 

「ビッグベン-Kは守備表示のまま、守備力を使って攻撃することができる!

 バトルだ!

 ビッグベン-Kで、ドリルガイを攻撃!」

「罠発動! 《D-フュージョン》!

 僕のモンスターを素材に、《D-HERO》を融合召喚する!」

「何っ……!?」

 

 ドリルガイとディバインガイの身体が、紫黒の渦へと呑み込まれる。

 

「岩盤を穿つ英雄よ! 神聖なる英雄よ!

 今一つとなりて暗黒の未来に君臨せよ!

 ――融合召喚!

 カモン! 《D-HERO ディストピアガイ》!」

 

 青黒い装甲に覆われた細身の肉体。

 感情を映さぬ黄金の仮面は、まるで未来を見通す機械のよう。

 その両腕には、闇を凝縮したかのような黒球がゆっくりと浮遊していた。

 

「相手ターンに融合召喚だと……!?」

「ディストピアガイのエフェクト発動!

 特殊召喚された時、墓地からレベル4以下の《D-HERO》を一体選択! その攻撃力分のダメ―ジを与える!

 ――“スクイズ・パーム”!」

 

 ディストピアガイが掌をかざす。

 凝縮された闇が権現坂を撃ち抜き、鋭い衝撃が全身を貫いた。

 

権現坂

LP:4000→2400

 

「ぬう……だが! 攻撃力はビッグベン-Kの守備力よりも低い!

 バトルを続行する! 行け、ビッグベン-K!」

「無駄だ!

 《D-フュージョン》で召喚されたモンスターは、このターンの終了時まで破壊されない!」

「だが、戦闘ダメージは受けてもらうぞ!」

 

 轟音と共にビッグベン-Kの一撃が炸裂する。

 しかし、《D-フュージョン》の加護により、その身体が砕けることはなかった。

 

エド

LP:4000→3300

 

「両者痛み分け、といったところか。

 俺はこれでターンエンド!」

「痛み分けだと?

 悠長なことだ。お前の敗北へのカウントダウンは既に始まっている。

 僕のターン!」

 

 エドはドローするや否や、そのカードをフィールドにセットした。

 

「カードを一枚セットする!

 さらに、墓地からディバインガイのエフェクト発動!

 手札がない時、ディバインガイと《D-HERO》を墓地から除外することで、カードを二枚ドロー!」

 

 選ばれたのは《D-HERO ドリルガイ》。

 二体が虚空へと消えた後、エドはカードを引く。

 その後、伏せたカードへと手をかざした。

 

「リバースカードオープン!

 装備魔法、《ビッグバン・シュート》!

 このカードをディストピアガイに装備し、攻撃力を400アップ!」

 

 ディストピアガイの全身に光が灯り、攻撃力が変化する。

 

「攻撃力3200……。

 しかしその程度では、ビッグベン-Kを超えることはできん!」

「デカイ図体を相手に、わざわざ正攻法で挑むと思うのか?

 ディストピアガイのエフェクト発動!

 攻撃力が変化している時、元の数値に戻すことで、フィールドのカードを一枚破壊する!

 消え失せろ! 

 ――“ノーブル・ジャスティス”!」

 

 ディストピアガイの掌から、黒い球体が射出された。

 

「手札から《超重武者装留ファイヤー・アーマー》の効果発動!

 ビッグベン-Kの攻撃力と守備力を800下げる代わりに、このターン、戦闘及び効果では破壊されない!」

 

 燃え盛る鎧がビッグベン-Kへと重なり、その巨体を炎が包み込む。

 黒球は弾け飛び、破壊の力は掻き消された。

 

「手札のモンスターを使って守ったか。

 だがカードを破壊できなかった場合、ディストピアガイの攻撃力は戻らない!

 そして《ビッグバン・シュート》の効果により、ディストピアガイは貫通能力を備えている!

 バトルだ!

 ディストピアガイで、ビッグベン-Kを攻撃!

 ――“ディストピア・ブロー”!」

 

 青黒い拳がビッグベン-Kへと叩き込まれる。

 防御を貫いた衝撃が権現坂へと届き、そのライフを削り取った。

 

権現坂

LP:2400→1900

 

「ぐ、ぬう……いい、一撃だ。伊達に総司令を名乗ってはおらんな。

 なればこそ、解せん。

 これだけの腕を持ちながら、何故アカデミアに属している。どちらが善でどちらが悪か、分からないわけではあるまい」

「愚問だな。戦争に善悪など存在しない。どちらも善であり、どちらも悪だ」

「馬鹿な! 融合次元はエクシーズ次元を侵略し、明確に追い詰めている! どちらが悪か、一目瞭然のはずだ!」

 

 戦争に善悪などない。

 それは、お互いに相手を責める理由がある場合の話だ。

 しかしこれは違う。

 融合次元はエクシーズ次元を追い詰め、カードにしている。故に、エクシーズ次元は被害者である。

 

 ――それが、権現坂昇の主張。

 エドは、肩は竦めて鼻で笑った。

 

「一目瞭然? 笑わせるな。エクシーズ次元が融合次元に何もしていないとでも思っているのか?

 カードにされた決闘者はエクシーズ次元だけじゃない。

 仇討ちを考えている者は、こちら側にもいるということだ」

「っ――」

 

 権現坂は絶句する。

 どちらにも同じような被害が出ているのならば、エクシーズが善とは断言できない。

 融合も、エクシーズも。

 どちらも被害者であり、加害者でもあるのだから。

 

「僕達は全員、盤上の駒でしかない。

 引き金を引いた者……戦いを推し進める者は、別にいる」

「何……?」

「――ターンエンド。お前のターンだ」

 

 無駄話は終わり。

 そう伝えるかのように、エドはターン終了を宣言した。

 権現坂もまた、デュエルへと意識を戻す。

 

「俺のターン!」

 

 エドの真意は分からない。

 だが問題はない。

 このデュエルに勝って聞き出せばいいだけのこと。

 

「このスタンバイフェイズ、《幽獄の時計塔》は再び時を刻む!」

 

 時計塔の針が六時を指す。

 ……一ターンごとに進む針は三時間。

 エドの言葉通りならば、短針が十二時を示した時にこそ、《幽獄の時計塔》は真価を発揮する。

 タイムリミットは二ターン。

 ――ならば、それまでに片を付ければいい。

 権現坂は、手札から二枚のカードを選び取った。

 

「俺は!

 スケール1の《超重輝将ヒス-E》と、

 スケール8の《超重輝将サン-5》で、ペンデュラムスケールをセッティング!」

 

 権現坂の両隣に光の柱が立ち上り、その中心にモンスターが出現する。

 鮮緑と鮮紅。

 二体の《超重》モンスターが、天空へと浮上した。

 

「これでレベル2から7のモンスターが同時に召喚可能!

 ――ペンデュラム召喚!

 現れろ、俺のモンスター達よ!」

 

 虹彩の門が開く。

 鋼鉄の武者たちが、光を伴って主の元へ舞い降りた。

 

「レベル4、《超重武者ドウC-N》!

 レベル2! チューナーモンスター、《超重武者コブ-C》!」

 

 提灯を携えた機械武者と、赤い巨拳を備えた小型兵が並び立つ。

 

「この瞬間! ディストピアガイのエフェクト発動!

 攻撃力を戻し、カードを一枚破壊する!

 ――“ノーブル・ジャスティス”!」

 

 それを見逃すエド・フェニックスではない。

 ディストピアガイが片腕を掲げる。

 漆黒の球体は《超重武者コブ-C》へと放たれ、粉々に消し飛ばした。

 

「っ……やはりな。お前ほどの決闘者ならば、そうすると思っていた。

 ペンデュラム召喚の後に、必ずチューナーを破壊すると」

 

 融合次元出身の決闘者が、シンクロ召喚を知っている。ペンデュラム召喚を知っている。

 エドのプレイングは、それを端的に表していた。

 

「だが、この程度で止まると思わんことだ!

 《超重武者ドウC-N》の効果発動!

 このモンスターをリリースすることで、墓地から攻撃力1500以下の、地属性・機械族モンスターを特殊召喚する!

 蘇れ! 《超重武者コブ-C》!」

 

 提灯が強く瞬く。

 その光とともに、ドウC-Nの姿は粒子となって消え去った。

 そして、赤い巨拳を備えた機械兵が再び戦場に立つ。

 

「行くぞ!

 俺は、レベル8の《超重武者ビッグベン-K》に、

 レベル2の《超重武者コブ-C》をチューニング!」

 

 コブ-Cが光の環となり、ビッグベン-Kを包み込む。

 

「荒ぶる神よ! 千の刃の咆哮と共に、砂塵渦巻く戦場(いくさば)に現れよ!

 ――シンクロ召喚!

 いざ出陣! レベル10! 《超重荒神スサノ-O》!」

 

 光が収束し、一柱の荒神が姿を現す。

 分厚い装甲に身を包み、薙刀を携えた巨神。

 胡坐をかいたまま鎮座するその姿は、微動だにしない武神そのものだった。

 

「バトルだ!

 《超重荒神スサノ-O》で、ディストピアガイを攻撃!

 ――“クサナギソード・(ZAN)”!」

 

 薙刀が黄金の光を纏う。

 振り抜かれた一撃は草を薙ぐように戦場を駆け抜け、ディストピアガイを抵抗する間もなく両断した。

 

「見たか。これがペンデュラムとシンクロを取り入れた、新たな不動のデュエルよ!

 融合次元など恐れるに――む?」

 

 権現坂は眉を潜める。

 スサノ-Oの一撃で、ディストピアガイは確かに破壊した。

 守備力3800に対し、攻撃力2800。本来なら1000ポイントのダメージが発生する。

 だが、エドのライフは減っていない。

 

「気づいたか。

 自分の力に溺れるほど、能天気ではないらしい」

「っ……!」

 

 舞い上がる土煙の向こう。

 エド・フェニックスは、顔色一つ変えないまま、そこに立っていた。

 隣には、一枚の罠カード。

 

「そのカードは……」

「攻撃を受ける直前、僕はこのカードを発動していた。

 罠カード、《エターナル・ドレッド》。

 《幽獄の時計塔》の針を進ませるカードだ。そして……見ろ」

 

 エドの指差す先には、時計塔。

 針は、既に十二時を示していた。

 

「時は満ちた。これにより、《幽獄の時計塔》のエフェクトが発動する。

 このフィールド魔法が存在する限り、僕はあらゆる戦闘ダメージを受けない」

「何だと……!」

 

 権現坂は歯噛みしながら、自分のペンデュラムゾーンを見た。

 《超重輝将サン-5》。

 《超重武者》が相手モンスターを戦闘で破壊した時、二回目の攻撃権を与えるペンデュラム効果を持つ。

 今、スサノ-Oに対してこの効果を発動すれば、エドに直接攻撃が可能だ。

 だが、《幽獄の時計塔》がある限り、戦闘ダメージは与えられない。

 一見無防備に見せかけた、完璧な守りだった。

 

「っ……やむを得ん。俺はこれで、ターンエンド!」

 

 三度、エドのターンがやってくる。

 権現坂は、あくまで冷静にエドの動きを見る。

 《幽獄の時計塔》によりダメージは与えられないが、エドのフィールドにはそれ以外のカードがない。

 勝ち切れていないが、不利でもない。

 こんな状況でこそ、不動のデュエルの見せ所である。

 ひたすら耐え続け、勝機を待つ。

 権現坂昇の得意とする戦術――。

 

「僕のターン」

 

 ただ一つ、思い違いがあるとすれば。

 

「僕は魔法カード、《大嵐》を発動!

 お互いの魔法・罠カードを全て破壊する!」

「何っ……!?」

 

 《幽獄の時計塔》は、守りのカードではないということ。

 

 ――嵐が吹き荒れる。

 エドを中心に自然災害が発生し、周囲の景色を切り刻む。

 時計塔は崩れ、《超重輝将》は破砕する。

 互いのフィールドに損害をもたらす。それが《大嵐》という魔法カード。

 だからこそ、権現坂には分からなかった。

 

「馬鹿な……!

 守りの要たるフィールド魔法を、自ら破壊するだと……!?」

「《幽獄の時計塔》が守りの要だと? いつ、誰がそんなことを言った?」

 

 エドが笑う。

 勝利を確信した笑みだ。

 

「時が満ちた時計塔が破壊された時、幽閉されていた恐怖の男が解き放たれる!」

 

 崩壊した時計塔の奥底から、鎖を引きずる音が響く。

 無造作に伸びた黒い長髪。

 素顔を隠す鉄仮面。

 岩石のように隆起した筋肉。

 

「――カモン! 《D-HERO ドレッドガイ》!」

 

 轟音と共に巨体が戦場へ叩きつけられる。

 大地が陥没し、砂煙が噴き上がる。

 その中心で、封印の鎖を引きちぎった《D-HERO ドレッドガイ》が、ゆっくりと立ち上がった。

 

「ドレッドガイのエフェクト発動!

 特殊召喚に成功した時、墓地から《D-HERO》を二体選び、フィールドに特殊召喚できる!

 現れろ! ダッシュガイ! ディストピアガイ!」

 

 ドレッドガイの両脇に、二体のモンスターが出現する。

 

「そしてドレッドガイの攻撃力・守備力は、僕の場の《D-HERO》達の合計となる!」

 

 攻撃力が変動する。

 ダッシュガイの2100、ディストピアガイの2800が加わり……示した数値は、4900。

 スサノ-Oの守備力を、上回った。

 

「バトルだ!

 ドレッドガイで、《超重荒神スサノ-O》を攻撃!

 ――“プレデター・オブ・ドレッドノート”!」

 

 ドレッドガイが咆哮と共に跳躍する。

 天高く振り上げた両腕を、そのまま力任せに叩き落とした。

 轟音。

 まるで山が落ちてきたかのような衝撃が、スサノ-Oを大地ごと押し潰す。

 

「ぐっ……! スサノ-O……!」

「これで終わりだ。

 行け、ディストピアガイ!

 ――“ディストピア・ブロー”!」

 

 黒い闘気を纏った拳が一直線に突き出される。

 絶望を叩き込む一撃が、権現坂を吹き飛ばした。

 

権現坂

LP:1900 → 0

 

 ◆

 

 爆煙が晴れる。

 戦場に立っていたのは、ただ一人。

 

「――俺の、負けか」

 

 不動の巨漢が、静かに膝を突いた。

 

「……お前のデュエルは、実直すぎる」

「む……?」

「ペンデュラム召喚。シンクロ召喚。そして不動のデュエル。どれも戦術として価値あるものだ。

 だがお前は、先人の教えを踏襲しているだけだ。自分なりの戦い方に昇華し切れていない。それでは、真の強者には勝てない」

「――――」

 

 権現坂は、再度言葉を失った。

 エドの言葉が、あまりにも的確だったからだ。

 

「……くくく」

 

 肩が揺れる。

 笑いが零れる。

 ――エド・フェニックス。何という決闘者だ。

 たった一戦で、ここまで相手を見抜けるのか。

 

 その表情は、戦場にそぐわないほど晴れやかだった。

 磨いた技術。培った経験。

 エド・フェニックスは、権現坂昇の常に一歩先を行っていた。

 権現坂の胸を満たしていたのは、戦場で敗北した絶望ではなく、思わぬ強者と手合わせできた悦びだった。

 

「――見事。実に見事だ、エド・フェニックス」

 

 どっかりと、その場に腰を下ろす。

 そして――

 

「持っていけ。俺をカードにするがいい」

 

 心底愉快そうに、その男は言った。

 

「どうした? 勝者は敗者をカードにするのが、戦場の決まりなのだろう?」

「……意外だな。あれこれと質問されると思っていたが」

「俺にその資格はない。お前を納得させるだけの力を証明できなかったのだからな」

「……なるほど。随分と潔いことだ」

 

 エドはデュエルディスクを起動させ、権現坂へと向けた。

 

「ならば、望み通りカードにしてやろう。

 貴重なサンプルだ。特別なショーケースに飾ってやる」

 

 緊張が走る。

 恐怖が、身体を強張らせた。

 だが、権現坂は目を逸らさない。

 

「……光栄だな」

 

 せめてもの抵抗か、権現坂は不敵に笑っていた。

 

 ◆

 

「馬鹿な男だ。

 潔く敗北を受け入れて何になる」

 

 エドの足が止まる。

 視線は権現坂から逸れ、その後ろへ。

 

 ――次の対戦相手へと向いていた。

 

「今度の相手は俺だ。

 懺悔の用意は出来ているか、エド・フェニックス」

 

 黒コートの男。

 右手には、レジスタンス共通の赤いスカーフ。

 その目には、復讐鬼の如き荒々しい闘気。

 ――天城カイト。

 

「お前は……」

「いつまでそこに座っている。

 退け。デュエルの邪魔だ」

 

 カイトは冷淡に吐き捨てる。

 ……いや、違う。

 この男は、こういう言い方しかできないのだ。

 

「……すまん。恩に着る」

「何のことか分からんな」

 

 権現坂が立ち退く。

 そして入れ替わるように、カイトはデュエルディスクを構えた。

 

「天城カイト……か」

 

 ――エドとて、その名前は知っている。

 レジスタンスでも特に腕の立つ決闘者。彼にカード化された決闘者も一人や二人じゃない。

 だからこそ、戦う意味がない。

 

「ここらが潮時か」

 

 天城カイトの実力は既に知っている。今更決着をつけたところで、何の意味もない。次元戦争を徒に激化させるだけだ。

 それは、エド・フェニックスの目的に反する。

 

「待て。どういうつもりだ、エド・フェニックス」

「見ての通りだ。僕達は撤退する。

 アカデミアの幹部は裏切り、ランサーズとやらの増援も到着した。総司令の僕が奮戦したところで、戦況は変わるまい。

 榊遊矢に伝えておけ。決着をつけたくば、アカデミア軍の本拠地まで攻めてこい、と。

 そこで力を示せたのなら――その時こそ、僕達の真実を教えてやる」

 

 ◆

 

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