遊戯王ARC-V 最初から揺れていた振り子   作:名もなきWater

40 / 40
時を刻むD-HERO

 ◆

 

「――なればこそ、俺はお前に負けられん。

 エクシーズ次元を守るため。

 不動のデュエルを貫くため。

 あいつの期待に応えるために……俺は、お前を倒す!」

「……やれやれ、暑苦しいヤツだ。だが、その心意気は評価してやろう。

 権現坂と言ったな。お前の実力、この僕自らが測ってやる」

「応とも! では行くぞ!」

「「決闘(デュエル)――!」」

 

 ◆

 

「先行はもらう!

 僕は魔法カード《デステニー・ドロー》を発動!

 手札から《D-HERO(デステニー・ヒーロー) ダッシュガイ》を墓地に捨て、カードを二枚ドロー!

 さらに、《D-HERO(デステニー・ヒーロー) ドリルガイ》を召喚!」

 

 現れたのは、右腕が巨大なドリルと化した男。

 鋼鉄の脚で大地を踏み締めると、轟音と共にドリルを回転させた。

 

「ドリルガイの効果(エフェクト)発動!

 手札からドリルガイの攻撃力以下の《D-HERO》を特殊召喚する!

 来い! 《D-HERO(デステニー・ヒーロー) ディバインガイ》!」

 

 ドリルガイが腕を掲げる。

 黒い光が弾け、漆黒のスーツを纏った戦士が姿を現した。

 背には黒と白の翼飾りが輝いている。

 

「そしてフィールド魔法、《幽獄の時計塔》を発動!」

 

 戦場が陰る。

 暗雲の中より現れた巨大な時計塔が、静かにその威容を晒した。

 

「カードを二枚伏せて、ターンエンド」

「俺のターン!」

 

 権現坂のターンが開始。

 しかしその直後――

 

「このスタンバイフェイズ、時計塔の針が時を刻む!」

 

 鈍い音を立てて、時計塔の針が動き出す。

 長針が一周する度、短針が一つずつ動く。

 やがて、時刻は三時を指し示した。

 

「暗雲の中に聳え立つ時計塔……か。

 なんとも不気味なカードよ。時計の針が一周した時、一体何が起きるのか」

「いずれ分かる。その時まで、お前が立っていられたらの話だが」

「なるほどな。

 ――だが! この漢権現坂、たとえ相手が何であろうと不動のデュエルを貫くのみ!

 手札より《超重武者ビッグワラ-G》を特殊召喚!」

 

 一体の巨人が空より降り立つ。

 黄色の機体と紐のような装飾は、巨大な草鞋を連想させた。

 

「このモンスターは自分の墓地に魔法・罠が存在しない時、手札から特殊召喚できる。

 そして《超重武者》をアドバンス召喚する場合、一体で二体分のリリースにできる!

 ビッグワラ-Gをリリース!」

 

 ビッグワラ-Gが粒子となって消滅する。

 次の瞬間、その光が一か所へ集束し、新たな武者の姿を形作った。

 

「動かざること山の如し! 不動の姿、今見せん!

 ――現れろ!

 《超重武者ビッグベン-K》!」

 

 橙色の重厚な鎧に身を包み、肩には巨大なさすまたを悠然と担ぐ。

 岩山のような体躯は微動だにせず、その威容は敵の進軍を阻む砦そのものだった。

 

「ビッグベン-Kは守備表示のまま、守備力を使って攻撃することができる!

 バトルだ!

 ビッグベン-Kで、ドリルガイを攻撃!」

「罠発動! 《D-フュージョン》!

 僕のモンスターを素材に、《D-HERO》を融合召喚する!」

「何っ……!?」

 

 ドリルガイとディバインガイの身体が、紫黒の渦へと呑み込まれる。

 

「岩盤を穿つ英雄よ! 神聖なる英雄よ!

 今一つとなりて暗黒の未来に君臨せよ!

 ――融合召喚!

 カモン! 《D-HERO ディストピアガイ》!」

 

 青黒い装甲に覆われた細身の肉体。

 感情を映さぬ黄金の仮面は、まるで未来を見通す機械のよう。

 その両腕には、闇を凝縮したかのような黒球がゆっくりと浮遊していた。

 

「相手ターンに融合召喚だと……!?」

「ディストピアガイのエフェクト発動!

 特殊召喚された時、墓地からレベル4以下の《D-HERO》を一体選択! その攻撃力分のダメ―ジを与える!

 ――“スクイズ・パーム”!」

 

 ディストピアガイが掌をかざす。

 凝縮された闇が権現坂を撃ち抜き、鋭い衝撃が全身を貫いた。

 

権現坂

LP:4000→2400

 

「ぬう……だが! 攻撃力はビッグベン-Kの守備力よりも低い!

 バトルを続行する! 行け、ビッグベン-K!」

「無駄だ!

 《D-フュージョン》で召喚されたモンスターは、このターンの終了時まで破壊されない!」

「だが、戦闘ダメージは受けてもらうぞ!」

 

 轟音と共にビッグベン-Kの一撃が炸裂する。

 しかし、《D-フュージョン》の加護により、その身体が砕けることはなかった。

 

エド

LP:4000→3300

 

「両者痛み分け、といったところか。

 俺はこれでターンエンド!」

「痛み分けだと?

 悠長なことだ。お前の敗北へのカウントダウンは既に始まっている。

 僕のターン!」

 

 エドはドローするや否や、そのカードをフィールドにセットした。

 

「カードを一枚セットする!

 さらに、墓地からディバインガイのエフェクト発動!

 手札がない時、ディバインガイと《D-HERO》を墓地から除外することで、カードを二枚ドロー!」

 

 選ばれたのは《D-HERO ドリルガイ》。

 二体が虚空へと消えた後、エドはカードを引く。

 その後、伏せたカードへと手をかざした。

 

「リバースカードオープン!

 装備魔法、《ビッグバン・シュート》!

 このカードをディストピアガイに装備し、攻撃力を400アップ!」

 

 ディストピアガイの全身に光が灯り、攻撃力が変化する。

 

「攻撃力3200……。

 しかしその程度では、ビッグベン-Kを超えることはできん!」

「デカイ図体を相手に、わざわざ正攻法で挑むと思うのか?

 ディストピアガイのエフェクト発動!

 攻撃力が変化している時、元の数値に戻すことで、フィールドのカードを一枚破壊する!

 消え失せろ! 

 ――“ノーブル・ジャスティス”!」

 

 ディストピアガイの掌から、黒い球体が射出された。

 

「手札から《超重武者装留ファイヤー・アーマー》の効果発動!

 ビッグベン-Kの攻撃力と守備力を800下げる代わりに、このターン、戦闘及び効果では破壊されない!」

 

 燃え盛る鎧がビッグベン-Kへと重なり、その巨体を炎が包み込む。

 黒球は弾け飛び、破壊の力は掻き消された。

 

「手札のモンスターを使って守ったか。

 だがカードを破壊できなかった場合、ディストピアガイの攻撃力は戻らない!

 そして《ビッグバン・シュート》の効果により、ディストピアガイは貫通能力を備えている!

 バトルだ!

 ディストピアガイで、ビッグベン-Kを攻撃!

 ――“ディストピア・ブロー”!」

 

 青黒い拳がビッグベン-Kへと叩き込まれる。

 防御を貫いた衝撃が権現坂へと届き、そのライフを削り取った。

 

権現坂

LP:2400→1900

 

「ぐ、ぬう……いい、一撃だ。伊達に総司令を名乗ってはおらんな。

 なればこそ、解せん。

 これだけの腕を持ちながら、何故アカデミアに属している。どちらが善でどちらが悪か、分からないわけではあるまい」

「愚問だな。戦争に善悪など存在しない。どちらも善であり、どちらも悪だ」

「馬鹿な! 融合次元はエクシーズ次元を侵略し、明確に追い詰めている! どちらが悪か、一目瞭然のはずだ!」

 

 戦争に善悪などない。

 それは、お互いに相手を責める理由がある場合の話だ。

 しかしこれは違う。

 融合次元はエクシーズ次元を追い詰め、カードにしている。故に、エクシーズ次元は被害者である。

 

 ――それが、権現坂昇の主張。

 エドは、肩は竦めて鼻で笑った。

 

「一目瞭然? 笑わせるな。エクシーズ次元が融合次元に何もしていないとでも思っているのか?

 カードにされた決闘者はエクシーズ次元だけじゃない。

 仇討ちを考えている者は、こちら側にもいるということだ」

「っ――」

 

 権現坂は絶句する。

 どちらにも同じような被害が出ているのならば、エクシーズが善とは断言できない。

 融合も、エクシーズも。

 どちらも被害者であり、加害者でもあるのだから。

 

「僕達は全員、盤上の駒でしかない。

 引き金を引いた者……戦いを推し進める者は、別にいる」

「何……?」

「――ターンエンド。お前のターンだ」

 

 無駄話は終わり。

 そう伝えるかのように、エドはターン終了を宣言した。

 権現坂もまた、デュエルへと意識を戻す。

 

「俺のターン!」

 

 エドの真意は分からない。

 だが問題はない。

 このデュエルに勝って聞き出せばいいだけのこと。

 

「このスタンバイフェイズ、《幽獄の時計塔》は再び時を刻む!」

 

 時計塔の針が六時を指す。

 ……一ターンごとに進む針は三時間。

 エドの言葉通りならば、短針が十二時を示した時にこそ、《幽獄の時計塔》は真価を発揮する。

 タイムリミットは二ターン。

 ――ならば、それまでに片を付ければいい。

 権現坂は、手札から二枚のカードを選び取った。

 

「俺は!

 スケール1の《超重輝将ヒス-E》と、

 スケール8の《超重輝将サン-5》で、ペンデュラムスケールをセッティング!」

 

 権現坂の両隣に光の柱が立ち上り、その中心にモンスターが出現する。

 鮮緑と鮮紅。

 二体の《超重》モンスターが、天空へと浮上した。

 

「これでレベル2から7のモンスターが同時に召喚可能!

 ――ペンデュラム召喚!

 現れろ、俺のモンスター達よ!」

 

 虹彩の門が開く。

 鋼鉄の武者たちが、光を伴って主の元へ舞い降りた。

 

「レベル4、《超重武者ドウC-N》!

 レベル2! チューナーモンスター、《超重武者コブ-C》!」

 

 提灯を携えた機械武者と、赤い巨拳を備えた小型兵が並び立つ。

 

「この瞬間! ディストピアガイのエフェクト発動!

 攻撃力を戻し、カードを一枚破壊する!

 ――“ノーブル・ジャスティス”!」

 

 それを見逃すエド・フェニックスではない。

 ディストピアガイが片腕を掲げる。

 漆黒の球体は《超重武者コブ-C》へと放たれ、粉々に消し飛ばした。

 

「っ……やはりな。お前ほどの決闘者ならば、そうすると思っていた。

 ペンデュラム召喚の後に、必ずチューナーを破壊すると」

 

 融合次元出身の決闘者が、シンクロ召喚を知っている。ペンデュラム召喚を知っている。

 エドのプレイングは、それを端的に表していた。

 

「だが、この程度で止まると思わんことだ!

 《超重武者ドウC-N》の効果発動!

 このモンスターをリリースすることで、墓地から攻撃力1500以下の、地属性・機械族モンスターを特殊召喚する!

 蘇れ! 《超重武者コブ-C》!」

 

 提灯が強く瞬く。

 その光とともに、ドウC-Nの姿は粒子となって消え去った。

 そして、赤い巨拳を備えた機械兵が再び戦場に立つ。

 

「行くぞ!

 俺は、レベル8の《超重武者ビッグベン-K》に、

 レベル2の《超重武者コブ-C》をチューニング!」

 

 コブ-Cが光の環となり、ビッグベン-Kを包み込む。

 

「荒ぶる神よ! 千の刃の咆哮と共に、砂塵渦巻く戦場(いくさば)に現れよ!

 ――シンクロ召喚!

 いざ出陣! レベル10! 《超重荒神スサノ-O》!」

 

 光が収束し、一柱の荒神が姿を現す。

 分厚い装甲に身を包み、薙刀を携えた巨神。

 胡坐をかいたまま鎮座するその姿は、微動だにしない武神そのものだった。

 

「バトルだ!

 《超重荒神スサノ-O》で、ディストピアガイを攻撃!

 ――“クサナギソード・(ZAN)”!」

 

 薙刀が黄金の光を纏う。

 振り抜かれた一撃は草を薙ぐように戦場を駆け抜け、ディストピアガイを抵抗する間もなく両断した。

 

「見たか。これがペンデュラムとシンクロを取り入れた、新たな不動のデュエルよ!

 融合次元など恐れるに――む?」

 

 権現坂は眉を潜める。

 スサノ-Oの一撃で、ディストピアガイは確かに破壊した。

 守備力3800に対し、攻撃力3200。本来なら600のダメージが発生する。

 だが、エドのライフは減っていない。

 

「気づいたか。

 自分の力に溺れるほど、能天気ではないらしい」

「っ……!」

 

 舞い上がる土煙の向こう。

 エド・フェニックスは、顔色一つ変えないまま、そこに立っていた。

 隣には、一枚の罠カード。

 

「そのカードは……」

「攻撃を受ける直前、僕はこのカードを発動していた。

 罠カード、《エターナル・ドレッド》。

 《幽獄の時計塔》の針を進ませるカードだ。そして……見ろ」

 

 エドの指差す先には、時計塔。

 針は、既に十二時を示していた。

 

「時は満ちた。これにより、《幽獄の時計塔》のエフェクトが発動する。

 このフィールド魔法が存在する限り、僕はあらゆる戦闘ダメージを受けない」

「何だと……!」

 

 権現坂は歯噛みしながら、自分のペンデュラムゾーンを見た。

 《超重輝将サン-5》。

 《超重武者》が相手モンスターを戦闘で破壊した時、二回目の攻撃権を与えるペンデュラム効果を持つ。

 今、スサノ-Oに対してこの効果を発動すれば、エドに直接攻撃が可能だ。

 だが、《幽獄の時計塔》がある限り、戦闘ダメージは与えられない。

 一見無防備に見せかけた、完璧な守りだった。

 

「っ……やむを得ん。俺はこれで、ターンエンド!」

 

 三度、エドのターンがやってくる。

 権現坂は、あくまで冷静にエドの動きを見る。

 《幽獄の時計塔》によりダメージは与えられないが、エドのフィールドにはそれ以外のカードがない。

 勝ち切れていないが、不利でもない。

 こんな状況でこそ、不動のデュエルの見せ所である。

 ひたすら耐え続け、勝機を待つ。

 権現坂昇の得意とする戦術――。

 

「僕のターン」

 

 ただ一つ、思い違いがあるとすれば。

 

「僕は魔法カード、《大嵐》を発動!

 お互いの魔法・罠カードを全て破壊する!」

「何っ……!?」

 

 《幽獄の時計塔》は、守りのカードではないということ。

 

 ――嵐が吹き荒れる。

 エドを中心に自然災害が発生し、周囲の景色を切り刻む。

 時計塔は崩れ、《超重輝将》は破砕する。

 互いのフィールドに損害をもたらす。それが《大嵐》という魔法カード。

 だからこそ、権現坂には分からなかった。

 

「馬鹿な……!

 守りの要たるフィールド魔法を、自ら破壊するだと……!?」

「《幽獄の時計塔》が守りの要だと? いつ、誰がそんなことを言った?」

 

 エドが笑う。

 勝利を確信した笑みだ。

 

「時が満ちた時計塔が破壊された時、幽閉されていた恐怖の男が解き放たれる!」

 

 崩壊した時計塔の奥底から、鎖を引きずる音が響く。

 無造作に伸びた黒い長髪。

 素顔を隠す鉄仮面。

 岩石のように隆起した筋肉。

 

「――カモン! 《D-HERO ドレッドガイ》!」

 

 轟音と共に巨体が戦場へ叩きつけられる。

 大地が陥没し、砂煙が噴き上がる。

 その中心で、封印の鎖を引きちぎった《D-HERO ドレッドガイ》が、ゆっくりと立ち上がった。

 

「ドレッドガイのエフェクト発動!

 特殊召喚に成功した時、墓地から《D-HERO》を二体選び、フィールドに特殊召喚できる!

 現れろ! ダッシュガイ! ディストピアガイ!」

 

 ドレッドガイの両脇に、二体のモンスターが出現する。

 

「そしてドレッドガイの攻撃力・守備力は、僕の場の《D-HERO》達の合計となる!」

 

 攻撃力が変動する。

 ダッシュガイの2100、ディストピアガイの2800が加わり……示した数値は、4900。

 スサノ-Oの守備力を、上回った。

 

「バトルだ!

 ドレッドガイで、《超重荒神スサノ-O》を攻撃!

 ――“プレデター・オブ・ドレッドノート”!」

 

 ドレッドガイが咆哮と共に跳躍する。

 天高く振り上げた両腕を、そのまま力任せに叩き落とした。

 轟音。

 まるで山が落ちてきたかのような衝撃が、スサノ-Oを大地ごと押し潰す。

 

「ぐっ……! スサノ-O……!」

「これで終わりだ。

 行け、ディストピアガイ!

 ――“ディストピア・ブロー”!」

 

 黒い闘気を纏った拳が一直線に突き出される。

 絶望を叩き込む一撃が、権現坂を吹き飛ばした。

 

権現坂

LP:1900 → 0

 

 ◆

 

 爆煙が晴れる。

 戦場に立っていたのは、ただ一人。

 

「――俺の、負けか」

 

 不動の巨漢が、静かに膝を突いた。

 

「……お前のデュエルは、実直すぎる」

「む……?」

「ペンデュラム召喚。シンクロ召喚。そして不動のデュエル。どれも戦術として価値あるものだ。

 だがお前は、先人の教えを踏襲しているだけだ。自分なりの戦い方に昇華し切れていない。それでは、真の強者には勝てない」

「――――」

 

 権現坂は、再度言葉を失った。

 エドの言葉が、あまりにも的確だったからだ。

 

「……くくく」

 

 肩が揺れる。

 笑いが零れる。

 ――エド・フェニックス。何という決闘者だ。

 たった一戦で、ここまで相手を見抜けるのか。

 

 その表情は、戦場にそぐわないほど晴れやかだった。

 磨いた技術。培った経験。

 エド・フェニックスは、権現坂昇の常に一歩先を行っていた。

 権現坂の胸を満たしていたのは、戦場で敗北した絶望ではなく、思わぬ強者と手合わせできた悦びだった。

 

「――見事。実に見事だ、エド・フェニックス」

 

 どっかりと、その場に腰を下ろす。

 そして――

 

「持っていけ。俺をカードにするがいい」

 

 心底愉快そうに、その男は言った。

 

「どうした? 勝者は敗者をカードにするのが、戦場の決まりなのだろう?」

「……意外だな。あれこれと質問されると思っていたが」

「俺にその資格はない。お前を納得させるだけの力を証明できなかったのだからな」

「……なるほど。随分と潔いことだ」

 

 エドはデュエルディスクを起動させ、権現坂へと向けた。

 

「ならば、望み通りカードにしてやろう。

 貴重なサンプルケースだ。特別なショーケースに飾ってやる」

 

 緊張が走る。

 恐怖が、身体を強張らせた。

 だが、権現坂は目を逸らさない。

 

「……光栄だな」

 

 せめてもの抵抗か、権現坂は不敵に笑っていた。

 

 ◆

 

「馬鹿な男だ。

 潔く敗北を受け入れて何になる」

 

 エドの足が止まる。

 視線は権現坂から逸れ、その後ろへ。

 

 ――次の対戦相手へと向いていた。

 

「今度の相手は俺だ。

 懺悔の用意は出来ているか、エド・フェニックス」

 

 黒コートの男。

 右手には、レジスタンス共通の赤いスカーフ。

 その目には、復讐鬼の如き荒々しい闘気。

 ――天城カイト。

 

「お前は……」

「いつまでそこに座っている。

 退け。デュエルの邪魔だ」

 

 カイトは冷淡に吐き捨てる。

 ……いや、違う。

 この男は、こういう言い方しかできないのだ。

 

「……すまん。恩に着る」

「何のことか分からんな」

 

 権現坂が立ち退く。

 そして入れ替わるように、カイトはデュエルディスクを構えた。

 

「天城カイト……か」

 

 ――エドとて、その名前は知っている。

 レジスタンスでも特に腕の立つ決闘者。彼にカード化された決闘者も一人や二人じゃない。

 だからこそ、戦う意味がない。

 

「ここらが潮時か」

 

 天城カイトの実力は既に知っている。今更決着をつけたところで、何の意味もない。次元戦争を徒に激化させるだけだ。

 それは、エド・フェニックスの目的に反する。

 

「待て。どういうつもりだ、エド・フェニックス」

「見ての通りだ。僕達は撤退する。

 アカデミアの幹部は裏切り、ランサーズとやらの増援も到着した。総司令の僕が奮戦したところで、戦況は変わるまい。

 榊遊矢に伝えておけ。決着をつけたくば、アカデミア軍の本拠地まで攻めてこい、と。

 そこで力を示せたのなら――その時こそ、僕達の真実を教えてやる」

 

 ◆

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

遊戯王ZEXAL 転生決闘者『築根ゆうや』(作者:ふわ×フワ)(原作:遊戯王)

 遊戯王ZEXALにたった一話、回想でのみ登場する少年『築根優也』の、語られるはずの無かった物語が今、幕を開け……? いや、何かが違う…。▼「どうしよ待ってこの展開知らない俺」▼これは、前世の記憶を持ち、本来在るべき彼とは異なる彼が、この世界で築き上げるもう一つの物語。▼※こちら遊戯王ZEXALの二次創作でございます為、ルールはアニメ放送当時のものになります…


総合評価:246/評価:7.62/連載:31話/更新日時:2026年06月13日(土) 20:00 小説情報

「それはどうかな?」って言いたくなるよね(作者:アウグスティン)(原作:遊戯王)

キング・オブ・デュエリスト(笑)▼※細かいルールは葬祭殿の地下に眠りました


総合評価:13120/評価:8.72/完結:44話/更新日時:2026年06月27日(土) 19:51 小説情報

科学技術全盛時代に精霊の居場所は(作者:はなみつき)(原作:遊戯王)

あんまり無いけど無い事もない。▼


総合評価:9295/評価:8.77/完結:74話/更新日時:2026年03月25日(水) 17:03 小説情報

ファンサービスは僕のモットーですから(作者:ジャギィ)(原作:遊戯王)

ガワだけIVになったARC-V転生者


総合評価:12076/評価:8.84/連載:22話/更新日時:2026年06月14日(日) 20:44 小説情報

ラーイエローの神楽坂(作者:ラララララクダ)(原作:遊戯王)

※原作ネタバレ注意▼なぜか神楽坂に転生した【ラーの翼神竜】大好き主人公が、精霊たちと一緒に遊戯王世界を生きていく話。▼なお、肝心のラーはまだ手に入っていない模様。▼初めての投稿です。▼拙い部分も多いと思いますが、よろしくお願いします。


総合評価:737/評価:7.94/連載:14話/更新日時:2026年03月21日(土) 20:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>