遊戯王ARC-V 最初から揺れていた振り子 作:名もなきWater
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「はぁ? なんだよこのデュエルフィールド……しょぼすぎだろ。リアルソリッドビジョンシステムの一つもねーのかよ」
デュエル場に到着するや否や、金髪の少年――沢渡シンゴが悪態をついた。
「し、失礼な! ないわけじゃない! ただ、ちょっと故障してるだけで――」
「それをないって言うんだよ、オッサン。今時アクションデュエルができない塾なんて終わってるぜ。ここ、もう畳んだ方がいいんじゃない?」
「それはできん!」
修造は握り拳を固めて、沢渡に熱い眼差しを向ける。
「ここは先輩が、榊遊勝が残してくれた立派な塾だ! たとえ槍が降ろうと、先輩の意見無しで潰すことは許さん!
それに、この塾の本質はエンタメデュエル! アクションデュエルにこだわる必要はない!」
「ハァ……分かってねえな。
だから、そのエンタメデュエルがインチキだって言ってんだよ」
「まあまあ、落ち着けって二人共」
言い争う二人を尻目に、遊矢は自分のデュエルディスクを装着した。
「リアルソリッドビジョンが壊れてるのは完全に俺達が悪いだろ?
……だからさ。塾長、何とか直してくれないかなー、なんて」
「あのなあ遊矢……お前も知ってるだろ? それができたら苦労はしない。ウチの経営はいつだって火あぶりの刑で拷問車輪なんだ」
「あはは……」
火の車、と言いたいらしい。
経営に関しては専門外なので、笑って誤魔化すしかない。
「で……沢渡って言ったな。そんなに気になるなら確かめてみればいい。俺のデュエルが、本当にインチキかどうかをね」
「へっ……言うじゃねえか、詐欺師風情がよ」
沢渡もまた遊矢に続き、デュエルディスクを構える。
一瞬、場の空気が張りつめた。
「だったら見せてみな、お得意のエンタメってやつを。その鼻、へし折ってやるぜ!」
「望むところだ! 行くぞ!」
「「
◆
「先行は俺だ! 見せてやるよ、アンタのお望みのものをさ!
俺のターン!」
遊矢は手札から二枚のカードを選び取り、空にかざした。
「俺は、スケール1の《星読みの魔術師》と、スケール8の《時読みの魔術師》で、ペンデュラムスケールをセッティング!」
二枚のカードをデュエルディスクの両端にセットした直後、二つの影がゆっくりと浮上した。
「これでレベル2から7のモンスターが同時に召喚可能!
揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け、光のアーク!」
片や、星を刻む白衣の魔術師。
片や、時を操る黒衣の魔術師。
対となる魔術師が武器をかざした瞬間、その中央に光の孔が開けられた。
――その奥から、巨大な影が姿を現す。
「ペンデュラム召喚!
現れろ、雄々しくも美しく輝く、二色の眼! 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」
光が収まると同時に、影の正体が露わになる。
赤と緑、二色の目を持つ龍。
「す、すごい……!」
柚子は、その光景に思わず息を呑んだ。
「おおー! こ、これが遊矢のペンデュラム召喚か……!」
修造は、目を輝かせたまま、何度も頷いている。
「流石だな、遊矢」
権現坂は、力強く拳を握る。
三者三様の視線がオッドアイズと遊矢に向けられた。
ただし、一人を除いて。
「俺は、カードを一枚伏せてターンエンド」
「俺のターン……ドロー!」
沢渡がカードを引く。
カードを確認した後、沢渡の視線が手札へ移る。
……その瞬間、沢渡の口元が、僅かに歪んだ。
「まず俺は、カードを一枚セット。
さらに手札から魔法カード《手札抹殺》を発動!
互いの手札を全て捨て、同じ枚数だけカードをドローする!
……まあ、困るのはそっちだけだろうがな」
「…………」
遊矢の手札は、一枚。
対して、沢渡の手札は、四枚。
そして沢渡は――その四枚を確認しないまま、次の手を打つ。
「そして俺は、事前に伏せたリバースカードを発動するぜ。
そのカードは――《死者蘇生》! これにより、墓地からモンスターを一体特殊召喚する!
俺が選ぶのは、《手札抹殺》で捨てたこのカードだ!
現れろ! 《アルティメット・ダーツ・シューター》!」
沢渡のフィールドにモンスターが出現する。
青を基調とした装甲に覆われた人型の機械兵。
右腕は、通常の腕ではない。
ダーツを思わせる砲身が一体化した武装となり、照準を定めるように、ゆっくりと持ち上がった。
「一ターンで上級モンスターを……」
修造が思わず息を呑む。
「見たか。そんなもんに頼らなくたって、方法なんざいくらでもあんだよ。
……だが、まだ終わりじゃねえ。
手札から魔法カード《デビルズ・サンクチュアリ》を発動! 俺の場に《メタル・デビル・トークン》を一体特殊召喚する!」
沢渡のフィールドに不気味な人型のスライムが召喚された。
攻撃力は0。
単体では何もできないトークンだが――
「さらに俺は、《メタル・デビル・トークン》をリリース!
《パワー・ダーツ・シューター》を、アドバンス召喚!」
出現したのは、《アルティメット・ダーツ・シューター》によく似た人型の機械だった。
だが、その装甲は青ではなく、警告色のようなオレンジ。
全体的に丸みを帯びたフォルムは、どこか実戦向けに調整された印象を与える。
右目には照準用のスコープが埋め込まれ、右腕には三本の鋭い針――矢のような武装が束ねられていた。
「けど、それが何だって言うんだ?」
修造は、怪訝な顔つきで二体のダーツモンスターを見る。
「《アルティメット・ダーツ・シューター》の攻撃力は2400。《パワー・ダーツ・シューター》の攻撃力は1800。
それに対して、遊矢のドラゴンは2500。これを超えられなきゃ、いくらモンスターを並べても意味ないだろ」
「ハッ! 分かってねえなオッサン! 数字だけ追ってりゃデュエルが分かった気になるのか?」
「なっ!? アイツ、また俺をオッサンと――」
「こいつはな、撃つための駒じゃねえ。力をくれてやるための駒だ。
《パワー・ダーツ・シューター》の効果発動! このカードをリリースすることで、ダーツモンスターの攻撃力を600アップする!」
次の瞬間、パワーの身体が分解されるように崩れ、光の奔流となって《アルティメット・ダーツ・シューター》へと吸い込まれた。
アルティメットの装甲が軋み、青い装甲の隙間から光が噴き上がる。
――攻撃力3000。
「バトルだ!
穿て、《アルティメット・ダーツ・シューター》!」
アルティメット・ダーツ・シューターの右腕が唸りを上げ、光の矢が発射された。
狙いはただ一つ――二色の眼を持つドラゴン。
一直線に走る光の矢が、ドラゴンの胸元を貫いた。
咆哮を上げながら、オッドアイズの巨体が崩れ落ちていき――
光の粒子となって霧散した。
遊矢
LP:4000 → 3500
「どうした? エンタメデュエリスト。さっきまでの威勢はどこ行った?」
沢渡は鼻で笑い、腕を組む。
――が。
「リバースカード、オープン!」
それを断ち切るかのように、遊矢は伏せカードを発動させた。
「速攻魔法、《イリュージョン・バルーン》!」
遊矢の宣言と同時に、上空に五つの巨大な風船が弾けるように現れた。
次の瞬間――
風船は一斉に破裂し、五枚のカードが宙に舞い上がる。
「なに……?」
沢渡が目を細める中、カードの絵柄がほんの一瞬だけ視界に映った。
シルクハットを被った桃色のカバ。
つぶらな瞳をした毛むくじゃらの悪魔。
そして――
遊矢はその中から、迷いなく一枚を掴み取った。
「来てくれ! 《
現れたのは、頭に大きな受話器を載せた、スーツ姿の牛だった。
「《イリュージョン・バルーン》は、デッキの上からカードを五枚めくる!
そこに《
「なるほどな。だが、それがなんだ? そんな雑魚一体じゃ、俺の間合いから逃げることも、防ぐこともできねえ!」
「俺のデッキに雑魚モンスターなんていない! どのカードも、俺を勝利に導いてくれる大事なカードだ!
ロングフォーンブルの効果発動! デッキから、新たな仲間を手札に呼ぶ!」
ロングフォーンブルの頭上の巨大な受話器から、ジリジリと音が鳴った。
同時に、遊矢のデッキから一枚のカードが顔を出す。
まるで、その受話器に呼ばれたかのように。
「……フン。まあいい、どうせハッタリだ。
このターンの終了時、《アルティメット・ダーツ・シューター》の効果が発動する。
戻ってこい、《パワー・ダーツ・シューター》!」
沢渡が手を掲げると同時、オレンジ色の機体が再び姿を現した。
右目のスコープが、獲物は逃がさんと言わんばかりに光っている。
「装填完了、ってな。カードを一枚伏せてターンエンド」
沢渡の場に伏せカードが出現し、ターンが交代する。
「俺のターン、ドロー!
ハッタリかどうか、しっかりとその目で見ておけ!」
遊矢は再度、宙に手をかざす。
それに応えるように、上空に浮かぶ二体の魔術師が武器を合わせた。
天空のゲートが、再度開かれる。
「揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け、光のアーク!
ペンデュラム召喚!
現れろ! 《
奇術師の衣装を纏ったモンスターが舞台に立つ。
右手にはボール、左手にはステッキ。
しかしその下半身は、巨大な鉱石へと変わっていた。
人の姿をした鉱石――それが《スライハンド・マジシャン》だ。
「なんだと……その召喚法は、あのドラゴン専用じゃねえのか……!」
「スライハンド・マジシャンの効果発動!」
遊矢はデュエルディスクを掲げ、手札から一枚のカードを差し出す。
次の瞬間、奇術師の右手の中にボールが出現した。
そう――青い、ボールだ。
奇術師が左手のステッキを振るった瞬間、ボールはガラス玉のように砕け散る。
同時に、まるで連動するかのように《アルティメット・ダーツ・シューター》の装甲が内側から弾け飛んだ。
「っ……何が、起きた。てめえ、今何をした!?」
「スライハンド・マジシャンは一ターンに一度、手札を一枚捨てることで、フィールドのカードを破壊できる!
奇術師のショーは終わらない! バトルだ!
やれ、スライハンド・マジシャン!」
奇術師は、どこからともなく右手の上にボールを出現させる。
今度はオレンジだ。
再度、奇術師がステッキを振るい、ボールが弾け飛ぶ。
沢渡の《パワー・ダーツ・シューター》もまた、同じように弾け飛んでいた。
沢渡
LP:4000 → 3300
「ッ……小癪な手品師め……!」
「まだバトルは終わっていない! 続け、ロングフォーンブル!」
「ブモォォ!!」
攻撃の指示を受けたロングフォーンブルは、鼻息を荒くしながら沢渡に突進する。
「そいつは喰らわねえ!
永続罠発動、《ダブル・フッキング》! 手札を一枚捨て、墓地からモンスターを二体特殊召喚!
甦れ、《パワー・ダーツ・シューター》!
《アルティメット・ダーツ・シューター》!」
「ブモッ!?」
突進の軌道上に障害物が出現し、ロングフォーンブルは緊急停止した。
「どうだ。これでダイレクトアタックはできねーだろ?」
「……確かに。やるな、沢渡」
「当然だろ。俺を誰だと思ってる」
「LDSのスーパーエリート、だろ?」
「違う。舞網市の市長の息子だ」
その声音には、根拠のない自信ではない、生まれながらにして刷り込まれた“特別意識”があった。
「なら、お手並み拝見だ。俺はこれで、ターンエンド!」
「……ハッ。言ってくれるぜ、ペテン野郎が」
ペテン――そう吐き捨てながらも、沢渡の口元には、悔しさを誤魔化すような、わずかな笑みが浮かんでいた。
さっきまでの“見世物”ではない。
今の一手は、確かに決闘者のものだった。
「俺のターン、ドロー!」
沢渡の視線がドローしたカードに集まる。
――流れを引き寄せる一枚。
このフィールドを、根こそぎ塗り替える切札。
「行くぜ……俺は手札から、永続魔法をする!
そのカードは――《機械仕掛けの街-クロック・ワーク・ナイト-》!」
その瞬間、世界が一変した。
殺風景だったデュエルフィールドは、歯車と鋼鉄に覆われた“機械の街”へと書き換えられる。
「これは……機械の街!?」
「そう。ここの住人は全て“機械族”へと“改造”される。当然、お前のモンスターもな!」
「!」
遊矢が目を離している、その刹那。
歯車の影が地面からせり上がり、ロングフォーンブルとスライハンド・マジシャンの身体を覆い尽くす。
次の瞬間、肉体は鋼鉄へ。
二体のモンスターは、機械の身体に“改造”されていた。
「ロングフォーンブル! スライハンドマジシャン!」
「それだけじゃないぜ。
クロック・ワーク・ナイトは、俺の機械族を強化し、てめえの機械族を弱体化させる。
攻撃力は、俺が500アップ。お前が500ダウンだ。
――バトルだ!
やれ、《パワー・ダーツ・シューター》! ロングフォーンブルを攻撃!」
右目のスコープが唸りを上げ、照準が、逃げ場を失ったロングフォーンブルを捉える。
――発射。
光の矢が走り、ロングフォーンブルを貫いた。
巨体が一瞬踏みとどまるが――次の瞬間、砕け散る。
遊矢
LP:3500 → 2300
「まだだ! 第二射!」
続けて、青い機体が照準を合わせる。
狙いは――木偶と化した奇術師。
「ここで、《パワー・ダーツ・シューター》の効果発動! パワーチャージ!」
《パワー・ダーツ・シューター》が粒子となって砕け散り、青い機体の右腕に集約された。
「装填完了……! 穿て、《アルティメット・ダーツ・シューター》!」
再度、光の矢が一直線に走った。
直後、奇術師の胴体に風穴が空く。奇術師としてのガワが剥がれ、ただの鉱石として砕け散った。
遊矢
LP:2300 → 800
「っ……」
遊矢は思わず片膝を突く。
「おっと、まだ終わりじゃねえぜ。忘れてねえよな?
《アルティメット・ダーツ・シューター》の効果発動。このターンの終了時、《パワー・ダーツ・シューター》は、ちゃーんと俺の場に戻ってくる。
ターンエンド。さあ……次の一手を見せてみろよ、エンタメ決闘者」
遊矢は歯噛みしながら顔を上げる。
二体の戦闘マシーン。そして、視界を覆う鋼鉄の街。
逃げ場はない。次の攻撃で、終わる。
――どうする。
エンタメなんて、考えてる余裕はなかった。
勝つために、持てる全てを賭けるしかない。
遊矢は無意識に、手札へと視線を落とし――
そこで、違和感に気付いた。
「……え?」
デュエルディスクの端。
そこに表示されていたのは――《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》。
一ターン目に破壊された、相棒の龍。
それが、EXデッキに、確かに存在している。
遊矢のデッキに、融合も、シンクロも、エクシーズもない。
EXデッキは、空のはずだった。
――はず、だった。
「……もしかして」
遊矢は、ゆっくりと顔を上げた。
――勝ちたいなら、勇気を持って前に出ろ。その勇気の分だけ、喜びも戻ってくる。
父が、いつかそう言っていた。
当時は、よく分からなかった。
勝つことと、楽しませること。
勇気と、無謀の違い。
だが――今なら、少しだけ分かる。
「前に出なきゃ、何も始まらない……よな!」
遊矢は、ぎゅっと拳を握り締める。
前に出ろ。
前に出ろ。
前に出ろ――
「……ん?」
何かが変わった。
立ち上がる遊矢の顔を見て、沢渡はそう直感した。
「……どうしたよ、エンターテイナー。俺の強さを認めて、ついに諦めたか?」
そんなわけないだろう。そう思いながらも、沢渡は挑発する。
「まさか」
遊矢は肩を竦めて笑う。
「なあ、沢渡。振り子って知ってるか?」
「あん? 振り子?」
「そう。不思議だよな。右に揺れたら、それと同じだけ左に戻ってくる。揺れが大きければ大きいほど、戻る分も大きくなる」
「それがどうした?」
「デュエルも同じさ。大きなピンチの後には――大きなチャンスがやってくる!」
遊矢は自分のデッキに視線を落とす。
希望は見えた。だが、まだ届かない。
それを埋めるのは……
「……レディース、エーンド、ジェントルメーン……」
お決まりの口上を口ずさむ。
頭の中でシミュレートする。
大勢の観客、波を打つような熱気。
今はまだ遠い夢。そして――いずれ立つ大舞台。
「……は? なんだって? 聞こえねーよ」
「悪い。でも……いつか、聞こえるようになるさ。
行くぞ、沢渡! これがラストドローだ! 俺の……ターン!」
遊矢は、カードを引いた。
――一瞬。
時間が止まったかのように、視界が静まる。
次の瞬間……遊矢の口元が、わずかに緩んだ。
遊矢が三度、天空へと手をかざす。
「揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け、光のアーク!
ーーペンデュラム召喚!
現れろ、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」
二色の目を持つ龍が、主の元に帰還する。
赤と緑。相反する瞳を輝かせ、野生の咆哮が機械の街に轟いた。
「な……そのドラゴンは、最初のターンで倒したはず……!」
「ペンデュラムモンスターはフィールドで破壊された時、墓地には行かず、EXデッキに行く」
「……チッ。だが、クロック・ワーク・ナイトの効果は生きてる。そのドラゴンも、今や機械族だ」
鋼鉄の街の歯車が回転し、オッドアイズの鱗が金属光沢を帯びる。
たとえ龍が帰還したところで、ここは既に沢渡の領域。逃れる術はない。
――否。元より、逃げる気はない。
「攻撃力は下がる。俺のモンスターの方が上だ」
「……その通りだ、沢渡」
遊矢は、静かに一枚のカードを場に置いた。
「装備魔法……《魔界の足枷》、発動」
黒い鎖が地を這い、《アルティメット・ダーツ・シューター》の脚部と砲身に絡みつく。
鎖の先には、悪魔のような鉄球。絶対に逃がさんと言わんばかりに、ニタニタと笑っている。
「……っ!? 装備魔法だと……!」
「《魔界の足枷》は、装備モンスターの攻撃力を下げ、その動きを封じる。
沢渡。お前の切り札は――もう、撃てない」
沢渡の顔が、驚愕から絶望に染め上がる。
「バトルだ! 行け、オッドアイズ!
――“ストライク・メタル・バースト”!!」
機械の街を切り裂くように、虹色のブレスが放たれる。
足枷に囚われたアルティメットは、回避も迎撃もできない。
――直撃。
鋼鉄の装甲が内側から砕け散り、歯車の街に、爆炎が走った。
沢渡
LP:3300 → 0
――警告音。
無機質な音が、機械の街に響き渡った。
歯車の回転が止まり、鋼鉄の街並みが、ひび割れるように霧散していく。
遊矢は、息を整えながら、静かにデュエルディスクを下ろした。
「……ありがとう、沢渡」
遊矢は沢渡の前に手を差し出した。
「……は?」
「本気で来てくれたから。だから……俺も、前に出られた」
「っ……! うるせえ、よ」
声は強がっていたが、語尾が、わずかに震えていた。
沢渡は差し出された手を払い、デュエルフィールドを降りていく。
やがて出口の前で立ち止まり――
一度、拳を握り締めてから、振り返った。
「――榊遊矢!
次に会った時、勝つのは俺だ!」
それは捨て台詞だったが、同時に宣戦布告でもあった。
沢渡はそう言い残し、遊勝塾を後にした。
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